社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依

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43話 王国、他国に協力を求める

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 カグヤは、騎士団に奴隷の人権を主張し、その意見が通らずそのまま姿を霧に変えて居なくなってしまった。その要求は絶対に通らないと言った騎士団隊長は、その場で動けなくなってしまったのだ。

「た、隊長……どうすればいいのでしょうか?」

「と、とにかくだ。この事を王に伝えなければ……」

「しかし、あの女の言ったことは本当でしょうか?」

「馬鹿な事を!あの女が、もし本当に真祖だった場合、王国は終わりになるぞ」

「では、どうするのですか?」

「俺達がここでグダグダ言っていてもしょうがない。とにかく、ここから出る事を最優先に考え、今あった事は王に包み隠さず伝えるしかない」

 12番隊隊長の言う事に従うしかなかった。事実、こんなとことで立ち止まっていていてもどうしようもないからだ。騎士団は急いで、ダンジョンから脱出し王都へ引き返して行ったのだ。
 
 そして、その行動に犠牲となったのは冒険者達であった。当然の事だが、騎士団が防波堤となっていたのに、そこがいなくなったのだ。

「ど、どういう事だ?」
「な、なんで魔物がいきなり増えるんだ!」

 Cランクの冒険者達は対処することは出来るのだが、犠牲となったのは駆け出しの冒険者達だった。経験が少ないからこそ、突発的な事が起こった時、冷静に対処が出来なかった。騎士団が撤退したことで、1階層で巡回していた騎士も帰還してしまったのである。

 その為、魔物が増えたのではなく通常の出現率となった。それでも、不幸中の幸いは、騎士団の訓練で冒険者の数が多かったことにある。
 犠牲者は最低限に抑えられたが、魔物に襲われていた時に、悲鳴を聞き助けに来ることができた冒険者がいたことにあった。運の悪いパーティーは近くに仲間がいなかった事で、犠牲になってしまった。
 モーレンの村では、騎士団の訓練が中断になった事が報告された。これにより自信のない冒険者は、地上の依頼を受ける事になった。そして、Cランクのベテランがダンジョンの間引きを注意してすることになった。



 そして、騎士団はダンジョンであった事を、国王に報告したのだった。

「そんなバカな事が容認できるわけがなかろう!ダンジョンの言いなりで王国法を変えろというのか?」

「い、いえ、わたし達は今回ダンジョンであった事を報告しているのであって、君主に意見などしているつもりは全く……」



「それでお主達は、魔物言う通りダンジョンから逃げかえって来たというのか?」

「宰相様……それは……」

 国王が意見する前に、宰相が帰還した騎士団に文句を言った。

「ええぇーい!黙れ!それでも貴様たちは誇りある王国騎士団と申すのか?魔物の言う事にビビり撤退などして恥ずかしい奴らめ!」

「そ、それはいくらなんでも、宰相様とはいえ言い過ぎでは!わたし達は取り敢えず情報を伝えなければと」

「言い訳するでない!結局は、お前達は自分の命惜しさに逃げ帰ったのではないのか?」

「そ、そんな!わたし達はただ、これから起こるであろう未曽有の災害を、王国になんとか伝えるべくこうして帰還を……」

「何が、未曽有の災害だ!お主が言ったバンパイアの真祖というのも、今回のミスを隠すための嘘じゃないのか?」

「そんな嘘など、わたし達はいいません!今回だって11番隊は戦死したんですよ!自分が助かりたいだけで、その仲間の想いを無駄になんか!」

「はっ!現にお前達はダンジョンから逃げかえったでは……」

「宰相もうよい!それ以上言うでない!」

「しかし、国王!」

「もうよいと言っておる!それ以上この者達を責めるでない」

「「「「「国王様!」」」」」

 第12番隊隊長を始め、13番隊以下生き残った騎士達は、国王の言葉に感謝した。

「それで、お主達よく生き残って帰ってきた。大儀である」

「国王!そのような言葉は不要でございます!」

「宰相、黙れと言ったはずだぞ!お主は、まだわからぬのか?」

「しかし!」

「もっと、今の状況を考えぬか!」

「えっ?」

「宰相!こやつらの団長フォーガンが帰ってこなかったであろう!もし、こやつらの言う事が本当で、あのダンジョンにそんな伝説となっている魔物バンパイアの真祖がいたなら、フォーガンがやられてしまったのは納得いくとなぜわからんのだ!」

