氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依

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第1章 レアスキルは偉大

55話 ラーダ、商人ギルドを切り捨てる

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 数時間後、ラーダの前に5人の職員が並べられていた。

「貴様等、よくもやってくれたな!」
「「「「「・・・・・・・・・」」」」」
「だから私はあれらの商品を無視しろと言ったのだ!」
「「「「「うっううっ・・・」」」」」
「貴様等、この損失の責任は取ってもらいギルドから損害賠償請求をさせてもらうからな!」
「「「「「そ、そんな・・・」」」」」
「そんなじゃない!20万ゴルドの防具を100着だと?それで半分でも売れたならまだ目も瞑ろうものだが、10万ゴルドでも需要がないといわれたのだろう?」
「そ、それは・・・私もあんな装備が出回るとは思ってもおらず!」
「だから、私はあれらの商品に手を出すなと言ったんだ!それを無視したからこうなったのだ!」
「私達は上手くいくと思っていたんだ!それにギルドが一方的に我々の給料を削減したのが悪い!我々は日々頑張って業務をしてきて不祥事や損害も出していなかった!」
「「「「そうだ!」」」」
「なのに貴方達は我々の給料を削減したから我々は少しでもギルドを早く立て直そうとしただけだ!」
「馬鹿者共が!それで更に損失を出しおってからに!成功したなら私も注意ぐらいで済ませれるが、今のギルドに2000万ゴルドの赤字がどれだけの負担になると思っておる!」
「「「「「ぐっ・・・」」」」」
「貴様等にはおって処分を下す。それまで自宅謹慎をしておれ!」

 そして、1週間の自宅謹慎を命じられた職員5人は、この後懲戒解雇されギルドから損害賠償請求をされたのだが、払う事ができず借金奴隷に落とされたのだった。
 しかし、この処分に納得出来ない職員が多数出てきたのだった。確かに5人はギルドの決め事を無視して暴走した事は看過できないとは思うが、その経緯は職員の誰もが不満を持っていたからだ。なんで自分達が給料を減らされてまで我慢しなければならないと思っていたのだ。
 そして、数日後商人ギルド本部では職員のストライキが勃発する事になる。

「な、なんだこれは・・・」
「「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」」

 ラーダと上層部はその日の朝、ギルド本部に出社するとギルドの扉はまだ開いておらず、職員の姿は誰一人いなかったのだ。そして、ホールのカウンターにはメモ書きが1枚置かれており、それを見たラーダの顔は真っ赤になってそのメモ書きをくしゃくしゃに丸めて投げ捨てるのだった。

「ふ、ふざけるなぁ!」

 上層部の幹部達は足元に転がってきたメモ書きを広げ読んでみるとそこにはこのように書かれていた。

商人ギルド本部職員一同
 ギルドマスターラーダ様および上層部の幹部達に申し上げいたします。我々は給料および賞与を元の金額に戻すよう請求いたします。
 この要求が通るまで、商人ギルド本部の業務は一切いたしません。また、この事で誰か一人でもクビにした場合、全員が二度と業務には戻らない事になりますので努々忘れなきようよろしくお願いします。我々は、マートン支部で起こった事の尻拭いする為に商人ギルド本部で働いている訳ではございません。
 そういった責任は、マートン支部の人間が責任を負う事であり私達本部又は他の支部の人間には関係ありません!又は上層部全員の給料をもっと削減すれば、損害の補填ができるのではないでしょうか?
 今回、奴隷に落とされた職員5人は商人ギルドの尻拭いで起きた事であり、職員5人の行動はギルドの立て直そうした行動である。

「「「「「「ぬぬぬ・・・」」」」」」
「何を勝手な事を!」
「「「「「「ラーダ様これからいかがなされますか?」」」」」」
「このままでは仕事にならん!とりあえず、求人の張り紙だけでも張るしかあるまい!」
「今日の業務は?」
「貴様たちが受付に立つしかあるまい」
「「「「「「「えぇ~!」」」」」」」

 その日、商人ギルド本部のカウンターには、おじさんの受付が立つ前代未聞の事態が起きたのだった。そして、その日の終わりに受付業務や雑用をする上層部の幹部達はさじを投げる事になるのだった。

「このままギルド本部の業務は維持する事はできません!」
「ぐぬぬ・・・しかし、このままではギルドの業務が滞る事になるぞ!どうすれば・・・」
「ラーダ様これはもう職員の給料および賞与を元に戻す他にはないのでは・・・」
「馬鹿な!何故、我々が下の人間の言いなりにならなければならない!」
「しかし、今日一日新たな職員の募集に応募が一件もありませんでした。このような事は今まで無かった事ではありませんか?」
「何故、応募が一件もないんだ!今まで張り紙もないのに数十件の応募はあったのに・・・」

