氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依

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第2章 新たな商売

41話 ショウ、マートンの町に家をもらう

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 ヒナタがショウの家族になり一ヶ月以上が経ったある日、ショウの私有地に黒塗りの立派な馬車が訪れる。

「魔道士様、遅くなりまして申し訳ありません。私はマートン領主アレック=アンダーソンの執事長をしているハンスと申します。以後お見知りおきを」
「これはご丁寧にありがとうございます」

 マートン領主はこの日に面会日を決めて、ようやく仕事を切り詰め時間を作ってくれたみたいだ。それを聞いて最初ショウは、そこまでして時間を作ってくれなくてもいいと断ったのだが領主のアレックは断固として聞き入れる事はなく、必ず面会に応じるようにと言ってきたのだった。

「それでハンスさん」
「何でございますか?」
「俺はこの通り貴族様の礼儀作法などわからんが本当に領主様と会っていいのか?」
「ご領主様はそのようなことを気にする御方ではありません。この度は、御領主様が頭を痛めていた事を解決して頂いた魔道士様にひと言御礼が言いたかったと申しております」
「頭を痛めていた?」
「ささっ!時間がありませんので馬車にどうぞお乗りください。他の方は後車の方へどうぞ」

 執事長のハンスは、時間がないと急いで出発したのだった。道中、魔物や盗賊などは襲ってくる事はなく護衛を務める私設警備兵はただ黙々と任務を遂行しただけだった。

「さすが御領主様の馬車だなぁ。城門も素通りできる」
「それは当たり前でごさいますよ」
「当然と言えば当然だけど、俺はいつも並んで入町するから新鮮だ」
「魔道士様もマートンの町の中でお住みになっては?」
「いや・・・俺は気楽な生活がいいからな。あの土地なら税金もいらないしな」
「残念でございます・・・」
「ハハッ・・・」

 ショウはハンスが町に住む事を丁寧に断り苦笑いをする。そして、馬車は町の中心にある馬鹿でかい邸宅の前に停車したのだった。

「うひゃー!これまた立派な豪邸だなぁ・・・」

 ショウが馬車を降りてすぐに出た言葉に執事長のハンスは笑顔を見せる。しかし、着いた早々に馬車から足を踏み外し転げ落ちたのがヒナタだった。

「ううっ・・・い、痛い・・・」
「ヒナタ大丈夫か?」
「大丈夫じゃないです・・・」
「あ~あ・・・せっかくおめかししたのに、膝小僧が擦りむいて血が出てるじゃないか・・・しょうがないなぁ。これを飲みな」

 ショウは、ヒナタにポーションを渡しヒナタの服についたホコリをパタパタとはらうのだった。そして、もう一人システィナも馬車から転げ落ちた。

「痛ぁああああ!」
「ったく・・・お前もかよ」
「だって・・・領主様に会うなんて緊張して」
「しょうがない奴だな。ほら、お前も飲め」

 ショウはシスティナにポーションを投げ、ヒナタの服のほこりを払い続ける。

「ううっ・・・ご主人様の態度がヒナタの時と違う」
「ヒナタはまだ5歳だろうが!」
「ご主人様はいつもあたしの事子供だって言っているじゃないですか」
「フッ・・・みんな行くぞ」
「ああ!今鼻で笑った。馬鹿にされた!」
「はいはい・・・お前は何に嫉妬してんだよ。これ以上恥を晒すな」

 それを見て、執事長のハンスは笑いをこらえているようだ。そして、笑いをこらえながらハンスは領主邸の案内をする。

「魔道士様とご家族の方々はコチラでお待ちいただけますか?」

 ハンスはショウの事を知り尽くしているようで、システィナ達奴隷達にも同じようにもてなしている。これは、領主アレックの指示でもあった。
 領主アレックはマートンの町を愛し善政をしており、町の住人からの支持率はとても高い。その為、ショウの性格を調べておりハンスにシスティナ達を奴隷扱いをしないように言い聞かせていた。
 そして、本来なら領主アレックにシスティナとアリサとヒナタは面会できなくてもしょうがないはずだが、ショウの家族全員が面会を許可されたのだった。

「この部屋でお待ちください」

 執事長のハンスはショウに一礼をして部屋から退出した。そして、残されたショウ達は部屋の中を見渡す。

「ショウ、凄い部屋だね・・・」
「だな、システィナお前は絶対歩き回るなよ」
「何で私!?」
「お前はおっちょこちょいだからな。あの壺を割ったら俺は知らんぞ」

 ショウが指差した先にはとんでもなく高そうな壺が飾ってある。

「ねぇアリサ?あの壺の価値分かる?」
「あんたねぇ・・・そんな事言わないの!」

 アリサも領主アレックに会えるとは思っておらず朝から緊張して言葉数が少なかった。

「でも気になるでしょ?」
「気にはなるけど鑑定なんかしないわよ」
「アリサのケチ・・・」
「あんたなんか、不敬罪で処分されるといいわ」
「なっ!?ご主人様、アリサが・・・」
「まぁ俺も同意見だな。お前は失礼すぎる!」
「ううっ・・・」

