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6話 甘い言葉にご用心
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「かなえ~、お昼はそばでいい?」
「うん」
「スーパー行くけどあんたも行く?」
「う~ん」
実家にいると最初はいい食事にありつけて友達と遊びに行ったりと楽しいんだけど1週間過ぎるとだれてくる。
涼しい会長室が恋しくなってくる。
かといって早めに帰っても我が部屋は酷暑真っ只中。
休暇最終まで粘るが吉だ。
「あんた、明日帰るん?」
「うん」
「美味しい味噌もろうたで、会長さんに食べさせてあげて」「はい」ちなみにうちの親は会長を未だに『おじいさん』だと信じて疑わない。
「で、どうすんの」
どうしよっかな~、スマホで会長ご飯と次のミーティングのメニュー検索しつつ畳の上でゴロゴロ~ゴロゴロ~…。
『イオンにいるんだけど出てこない?』
してると、メールが届き文面と送信者にぎょっとした。
『はあ?どこの』と、すかさず返信。
『駅の横だよ。松江に他にイオンあるの?』
驚いた。高広くんだ。松江イオンて。マジか、何の用だ。
『何すんの』
『説明するから来てよ。そんなに遠くないよな』
ここがわかってるんだな。まあ、暇なのでいっかと親に送ってもらうことにした。
「ねーねー鉄オタごっこしない?」
そこにやつはいた。小さなカフェコーナーの椅子に座って開口一番いきなりこんなことを言ってくる。鉄オタごっこ?
「このあたりの鉄道、超赤字路線らしいじゃん、わずかながら俺らも乗って貢献しようよ」
「はあ?」
失礼な。赤字でも松江あたりはそこそこ潤ってるはずだ。
「いいじゃん、ずっと実家にいてどうせ暇だろ」
見透かすようなことを言うな。墓参りもすませ、地元友とも遊んだし、あと日々やることと言えば家ゴロかイオンで涼むくらいだ。
「出かけるって、明日?」
「今から」
「え、荷物どうすんの」
貴重品入れっぱなしのいつものバッグとスマホだけ持って出てきたんですけど。
「あんたどうせユニクロの上下だろ? その辺で買えばいいじゃん。俺が金だすから」
お、おう。男同士のようなノリ、やめてくれる?
「て、泊り前提? 冗談でしょ」
「地図見たらさ、結構離れてるじゃん。時間もかかる」
「そりゃあね、島根だけで海岸線どんだけあると思って?」
目を細め、いやみっぽく返した。
「車だと効率よくいけそうだけど…そこはなあ」
「車中泊なんてやだよ」
スマホでマップを拡大しながら高広くんは、
「俺だってやだよ。宿なら何でもいいじゃん。もちろん部屋は別々ね」
えっ?
「JRと、車で行くか」
「ええ、ちょ、ちょっと、赤字路線乗り回すって言ったよね?」
「そうなんだけど、天気いいし海も山もきっといい写真撮れるぜ」
「撮り鉄の方かい」鉄オタと言ってもね、種類がありますよね。
「いや両方。ねえ、撮影スポット教えてよ」
なんかあやしーなあ。裏がありそうだ。
「承諾?」
私はぎこちなく頷く。
まあ、こいつは男と認識してないから。最悪明日中に東京に帰れればいい。
「えーと、まずはこれを撮りたい。出来れば海の絶景スポットで」
松江駅はすぐ近く、がやがや賑わう列車案内板の中から高広くんが指したのは、ローカル中のローカル、黄色いラインが特徴の長旅列車、
「スーパーおき? なんで?」
別に格好良くもなく、SLでも豪華な観光列車でもない。私が首をかしげていると、
「山口からはるばる鳥取まで5時間半も、どのくらい乗ってくるかわからない客のために走るなんてさ、尊いじゃん。ほぼ非電化で。山陰本線半分制覇しようよ」
といかにもオタらしい言葉が返ってきた。
こいつのどこに鉄オタ要素があったのか。
むしろ外観は普通にイケメン、さわやかなシャツにリラックスパンツとさらさらヘアーで対極にあると思う。何しろ顔がね…。
「写真撮るなら車の方がよくない? 多分あんたが言ってる絶景はずっと西の方よ? もしくは鳥取」私は言った。
「島根側に行ってみたい」
「新幹線とかないんですよ。今からJRで行ってたら…えーと、見れないことはないか」
何年振りかに在来線の時刻表を見て、意外や意外、接続さえうまくいけばそんなに遅くはないと気づいた。思い込みは恐ろしい。かくして券を購入、スーパーおきに乗って逆方向からやってくるスーパーおきを撮影しに行くという、地元民にとってはこの上なく時間の無駄、至極退屈な鉄道の旅がはじまった。
かつてスーパーおきを笑った私。まさか乗ることになるなんて。ガタゴトゆられること2時間、最寄り駅からタクシーで高台のスポットに案内した。
「わお、眺めいいじゃん」
高広くんの目が輝いた。
そこはまあまあ有名な夕陽スポットで、すぐ下を山陰本線、その向こうが海。白波が波打つ、結構な映え景色がとれる。私は列車の写真は撮ったことないが、言われてみればちょうどトンネルから出てきた列車が舐めるように海岸線を通過していくさまがよく撮れるだろう。
早速カメラを構える高広くん。Canonのそれっぽいやつ。
絶景ポイントと言っても人がわんさか集まってるでもなく、先のフェンスに手をかけて電車が来るのを待つことにした。
通過時刻はわかっているので、間際になると人がわらわら寄ってきた。
ふと見るとこの下の道路にも立派な望遠のカメラを構えている人がいて、私は新鮮な驚きを覚えるのだあ。
撮り鉄さんて本当にいるんだな。
こんな普通の特急なのに?
