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最終話 マサル。未来永劫楽しく暮らす
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王国をはじめていいなりにさせたダンジョンとして、最上級危険ダンジョンとマサルは認定されてしまった。
しかし、マサルのダンジョンに、冒険者が来ないという事にはならなかった。3階層までは一般向けに、Cランク冒険者が活動できるダンジョンを徹底していた。そのおかげで、モーレンの町は更に発展していたのだ。
「ご主人様。今回のポーションの売り上げです」
「ありがとね」
マサルは、売上金をダンジョンオーブのアルモニーに奉納した。するとアルモニーは光り輝いたのだ。
「マスター!おめでとうございます」
「ど、どうした?まさか……」
「はい!そのまさかです。遂に、ダンジョンがSランクへと成長しました」
その報告で、ダンジョンマスターの部屋はお祭り騒ぎのようになった。Sランクになって、ダンジョンマスターの部屋はぐんと広がり、洞窟のような岩壁や床だったのが、フィールドエリアの草原のようになった。
「マスター。この空間に家を建築できるようになりました」
この気持ちいいフィールドエリアは、春の日差しでポカポカ陽気で地下にいるはずなのに、陽のひかりも感じられるのだ。
「わ、分かった」
マサルは、保護した奴隷達も住めるような馬鹿でかい屋敷を建てた。
「こんなに簡単に屋敷が建つのか?す、すごいな……」
「ご、ご主人様……これは……」
「ソフィア、どうかしたか?」
「こんな大きな屋敷を、わたし一人で管理は出来ませんよ……」
「ああ!大丈夫だよ。戦いに向いていない、保護した奴隷達がいるだろ?」
「たしかに、あの者達に手伝って貰えば何とかなりそうですね」
マサルの眷族にならず、寿命で人生を終えたいと言った者は、眷族にはしていなかった。それでも、その者達は何とか役に立ちたいと思い、訓練をしていたが普通の人間の為成長は人並みだったので、ダンジョンの守りにはつかえなかったのだ。
マサルはソフィアに言って、その奴隷達を集めてもらった。
「ようやくこのダンジョンはSランクとなり、この最深部の部屋はフィールドエリアとなった」
「「「「「ご主人!おめでとうございます」」」」」
「それで君達は、このダンジョンを守護する任を解きたいと思う」
それを聞き、奴隷達は騒めいたのだった。
「静かに!」
騒めいた奴隷をソフィアが諫めると、ピタッと静かになった。
「君達を捨てるとか、そういうんじゃないから安心してくれ。君達は戦闘には向いてないと判断し、この屋敷を管理して欲しいんだ」
戦闘に向いている奴隷達もいたが、眷族になった人間を4階層を巡回させた方が安全なのは間違いがない為、どうしても見劣りしてしまうだけだった。
4階層には、王国騎士団が巡回しているので、この者達では相手にならないだけである。
それに、眷族にならない者達は、このダンジョンにいるだけでも役に立っている。奴隷とはいえ普通の人間である為、ここで活動しているという事は、1時間当たり少量ながらもDPが入手され続けられていることになる。
眷族や、魔物はいくら活動してもDPは入手されないのである。なんでDPにならないのかよくわからなかった。
「ソフィアについて、これからは屋敷の管理で精を出してほしい」
するとその決定に歓声が上がった。やはり、無理をしていたようで、こちらの方が性に合っていたようだ。
「あの……俺は、ここで農家をやってみたいんだが、主……認めてくれないか?」
奴隷の中には、こうして前職の経験を活かしたいと言ってくる者もいたのだった。
「だが、野菜を作るって言っても、DPで入手できるぞ?」
「あっ……確かにそうか……役に立てると思ったんだが……必要なかったか」
ここフィールエリアは、薬草とかも生えていた。ある者は冒険者だったので、魔物がいないこの空間で薬草を採取する人間も出てきたのだった。その薬草は当然マサルがポーションに使う為である。
「マスターすこしよろしいですか?」
「どうした?」
「この土地で作った野菜は、DPで買える野菜とは、味や栄養は段違いに美味しくなると思いますよ」
「そ、そうなのか?」
アルモニーの説明では、DPで買える物は地上の土地で作られた一般的なものだが、ここダンジョンの最深部で作られた作物は栄養満点らしいのだ。
