氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依

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第2章 新たな商売

6話 マートンの町に塩が出回る

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 ショウがアユミと海に行っている頃、マートンの町では大変な事が起きていた。

「それにしてもヨシノさんに護衛は安心できますな」
「私だけではありませんよ。日頃、衛兵の方々が商会の周りの巡回を増やしてくださっていますから」

 ヨシノは自分だけの力ではないと謙遜する。トルーネがなぜここまでヨシノを持ち上げるのは、すでに商会の中で襲われたからだ。
 トルーネが室内で書類作成をしていた時、屋根裏に潜む人間がいて捕らえたのだ。トルーネはショウと別れてすぐに、冒険者ギルドにタイタンの雷鎚が全滅した事を伝え、冒険者ギルド内は騒然となった。
 そして、ショウに助けられて無事だった事を伝えてから、自分の商会に帰ったのだ。すると、早速商会の屋根裏に不穏な気配を感じ取ったヨシノは、トルーネを自分の背後に引き寄せ屋根裏に槍を突いたのだ。
 すると、屋根を突いた矛先から血が伝って、屋根裏から絶叫が聞こえてきたのだった。

「あの時は本当に驚きましたよ」
「私がいる限りあのような偵察丸わかりですよ」
「ワシには何も感じませんでしたよ」
「それより衛兵に連絡をお願いします」
「そうだったな・・・誰かいないか?」
「旦那様いかがなされましたか?一体何があったのですか?」

 執事らしき男性が部屋の中を見て目を見開き驚いた。部屋の天井に槍が突き刺さっていて、血が滴っていたから当然だった。その声に商会の職員達も慌てた様子で部屋の中をみたものだから、女性職員達は悲鳴をあげる騒ぎになった。

「みんな落ち着け!落ち着くんだ。ワシは無事だ!」
「旦那様一体何があったんですか?」
「ワシが塩の販売を原価ギリギリで卸しているのが気に入らない人間がいるみたいなんだ。それでワシの命を狙う連中がいるみたいなんだ」
「「「「「「「なっ・・・」」」」」」」
「じゃあ、旦那様は命を狙われたから町に帰ってきたというのですか?」

 職員達もトルーネが一日も経たずマートンの町に帰ってきたことに疑問を感じていたようだ。

「だ、旦那様!もう行商はお辞め下さい。アサシンに狙われるなんて危険です!」
「ワシなんかを闇ギルドに依頼する奴が現れるとは人生面白いものだよな」
「笑い事ではありません!」
「「「「「「「そうですよ!」」」」」」」

 トルーネは職員達に慕われているようで、みんなトルーネを心配していたのだった。

「すまぬが誰か衛兵を呼んで来てくれないか?賊が侵入し退治したからと報告してくれ」
「は、はい!」

 部屋の中にいる一番若い職員が慌てて衛兵を呼びに行き、天井にいた遺体を降ろし遺体を確認してもらった。当然だが遺体の肩には闇龍アンロンの入れ墨が入ったアサシンであった。アサシンにしては弱いと思ったが、その姿形はまだ成人前12歳ぐらいの少年だった。

「こんな子供までアサシンにしているのか・・・」

 トルーネは自分の命を狙っていたのが、年端もいかない未来ある子供だった事に胸を痛めたのだった。

「トルーネさん・・・心をしっかり持って下さい」
「わかっている・・・しかし、こんな子供まで」
「はい・・・こんな事間違ってます。ただ、この子はトルーネさんの命を狙ってここに忍び込んだ事も忘れないでください」
「そうだな・・・」