もちろん、ただの観光客らしい人の方が多いけれども。みんなスマホをかざしてる。
いよいよその時間になり、波の音に交じって声もざわざわ聞こえてくる。
瞬間、トンネルから現れた上りのスーパーおきが警笛を鳴らし、眼下を通り過ぎていく。
歓声など上がって、なんかすごくない? プチヒーローかよ(笑)。毎度こんな光景が見れるのかな。
「いい写真撮れた?」私は聞いてみた。
「うん。あっという間だったな」
人の輪がばらけていく。来た時の状態に戻り、次の通過時刻にはまた集まってくるのだろう。
「うーん、次は三時間後かあ。ちょうど夕陽の時間帯じゃね?」
「そうだね。ここ、夕陽が有名なんだよね」そもそも車でないと来れない場所で、友達と西部方面へドライブするとまあまあ立ち寄るところだから。
「ついでにそれも撮っておこうかなあ。中々ないよな?」
「え」
余計なこと言ったかな。
「うん」
「スーパー行くけどあんたも行く?」
「う~ん」
実家にいると最初はいい食事にありつけて友達と遊びに行ったりと楽しいんだけど1週間過ぎるとだれてくる。
涼しい会長室が恋しくなってくる。
かといって早めに帰っても我が部屋は酷暑真っ只中。
休暇最終まで粘るが吉だ。
「あんた、明日帰るん?」
「うん」
「美味しい味噌もろうたで、会長さんに食べさせてあげて」「はい」ちなみにうちの親は会長を未だに『おじいさん』だと信じて疑わない。
「で、どうすんの」
どうしよっかな~、スマホで会長ご飯と次のミーティングのメニュー検索しつつ畳の上でゴロゴロ~ゴロゴロ~…。
『イオンにいるんだけど出てこない?』
してると、メールが届き文面と送信者にぎょっとした。
『はあ?どこの』と、すかさず返信。
『駅の横だよ。松江に他にイオンあるの?』
驚いた。高広くんだ。松江イオンて。マジか、何の用だ。
『何すんの』
『説明するから来てよ。そんなに遠くないよな』
ここがわかってるんだな。まあ、暇なのでいっかと親に送ってもらうことにした。
「ねーねー鉄オタごっこしない?」
そこにやつはいた。小さなカフェコーナーの椅子に座って開口一番いきなりこんなことを言ってくる。鉄オタごっこ?
「このあたりの鉄道、超赤字路線らしいじゃん、わずかながら俺らも乗って貢献しようよ」
「はあ?」
失礼な。赤字でも松江あたりはそこそこ潤ってるはずだ。
「いいじゃん、ずっと実家にいてどうせ暇だろ」
見透かすようなことを言うな。墓参りもすませ、地元友とも遊んだし、あと日々やることと言えば家ゴロかイオンで涼むくらいだ。
「出かけるって、明日?」
「今から」
「え、荷物どうすんの」
貴重品入れっぱなしのいつものバッグとスマホだけ持って出てきたんですけど。
「あんたどうせユニクロの上下だろ? その辺で買えばいいじゃん。俺が金だすから」
お、おう。男同士のようなノリ、やめてくれる?
