会長にコーヒーを☕

シナモン

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6話 甘い言葉にご用心

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「…そんなに気になるなら、法務部の行藤くんにでも頼んでみたらどうだ。協力者になってくれるかもしれないよ」
「えっ」

提案されるや否や会長直々に内線つないで、私は法務部へ行く羽目になった。

「市川さん、お疲れ様です」

待ち構えてましたとばかりに挨拶された。若手先鋭隊員、やっぱりでかい。ちらっと部屋を覗くと大きなモニターを備えたシンプルなデスクが並び、私に気づいた池ノ上さんが軽く会釈してくれた。
「私にご用件とは何でしょうか」
「はい。先日の件で…似たような怪しいビラを見かけたので気になって…」
「そうですか。それは気になりますね」
彼に写メを見せた。
「なるほどー。同じ手口でしょうかね。これはどちらにある店でしょうか」
「新宿の…」
私はマップで示した。
「ふんふん…。差し支えなければ、知り合いの刑事に言っておきましょうか」
「ええ、いいんですか?」
「はい。先日の詐欺案件も彼が担当になってるようなので」
え、マジで。
「新宿署ですしね。画像をお借りしてもいいですか」
そして画像を転送する…。

「はい。確かにお預かりしました。あとは私にお任せください」
あっという間に用件は終わった。

あら~、はやっ。





そして次の日。土曜日だ。

何となく気になって、ロビンソンに行ってみた。朝からあつー。

「何だよ、こんなところに連れてきて」高広くんを連れて。

「これ、怪しいと思わない?」

店のドアの例の張り紙を見せた。

「何が…あーーー、なるほど」

高広くんはふんふんと頷いた。「詐欺被害かもしれねえってこと?」

「だよねえ、そう思うよね。実はこの店行ったことがあるんだ。なんだか悔しくって」
「これ…期間限定ってわけじゃなくて?…ないよな、パクられたのかな」さすがに会長とは視点が違う。

まあ、警察に言ってもらったからと言って、昨日の今日で解決するわけはないのはわかっているが、単に奴との待ち合わせ場所が近かったってのもある。

「期間限定は期間限定なのよ。でもそれで閉店じゃなくっぽくない」
「そうだよなあ」高広くんはうーんと顎に手を当てる。

「あ、市川さん」

太い声に振り向くと先日見た顔に出くわした。

「こ、こんにちは」

半そでシャツ姿の行藤さんは会釈して、ちらっと高広くんを見た。

「気になって寄ってみたんですよ。警察には届けたんですけどね」
「そうですか」

昼前だから出かけるにはちょうど良い時間帯だ。高広くんを見て、挨拶しようかどうしようかちょっと迷ってる風にも見えた。

「気になりますよねー」
「ええ。私も何とかお役に立ちたくて。原因というか真相をつかみたいですよね。もし同じグループだとしたら余計に腹立たしいですよね」

そうだそうだ、早く解決してほしいゾ。

「それで、先日のフランチャイズ詐欺ですが、すでに被害届も出てるらしくて、もしかしたら額がもっと多くなるかもしれませんねえ。ただ、ああいうのって逃げ足が早いそうなんですよ。……そういえば真鍋さんにも連絡したので、今日あたり捜査員が聞きに言ってるかもしれませんね」
「あの社員さんは関係ないですよね…」名刺を悪用されたわけだから。
「そうですが、他に具体的な連絡先がないし、はっきりした関係者はあの時あそこにいた一人だけで、意味不明なこと言ってるらしいんですよね。…あ、あんまり言っちゃいけなかった。あいつも結構口軽いんですよね~」
行藤さんは苦笑いして頭をかいた。

そして高広くんと目が合って、姿勢をちょい改めた。



「ああ、どうも。話し込んじゃってすみません。僕は市川さんと同じ会社の者です。法務部の行藤と言います」

高広くんに軽く会釈した。どもども~みたいなノリじゃなく、きちんとしたビジネスモードだった。

「俺は九条高広と言います。いつも兄がお世話になってます」高広くんも頭をペコッと下げた。

「それはどうもどうも。こちらこそいつも……え?」

行藤さんのいかつい顔が固まった。目を見開いて、口がわなわな震えてる。

「…? はっ」

数秒遅れて私も気づいた。


「く、九条…。え?」

行藤さんのおののきといってもいいほど驚いた表情。

「こ、これはこれは…、か、会長のご令弟様であらせられますかっ、大変失礼いたしました。こ、こちらこそいつもお世話になっております」

行藤さんは大きな体を揺らして直角敬礼をし、しばらく顔を上げなかった。

「いえいえ、とんでもない」
「す、すみません、お邪魔してしまいまして」
「かまいませんよ、全然」

たた高広くん――? 何まともに挨拶してるのだ。

「そっそれでは市川さん、失礼いたしますっ」

行藤さんは顔を上げ慌てて向きを変えた。歩き方、ぎこちなく。

あれ…?
この反応。

会長は知られざる存在だが、前会長(お父様)の苗字であるし、そもそもこの日本にくじょうなんて名乗れる人物そうはいない。

いや。
ちょっと待って、こんなところでバレちゃうの…?

おいって…。

あまりのあっけなさに驚いてしまった。

そうそう、お望みの…望んでいたにしても、いとも簡単に自らばらすか、高広くん…初めて会社の人に顔バレしたわけだが。…吉永さんの例は置いておいて。

・・・・・・

なんか、ちょっとばかし勘違いされてるような?
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