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ノアズアーク始動編
1 初めての魔物討伐……?
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side ノア=オーガスト
白い光に包まれたオレたちが初めに目にした光景は、今までで一度も見たことのない巨大な街だった。
オレたちの前方に聳えるその街の門前には多くの人が行列をつくっているように見えた。豆粒のように小さいけど、間違いないだろう。
「へぇー、あの街すごいな。あんなに人が並んでる。あれが普通なのかな」
「そうだなー。比較対象がねぇからなんとも言えねぇな。ま、それは冒険してみればわかるだろ」
「あ、そっか」
「はは。ノアはたまーに抜けてるところがあるよな。そこもまた可愛いからいいんだけどよ」
「ちょ、髪がグシャグシャになるだろ。やめろって」
秀に頭をわしゃわしゃされる。腕を掴んで抵抗してみたが、あまり効果は見られない。
「秀。兄さんが可愛いのは同意だがイチャつくのはやめろ。兄さんは俺のだ」
右腕をシンに引っ張られ後ろから抱きつかれる。
「わーってるよ。ったく、心が狭い主様だな。……さてと、これからどうするか」
「とりあえず、あの街で冒険者登録をするべきだろう。あれほど大きい街なら冒険者ギルドがあるはずだ」
「湊の言う通りだ。まずは冒険者にならなきゃ、オレたちの旅は始まらないからな!」
さて、早速あの行列の最後尾に並んでみたのだが、前にはざっと三十人ほどいるみたいだ。
見たところ、商人や冒険者らしき人が多いように感じる。
それにさっき、おそらくだけど冒険者らしき装備を整えた五、六人の人たちが後方の森へと入っていくのを見かけた。他にも木箱や樽を積み上げた馬車が街から出てきた。
こんなに毎日出入りが激しいなんて、相当栄えた街なんだろうな。ますます楽しみになってきた。
「きゃーっ!」
「ま、魔物?!マジかよっ!!」
「は、は、はやく大帝国師団を呼んでくれー!」
…………。
おいおい、嘘だろ。今スゲーいい気分だったのにさ。は?魔物?何でこのタイミングで来るんだ。
今はそういう気分じゃないって……。
「……みんな手を出すなよ。オレがやる」
後ろを向くと確かに巨大なクマらしきものがこちらへ走ってきているのがわかる。
図鑑で見たクマとの違いは、前足の鋭く長い爪と巨大な図体だろうか。
……だがそんなことはどうでもいいことだ。あいつは地獄行き決定だ。
オレの背丈の五、六倍はあるであろう巨大クマは進路を遮るオレへと右側から鋭い爪を振りかざす。
それを難なくかわし、クマの手の甲を踏み台にして、一気に首元まで跳んでいく。そして持っていた剣を抜き、首と胴を真っ二つにした。
side シン=オーガスト
兄さんが怒る姿をあまり見たことがないが、今回ばかりはそうもいかなかったようだ。
兄さんが小さな時からずっと憧れてきた冒険の大事な一歩目をあっさりと壊されたのだから、あれほど怒りをあらわにするのも無理はない。
兄さんは俺たちに「手を出すな」と言い、すぐ魔物の方へと歩き出したが、そのタイミングで変なおっさんが叫び出した。
「あ、おい!あんちゃん。あんちゃんみてぇなガキが勝てるほどそいつは甘くはーーー」
「おい。今なんて言った?」
このおっさん、兄さんのことをガキ呼ばわりしたよな?
