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3話 はじめての課題
25
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「うー、なんて書こう」
ビジネスホテルのような一室に通されて、壁際のコンソールにてタブレットをつないだ。
とりあえず報告、だよね。
社内クラウド‥‥はめんどいからメールで失礼。
『無事到着しました』
すぐに返信が。お、今PC中か?
『ご苦労様。今日はゆっくりしていなさい」
『会長、こんなのもらっちゃったんですがどうすれば?』
ちゃちゃっと(仮)オエビランドの画像を転送。
言葉考えるよりこれの方が早い。
『目を通す程度でいいよ。君は君の視点で思ったことを報告してくれ』
はあ‥‥。さらっと言ってくれちゃって。
『君がいつもブログに書いている調子でいいんだよ。施設の様子を撮って送ってくれてもいい、君がそれについてどう思うかそういう普通の感覚が欲しいんだ』
ブログねえ‥‥。それならお安い御用だ。
けど、一応社員だし。
ただのモニターなら好き勝手言えるのに。
んん、て、ブログ!?
そういえば会長も我がブログの読者だった!
『ブログブログ言わないで下さい(ていうか読むなよ)!わかりました。次は明日以降ということで』
『OK。楽しみにしてるよ』
PCの向こうでニヤついてる顔が浮かんだ。
毎度のことだけどなんかくやしーわ。
手のひらで踊らされてる感‥‥。
「ここは夕日が綺麗なんですよ」
車は海岸線に出た。
「うわ、キレイー」
海も空もオレンジの世界。光の束が降り注いでる。割と有名なこの辺の夕日スポットである。
いやめっちゃすごいじゃん。こんなに夕日らしい夕日はそうそう見ないよ。山陰に住んでると宍道湖の夕日が見れていいねえなんて言われるが宍道湖ばっかり見てるわけじゃないから!
高いパームツリーの醸し出すリゾート感。一帯が綺麗に整備されていて人も結構いる。
「さあ、どうぞどうぞ」
そこの小洒落た建物で私はおもてなしされるようだ。
入り口に人が立っている。
「はじめまして。高田です」
若い男の人が名刺を差し出した。おじさんの内の一人と同じ苗字‥‥。「僕が案内します」ドアを開け私は席にエスコートされた。
中は貸切で夕日を望むテーブルは品よくセッティングされている。
「ワインをよろしいでしょうか」
給仕さんに丁重にお辞儀されて。
ワオ、もちろんですとも!
お任せのワインがグラスに注がれる。
「乾杯!」
素敵~。
こんなレディーな扱い久しぶりかも。
いや‥‥初めてかもしれない。
会長と一緒の時を除いて。
「全部うちのエビなんですよ。今日は特別に調理してもらいました」
高田さんが隣に座って説明を始めた。「車海老とジャガイモのコンフィです」
その周りにおじさんが三人。
「ウチのイチオシなんですよ。どうですか?」
どうって美味いに決まってるじゃん!
鮮度抜群ピチピチのエビをコンフィ!揚げ物や炒め物とは全然別の味。低温オイル蒸し煮よね。この調理法考えた人すごいわ。
「美味しいです」
「よかった。こちらもどうぞ。レモンをたっぷりかけて」
スクイーザーをぎゅっと絞って、すくもエビのフリットへ。熱い衣から爽やかな香りがふわーと上がって、ハーたまんない~。
「養殖のメインはちょっと品種が違うんですが、どうです、これ、歯ごたえよくないですか?」
「ええ」
すくもエビは会長に出したことがあるわ。
白っぽくてモチっとしててしんじょやがんもに混ぜてもイケる。
そんなに海老海老してないのでエビ嫌いにもオススメ。
「きれいですねえ」
窓の向こうの夕焼けにうっとり。いよいよクライマックスよ。
「ここは人の手が入っていいんですけどね」
海じゃなくて九州に沈むの。低い山並みに差し掛かり光り輝いたかと思うと急激に明度が落ちる。オレンジからグレーへ。高田さんの口調も少しトーンダウンした。
「養殖がやっと軌道に乗りそうなんです。でもどうにも不安が拭えなくて。それだけでこの先やっていけるかどうか‥‥」
そうなのか。
よくわかんないけど廃墟のような建物がポツポツ……。
いやいや、そのための設備投資なのだ。
「計画書見ていただけました?全体的な見直しをということでしたのでー」
おっと、きたきたー。
「は、ハイ」
「どうでしょう? 我々の希望はそういうところでして」
会長に取り上げてもらえるかってこと?