「だったら、俺にその役目をさせてくれ!絶対に主の役に立って見せる」
「そういう事なら、君に任せてみようかな」
マサルは、フィールドエリアの一角を畑にすることにした。ここには魔物がいない為、荒らされる心配も全く心配なくてもよく、DPで野菜の種を買ってその者に渡して農業を任せた。
そして、野菜を作っていて驚いたのが、成長が早かったのだ。普通なら80日ほどかかるはずが、60日ぐらいで成長してしまった。
この事は、マサルにとってありがたかった。本当に甘い人参でみんなにも好評だった。
このころになると、冒険者の死亡が増えてきていた。この事はギルドでも問題になってきていたのだった。
「おい……あのダンジョンやばい事になっているんじゃないのか?」
「ああ……俺達もそう感じていたんだ」
「最近、魔物が強くなってきていると思うんだよ」
「俺もそんな感じがしていた」
「ギルドに報告した方がいいんじゃないか?」
「ギルドでももう対策を立てようとしているらしいぞ」
「しかし、あのダンジョンは3階層までなら利益が十分出る良いダンジョンだったろ?ここにきてどうなっているんだ?」
「ギルドは、スタンピードが起こりかかっているんじゃないかと疑っているらしいぞ?」
「オイオイ……そんな事になったら本当に世界が終わる事になるぞ」
「ああ……だから、ギルド上層部は国に掛け合ったらしいぞ」
「そんな事をしてもどうにかなるのか?」
「どうにもならんだろうな……王国も頭を悩ましているそうだ」
王国が頭を悩ましているのは、それだけではなかった。先の叡智龍が、王都に来たせいで王都の人口が減っていたことにあった。
王都の住人は世界の終わりだと思い込み、聖都である聖教国に移住していたのだ。神に守ってもらえるいう噂が蔓延した事にあった。この事で王国は勢力が落ちていて、余裕がなくなっていたのだ。
その頃、王都は勢力は弱めていたのだが、モーレンの町は活気づいていた。ギルドの心配をよそに、新鮮な野菜を売りに来る者達がいて、その野菜がモーレンの町では人気商品になっていた。ポーションや薬も常時行商する人間がいたからだ。
「そんなに心配しなくても大丈夫なんじゃねえか?」
「いや、あのダンジョンは確かに凶悪になっているじゃねえか?」
「そうだ!一階層のゴブリンでさえ姿形はそのままなのに、明らかに強くなっている感じだ」
「確かにそうかもしれないけど、4階層は騎士団が巡回して間引いているんだろ?それに魔物自体は減っているそうじゃないか?」
「確かにそうかもしれないが、4階層には冒険者崩れの人間が、パーティーを組んで襲って来るらしいじゃないか」
「だが、そいつらに騎士団が殺された報告はないんだろ?」
「だが、これからも殺されないという保証がある訳ではないじゃないか」
このように、冒険者の間ではこの魔物の強化に説明がつかなくて、スタンピードを恐れる事になっていた。
「マスター!遂にSランクになって、もう地上の者達では本当に手が出ないダンジョンへとなりましたよ」
「それはどういうことなんだ?」
「わたしが覚醒したという事です」
「アルモニーが覚醒?どういうこと?」
「わたしが覚醒したことで、ダンジョン内の魔物達が強力になったんですよ」
「どういうこと?」
アルモニーの説明によると、ダンジョンの深さで強さが変わってくるというのだ。総階層の上部50%に属する階層は、本来の強さに50%上乗せされる。今の総階層は10階層なので、5階層までの魔物や仲間は1.5倍の強さ
になっているという。
そして、それ以降の最深部を除いた階層、つまり6階層から9階層までは100%上乗せされ、本来の2倍の強さになるらしい。
最後に最深部の10階層は10倍の強さとなるというのだ。もしダンジョンをもっと成長させ、階層を100階層まで増やした場合、1階から50階までが1.5倍となり、51階から99階までが2倍、100階層は10倍となる。
「それはすごい!」
「マスター、今までご苦労様でした。これで、もう殺される心配は皆無といっていいですよ。ダンジョン史上初の快挙です」
「そうか。なんか、呆気なかったな」
「ですが、これでもう勇者が誕生しても手を出す事は出来ませんね」
「まあ、そうだな」
屋敷のホールで、アルモニーと話していると、極炎竜王のグレンが話に参加してきた。
「マサル!やったね!これでようやくあたしの出番だな」
「グレン?どういう事?」