「ひっ。なななんだよあんた。お、おれはただあぶねぇから戻れって言おうとしただけで……」
「シン。圧をかけるのはやめてやれ。……どうしてお前はノアのこととなると極端に心が狭くなるんだ?ったく。……すまねぇなおっさん。うちの連れが」
「い、いやー別に……ひっ」
俺はおっさんをひと睨みしてから湊の方へ向かった。
「湊。兄さんは?」
「ああ、ちょうど今倒したとこだな」
湊の返答の直後、魔物が倒れる大きな音が辺りに響いた。
side ノア=オーガスト
「はぁ。なんでこんなやつに邪魔をされなきゃいけないんだよ……。ん?……なんかあった?」
みんなのもとへ戻ろうとしたのだが、妙に視線を感じ顔を上げてみると、行列を成していた人たちが目を大きく見開いたまま動きを止めていた。
「あ、あんちゃんスゲーな。ビックベアを一撃で倒しちまうなんて……」
へぇー。あいつビックベアって魔物だったんだ。まあどうでもいいけど。
「そうかな?あいつ身体だけデカい、ただのデクノボウって感じだったけど」
「へ?で、デクノボウってあんちゃん。ビックベアはCランクに分類される魔物なんだぞ。それを見たところ冒険者でも師団員でもなさげな少年が倒すなんて……普通ありえないぞ?!」
「うーん……」
そんなこと言われてもな。弱かったものは弱かったんだし……。
「おい、おっさん。別に誰が倒したってかまわねぇだろ。ここにいる全員が無傷で助かったんだ。それだけで十分。そうだろ?」
ふぅー。ナイスだ、秀。正直なんて答えるのが正解なのか分からなかったから助かった。
「ま、まあ、たしかにそうだが……」
「あのー、すみません。ちょっとお話を伺いたいのでご同行していただけますか?」
突然後ろから声をかけられる。
「何だお前は?ノアに何の用だ」
「え、えっと、僕は大帝国第五師団『銀』の師団員のキースと申します。ほ、本来であれば僕たち大帝国師団の者が対処しなければならないところを、そ、その方が我々よりも迅速に討伐してくださったおかげで、一人の負傷者もありませんでした。ですので、そのお礼がしたいと思いお声をかけた次第です!」
湊の圧に気圧されたのか、所々声が震えていたが、彼はハキハキと話してくれた好青年だった。
歳は湊や秀に近そうだなー。
「そうか。……ならいい」
湊の圧が消え胸を撫で下ろすキースさん。
緊張感のある空気ではなくなったので、オレはキースさんに質問してみることにした。
「キースさん、だっけ?」
「はい、そうです」
「別にキースさんについて行くのは構わないけど、そこに着いたらひとつだけお願いしてもいいかな?」
「え、ええ。我々にできることであれば構いませんよ」
キースさんの後に続いていくと、そこはオレたちがさっきまで並んでいた門の検問所だった。キースさんは検問所に隣接した小屋の鍵を開けオレたちを中へ通す。
「小さくてすみません。ここは職員の休憩所に使っている所なので、そんなに大きくないんです。……今お茶を入れますね」
「あ、どうも」
数分してキースさんが戻ってくる。そしてテーブルには湯気がたった湯呑みが六つ置かれた。
ん?ここにいるのって五人だけじゃ……。
「あれ?お客人の方が私より早く着いちゃってるじゃん。かー、走ってくればよかった」
「ジ、ジン師団長。なんでおられなかったんですか。僕、間違えたのかと思って内心ドキドキだったんですよー」
「ごめん。ごめん。ちょうど近くの店で美味しそうなパンを売ってるって聞いて、ついね」
「つい、じゃないですよもう」
キースさんにジン師団長と呼ばれた鮮やかな薄紫色の髪をもつ女性は、オレたちの姿を目の端に捉えると、慌てたように挨拶をした。
「……ってこんなことしてる場合じゃないか。コホン。初めまして。私はジン=グレース。一応大帝国第五師団『銀』の師団長を務めてます。よろしくね!」
師団長ってことは、えーと大帝国師団ってやつのトップの人かな?