「て、泊り前提? 冗談でしょ」
「地図見たらさ、結構離れてるじゃん。時間もかかる」
「そりゃあね、島根だけで海岸線どんだけあると思って?」
目を細め、いやみっぽく返した。
「車だと効率よくいけそうだけど…そこはなあ」
「車中泊なんてやだよ」
スマホでマップを拡大しながら高広くんは、
「俺だってやだよ。宿なら何でもいいじゃん。もちろん部屋は別々ね」
えっ?
「JRと、車で行くか」
「ええ、ちょ、ちょっと、赤字路線乗り回すって言ったよね?」
「そうなんだけど、天気いいし海も山もきっといい写真撮れるぜ」
「撮り鉄の方かい」鉄オタと言ってもね、種類がありますよね。
「いや両方。ねえ、撮影スポット教えてよ」
なんかあやしーなあ。裏がありそうだ。
「承諾?」
私はぎこちなく頷く。
まあ、こいつは男と認識してないから。最悪明日中に東京に帰れればいい。
「えーと、まずはこれを撮りたい。出来れば海の絶景スポットで」
松江駅はすぐ近く、がやがや賑わう列車案内板の中から高広くんが指したのは、ローカル中のローカル、黄色いラインが特徴の長旅列車、
「スーパーおき? なんで?」
別に格好良くもなく、SLでも豪華な観光列車でもない。私が首をかしげていると、
「山口からはるばる鳥取まで5時間半も、どのくらい乗ってくるかわからない客のために走るなんてさ、尊いじゃん。ほぼ非電化で。山陰本線半分制覇しようよ」
といかにもオタらしい言葉が返ってきた。
こいつのどこに鉄オタ要素があったのか。
むしろ外観は普通にイケメン、さわやかなシャツにリラックスパンツとさらさらヘアーで対極にあると思う。何しろ顔がね…。
「写真撮るなら車の方がよくない? 多分あんたが言ってる絶景はずっと西の方よ? もしくは鳥取」私は言った。
「島根側に行ってみたい」
「新幹線とかないんですよ。今からJRで行ってたら…えーと、見れないことはないか」
何年振りかに在来線の時刻表を見て、意外や意外、接続さえうまくいけばそんなに遅くはないと気づいた。思い込みは恐ろしい。かくして券を購入、スーパーおきに乗って逆方向からやってくるスーパーおきを撮影しに行くという、地元民にとってはこの上なく時間の無駄、至極退屈な鉄道の旅がはじまった。
かつてスーパーおきを笑った私。まさか乗ることになるなんて。ガタゴトゆられること2時間、最寄り駅からタクシーで高台のスポットに案内した。
「わお、眺めいいじゃん」
高広くんの目が輝いた。
そこはまあまあ有名な夕陽スポットで、すぐ下を山陰本線、その向こうが海。白波が波打つ、結構な映え景色がとれる。私は列車の写真は撮ったことないが、言われてみればちょうどトンネルから出てきた列車が舐めるように海岸線を通過していくさまがよく撮れるだろう。
早速カメラを構える高広くん。Canonのそれっぽいやつ。
絶景ポイントと言っても人がわんさか集まってるでもなく、先のフェンスに手をかけて電車が来るのを待つことにした。
通過時刻はわかっているので、間際になると人がわらわら寄ってきた。
ふと見るとこの下の道路にも立派な望遠のカメラを構えている人がいて、私は新鮮な驚きを覚えるのだあ。
撮り鉄さんて本当にいるんだな。
こんな普通の特急なのに?
もちろん、ただの観光客らしい人の方が多いけれども。みんなスマホをかざしてる。
いよいよその時間になり、波の音に交じって声もざわざわ聞こえてくる。
瞬間、トンネルから現れた上りのスーパーおきが警笛を鳴らし、眼下を通り過ぎていく。
歓声など上がって、なんかすごくない? プチヒーローかよ(笑)。毎度こんな光景が見れるのかな。
「いい写真撮れた?」私は聞いてみた。
「うん。あっという間だったな」
人の輪がばらけていく。来た時の状態に戻り、次の通過時刻にはまた集まってくるのだろう。
「うーん、次は三時間後かあ。ちょうど夕陽の時間帯じゃね?」
「そうだね。ここ、夕陽が有名なんだよね」そもそも車でないと来れない場所で、友達と西部方面へドライブするとまあまあ立ち寄るところだから。
「ついでにそれも撮っておこうかなあ。中々ないよな?」
「え」
余計なこと言ったかな。
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