氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依

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第2章 新たな商売

7話 ショウの暗殺依頼

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 マートンの町には色んな人間が行商人として物資の流通にかかわっている。その中でもトルーネ商会はマートンとサンテの村を行き来して塩の流通をメインに稼いできた商会だった。そのトルーネ商会がいきなり塩を大放出をして、塩の価格を一気に当初の値段に引き下げ、町の住人から感謝されたのだった。しかし、大放出した当初批判的な意見も飛び出していた。

「しかし、なんでトルーネ商会は塩をこんなにも貯め込んでいたんだ?」
「だよな?普通に卸してくれたらよかったのに・・・」
「俺達が困るのはわかってただろうにな?」
「本当はもっと高値になったら売るつもりだったって事か?」
「だが、なんで今になってなんだ?意味が分からん・・・」

 と、このような噂も駆け巡ったのだが、トルーネ商会は当初の価格で塩をギルドに卸した事でそういった疑念も払拭されたのだった。そして、そんな町の中を急ぐ人間が一人、商業地区から貴族街の方へ入っていくのがアーバンだった。

 くそぉ・・・こんな事になるとは!我が商会の倉庫にある塩が全部無駄になるではないか・・・しかも、ガイガン様になんて言えばいいんだ・・・

 アーバンは顔を青ざめて貴族街に急ぎガイガン邸の門をくぐった。

「アーバン様、こんな時間にどうなされました?」
「申し訳ない。火急の要件にてガイガン様に面会を取り次いでいただきたい」
「少々お待ちくだされ。主人に確認を取らせていただきます」
「よろしくお願いします」

 アーバンはガイガン邸の門番に丁寧に頭を下げてお願いをした。そして、すぐに戻ってきた門番の兵士はアーバンを屋敷の中に案内したのだった。

「ガイガン様、このような時間に訪問し申し訳ございません」
「いったい何があったんだ!その方は下がってよい」
「はっ!承知いたしました」

 ガイガンは門番の兵士を下がらせ、部屋の中にはガイガンとアーバン、それに奴隷のエルフの女がいた。ガイガンの容姿は醜くオークのように肥り、いやらしい笑みを浮かべ奴隷の女性を側に置き身体を舐め回していた。奴隷の女性はいやがる素振りをしながらも、奴隷としての立場で跳ね除けることは出来ない様子だった。

「ガイガン様、奴隷の女を下がらせていただきたい」
「かまわんだろ?せっかく手に入れたばかりのエルフなんだ。楽しみの最中だったのに」
「ガイガン様、今はそれどころではないのです」
「わかったわかった・・・お前は後で存分に味わってやるから今は下がれ」
「は、はい・・・」

 ガイガンはエルフ女性に部屋から出るように命令をすると、エルフ女性はホッとしたように急いで部屋から出ていってしまう。

「それで何があったんだ?それに屋敷には来るなと言ったではないか。何かあれば別荘でと・・・」
「申し訳ありません。しかし、我々の計画が水泡に帰す事態になり、急ぎで報告に来た次第で!」
「な、なんだと!?いったい何があったと言うのだ!」
「それが我々にも寝耳に水で、マートンの町に塩が大量に出回っているのです。しかも、高騰する前の値段で・・・」
「馬鹿な!街道を通る行商人は盗賊達が塩を奪い取っているはずだろうが」
「はい。計画通り街道を封鎖して、行商人達の塩を奪い取って逆らう商人は皆殺しにしており、最近ではトルーネ商会の人間だけが巧妙に街道を抜けておりました」
「そうであろう。なのにどうして塩がマートンの町に溢れているんだ?」

 ガイガンとアーバンの計画は盗賊を使い、街道を通る行商人を襲い塩の流通を止める事にあった。そして、ヘマをした盗賊はガイガンが貴族の権威を使い証拠不十分として解放。また、奪い取った塩は盗賊達が、ガイガンの隠れ家に運び入れ、アーバンがその塩を受け取る算段になっていた。
 そして、マートンの町には塩の供給が止まり塩の価格が高騰し5倍の価格少しづつ、高騰した値段が下がらないようにギルドに卸し儲けを出すはずだった。なのに、5倍になる前にトルーネ商会が高騰する前の価格で、ギルドに塩を大量に卸した事で価格が元に戻ってしまったのだ。