「えーと、オレはノア。それから、シンに秀に湊」
適当に指差しながら軽くみんなの紹介をする。
「ふんふん。で、ビックベアをあっという間に倒してくれたのが、ノア君ね」
「まあ、そうだよ」
向かってきた割に歯応えなさすぎて、あいつのせいで溜まったストレスはしっかり発散はできてないけどなー。
「ノア君!」
急に大声で名前を呼ばれ肩がビクッとなった。
「は、はい?」
「ほんんんんんんとにありがとう!」
腰を四十五度曲げて感謝を伝えるジンさん。そしてすぐに体を起こし、さらなる礼を述べた。
「いつもはもっと警備を厳重にしてるんだけど、今日はうちの師団は休暇を取ってる奴が多くてさ。いつもより人員が回せなかったんだよね。それに私も会議で呼ばれててすぐに対応できなかったんだ。だから、君が倒してくれて本当に助かったよ」
「いや、別に大したことはしてないんで」
てか、完全に私怨でやっただけだから、感謝されるのはなんか違う気もする。
「ふんふん。実に謙虚だね。そういう子は割と好きよ」
「あ、あのー……ノア殿が言っていた、我々にお願いしたいこととは何だったのでしょうか」
ジンさんの後ろに控えていたキースさんの質問でオレはそのことを思い出す。衝撃的なジンさんの登場ですっかり忘れていた。
「あ、そうだった。その前に質問なんだけど、この街に冒険者ギルドってある?」
「そりゃもちろん。なんならこの街、帝都アクロポリスにあるのが冒険者ギルド『EDEN』の本部だよ?ていうか、冒険者登録はEDEN本部じゃないと基本的にできないからね」
そうなの?じゃあ、ここに来て大正解だったってことか。
……もしかしたらクロードが気を利かせてくれたのかもしれないなー。感謝感謝。
「なるほど。もう一個質問いいか?」
「うん、全然構わないよ」
「この街に入るためには身分証とか通行証とかは必要なのか?」
正直これがないとダメだった場合、オレたちはそれらに該当するものを持ち合わせていないから、結構やばいんだよなー。
「んー、率直に言えばあると良い、って感じかな。冒険者ならギルドカード、商人なら商会のバッジって感じで、特定の職業ならそれだけで身分証にも通行証にもなり得るんだけど、一般の方ならそうはいかない。で、そういうときは私たち第五師団の師団員が簡単な質問等をして判断するの。だからまあ、ないならないで何の問題もないってこと」
そういうことか。じゃあオレたちでも入れるのか。だったらーーー
「まさかとは思うがギルドカードや商会のバッジがあれば見せるだけで素通り、なんてことないよな?」
……このシンの質問はきっと、そのどちらかを盗んで乱用しようと考える輩がいるかもしれないと考えての指摘だろうなー。てか、珍しく自分から発言したな。
シンの至極真っ当な質問にジンさんは苦笑気味に答える。
「ふふっ。そうね。シン君、だったっけ。良い質問ね。もちろん冒険者や商人の方でも一応軽く質問をするようにしてる。それと、私たち師団員の目で怪しいかどうかをしっかり確認してから通すようにはしてるかな」
「ふむふむ。てことはオレたちでもこの街に入れるってことだよな?」
「あら?ノア君、冒険者じゃなかったのね。ビックベアを一振りで倒したって話だから、てっきり手慣れた冒険者かと思ってた」
……ビックベアとやらを倒したことはそんなにすごいのだろうか。
「あのー、さっきも思ったんだけど、ビックベアとかっていう魔物って、そんなに強いの?」
「んーとね、ビックベアはCランク指定の魔物だからそこそこ強いって感じなんだけど……。あ、魔物にはS、A、B、C、Dって感じで基本的に五段階のランクづけがEDENによって行われてるんだよね。ちなみに冒険者たちにも同じランクづけがされてるの。そのなかのCランクだから、確かにこれだけ聴いたら何てことはなさそうでしょ?でも、一瞬で片付けたことと、時間をかけてようやく倒したこととでは、全く話が変わってくる」
ほーん。言われてみればそうか。
ジンさんのわかりやすーい説明にオレは納得の相槌を打つ。
「基本的にソロの冒険者は早死するやつが多い。その理由はたったのひとりで勝てるほど、魔物は決して弱くはないから。ソロで活動していけるのはほんの一握りの天才だけ。基本はパーティを組む。そのパーティにも同じランクづけがなされてるんだけど、そのパーティのランクと魔物のランクが討伐可能な魔物を示す指標と考えるのが一般的なんだ」
ほんほん。わかるような、わからないような?
「つまり、一対多数で戦うのがセオリーで、同ランクなら討伐可能ってこと。まあ、Dランクの魔物だけは例外で、同じDランクの冒険者一人でも倒せるかな」
ふむふむ。Dランクの魔物はソロ討伐が可能で、それ以外は同ランクのパーティで挑むのが基本ってことか。
「で、話は戻るけど、ノア君は今回Cランクパーティなら勝てる相手を、ひとりで、しかも一撃で倒してしまったってわけ。だからみんなから騒がれてるってわけよ」
「あーね。やっと理解できた。ありがとな、ジンさん」
お礼を伝えれば、ジンさんはグッドサインを向けてくれた。
「単純な疑問だが、そのCランクの魔物とBランク冒険者ひとりの場合はどちらが強いとされているんだ?」
湊の的確な質問に、ジンさんは胸の前で腕を組んでうなる。
「んー、相性とかあるからなー。なんともいえないけどー……勝てるやつは勝てるし勝てないやつは勝てないかな」
それは、そう!
