社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依

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37話 ダンジョンの勝利

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 フォーガンは、ビャクヤの言った事を信じなかったが、その幼い女の子が明らかに自分達に敵意をむき出しにして、威圧している事は理解できたのだ。

「みんな!見た目に躊躇するな!この獣人が四聖獣という事は気にするな。この女は敵だ!」

「ふっ!何が敵よ。貴方達ではあたしに剣どころか、指一本触れる事すらできないわ。人の家に、土足で上がり込んで、これ以上お兄ちゃんの安全を壊さないでよね!」

 そのセリフを聞いた騎士団は、頭に血がのぼった。そして、普通なら騎士団としてはあり得ないが、成人前の女の子に対して、剣を振り上げて突進したのである。

「黙って聞いていれば!」

 騎士団は雄たけびをあげ、ビャクヤに斬りかかった。しかし、騎士達が振るった剣は空を切ったのだった。

「えっ⁉いったいどこに?」

 騎士団長のフォーガンは自分の目を疑った。確かに、その場にいた少女の姿が消えてしまったのだ。

「お前たち何をやっておる!隊列を組み直すのだ!」

 フォーガンが、部下達に向かって檄を飛ばした。すると、少女に斬りかかった騎士達は、その場に崩れ去った。まるで中身が消滅したように、鎧と武器だけが音を立てて散らばったのだ。

「なっ、何だと……」

 フォーガンは自分の目を疑った。斬りかかった部下は何の抵抗もせず動かなくなったと思ったら、装備品だけ残して消滅してしまった。

「やっぱり、あたしには指一本触れる事すらできなかったわね」

 いきなりフォーガンの後方から声が聞こえたので、びっくりして振り返ると、魔道師たちの服だけがそのあたりに散らばっていた。
 ビャクヤはあり得ないスピードで移動し、斬りつけられた時騎士達に攻撃を与えて、その上目にもとまらぬスピードで、フォーガンの後方にいた魔道師団を全滅させてしまったのだ。

「い……一体何が起こっているのだ……」

 この状況は、残っていた騎士達の恐怖を煽ったのだ。騎士達はもうフォーガンの指示に従って統制のとれた攻撃をすることはなく、恐怖に顔がゆがみ逃げ出す者や、ビャクヤに斬りかかる者等いろいろだった。

 斬りかかった者は、確かに自分の剣が当たったはずのタイミングだったが、そこには少女の姿はなく、中身の無くなった装備が辺りに散らばり絶命していく。
 そして、逃げ出す者はその場から四方八方に逃げ出すのだが、後ろを向いた瞬間その者は装備だけを残して、この世から消え去っていくのである。

「お、お前達、統制と、とるのだ……」

 フォーガンは、目の前で起こっていることが信じられなかった。あれほど統率の取れた部下達が、恐怖にかられ顔をゆがめてこの世から消滅していくのである。

 少女は、優先的に後ろを向いた騎士達の腹を殴ったり頭を殴ったりしているのを、フォーガンは微かに確認できた。
 しかし、確認できたからといって、対策などたてられる訳もなく、次々騎士達は消滅していく。

 そして、10分後その場にはおびただしい騎士達の装備品が、辺りに散らばっていた。フォーガンは、その場に崩れ落ち少女の姿を見た。
 そして、その姿に驚愕したのだった。あれだけ騎士を殺したはずなのに、その身には返り血を浴びていなくて、少女の右手の人差し指一本だけ赤い血がついていたのだった。