「しかし、バンパイアの真祖などと……」

「確かに真祖というのは大げさすぎかもしれん。だが、あのフォーガンが帰ってこなかった事実があるのだぞ?少なくとも、あのダンジョンにはそれだけランクの高い魔物が生息しているはずだ!」

「ゥぐっ……」

「こやつらが命が惜しいなどというはずはない!これは本当に、未曽有の災害が迫っていると、考える方がいいだろう!」

「「「「「「国王様!」」」」」」

 騎士達は、国王が自分達を信じてくれたことが嬉しかった。

「お前達は、よくこの事を国に報せてくれた。後は、我々に任せてゆっくり休め」

「「「「「はっ!」」」」」

 国王は、情報を持って帰ってきた騎士達を労い、今回の任を解いた。そして、後に始まるであろうダンジョン攻略の為に家に帰らせたのだった。

「国王!どういうつもりですか?」

「どういうつもりも何もお前は何もわかっておらぬ!あ奴らを責めて何になると思っているんだ?それより、これからの事を考えねばならん!」

「これからの事?国王は魔物の言う事を聞き、王国法の改変をするおつもりか?」

「馬鹿な事を申すな!なぜ、王国がダンジョンマスターに、媚びへつらわねばならんのだ!」

「では……どうするというのですか?王国騎士団は、まだ完璧に建て直せていないのですぞ?」

「余は、あのダンジョンにはもう深入りするつもりはなかった。今回のように、魔物を間引き数年単位で、騎士団を建て直らせてから、もう一度ダンジョン攻略を考えていた」

「……」

「しかし、ダンジョン側がこのような事してくるというのなら話は別だ」

「ですが、あのダンジョンを攻略など……」

「だから、帝国と聖教国、エルフとドワーフ国そして、魔人国に書簡を送れ!」

「他国に協力を求めるというのですか?」

「その通りだ!」

「そんな事が本当に可能なのですか?」

「当たり前だ。あのダンジョンはまだ他国には知れ渡っておらん。しかし、あのダンジョンはまだできたばかりで、このまま放って置いたら他国にも影響が出てくるはず」

「確かに、あの隊長の言う事を信じるならば、あのダンジョンの存在は世界の危機でしょうが、それを他国が信じるとは思えないのですが……」

「信じねば、真祖の存在を説明すればよいだろう!とにかく世界の要人に書簡を送れ!そして、王都に来てもらうのだ」

「わ、わかりました」

 国王は、もう他国を巻き込んで、あのダンジョンを攻略しないといけないと結論を出した。

 今回、奴隷制度に口を出して来たとなれば、これからあのダンジョンマスターが気にいらない事が出てくれば、王国に口を出してくると思った。
 それでは、王族の意味が無くなりダンジョンマスターの言いなりになるのは屈辱だったからだ。国王は誰が世界の支配者なのか、ダンジョンマスターに知らしめる必要があったのだ。




 その頃、帝国や聖教国は、まさか王国でこんな事が起こっているとは思いもしなかった。しかし、魔人国ではこの事を、すでに情報として掴んでいた。

「魔王!王国で新たなダンジョンが見つかったと報告がありました」

「新たなダンジョンか……まだできたばかりのダンジョンだ。放っておいても問題はあるまい」

「それが、魔王……このダンジョンにはとんでもない魔物がいるそうです。王国騎士団長をはじめ、精鋭部隊が全滅しております」

「な、なんだと⁉1年もたっていないダンジョンが、王国騎士団を退けたというのか?」

「それも、王国騎士団は4階層以降に潜れないようです」

「潜らないんじゃなく潜れないというのか?」

「はい!」

「それで、王国はそのダンジョンをどうするつもりなんだ?」

「それが手も足も出ず、今はスタンピードが起きない様に、魔物を間引くのが精一杯のようです」

「そ、そうか……我々にはどうする事も出来ぬな」

「しかし、偵察隊からの情報では、あのまま放置すればとんでもないことが起こるかもしれないと……」

「分かった、王国から何かしらアクションがあれば、それに応じる準備だけは魔道師団に伝えておくのだ!」

「はっ!わかりました」

 魔人国は、ダンジョンの魔力に反応し確認する事が出来たのだ。その昔、魔物の脅威にさらされた魔人国は、ダンジョン発見にたけた国家だったのだ。
 先代魔王は、高ランクの魔物に注意を払い、大陸に出来上がったダンジョンをいち早く見つける事ができる魔道具を、生涯を費やし発明したのだった。


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