「えっ?地上に宣戦布告するんだろ?そうなったら遠慮なしに暴れれるじゃないか?」
「僕はそんなこと望んでないよ」
「えええええ!そうなのか?」
「何でそう思ったんだよ?今までも、極力犠牲者を出さずにしていただろ?」
「だけどよう……もう遠慮しなくても最高権力者になれるんだぞ?」
「そんな事興味ないよ。僕はグレンたちと楽しくここで生活できたら満足だよ。それにポーションを町で売っているだろ?」
「ああ……」
「ダンジョンは、人類の一強を阻止するものであって、滅ぼす為のものじゃないんだよ。それに、地上を征服なんてそんな事にも、僕は興味はないんだよ。ポーションや薬のおかげで子供達が助かっている事実がでてきて、モーレンの町は活気にあふれているらしいからね」
「マサルはそれでいいのか?」
「グレンいいかい。地上の人達を滅亡させた先に何がある?それをよく考えるんだ。不毛だと思わないかい?」
「そ、それは……」
「たしかに、僕は貴族達が嫌いだけど、ここにいれば迷惑をかけられることはない。確かに、貴族達は横暴で平民達に迷惑をかけているが、全員ではないだろ?国を運営してもらわないと平民達は困る事になる。貴族はいらないが指導者はいるんだよ」
「むずかしいなあ……マサルがその指導者にはならないのか?」
「僕はそんなのに興味はないと言っているだろ?ここで楽しく生活ができたらいいんだよ。この間みたいに奴隷達が不憫に思ったら口出しするぐらいで十分だよ」
「それって……」
「国の指導者からしたら、厄介な存在だと思うよ。僕が納得いかないとなったら口を出すんだからね」
「マスターは、ダンジョンの力を弱い立場の人間につかおうと思っているのですね」
「そういうことだね。だから、権力者が暴走した時のみグレン達の力を借りたいと思う」
「なるほど……マサルらしいといえばマサルらしいのか」
「グレンたちには、退屈かもしれないけど納得して欲しいかな」
「わかったよ。マサルの言う事は、わたし達の取ったら絶対だからな」
「わたし達も、ご主人様の言う事に賛成です」
グレンと話しているといつの間にか、周りにはソフィアたちも話を聞いていた。
日頃は、モーレンの町を起点に行商をして町の発展に協力した。それから数十年後、王国や帝国は世代交代をすることになった。
前国王や皇帝は、自分の息子に王位継承をした時、マサルのダンジョンの事を代々伝える事を約束させた。
その内容は、平民達を蔑ろにしない様に常に平民があっての国という事を教えたのだった。そうすれば、王国は滅亡することはないと注意を受けたのだった。
これには新国王は異論をはさんだのだった。
「父上!なぜ王国の事で、ダンジョンマスターの意見を聞かなければならないのですか?納得いきません」
「ば、馬鹿者!お前はあのダンジョンの事を知らないだけなのだ!いいか?よく聞くのだ」
前国王は、息子に数十年前にあった事を詳細に説明した。その頃の騎士団長や魔法師団長もまた、あの時の恐怖を説明したのだった。
今はもう、騎士団長は引退をして、顧問として籍を置いていたのだが、あの時の恐怖を伝えていく為、あの時の人材は語り継いでいた。
そして、町には吟遊詩人も優遇されていた。エルフの吟遊詩人は、特にあの時の恐怖を忘れない様に語り継がせる為に、他の土地に行かない様にしていたぐらいだった。
「本当にそんなことが?」
「ああ……お主が生まれる前の事だ。あのダンジョンは、今や4階層以降はどうなっているかわからぬ。それほど強大な一つの国家と言っても過言ではない」
「ダンジョンが国家だなんて……」
「そんな国家に、喧嘩など絶対あり得ない事なのだ。あのような事は二度と起こさせない様に、肝に銘じなければならぬ。これは、お前の息子が王位継承しても、同じように言い伝えなければいかない。そのことを、努々忘れぬようにな」
新国王は、父からその事を言い伝えられたのだった。
そして、マサルのダンジョンは時代の変わり目には、何らかの影響を与える最強のダンジョンマスターとなったのだ。
マサルは地上でそんな風になっている事とは思っておらず、未来永劫ダンジョンで、仲間と共に楽しく暮らせるようになったのだ。
Fin
しかし、マサルのダンジョンに、冒険者が来ないという事にはならなかった。3階層までは一般向けに、Cランク冒険者が活動できるダンジョンを徹底していた。そのおかげで、モーレンの町は更に発展していたのだ。
「ご主人様。今回のポーションの売り上げです」