「まあ、私としては魔物の方が強いとは思うね。人間よりもはるかに大きかったり素早かったりするだけでも脅威だから。氣術を使わないのなら、確実に人間は魔物にボコボコにされるね」
なるほどなるほど。身体的・物理的な話なら言うまでもなく魔物が勝つってことな。
だかしかし、オレたちの一族は例外に当たるらしい……ってクロードが言ってたなー、確か。
「ただ、ノア君みたいに一撃で屠れるBランク冒険者がいるかと聞かれれば、その答えは、基本的にはいない、ってなるかな。……これは余談だけどEDENで一番多い冒険者はCランク。次がB。そしてD、A、Sと続く。正直私の目からすれば、基本的にCもBもそんなに大差はないと思うね。そこはランクの昇格制度に起因してると思ってるんだけど、まあ今は置いておくね」
へぇー。Cランクが一番多いのか。下から二番目だし、確かにパーティを組んだ方が魔物の討伐もやりやすそうだ。
「さて、ここで問題!EDENのランクづけに当てはめるのなら、ノア君は一体何ランク相当と言えるでしょうか。……えーと、じゃあそれぞれに聞いてみようか。まずは秀君」
唐突に質問を投げかけたジンさんは、手始めにと秀を名指しする。
「そうだなぁ。普通に考えたらAとかじゃねぇのか?てか、ノアが本気ならSも軽く超えそうだけどなぁ」
はい?一体何言ってるんだ、秀のやつは。
Sって一番上だろ?冒険者たちの中のトップオブトップに、現段階で冒険者にすらなってないオレが勝てるわけないじゃん。
「ふんふん。じゃあ次は湊君」
「俺も秀と同じ意見だ。そもそも今までの話からして、B以下はありえないという感じだったからな」
「うっ。(み、見抜かれてる)……え、えーと次はシン君」
「兄さんにランクをつけようとするその行為自体が馬鹿げてる。そんなもので測れるほど兄さんは弱くない」
おーい、シン。それじゃ答えになってないぞー。
「な、なるほどねー(なんで怒ってるのか全然わかんないんだけどー?!)。……コホン。じゃ最後、ノア君本人はどうかな?」
「うーん、オレはBかな。さっき基本的にBランク冒険者でも一撃でCランクの魔物は討伐できないって言ってたけど、基本的ってことはそれに該当しない強者もいるってことだからさ。オレはまだ冒険者ですらないし、その辺りが無難なのかなーって」
ていうかあんな雑魚、誰でも一発で撃破できるよな?
……実はあれはただのでっかいクマで、本物のビックベアって魔物じゃなかったとか?
うーん…………わからん。
「ふんふん。ノア君は謙虚だね。じゃあ、正解発表ね。答えは……Aランク冒険者でした。まあ、ていってもこれは私目線の話だから確定ってわけじゃないんだけど。Aランク冒険者なら誰でもCランク程度の魔物なんて一瞬だろうから、ノア君もそれに匹敵すると思うよ」
Aランクか。秀や湊の言ってた通りだったなー。
正直言って、どの魔物がどのランクなのか、どんな冒険者が上位ランクにいるのかとか全くわからないからな。
EDENに行ったら調べてみるのもありかも?
「っていっても下位ランクの魔物でも厄介なやつはゴロゴロいるから油断は禁物だけどね」
「そりゃそうだぜ。油断こそが一番の大敵ってよく言うだろ。なぁ、ノア?」
なぜかオレを名指しした秀が、口の端を上げてこっちを見る。目は全然笑ってないけど。
「お、おう。もちろん分かってるって」
急に釘刺された。
確かにオレは誰よりも好奇心旺盛な男だけど、わざわざ注意しなくてもよくないかー?もう子どもでもないんだし。
「さてと、結構長話しちゃったね。えーと、結局ノア君のお願いは……」
「えーと……」
すっかり話し込んだせいで、またまた言いたかったことを忘れていた。
「もしこの街に許可証とかがないと入れなかった場合に、それを発行してもらえないかなって思ってたんだけど、必須のものじゃなかったみたいだから……お願いは無くなったかな」
「あー、そういうことね。……君たち四人に特に怪しい挙動は見られないし嘘もついてなさそうだし、何よりも私が気に入ったからね。問題なく入れるよー」
良かった。ここで詰んだら早くも冒険の夢が途絶えるところだった。
「ありがとう」
感謝の意をジンさんへ述べると笑顔で頷いてくれた。そして真っ直ぐに手を差し出した。
「ようこそ!大帝国グランドベゼルの帝都、アクロポリスへ!!」
よーし!めいいっぱい楽しむぞー!!