わかんないよ。私には。
てか、オエビランドて。
会長はエビが嫌いなんですよね‥‥特に小エビが。
「‥‥のように大人から子供まで楽しめるスポットにしたいんです」
気持ちはわかる‥‥でもちゃんと言っとかないと。
私の専門はそれじゃない。
「申し訳ありません。私は管轄外なのでお答えできません。施設の件につきましては後ほど担当の者が改めてご挨拶に伺うと思います」
その人に言って。多分まともな人が来るだろうから。
ああ、重い仕事してるわ。管轄外なんて初めて口にする。
「そ、そうでしたな!市川さんは会長様へお料理をお出しされているんですよね。申し訳ありません。ついペラペラ余計なことを」
おじさんの一人が口を挟む。
「い、いえ」
「何でも重役会議や重要取引での会食もこなされているとか」
そ、それは。間違いじゃないけど。
「私らには雲の上の出来事ですな」
「そんなことは」
一体どういう風に伝わっているのだろう。多分おそらくおじさんたちが想像してるよりだいぶゆるーい感じだ。「え、そーなん?」高田さんがキョトンとした顔で見てる。
あーもう認めちゃえ!
どんな経路を取ろうともそうなっちゃったんだから。会長のお墨付きよ!
私は会長料理人&ブロガー!
ヘイヘイ、ちょいと失礼ーー。
私は携帯を取り出し、料理にカメラを合わせた。
カシャ。
やっぱこれよ。いつもの。
じゃんじゃん持ってきてくれい。
「お、おお、ではとにかくエビを食べていただかないと」
大皿がやってきた。
伊勢海老だー。
言うこと言ってすっきりしたわ。いただきまーす。
「全国的には全く知られてませんがね、近辺のホテルにもう10年以上下ろしてます」
うんうん、わかるわ。伊勢でなくともイセエビは育つ!
うまければ良いのだ。
湯引きした肉のプリプリ甘いこと。
思い出すなあ‥‥会長に捌いてもらったっけ。
ガーリックシュリンプもつまむ。
おじさんたちに囲まれているのに気にせず手掴みだ。
「天使のエビってあるでしょう?アレを狙って改良中なんですよ。どうでしょう?」
天使のエビ。ニューカレドニアかどっかのめちゃ高いエビ?聞いたことはあるけど食べたことはないなあ。会長、エビが嫌いなんだもん。
「いいんじゃないですか。あれって高いですよね」
知らないけど言っちゃう。
「ええ。価格はもっと抑えられますよ」
そうなんだ。うまうま~。
図表をさっと出された。ナニナニ?
エビの種類別全国市場相場だって。
「このエビを量産できればご提示いただいた食品加工に回せると思ってるんです。どうでしょう。海老チリやグラタンに程よいサイズでーー」
きた。
それよ、それそれ。私に任されたお仕事。
このエビ使ったメニューを考えるのかー。
なんか楽しそうじゃない?
「バナメイやブラックタイガーのようなインパクトがほしいんですわ。味には自信あります。実際いくつかのレストランでの実績も上がってきてます」
「そうですか。何たって国産ですものね」
みんな頷く。それが強みよね。よし、頑張るぞー。
「ウナギの養殖も始めたんですよ」
「ウナギ?」
「日生のシャコウナギはご存知ですかな」
「いえ」
「児島湾のシャコを食べて育ったウナギですよ。これが実に美味いんですわ」
「へえ」
なにそれ。うまそう‥‥。日生って岡山ね。
「ケ◯ミンショーでやったっちゃよ、高級魚で全国から食べに来ると」
高田さんが身を乗り出した。
興奮するとお国言葉が飛び出すものだ。
山口人の場合は語尾にちゃをつける。
久々に聞くわ。
「あれをうちでも育てたいっちゃ。ウナギの味が違うんよ」
わざわざ食べに行ったのかな。
ウナギ美味いよね~。
‥‥会長のブラックリストにあったかも?
「画像使わせてもらってもいいですか? 実は私ブログやってまして」
「ええ、是非。実は私もやってましてな‥‥見ませんか?日生のウナギ」
シャレオツなレストランでおじさんにスマホ見せてもらう‥‥。
立派なウナギの姿とうな重‥‥美味しそうっ。
「これとこれ‥‥ああ、穴子の天ぷらもうまいんだ」
ふんふん。おじさんは揚げ物コッテリ好きか。
天ぷら、そういえば‥‥
「お昼にミノの天ぷらを頂いたのですがとっても美味しかったです。ご存知ですか?」
「おー広島の?知っちょるよ、ビールに合うんよねえ」
「わかるー」
「タレ付いちょるやろ。俺は塩がすきっちゃ。あれは揚げたてやないとあかんけどな」
「うんうん。皆さんいつもエビや鰻食べれていいですね」
「やー、いつもやないっちゃ。こんなん贅沢品すよ」
やっぱ私の本業は食い物‥‥料理があればなんとかなる!