「ありがとね」
マサルは、売上金をダンジョンオーブのアルモニーに奉納した。するとアルモニーは光り輝いたのだ。
「マスター!おめでとうございます」
「ど、どうした?まさか……」
「はい!そのまさかです。遂に、ダンジョンがSランクへと成長しました」
その報告で、ダンジョンマスターの部屋はお祭り騒ぎのようになった。Sランクになって、ダンジョンマスターの部屋はぐんと広がり、洞窟のような岩壁や床だったのが、フィールドエリアの草原のようになった。
「マスター。この空間に家を建築できるようになりました」
この気持ちいいフィールドエリアは、春の日差しでポカポカ陽気で地下にいるはずなのに、陽のひかりも感じられるのだ。
「わ、分かった」
マサルは、保護した奴隷達も住めるような馬鹿でかい屋敷を建てた。
「こんなに簡単に屋敷が建つのか?す、すごいな……」
「ご、ご主人様……これは……」
「ソフィア、どうかしたか?」
「こんな大きな屋敷を、わたし一人で管理は出来ませんよ……」
「ああ!大丈夫だよ。戦いに向いていない、保護した奴隷達がいるだろ?」
「たしかに、あの者達に手伝って貰えば何とかなりそうですね」
マサルの眷族にならず、寿命で人生を終えたいと言った者は、眷族にはしていなかった。それでも、その者達は何とか役に立ちたいと思い、訓練をしていたが普通の人間の為成長は人並みだったので、ダンジョンの守りにはつかえなかったのだ。
マサルはソフィアに言って、その奴隷達を集めてもらった。
「ようやくこのダンジョンはSランクとなり、この最深部の部屋はフィールドエリアとなった」
「「「「「ご主人!おめでとうございます」」」」」
「それで君達は、このダンジョンを守護する任を解きたいと思う」
それを聞き、奴隷達は騒めいたのだった。
「静かに!」
騒めいた奴隷をソフィアが諫めると、ピタッと静かになった。
「君達を捨てるとか、そういうんじゃないから安心してくれ。君達は戦闘には向いてないと判断し、この屋敷を管理して欲しいんだ」
戦闘に向いている奴隷達もいたが、眷族になった人間を4階層を巡回させた方が安全なのは間違いがない為、どうしても見劣りしてしまうだけだった。
4階層には、王国騎士団が巡回しているので、この者達では相手にならないだけである。
それに、眷族にならない者達は、このダンジョンにいるだけでも役に立っている。奴隷とはいえ普通の人間である為、ここで活動しているという事は、1時間当たり少量ながらもDPが入手され続けられていることになる。
眷族や、魔物はいくら活動してもDPは入手されないのである。なんでDPにならないのかよくわからなかった。
「ソフィアについて、これからは屋敷の管理で精を出してほしい」
するとその決定に歓声が上がった。やはり、無理をしていたようで、こちらの方が性に合っていたようだ。
「あの……俺は、ここで農家をやってみたいんだが、主……認めてくれないか?」
奴隷の中には、こうして前職の経験を活かしたいと言ってくる者もいたのだった。
「だが、野菜を作るって言っても、DPで入手できるぞ?」
「あっ……確かにそうか……役に立てると思ったんだが……必要なかったか」
ここフィールエリアは、薬草とかも生えていた。ある者は冒険者だったので、魔物がいないこの空間で薬草を採取する人間も出てきたのだった。その薬草は当然マサルがポーションに使う為である。
「マスターすこしよろしいですか?」
「どうした?」
「この土地で作った野菜は、DPで買える野菜とは、味や栄養は段違いに美味しくなると思いますよ」
「そ、そうなのか?」
アルモニーの説明では、DPで買える物は地上の土地で作られた一般的なものだが、ここダンジョンの最深部で作られた作物は栄養満点らしいのだ。
「だったら、俺にその役目をさせてくれ!絶対に主の役に立って見せる」
「そういう事なら、君に任せてみようかな」
マサルは、フィールドエリアの一角を畑にすることにした。ここには魔物がいない為、荒らされる心配も全く心配なくてもよく、DPで野菜の種を買ってその者に渡して農業を任せた。
そして、野菜を作っていて驚いたのが、成長が早かったのだ。普通なら80日ほどかかるはずが、60日ぐらいで成長してしまった。
この事は、マサルにとってありがたかった。本当に甘い人参でみんなにも好評だった。
このころになると、冒険者の死亡が増えてきていた。この事はギルドでも問題になってきていたのだった。