 そして、三日後トルーネの商会にショウが訪問してきた。


「ショウ殿、この度はヨシノさんを護衛につけていただき本当にありがとうございます」
「ああ。役に立てて良かったよ。ヨシノもありがとな」
「いえ。私はご主人様の期待に応えただけですので・・・それに私だけではトルーネさんの命は守れませんでした」
「何をおしゃっりますか?ワシの命はこの通り無事でした」
「しかし、私だけではありませんでしたから、イチョウの影からのサポートがなければ今頃トルーネさんはあの世に旅立っております」
「はぁ?それはどういう事ですか?」
「トルーネさんが狙われたのは最初の一回だけではございません。少なくとも3回刺客に襲われております。その3回はイチョウが対処されています」
「ま、まさか・・・」
「私も商会の巡回で二度ほど殺り合いましたが逃げられましたから・・・」
「ワシは少なくとも5回命を狙われたと言うのか?」
「はい・・・」
「だけどもう大丈夫かと思います。ご主人様が帰られましたからね。闇ギルドもそうそう手は出してこれないでしょう」
「馬鹿な!相手は闇ギルドなんですぞ?ブリガンダイン王国でも全体を把握していない犯罪組織なんです」
「ご主人様大丈夫ですよね?」
「ああ。その辺は大丈夫だ。依頼主がまもなく居なくなるからな」
「はぁあ!?居なくなるとはいったいどういう事ですか?」
「闇ギルドだって、金を支払う依頼主がいて行動をするんだが、その依頼主が居なくなれば闇ギルドだってトルーネさんを狙わないだろ?」
「それはそうかもしれませんが!」
「そんな事より俺が手に入れた塩をみてくれるか?」

 そう言ってショウは机の上に麻袋を取り出した。そんな塩を見たトルーネは目を輝かせ興奮する。

「な、な、な、なんですか?この塩は!」
「そんな驚く事か?」
「何を言っているんですか!こんな上等な塩は見た事ありません」

 ショウが作った塩は海水から水を抽出した物であり、ミネラルを限りなく残し、カリウム、カルシウム、マグネシウムを多く残した塩なのだ。つまり、塩辛いだけでなく甘みを感じるもので味わい深い塩である。

「こんな上等な塩を安価で売ってくださるのですか?」
「ああ。この塩をギルドにトルーネさんから卸してほしい」
「量はどれだけあるのですか?」
「マートンの町の人が一ヶ月賄える分は用意できるよ」
「本当ですか?」
「そんだけの量が一気に出回れば塩の価格が暴落するはずだからな」
「た、たしかに・・・塩が余れば安くなるのは必定です」
「そうなれば、楽しい事が起きるしな」
「楽しい事?」
「気にするな。こっちの事だ」
「そ、そうですか・・・」

 ショウはトルーネに麻袋に入った塩を安価で買い取ってもらい、トルーネはその塩を冒険者ギルドと生産ギルドに卸してしまう。



 そして、ギルドはその塩を通常価格で売り出すと、町の商人や酒場や宿屋、店を営む店主が殺到した。屋台の肉ぐしには塩は必須の調味料なので両手を上げて喜んでいるようだ。
 この事で苦虫を噛み潰したような顔をしたのが、当然だがラーダが会長職に就くボータ商会だ。

「いったいどういう事だ!なぜギルドにあんなに塩の在庫があるんだ!」
「その事ですが、トルーネ商会がある筋から塩を大量に仕入れたみたいで・・・」
「馬鹿な!盗賊達は何をしている?」
「それがグレンの町までの街道を使った行商人は全て襲っております」
「どういう事だ?」
「つまり、グレンの町とは別の道のりでサンテの村から帰還した行商人がいるという事です・・・」
「馬鹿な!最短でもサンテの村まで一ヶ月以上かかる道のりなんだぞ。別の道を使ってあの価格でギルドが売り出せる訳がない!」
「しかし、あの価格は高騰する前に戻っただけでは?」
「だからこそだ。最短で行商をしなければ割に合わんと言う事だ。しかもあの量は説明がつかん!どんだけ人海戦術を使ったんだ」
「あの・・・アーバン様気になる事が一つあるのですが」
「なんだ?ひょっとして塩の出どころはマートンに在中する魔道士様なんじゃありませんか?」
「あっ・・・そ、そうか!魔道士は空間属性魔法の魔法使いだ!大量の塩を持ち込んだのはあの魔道士だな・・・」
「きっとそうですよ。あの魔道士様なら馬車も必要ありませんからね」
「とはいえ・・・あの魔道士がかんでいるならばどうにもならん・・・ラーダ様がギルドマスターを辞任に追い込んだ人物だ・・・」
「貴族様にご相談しますか?」
「それしかあるまい・・・」

 アーバンはその足で貴族の元に走るのだった。
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