リゾット、パエリア、生海老、海老チリ‥‥出てくる出てくる、居酒屋か!
和洋折衷、美味しいものに囲まれてし・あ・わ・せ~。
ラストはシンプルにアイスときた。
「かき餅にアイス付けて食べると美味しいんですよ。会長にも時々お出しします」
「煎餅か?えびせんならあるっちゃ。持ってきましょうか?」
高田さんのセリフと同時に人が動いてさっと出された。
薄いピンク色の揚げ餅。お花の形して花せんみたいよ。「道の駅にも出しとるんよ」
アイスをのっけてパクリ。サックサク~。甘いアイスにしょっぱいエビ風味がベストマッチ。この甘辛ミックスって言うんですか?これももはや定番よね。「どうぞ」高田さんにもおすそ分けして。会長の普段のランチ画像を見せてみる。
「へええ、会長さんはハイカラなもん食べられるんですねえ」
「こりゃ誠二、会長さんはまだお若いんじゃ。そうですよね?」
おじさんにチャチャ入れられて。
ふうん、この二人、やっぱり親子だったんだ。
そういえば‥‥なんとなく似てるわ。
部屋に戻り とりあえず画像をクラウドに保存。
土産にもらったおせんべいぽりぽりやりながら眺める。
エビエビエビ‥‥見事にオールエビだ。
「これ普通にお店で食べたらいくら位するのかなあ」
素朴な疑問が。
一万くらい?
やっぱ出張の醍醐味はこれよね。完全おごりの接待!
ウナギも美味しそうだったな。
日生のウナギ‥‥検索して‥‥シャコ食いのウナギなんているんだ、さぞかし贅沢な食肉を蓄えているだろう。会長甘辛いタレは苦手そうだから‥‥天ぷらにして山椒塩を添えれば和ランチに出せるかも?
おじさんにもらった画像も保存しとこう。何かに使えそう‥‥
は、いかん、ブログじゃないんだ。つい、せんべいが進んでいつもの調子に‥‥やめられない、止まらない。
本番は明日だ。
その後ちゃんと編集しますから、それまでこれは見ないでね、会長‥‥。
ビジネスホテルのような一室に通されて、壁際のコンソールにてタブレットをつないだ。
とりあえず報告、だよね。
社内クラウド‥‥はめんどいからメールで失礼。
『無事到着しました』
すぐに返信が。お、今PC中か?
『ご苦労様。今日はゆっくりしていなさい」
『会長、こんなのもらっちゃったんですがどうすれば?』
ちゃちゃっと(仮)オエビランドの画像を転送。
言葉考えるよりこれの方が早い。
『目を通す程度でいいよ。君は君の視点で思ったことを報告してくれ』
はあ‥‥。さらっと言ってくれちゃって。
『君がいつもブログに書いている調子でいいんだよ。施設の様子を撮って送ってくれてもいい、君がそれについてどう思うかそういう普通の感覚が欲しいんだ』
ブログねえ‥‥。それならお安い御用だ。
けど、一応社員だし。
ただのモニターなら好き勝手言えるのに。
んん、て、ブログ!?
そういえば会長も我がブログの読者だった!
『ブログブログ言わないで下さい(ていうか読むなよ)!わかりました。次は明日以降ということで』
『OK。楽しみにしてるよ』
PCの向こうでニヤついてる顔が浮かんだ。
毎度のことだけどなんかくやしーわ。
手のひらで踊らされてる感‥‥。
「ここは夕日が綺麗なんですよ」
車は海岸線に出た。
「うわ、キレイー」
海も空もオレンジの世界。光の束が降り注いでる。割と有名なこの辺の夕日スポットである。
いやめっちゃすごいじゃん。こんなに夕日らしい夕日はそうそう見ないよ。山陰に住んでると宍道湖の夕日が見れていいねえなんて言われるが宍道湖ばっかり見てるわけじゃないから!
高いパームツリーの醸し出すリゾート感。一帯が綺麗に整備されていて人も結構いる。
「さあ、どうぞどうぞ」
そこの小洒落た建物で私はおもてなしされるようだ。
入り口に人が立っている。
「はじめまして。高田です」
若い男の人が名刺を差し出した。おじさんの内の一人と同じ苗字‥‥。「僕が案内します」ドアを開け私は席にエスコートされた。
中は貸切で夕日を望むテーブルは品よくセッティングされている。
「ワインをよろしいでしょうか」
給仕さんに丁重にお辞儀されて。
ワオ、もちろんですとも!