「おい……あのダンジョンやばい事になっているんじゃないのか?」
「ああ……俺達もそう感じていたんだ」
「最近、魔物が強くなってきていると思うんだよ」
「俺もそんな感じがしていた」
「ギルドに報告した方がいいんじゃないか?」
「ギルドでももう対策を立てようとしているらしいぞ」
「しかし、あのダンジョンは3階層までなら利益が十分出る良いダンジョンだったろ?ここにきてどうなっているんだ?」
「ギルドは、スタンピードが起こりかかっているんじゃないかと疑っているらしいぞ?」
「オイオイ……そんな事になったら本当に世界が終わる事になるぞ」
「ああ……だから、ギルド上層部は国に掛け合ったらしいぞ」
「そんな事をしてもどうにかなるのか?」
「どうにもならんだろうな……王国も頭を悩ましているそうだ」
王国が頭を悩ましているのは、それだけではなかった。先の叡智龍が、王都に来たせいで王都の人口が減っていたことにあった。
王都の住人は世界の終わりだと思い込み、聖都である聖教国に移住していたのだ。神に守ってもらえるいう噂が蔓延した事にあった。この事で王国は勢力が落ちていて、余裕がなくなっていたのだ。
その頃、王都は勢力は弱めていたのだが、モーレンの町は活気づいていた。ギルドの心配をよそに、新鮮な野菜を売りに来る者達がいて、その野菜がモーレンの町では人気商品になっていた。ポーションや薬も常時行商する人間がいたからだ。
「そんなに心配しなくても大丈夫なんじゃねえか?」
「いや、あのダンジョンは確かに凶悪になっているじゃねえか?」
「そうだ!一階層のゴブリンでさえ姿形はそのままなのに、明らかに強くなっている感じだ」
「確かにそうかもしれないけど、4階層は騎士団が巡回して間引いているんだろ?それに魔物自体は減っているそうじゃないか?」
「確かにそうかもしれないが、4階層には冒険者崩れの人間が、パーティーを組んで襲って来るらしいじゃないか」
「だが、そいつらに騎士団が殺された報告はないんだろ?」
「だが、これからも殺されないという保証がある訳ではないじゃないか」
このように、冒険者の間ではこの魔物の強化に説明がつかなくて、スタンピードを恐れる事になっていた。
「マスター!遂にSランクになって、もう地上の者達では本当に手が出ないダンジョンへとなりましたよ」
「それはどういうことなんだ?」
「わたしが覚醒したという事です」
「アルモニーが覚醒?どういうこと?」
「わたしが覚醒したことで、ダンジョン内の魔物達が強力になったんですよ」
「どういうこと?」
アルモニーの説明によると、ダンジョンの深さで強さが変わってくるというのだ。総階層の上部50%に属する階層は、本来の強さに50%上乗せされる。今の総階層は10階層なので、5階層までの魔物や仲間は1.5倍の強さ
になっているという。
そして、それ以降の最深部を除いた階層、つまり6階層から9階層までは100%上乗せされ、本来の2倍の強さになるらしい。
最後に最深部の10階層は10倍の強さとなるというのだ。もしダンジョンをもっと成長させ、階層を100階層まで増やした場合、1階から50階までが1.5倍となり、51階から99階までが2倍、100階層は10倍となる。
「それはすごい!」
「マスター、今までご苦労様でした。これで、もう殺される心配は皆無といっていいですよ。ダンジョン史上初の快挙です」
「そうか。なんか、呆気なかったな」
「ですが、これでもう勇者が誕生しても手を出す事は出来ませんね」
「まあ、そうだな」
屋敷のホールで、アルモニーと話していると、極炎竜王のグレンが話に参加してきた。
「マサル!やったね!これでようやくあたしの出番だな」
「グレン?どういう事?」
「えっ?地上に宣戦布告するんだろ?そうなったら遠慮なしに暴れれるじゃないか?」
「僕はそんなこと望んでないよ」
「えええええ!そうなのか?」
「何でそう思ったんだよ?今までも、極力犠牲者を出さずにしていただろ?」
「だけどよう……もう遠慮しなくても最高権力者になれるんだぞ?」
「そんな事興味ないよ。僕はグレンたちと楽しくここで生活できたら満足だよ。それにポーションを町で売っているだろ?」
「ああ……」
「ダンジョンは、人類の一強を阻止するものであって、滅ぼす為のものじゃないんだよ。それに、地上を征服なんてそんな事にも、僕は興味はないんだよ。ポーションや薬のおかげで子供達が助かっている事実がでてきて、モーレンの町は活気にあふれているらしいからね」