 そんなシスティナを見て、ヒナタがシスティナの頭をポンポンと叩き慰めるのだった。
 すると、部屋扉がカチャリと開き優しそうな男性が入ってきた。その姿はまだ若く40歳前後だが気品があり、しかし纏うオーラが違いショウ達は息を呑んだ。

「今日は忙しい中お呼び立てして申し訳ありません」
「いえ!こちらこそお招きありがとうございます」

 ショウは、急いでソファから立ち上がり、領主アレックであろう男性に頭を下げた。その時、ショウは周りを見るとアリサ達全員が呆然と座ったまま領主アレックを見て固まっていて、ショウは額から汗が流れ落ち慌てふためくのだった。

「お、お前達!何をしている。頭を下げろ!」

 ショウがそういうと、ようやく頭が回り出したようでソファから立ち上がりすぐに土下座をし出す。

「「「「「「「「ごめんなさい!」」」」」」」」
「そんなかしこまらなくてもよい!今日は私が無理を言ってきてもらったんだ」
「本当にすみません・・・」
「まぁ、そんな緊張せず座って下さい」
「それでは失礼します」
「それでショウ殿、今回は本当に感謝いたします」
「いえ、俺達はただ、奴らが俺達を狙ってきたのを返り討ちにしただけで・・・」
「闇ギルドが襲ってきたのですか?」
「はい。領主様は以前、俺達が暗殺依頼された事は?」
「ああ・・・あの件でガイガン男爵の事は申し訳ない。あんな人間でも居なくなると困る人材でね」
「いえ・・・それは大丈夫です。その時も俺達は闇ギルドを返り討ちにしたのですが、逆恨みされているようでブラックリストに入っているようなんです」
「それは大丈夫なのか!?」
「ええ。問題はありません。闇ギルドが襲ってきたところで自分達で対処できますので」
「そうだな。そのおかげで頭の痛かった問題が片付いたといえよう。本当に感謝いたします」

 領主アレックは、ソファに座りながらショウに頭を下げたのだった。アレックは、町の住人から誘拐問題がある事を問題視していた。周辺の村からも盗賊から狙われ警備をしてほしいと嘆願書が来ていて頭を悩ませていたのだった。
 そんな中、ショウが闇ギルドの隠れ里を見つけ壊滅させ、、領内の子供達が救われたと報告があがり、本当に感謝したのだ。

「それで、今回の謝礼に金だけでは足りないと思い、町の中の屋敷を差し上げたいのだがどうだろう?」
「いえ・・・それはお断りさせてもらいたい。俺はあの土地でのんびり自由に暮らせていければいいと思っているので・・・」
「しかし、先ほどの話では闇ギルドのブラックリストに入っていると!それならば町の中の方が安全ではないか?」
「大丈夫です」
「しかし、我々としてもショウ殿が安全に・・・」

 ショウが町での暮らしを断るが、アレックも一歩も引かなかった。それも当然でありショウを町に引き込みたい気持ちがあったからだ。今の状況では、いつショウが町を離れてもおかしくないからである。ショウはこういった事が面倒なので領主との面会は断りたかったのだ。
 アレックとの話は並行線となり、ショウはしょうがないとばかりにある秘密をうちあける。

「申し訳ないがマートンの中より、俺のあの土地に建っている家の方が安全なんだ」
「何を言っておる・・・町の中の方が安全に決まっておろう」
「実はですね。あの家はダンジョン産のハウスなんですよ」
「それは知っておる。だが、ハウスと言っても町の城門に敵うものではあるまい」
「いえ!それが違うんです。俺のハウスはゴッド級のマジックアイテムで結界が張られていて何人たりとも侵入は不可能ですし、ダンジョン内で展開すればダンジョン内でも安全に生活ができるんですよ」
「ゴ、ゴッド級のマジックアイテムだと!?そんな物が存在し得るのか?」
「えぇ、存在しているんです。この事は内密にお願いします」
「ば、馬鹿な・・・」
「だから、俺の謝礼は金だけで十分です」
「信じられないがショウ殿の今までの功績を考えれば信じるしかないのか・・・」

 アレックは今回のショウへの謝礼は、塩の件も入っていたのである。その件もありお金だけでは足りないと思い、屋敷も贈呈したかったのだ。その事も説明すると、ショウはため息を漏らす。

「わかりました・・・その家はありがたく頂戴いたします」
「そ、そうか!」

 アレックは、ショウが承諾し満面の笑顔となったのだった。しかし、ショウはもらうのはいいが住むことはないだろうと思い困った顔をするのだった。
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