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2月の風景
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2月1日。僕は職員室に呼ばれた。職員室には、5年2組の担任の先生が、僕をソファにかけさせた。職員室のソファに座るのは初めてだった。そわそわしつつ、用件を探った。そろそろ転校の話をしていいか聞かれるのだろうか?いや、そんな事わざわざ僕に許可を取るわけはない。待っていると、3組の村本先生がやってきた。何か疲れた顔をしていた。
「津山くん、うちのクラスの武田くん知ってる?」
僕は身を固くした。いよいよ病名の告知か。でも、なぜ僕だけを呼んだ?3組の誰かを呼べばいいじゃないのか。
「武田くんが、しばらく欠席しているのは知っているね。」
「はい。」
「実は、秘密にしておいて欲しいのだが、オーディションに落ちたということらしい。」
「オーディション…?」
僕は、その言葉の意味がわからなかった。村本先生が言うには、武田は、周りに秘密にしていたが、実は子役タレントという事だった。それだけでも大変な驚きだが、その子役タレントが売れっ子になるためには、有名なドラマに出るためのオーディションというものを受けて、合格しないといけないそうだ。武田は、今まではローカルCMのモデル程度の仕事だったらしい。それだけでも大したものだ。…僕は何も知らなかったので、驚いてばかりだった。村本先生は、「学校のみんなも知らないのよ。だから、この事は黙っていて。」と念をさらに押した。
今回、1月に『うちの子に小切手』というドラマの主人公の女の子のボーイフレンド役を新人から抜擢するにあたり、オーディションが行われたそうだ。『うちの子に小切手』は僕たちベビーブーム世代の小学生に大人気の美少女タレント「大村なおみ」を主人公にして、バブル期に子どもに多額の小遣いを渡してしまう親と、それをいい事にワガママ放題を尽くす愛情に飢えた子の葛藤を描いた、少年向けドラマと社会派ドラマをミックスさせたような斬新な番組だった。
あまりに冒険的なドラマで、大ヒットしていないのに関わらず、大人の事情で、続編を作ることになったらしい。そこでテコ入れのために、大村なおみちゃんの相方の少年役をオーディションで選ぶことになった。当時は、実績のある子役タレントを使うのが当たり前だったのだが、いちいちこのドラマの製作者側はしょうもないウケを狙うつもりだったらしい。
それに武田が応募した。なんと最終選考まで行ったらしい。しかし、落ちた。合格した新人くんは「…学校も行けて、野球もやって、友達と遊んで、…そんな楽しい生活を送っている新人に負けるわけにはいかないんだ。」と武田に言ったらしい。合格した彼はいわゆるステージママのスパルタ教育のもと、学校も最低限の出席、友達とも長時間遊ばせてもらえず、少年野球等のスポーツ団にも行かせてもらえず、ひたすらダンスと合唱(当時、ボイストレーニングといえば合唱団に入ること以外なかった。)、劇団の厳しい稽古に明け暮れる毎日らしい。
それから、武田は1週間考え込んでしまったらしい。本来ならとっくに学校に出て来ているはずだ。
小学校に普通に通って、地域の少年野球チームにも入って、友達と仲良く遊んで…。そんな生活をしているから、オーディションに落ちたのか。彼は大村なおみのファンで、部屋には彼女のサイン色紙が飾ってあった。彼は自分の生活を、そして日常を否定された気がして、ずっと考え込んでしまっているらしい。
「で、転校を控えた君に申し訳ないが、しばらく武田の話し相手になってやって欲しい。今日から、宿題や連絡帳を彼の家に届けて欲しいんだ。君の通学路の途中だから、遠回りにならないはずだ。時間のあるときは、家に上がって、勉強を教えてやって欲しい。君はこの一年、だいぶ成績も伸びたようだし。」
「津山くん、うちのクラスの武田くん知ってる?」
僕は身を固くした。いよいよ病名の告知か。でも、なぜ僕だけを呼んだ?3組の誰かを呼べばいいじゃないのか。
「武田くんが、しばらく欠席しているのは知っているね。」
「はい。」
「実は、秘密にしておいて欲しいのだが、オーディションに落ちたということらしい。」
「オーディション…?」
僕は、その言葉の意味がわからなかった。村本先生が言うには、武田は、周りに秘密にしていたが、実は子役タレントという事だった。それだけでも大変な驚きだが、その子役タレントが売れっ子になるためには、有名なドラマに出るためのオーディションというものを受けて、合格しないといけないそうだ。武田は、今まではローカルCMのモデル程度の仕事だったらしい。それだけでも大したものだ。…僕は何も知らなかったので、驚いてばかりだった。村本先生は、「学校のみんなも知らないのよ。だから、この事は黙っていて。」と念をさらに押した。
今回、1月に『うちの子に小切手』というドラマの主人公の女の子のボーイフレンド役を新人から抜擢するにあたり、オーディションが行われたそうだ。『うちの子に小切手』は僕たちベビーブーム世代の小学生に大人気の美少女タレント「大村なおみ」を主人公にして、バブル期に子どもに多額の小遣いを渡してしまう親と、それをいい事にワガママ放題を尽くす愛情に飢えた子の葛藤を描いた、少年向けドラマと社会派ドラマをミックスさせたような斬新な番組だった。
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それから、武田は1週間考え込んでしまったらしい。本来ならとっくに学校に出て来ているはずだ。
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