「ま、まさか……王国騎士団相手に指一本で戦っていたというのか……」

「ごめんね。貴方達に触れる事すら、いやだったから指一本だけで戦っちゃった」

 フォーガンは、目の前で起こった事が信じられなかった。そして、王国は終わったとも思ったのだった。このダンジョンに手を出した以上、報復があると思ったのだ。

「さてと、貴方もみんなのもとに送ってあげるわ!」

 フォーガンは、ビャクヤの言葉に抵抗は一切せず、下を向いたまま両手を地に付けたまま項垂れていた。

 そして、ビャクヤはフォーガンの首をはねた。王国騎士団の精鋭たちは5階層で全滅してしまった。



 ビャクヤはその足で、ダンジョンの入り口に向かった。ダンジョン前では簡易村、騎士団の駐屯地が完成しつつあったが、ビャクヤによって駐屯地は壊滅してしまった。

 ビャクヤはダンジョンの外に出て、簡易村に向かって大きな声を出した。

「あたしはダンジョンの関係者だ!ここに村を作っては迷惑だ!ただちに立ち退け!」

 その言葉を聞いた留守番をしていた騎士達は簡易村の外をみた。そこには成人前の女の子が一人だけいて、信じられない事を言っていたのだった。

「何を言っておる!このダンジョンは危険とされ、王国に管理される事が決まっている。今王国騎士団精鋭部隊がダンジョンを攻略しておるわ!」

「あの頼りない部隊が精鋭部隊?訳の分からない事を言っているんじゃないわよ。最後の忠告よ!この場所からすぐに撤退しなさい!」

 騎士達は、ダンジョンから出てきた少女に対して動くことが出来なかった。撤退する事さえできなかったのだ。

「た、隊長……あの少女はいったい?」

「わ、分からん……しかし、団長達が今ダンジョンを攻略している。我々がここの責任を任されているんだ!」

「ねえ、何とか言ったらどうなのよ!ここにいても、頼りない部隊はもう帰ってこないわよ」

「馬鹿な事を抜かすな!団長は必ず攻略して!」

 この簡易村を任されていた隊長は、ビャクヤの言う事を否定しようとしたが、ビャクヤがそれを制する様に隊長の足元に短剣を一本放り投げた。

「この剣がどうしたのだ?」

「その剣をよく見て」

 ビャクヤの言葉に、隊長はその短剣を手に取り目を見開いた。

「こ、これは!団長の宝剣。君主からの!何でお前がこの剣を!」

「なんでって言ったじゃない!あんな頼りない部隊が精鋭部隊だとしたら、王国騎士団もたいしたことが無いって事よ」

「なっ⁉」

「いい?このダンジョンに手出ししたら、その精鋭部隊と同じ目に遭うわよ?」

「き、貴様ぁ!団長達をどうしたというのだ!」

「その剣があるという事は、どうなったか馬鹿でもわかるでしょ?そんな事より早くここから立ち去りなさいよ」

 騎士達はビャクヤの言葉に頭に血が上った。これは、ビャクヤのかけ引きであり、誰一人として逃がさない様に挑発していたのだった。
 これに騎士達は、まんまとビャクヤの挑発に引っかかり、団長達の敵を討ちに出たのだった。

「貴様ぁ~~~!団長をどうしたというのだ!」

「はっきり言わないと分からないの?それともあの男の最後を見届けないとその剣のような形見だけじゃ納得いかないの?」

「うるさい!それ以上しゃべるな!」

 隊長はビャクヤに対して、怒りを剣に乗せものすごい勢いで剣を振ったのだが、ビャクヤは涼しい顔でその剣をかわし続けた。
 隊長は怒りに任せて、剣を振り続けていた。そのたびに悲鳴や呻き声が聞こえていたが、隊長の剣は空を切っていた。そのうち隊長は疲労がたまり、肩で息をして小石に躓き盛大に転んだ。

「もう終わりなの?さすがはあの頼りない集団のお留守番ね」

 ビャクヤは、隊長を見下した目で馬鹿にしたのだった。

「お、お前達……何をやっておる!お前達もあいつ……を攻撃……するん……だ。はあはあはあ」

 隊長は息を切らして、自分の部下達に攻撃に参加するように命令したが、誰もビャクヤに攻撃を仕掛ける者はいなかった。隊長は、なぜ誰も攻撃をしかけないのか疑問に思ったが、その答えはこの場にいるのは自分だけだとようやく気づいたのだった。

「な、何で……部下達が血を流して倒れているのだ……」

 その問いに答える人間は誰もいなかった。

「あーあ、全員居なくなっちゃったね」

 ビャクヤは、笑顔でそう答えたのだ。ビャクヤは隊長に攻撃を避けながら、部下の騎士達の頸動脈を爪でひっかいていた。これも又、ビャクヤのステータスが高くて可能な動きだった。

「な、なぜ……いつの間に部下達を……」

「何を驚いているのよ。貴方達が弱いからあたし一人にも勝てないのよ」

「そ、そんな馬鹿な!」

「教えてあげるよ。貴方が頼りにしてた精鋭部隊も、あたし一人に勝てなかったのに、お留守番の貴方達があたしに勝てるわけないでしょ?」

「団長達が、お前のような少女一人にだと?」

「貴方が、どれだけ愚かだという事が分かるわ。この姿だけを見て判断するから、こういう状況になるのよ。まあ、死んでいく貴方にはもう関係ないけどねっ」

 ビャクヤは、隊長に止めを刺してしまった。そして、ビャクヤはダンジョンの入り口に戻り、簡易村のある位置に【テンペスト】と唱えた。このテンペストは魔法ではなくビャクヤのスキルであり、唯一の範囲攻撃である。
 すると、せっかく出来上がった簡易村の上空に積乱雲が出来上がり、F5クラスの竜巻が出来上がり、簡易村は跡形もなく竜巻に襲われ、人工物は全て吹き飛んでしまったのだ。

「ふう!さっぱりした」

 ビャクヤは、全ての騎士団を一人で始末してしまったのだった。

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