お任せのワインがグラスに注がれる。
「乾杯!」
素敵~。
こんなレディーな扱い久しぶりかも。
いや‥‥初めてかもしれない。
会長と一緒の時を除いて。
「全部うちのエビなんですよ。今日は特別に調理してもらいました」
高田さんが隣に座って説明を始めた。「車海老とジャガイモのコンフィです」
その周りにおじさんが三人。
「ウチのイチオシなんですよ。どうですか?」
どうって美味いに決まってるじゃん!
鮮度抜群ピチピチのエビをコンフィ!揚げ物や炒め物とは全然別の味。低温オイル蒸し煮よね。この調理法考えた人すごいわ。
「美味しいです」
「よかった。こちらもどうぞ。レモンをたっぷりかけて」
スクイーザーをぎゅっと絞って、すくもエビのフリットへ。熱い衣から爽やかな香りがふわーと上がって、ハーたまんない~。
「養殖のメインはちょっと品種が違うんですが、どうです、これ、歯ごたえよくないですか?」
「ええ」
すくもエビは会長に出したことがあるわ。
白っぽくてモチっとしててしんじょやがんもに混ぜてもイケる。
そんなに海老海老してないのでエビ嫌いにもオススメ。
「きれいですねえ」
窓の向こうの夕焼けにうっとり。いよいよクライマックスよ。
「ここは人の手が入っていいんですけどね」
海じゃなくて九州に沈むの。低い山並みに差し掛かり光り輝いたかと思うと急激に明度が落ちる。オレンジからグレーへ。高田さんの口調も少しトーンダウンした。
「養殖がやっと軌道に乗りそうなんです。でもどうにも不安が拭えなくて。それだけでこの先やっていけるかどうか‥‥」
そうなのか。
よくわかんないけど廃墟のような建物がポツポツ……。
いやいや、そのための設備投資なのだ。
「計画書見ていただけました?全体的な見直しをということでしたのでー」
おっと、きたきたー。
「は、ハイ」
「どうでしょう? 我々の希望はそういうところでして」
会長に取り上げてもらえるかってこと?
わかんないよ。私には。
てか、オエビランドて。
会長はエビが嫌いなんですよね‥‥特に小エビが。
「‥‥のように大人から子供まで楽しめるスポットにしたいんです」
気持ちはわかる‥‥でもちゃんと言っとかないと。
私の専門はそれじゃない。
「申し訳ありません。私は管轄外なのでお答えできません。施設の件につきましては後ほど担当の者が改めてご挨拶に伺うと思います」
その人に言って。多分まともな人が来るだろうから。
ああ、重い仕事してるわ。管轄外なんて初めて口にする。
「そ、そうでしたな!市川さんは会長様へお料理をお出しされているんですよね。申し訳ありません。ついペラペラ余計なことを」
おじさんの一人が口を挟む。
「い、いえ」
「何でも重役会議や重要取引での会食もこなされているとか」
そ、それは。間違いじゃないけど。
「私らには雲の上の出来事ですな」
「そんなことは」
一体どういう風に伝わっているのだろう。多分おそらくおじさんたちが想像してるよりだいぶゆるーい感じだ。「え、そーなん?」高田さんがキョトンとした顔で見てる。
あーもう認めちゃえ!
どんな経路を取ろうともそうなっちゃったんだから。会長のお墨付きよ!
私は会長料理人&ブロガー!
ヘイヘイ、ちょいと失礼ーー。
私は携帯を取り出し、料理にカメラを合わせた。
カシャ。
やっぱこれよ。いつもの。
じゃんじゃん持ってきてくれい。
「お、おお、ではとにかくエビを食べていただかないと」
大皿がやってきた。
伊勢海老だー。
言うこと言ってすっきりしたわ。いただきまーす。
「全国的には全く知られてませんがね、近辺のホテルにもう10年以上下ろしてます」
うんうん、わかるわ。伊勢でなくともイセエビは育つ!
うまければ良いのだ。
湯引きした肉のプリプリ甘いこと。
思い出すなあ‥‥会長に捌いてもらったっけ。
ガーリックシュリンプもつまむ。
おじさんたちに囲まれているのに気にせず手掴みだ。
「天使のエビってあるでしょう?アレを狙って改良中なんですよ。どうでしょう?」
天使のエビ。ニューカレドニアかどっかのめちゃ高いエビ?聞いたことはあるけど食べたことはないなあ。会長、エビが嫌いなんだもん。
「いいんじゃないですか。あれって高いですよね」
知らないけど言っちゃう。
「ええ。価格はもっと抑えられますよ」
そうなんだ。うまうま~。
図表をさっと出された。ナニナニ?