「マサルはそれでいいのか?」
「グレンいいかい。地上の人達を滅亡させた先に何がある?それをよく考えるんだ。不毛だと思わないかい?」
「そ、それは……」
「たしかに、僕は貴族達が嫌いだけど、ここにいれば迷惑をかけられることはない。確かに、貴族達は横暴で平民達に迷惑をかけているが、全員ではないだろ?国を運営してもらわないと平民達は困る事になる。貴族はいらないが指導者はいるんだよ」
「むずかしいなあ……マサルがその指導者にはならないのか?」
「僕はそんなのに興味はないと言っているだろ?ここで楽しく生活ができたらいいんだよ。この間みたいに奴隷達が不憫に思ったら口出しするぐらいで十分だよ」
「それって……」
「国の指導者からしたら、厄介な存在だと思うよ。僕が納得いかないとなったら口を出すんだからね」
「マスターは、ダンジョンの力を弱い立場の人間につかおうと思っているのですね」
「そういうことだね。だから、権力者が暴走した時のみグレン達の力を借りたいと思う」
「なるほど……マサルらしいといえばマサルらしいのか」
「グレンたちには、退屈かもしれないけど納得して欲しいかな」
「わかったよ。マサルの言う事は、わたし達の取ったら絶対だからな」
「わたし達も、ご主人様の言う事に賛成です」
グレンと話しているといつの間にか、周りにはソフィアたちも話を聞いていた。
日頃は、モーレンの町を起点に行商をして町の発展に協力した。それから数十年後、王国や帝国は世代交代をすることになった。
前国王や皇帝は、自分の息子に王位継承をした時、マサルのダンジョンの事を代々伝える事を約束させた。
その内容は、平民達を蔑ろにしない様に常に平民があっての国という事を教えたのだった。そうすれば、王国は滅亡することはないと注意を受けたのだった。
これには新国王は異論をはさんだのだった。
「父上!なぜ王国の事で、ダンジョンマスターの意見を聞かなければならないのですか?納得いきません」
「ば、馬鹿者!お前はあのダンジョンの事を知らないだけなのだ!いいか?よく聞くのだ」
前国王は、息子に数十年前にあった事を詳細に説明した。その頃の騎士団長や魔法師団長もまた、あの時の恐怖を説明したのだった。
今はもう、騎士団長は引退をして、顧問として籍を置いていたのだが、あの時の恐怖を伝えていく為、あの時の人材は語り継いでいた。
そして、町には吟遊詩人も優遇されていた。エルフの吟遊詩人は、特にあの時の恐怖を忘れない様に語り継がせる為に、他の土地に行かない様にしていたぐらいだった。
「本当にそんなことが?」
「ああ……お主が生まれる前の事だ。あのダンジョンは、今や4階層以降はどうなっているかわからぬ。それほど強大な一つの国家と言っても過言ではない」
「ダンジョンが国家だなんて……」
「そんな国家に、喧嘩など絶対あり得ない事なのだ。あのような事は二度と起こさせない様に、肝に銘じなければならぬ。これは、お前の息子が王位継承しても、同じように言い伝えなければいかない。そのことを、努々忘れぬようにな」
新国王は、父からその事を言い伝えられたのだった。
そして、マサルのダンジョンは時代の変わり目には、何らかの影響を与える最強のダンジョンマスターとなったのだ。
マサルは地上でそんな風になっている事とは思っておらず、未来永劫ダンジョンで、仲間と共に楽しく暮らせるようになったのだ。
Fin
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この作品も凄く面白かったです!
明日からの更新も楽しみ♡
コメントありがとうございます。
白さんのコメントにいつも勇気を頂いています。
次回作も頑張ります(*^-^*)
本当にありがとうございました<m(__)m>
お疲れ様でした
次の作品も期待していますので
これからもがんばってくださいね
コメントありがとうございます。
いつも読んでくださり本当にありがとうございます<m(__)m>
次の小説も、読んでいただけるように頑張りたいと思います。
いつもありがとうございます(*^-^*)
コメントありがとうございます。
なるほど!そいつは良い事を聞いた。と王様は言いそうですね(^▽^;)
色んな考え方があり、本当に勉強になりました(^^)/
この小説を読んでくれて本当にありがとうございました
<m(__)m>