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6話 甘い言葉にご用心
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社屋の外に一歩出るとむわぁと蒸し暑い空気が襲い掛かる。信号が青になり新宿駅に向かう人の波が一斉に動き出す。それに乗ってしばらく歩道を進んで、ルミネが見えたあたりのカフェのドアを抜けると途端に涼しい。
「あ"~あつかった~」席に着くなり毎度同じセリフを吐いた。
「言ってくれた?」
「うん」
水を持ってきてくれた店員に「アイスカフェオレ」と告げて、グラスを手に取る。
「自分で言ってくれないかなぁ、高広くーん」ビールのごとく氷水をのどに流した。生き返る~~。数分歩いただけで薄ピンクのTシャツは汗で背中にくっついてる。
「フン」
神出鬼没に現われては突拍子もないことを言ってくれる会長の弟。
今回は、『不審なチラシ』を拾ったから兄さんに見せてと先日やって来たのだった。
『自分で言え』
きっぱり断ったのに。
『まあ、いいじゃん、あんたのが手っ取り早いじゃん』
『何がよ』
『いちいち受付に言って52階まで上がるのめんどいわ』
『外で出待ちしなさいよ』
『いいじゃん、兄さんに言うのが一番効果的だろ』
『もうこれで最後にしてよ』
『ハイハイ。ところで週末暇?』
『何よ、また』
『ちょっと付き合ってよ、気になることがあるんだ』
『も~~~……。今最後にしてって言ったよね?』
言いましたよね、ったく。こっちはアレルギーの件以来大変なのよね。あれダメこれダメ、医者並みに厳しい指導を毎日のように受ける羽目になった。
月一の病院通いでアレルゲンチェックもしなくてはならない。
あれとこれと✖…とにかく暑くて思考回路回らない!
高広くんはアイスコーヒーを半分…までは行かないけど途中まで飲んでいた。
誰かこの姿見つけてくれないかなあ。…ちらと外を見つめる。帰宅ラッシュの人ごみの波。誰かいないか、高広くんの顔見知り。例えば副社長あたりが、
『おお、高広くんじゃないか!』
なあんてことにならないか。
こんな会社の目と鼻の先でうろうろしているのに誰も気づかないってあり?
「お待たせしました」
氷が涼しげなアイスカフェオレが置かれて、ストローで一気に吸い込んだ。ああ、生き返る~~。
「なあ、ところであんた、アレ使ってんの?」高広くんは相変わらず白っぽいシャツを上着っぽく着てる。
「あれ? あれって何よ」
「……気づいてねえの?」きょとんとしてると、あきらめたのかそれ以上聞かなくなった。
何…? こいつといるとドタバタアセアセな展開になりそうでこわい。
トラブルメーカー…会長が言ってた通りだ。
「週末あけといてよ」
「最後だかんね」
「うまくいけばね」
何がうまく行けばだ。
こやつはホントにノリが軽い。
お兄さんがこやつのこと本気で心配してても全然会おうとしない。やーっとメールしたくらいだ。
自由人というか、こいつの口から『仕事してる』と言われても、自由業でしょ、探偵業とか何でも屋とかそういう類しか思いつかない。
「例えばここで兄さんが通りすがっても俺には気づかないんだよなあ」
「そんなことあるかい。…見かけたことあるの?」
「…ホテルに帰るところとかね」
「それっ、それよ! 何でそこで出ていかないの」
「さあ、なんでかなあ…」
「さあじゃないっ」
かまってちゃんかい。
「なら、ホテルの部屋訪ねたらいいじゃん。弟だって言えば通してくれるでしょ」
「まあねえ」
「それか、素直に実家に帰るとか。普通そうするでしょう」
「普通じゃないからなあ」
「自覚するな」
お父様もお気の毒に。
だけどこんなやつが家にいたら、それはそれで毎日ハラハラさせられて体に悪いかも。
戻ってきてほしいけど、難しいところですわ。
「…ところでチラシ渡してどうだった? 何か言ってた?」
首を横に振る。
「たぶん…どこかへ持っていったと思う。…あれって何なの」
「見ての通りの怪しいやつだよな」
「拾ったって、ほんとに拾ったの」
「セミナー帰りのヤツが置いて行ったんだと思う。適当なとこに」
セミナー…。途端に怪しさマックスになる。
今どきセミナー商法に引っ掛かる人いるの。
「なんか食べねえ? それだけじゃ足りねえだろ」
当然だ。食事は当面手づくり基本とされている。
「うーーん、意外と食べられないもの多くて」
「あんたも繊細だねえ。意外と」
「そうそう、意外とね。自分でもびっくりしてるわ」
例えばこのカフェオレが人工的なジュースで、キトサン入りだったとしたらアレルギー反応がおきちゃうかもしれない。そばアレルギーの人がうっかり何も表示のないそば入りビスケットを口して命に係わる重篤な状態になっちゃうような、そんなことが起きるかもしれない。
「今日は何にしようかなー」
「えっ、帰って自炊? 面倒じゃん」
めんどくさいからマックでいいか…。とにかく暑すぎて行動力低下中。
「俺、サンドイッチくらいなら作れるよ」
「何なの、作ってくれるって言うの」
そんなことどうでもいいから早く名乗り出ろ!