エビの種類別全国市場相場だって。
「このエビを量産できればご提示いただいた食品加工に回せると思ってるんです。どうでしょう。海老チリやグラタンに程よいサイズでーー」
きた。
それよ、それそれ。私に任されたお仕事。
このエビ使ったメニューを考えるのかー。
なんか楽しそうじゃない?
「バナメイやブラックタイガーのようなインパクトがほしいんですわ。味には自信あります。実際いくつかのレストランでの実績も上がってきてます」
「そうですか。何たって国産ですものね」
みんな頷く。それが強みよね。よし、頑張るぞー。
「ウナギの養殖も始めたんですよ」
「ウナギ?」
「日生のシャコウナギはご存知ですかな」
「いえ」
「児島湾のシャコを食べて育ったウナギですよ。これが実に美味いんですわ」
「へえ」
なにそれ。うまそう‥‥。日生って岡山ね。
「ケ◯ミンショーでやったっちゃよ、高級魚で全国から食べに来ると」
高田さんが身を乗り出した。
興奮するとお国言葉が飛び出すものだ。
山口人の場合は語尾にちゃをつける。
久々に聞くわ。
「あれをうちでも育てたいっちゃ。ウナギの味が違うんよ」
わざわざ食べに行ったのかな。
ウナギ美味いよね~。
‥‥会長のブラックリストにあったかも?
「画像使わせてもらってもいいですか? 実は私ブログやってまして」
「ええ、是非。実は私もやってましてな‥‥見ませんか?日生のウナギ」
シャレオツなレストランでおじさんにスマホ見せてもらう‥‥。
立派なウナギの姿とうな重‥‥美味しそうっ。
「これとこれ‥‥ああ、穴子の天ぷらもうまいんだ」
ふんふん。おじさんは揚げ物コッテリ好きか。
天ぷら、そういえば‥‥
「お昼にミノの天ぷらを頂いたのですがとっても美味しかったです。ご存知ですか?」
「おー広島の?知っちょるよ、ビールに合うんよねえ」
「わかるー」
「タレ付いちょるやろ。俺は塩がすきっちゃ。あれは揚げたてやないとあかんけどな」
「うんうん。皆さんいつもエビや鰻食べれていいですね」
「やー、いつもやないっちゃ。こんなん贅沢品すよ」
やっぱ私の本業は食い物‥‥料理があればなんとかなる!
リゾット、パエリア、生海老、海老チリ‥‥出てくる出てくる、居酒屋か!
和洋折衷、美味しいものに囲まれてし・あ・わ・せ~。
ラストはシンプルにアイスときた。
「かき餅にアイス付けて食べると美味しいんですよ。会長にも時々お出しします」
「煎餅か?えびせんならあるっちゃ。持ってきましょうか?」
高田さんのセリフと同時に人が動いてさっと出された。
薄いピンク色の揚げ餅。お花の形して花せんみたいよ。「道の駅にも出しとるんよ」
アイスをのっけてパクリ。サックサク~。甘いアイスにしょっぱいエビ風味がベストマッチ。この甘辛ミックスって言うんですか?これももはや定番よね。「どうぞ」高田さんにもおすそ分けして。会長の普段のランチ画像を見せてみる。
「へええ、会長さんはハイカラなもん食べられるんですねえ」
「こりゃ誠二、会長さんはまだお若いんじゃ。そうですよね?」
おじさんにチャチャ入れられて。
ふうん、この二人、やっぱり親子だったんだ。
そういえば‥‥なんとなく似てるわ。
部屋に戻り とりあえず画像をクラウドに保存。
土産にもらったおせんべいぽりぽりやりながら眺める。
エビエビエビ‥‥見事にオールエビだ。
「これ普通にお店で食べたらいくら位するのかなあ」
素朴な疑問が。
一万くらい?
やっぱ出張の醍醐味はこれよね。完全おごりの接待!
ウナギも美味しそうだったな。
日生のウナギ‥‥検索して‥‥シャコ食いのウナギなんているんだ、さぞかし贅沢な食肉を蓄えているだろう。会長甘辛いタレは苦手そうだから‥‥天ぷらにして山椒塩を添えれば和ランチに出せるかも?
おじさんにもらった画像も保存しとこう。何かに使えそう‥‥
は、いかん、ブログじゃないんだ。つい、せんべいが進んでいつもの調子に‥‥やめられない、止まらない。
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