「そんな大量の塩をトルーネ商会はどこから・・・それに、街道は盗賊達で封鎖しているはずだろう」
「最初我々も、トルーネ商会がどの街道を使ったのかわかりませんでしたが、トルーネ商会はサンテの村まで行っておりません」
「馬鹿な!それでどうして塩を手に入れるのだ!」
「ガイガン様・・・マートンの町には我商会の会長ラーダ様が憎んでいる魔道士がいます」
「なんでそこで魔道士がでてくるのだ?」
「あの偏屈魔道士は空間属性魔法の魔法使いです・・・」
「あっ・・・」
「気づかれましたか?あの偏屈魔道士なら大量の塩を運び入れる事も可能かと」
「ぐぬぬ・・・あの魔道士が我々の計画を潰したと言うのか?」
「まだ、確証はありませんがあの大量の塩を流通させる手段がないのはあきらかです。それでなのですがガイガン様のお力でなんとかならないでしょうか?」
「むぅ・・・ワシになんとかせよともうすか?」
「申し訳ありません・・・しかし、我々では・・・」
「わかった。しかしわかっておるな?」
「それはもうわかっています。これは少ないですが、心ばかりの土産です」

 アーバンはガイガンに袖の下を通しいやらしい笑みをみせる。

「お主も悪よのう!」
「いえいえ、ガイガン様程悪いお人は私は知りません。あの偏屈魔道士が居らぬようになれば、また塩の価格は高騰するはずです。そうなればガイガン様には今まで以上にお礼をお持ちしますのでどうかよろしくお願いします」

 アーバンはガイガンに頭を下げ、ショウの始末をお願いしたのだった。次の日、ガイガンは地下道を通り隠れ家を訪れていた。地下道には扉が設置してあり、見つからないように細工がしてあった。ガイガンがその場所に指輪を向けると、扉が現れる仕掛けになっていて指輪を持つ人間だけが入れるようになっている。そして、この場所は闇ギルド(五竜ウーロン)のマートン支部である。

「これはこれはガイガン様。いつもありがとうございます。今日はどのようなご要件でしょうか?」
「今日はある人間を始末してほしい」
「ガイガン様。最近、盗賊達の依頼をしておりましたが資金の方は大丈夫ですか?」
「ああ。それについても話がある。シャドーリッパーが始末されたのだ!あのような役立たずを紹介するとはワシを馬鹿にしすぎじゃないか?」
「馬鹿な事を言わないでください!あ奴はAランクアサシンですぞ」
「しかし、高い金を払って反対に殺されたのは事実ではないか!今度は実力のあるアサシンを頼みたい」
「予算はあるのですか?」
「ああ!この通り一億ある。これで文句なかろう!」

 ガイガンは闇ギルドのカウンターに金の入った革袋を出した。それを見た、カウンターの受付はニヤリと笑う。

「それで目標は?」
「空間魔導士のショウだ!」
「ならば後一億5千万出していただきましょう」
「馬鹿な!魔導士一人に二億5千万ゴルドだと!」
「申し訳ありません。魔導士一人と言う訳にはいかないのですよ。魔導士を暗殺するには、アヤツの周りにいる女達も相手にしないといけないのです」
「女達だと!」
「ええ。ガイガン様も噂ぐらい知っておいでかと思います」
「ぐぬぬ・・・」
「あの女達も相当な使い手です。つまり、アサシン一人では対処できません。こちらもパーティーメンバーをそろえなければとてもじゃありませんが暗殺出来ないのですよ」
「わ、わかった。ワシも魔導士の噂は聞き及んでおる。しかし、それだけの金を払うんだ。わかっておるな?」
「ええ。わかっていますよ。ガイガン様にはいつもお世話になっておりますからね」
「ほれ。持っていくがいい」
「ありがとうございます」

 ガイガンは、カウンターに更に金の入った革袋を置く。それを見たカウンターの男は満面の笑顔を浮かべていた。
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