「キッチン貸してくれるんならね」
「…そういえば、あんた、住まいはどうしてるの」
「色々だよ、ホテルとか、ウィークリーとか」
路頭をさ迷ってるわけじゃないのね。
「あ"~あつかった~」席に着くなり毎度同じセリフを吐いた。
「言ってくれた?」
「うん」
水を持ってきてくれた店員に「アイスカフェオレ」と告げて、グラスを手に取る。
「自分で言ってくれないかなぁ、高広くーん」ビールのごとく氷水をのどに流した。生き返る~~。数分歩いただけで薄ピンクのTシャツは汗で背中にくっついてる。
「フン」
神出鬼没に現われては突拍子もないことを言ってくれる会長の弟。
今回は、『不審なチラシ』を拾ったから兄さんに見せてと先日やって来たのだった。
『自分で言え』
きっぱり断ったのに。
『まあ、いいじゃん、あんたのが手っ取り早いじゃん』
『何がよ』
『いちいち受付に言って52階まで上がるのめんどいわ』
『外で出待ちしなさいよ』
『いいじゃん、兄さんに言うのが一番効果的だろ』
『もうこれで最後にしてよ』
『ハイハイ。ところで週末暇?』
『何よ、また』
『ちょっと付き合ってよ、気になることがあるんだ』
『も~~~……。今最後にしてって言ったよね?』
言いましたよね、ったく。こっちはアレルギーの件以来大変なのよね。あれダメこれダメ、医者並みに厳しい指導を毎日のように受ける羽目になった。
月一の病院通いでアレルゲンチェックもしなくてはならない。
あれとこれと✖…とにかく暑くて思考回路回らない!
高広くんはアイスコーヒーを半分…までは行かないけど途中まで飲んでいた。
誰かこの姿見つけてくれないかなあ。…ちらと外を見つめる。帰宅ラッシュの人ごみの波。誰かいないか、高広くんの顔見知り。例えば副社長あたりが、
『おお、高広くんじゃないか!』
なあんてことにならないか。
こんな会社の目と鼻の先でうろうろしているのに誰も気づかないってあり?
「お待たせしました」
氷が涼しげなアイスカフェオレが置かれて、ストローで一気に吸い込んだ。ああ、生き返る~~。
「なあ、ところであんた、アレ使ってんの?」高広くんは相変わらず白っぽいシャツを上着っぽく着てる。
「あれ? あれって何よ」
「……気づいてねえの?」きょとんとしてると、あきらめたのかそれ以上聞かなくなった。
何…? こいつといるとドタバタアセアセな展開になりそうでこわい。
トラブルメーカー…会長が言ってた通りだ。
「週末あけといてよ」
「最後だかんね」
「うまくいけばね」
何がうまく行けばだ。
こやつはホントにノリが軽い。
お兄さんがこやつのこと本気で心配してても全然会おうとしない。やーっとメールしたくらいだ。
自由人というか、こいつの口から『仕事してる』と言われても、自由業でしょ、探偵業とか何でも屋とかそういう類しか思いつかない。
「例えばここで兄さんが通りすがっても俺には気づかないんだよなあ」
「そんなことあるかい。…見かけたことあるの?」
「…ホテルに帰るところとかね」
「それっ、それよ! 何でそこで出ていかないの」
「さあ、なんでかなあ…」
「さあじゃないっ」
かまってちゃんかい。
「なら、ホテルの部屋訪ねたらいいじゃん。弟だって言えば通してくれるでしょ」
「まあねえ」
「それか、素直に実家に帰るとか。普通そうするでしょう」
「普通じゃないからなあ」
「自覚するな」
お父様もお気の毒に。
だけどこんなやつが家にいたら、それはそれで毎日ハラハラさせられて体に悪いかも。
戻ってきてほしいけど、難しいところですわ。
「…ところでチラシ渡してどうだった? 何か言ってた?」
首を横に振る。
「たぶん…どこかへ持っていったと思う。…あれって何なの」
「見ての通りの怪しいやつだよな」
「拾ったって、ほんとに拾ったの」
「セミナー帰りのヤツが置いて行ったんだと思う。適当なとこに」
セミナー…。途端に怪しさマックスになる。
今どきセミナー商法に引っ掛かる人いるの。
「なんか食べねえ? それだけじゃ足りねえだろ」
当然だ。食事は当面手づくり基本とされている。
「うーーん、意外と食べられないもの多くて」
「あんたも繊細だねえ。意外と」
「そうそう、意外とね。自分でもびっくりしてるわ」
例えばこのカフェオレが人工的なジュースで、キトサン入りだったとしたらアレルギー反応がおきちゃうかもしれない。そばアレルギーの人がうっかり何も表示のないそば入りビスケットを口して命に係わる重篤な状態になっちゃうような、そんなことが起きるかもしれない。
「今日は何にしようかなー」
「えっ、帰って自炊? 面倒じゃん」
めんどくさいからマックでいいか…。とにかく暑すぎて行動力低下中。
「俺、サンドイッチくらいなら作れるよ」
「何なの、作ってくれるって言うの」
そんなことどうでもいいから早く名乗り出ろ!
「キッチン貸してくれるんならね」
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