 この事は王都グシリアに既に拡散されていたからである。商人ギルド本部で働いていても報われなく、給料は2割削減賞与は無し休日出勤は交代制でまわってくる。しかし、下からの要求や提案は全て却下されて、上の指示に従わなかったら奴隷に落とされた職員がいる事が噂されていたのだ。

「ラーダ様大変です!今回の事は王都中の噂になっております!」
「どういう事だ?昨日の今日の事だぞ!」
「それがストライキに参加しなかった元職員が噂の出どころみたいです!」

 今回、ストライキに参加しなかった人間は既に辞表を書き商人ギルドを去っていた。これらの人間はラーダの考えについていけないと思い、ストライキをして成功してもラーダが権力にしがみついている限り変わらないと商人ギルドを見放したのだ。この事、それらの人間の愚痴として王都中に拡散されていたのである。

「そ奴らを連れてこい!」
「それが・・・」
「まだ何かあるのか?これは誹謗中傷ではないか!これにより商人ギルド本部の業務は滞ったのだぞ」
「私達もそう思いあ奴らを捕らえてほしいと衛兵に相談をしました。しかし、全部本当の事だと言われてしまえばこちらとしては何も出来ないとの事です」
「なんだと・・・役に立たない衛兵共が!」

 その説明を聞いたラーダは会議室のテーブルを叩くのだった。そして、その日から1週間商人ギルド本部は営業を断念するしかなかった。そして、その1週間はラーダと幹部達は一日中会議をし夜中遅くまで話し合い職員達の要求を飲むしかない結論に至った。



 後日、商人ギルド本部のホールでは職員達が一同に集められ、ラーダ本人が頭を下げ戻ってきてほしいと懇願される。その際、職員の要求は飲まれ給料は元に戻られ賞与も支払われる事になった。また、この事でマートン支部が責任を負わされる事になる。そうなれば、マートン支部で働く職員は元にいた支部に移動願を出す事になるのだった。それを受け入れられないと言われれば、退職届を出され移動願を聞くしかなかったのである。その事にマートン支部のギルドマスターであるアーノルドは頭を悩ませる事になるのだった。

「どうすればいいのだ?いきなりギルド本部からこんな事を言われてどうにもならん・・・」
「こうなれば商人ギルドマートン支部は閉鎖の方向で進めるしかありませんな・・・」
「馬鹿な!ここはダンジョンがある町なんだぞ?」
「しかし、このままではギルド職員が来るわけないじゃないですか」
「ぐぬぬ・・・本来ならばマートン支部の長になった事で将来の心配は無くなったはずだったんだ・・・なのにあの偏屈魔道士めが!」

 そして、アーノルドは頭を悩ませた結果、職員達の移動願を受理して自分達もギルド本部に今回の事は自分達には責任はないと説得して本部での勤務を願い出た。そして、その結果マートン支部は閉鎖に追い込まれ、マートンの町はブリガンダイン王国で2か所目の商人ギルドがない町となったのだった。そして、王都グシリアの商人ギルド本部では、ラーダが苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

「ぐぬぬ・・・」
「ラーダ様・・・今回の件で売り上げの40%いや・・・50%がなくなる見込みとなります・・・」
「そんなにか?」
「はい・・・従業員の給料および賞与の支払いも同じ、又マートン支部の閉鎖でダンジョンの収益が無くなったので更に酷くなるかもしれません・・・」
「わかった・・・」

 もうこれしかあるまい・・・もっと稼いでからにしたかったが、このようなギルドにはもう用はないな・・・それに私には自分の商会があるし何も問題はない。くっくっくっ!あの魔道士めが今に見ていよ。

 ラーダは心の中で、利用出来ない商人ギルドに見切りをつけたようだった。それから一ヶ月後、ラーダと本部の上層部全員がマートン支部を閉鎖した責任を取ると声明を出し辞任を表明する。


 そして、その表明に従業員達は寝耳に水だった。課長クラスの人間はラーダ達に詰め寄ったが、自分達の不甲斐なさにマートン支部を無くしてしまった責任を取るの一点張りで話にならなかったのだ。

「どういう事だ?」
「商人ギルドはどうなるんだ?」
「俺達の給料は?」

 商人ギルド本部のホールでは職員達が騒然となる。そして、会議室ではラーダと上層部の人間全員が一斉に退職をし勤続年数による退職金を貰い早々に商人ギルド本部を後にしたのだった。
 そして、残されたのは課長クラスの人間がトップとなった商人ギルド本部となる。

「どうすんだよ・・・トップが一斉に見切りをつけるなんて思いもしなかった」

 しかし、とにかく業務は進めないどうにもならず、いつもの業務をこなすしかなかった。こうして商人ギルド本部は傾き始めたが、本部の課長はラーダが居なくなった後を引き継ぎ商人ギルドを立て直しに奮闘する。ラーダの後を引き継ぎギルドマスターとなったのはマルクスという人物でまだ30歳を過ぎたばかりの男性だった。
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