オレはその手を快く取り、これから始まるワクワクドキドキな体験に莫大な期待を寄せるのだった。
白い光に包まれたオレたちが初めに目にした光景は、今までで一度も見たことのない巨大な街だった。
オレたちの前方に聳えるその街の門前には多くの人が行列をつくっているように見えた。豆粒のように小さいけど、間違いないだろう。
「へぇー、あの街すごいな。あんなに人が並んでる。あれが普通なのかな」
「そうだなー。比較対象がねぇからなんとも言えねぇな。ま、それは冒険してみればわかるだろ」
「あ、そっか」
「はは。ノアはたまーに抜けてるところがあるよな。そこもまた可愛いからいいんだけどよ」
「ちょ、髪がグシャグシャになるだろ。やめろって」
秀に頭をわしゃわしゃされる。腕を掴んで抵抗してみたが、あまり効果は見られない。
「秀。兄さんが可愛いのは同意だがイチャつくのはやめろ。兄さんは俺のだ」
右腕をシンに引っ張られ後ろから抱きつかれる。
「わーってるよ。ったく、心が狭い主様だな。……さてと、これからどうするか」
「とりあえず、あの街で冒険者登録をするべきだろう。あれほど大きい街なら冒険者ギルドがあるはずだ」
「湊の言う通りだ。まずは冒険者にならなきゃ、オレたちの旅は始まらないからな!」
さて、早速あの行列の最後尾に並んでみたのだが、前にはざっと三十人ほどいるみたいだ。
見たところ、商人や冒険者らしき人が多いように感じる。
それにさっき、おそらくだけど冒険者らしき装備を整えた五、六人の人たちが後方の森へと入っていくのを見かけた。他にも木箱や樽を積み上げた馬車が街から出てきた。
こんなに毎日出入りが激しいなんて、相当栄えた街なんだろうな。ますます楽しみになってきた。
「きゃーっ!」
「ま、魔物?!マジかよっ!!」
「は、は、はやく大帝国師団を呼んでくれー!」
…………。
おいおい、嘘だろ。今スゲーいい気分だったのにさ。は?魔物?何でこのタイミングで来るんだ。
今はそういう気分じゃないって……。
「……みんな手を出すなよ。オレがやる」
後ろを向くと確かに巨大なクマらしきものがこちらへ走ってきているのがわかる。
図鑑で見たクマとの違いは、前足の鋭く長い爪と巨大な図体だろうか。
……だがそんなことはどうでもいいことだ。あいつは地獄行き決定だ。
オレの背丈の五、六倍はあるであろう巨大クマは進路を遮るオレへと右側から鋭い爪を振りかざす。
それを難なくかわし、クマの手の甲を踏み台にして、一気に首元まで跳んでいく。そして持っていた剣を抜き、首と胴を真っ二つにした。
side シン=オーガスト
兄さんが怒る姿をあまり見たことがないが、今回ばかりはそうもいかなかったようだ。
兄さんが小さな時からずっと憧れてきた冒険の大事な一歩目をあっさりと壊されたのだから、あれほど怒りをあらわにするのも無理はない。
兄さんは俺たちに「手を出すな」と言い、すぐ魔物の方へと歩き出したが、そのタイミングで変なおっさんが叫び出した。
「あ、おい!あんちゃん。あんちゃんみてぇなガキが勝てるほどそいつは甘くはーーー」
「おい。今なんて言った?」
このおっさん、兄さんのことをガキ呼ばわりしたよな?
「ひっ。なななんだよあんた。お、おれはただあぶねぇから戻れって言おうとしただけで……」
「シン。圧をかけるのはやめてやれ。……どうしてお前はノアのこととなると極端に心が狭くなるんだ?ったく。……すまねぇなおっさん。うちの連れが」
「い、いやー別に……ひっ」
俺はおっさんをひと睨みしてから湊の方へ向かった。
「湊。兄さんは?」
「ああ、ちょうど今倒したとこだな」
湊の返答の直後、魔物が倒れる大きな音が辺りに響いた。
side ノア=オーガスト
「はぁ。なんでこんなやつに邪魔をされなきゃいけないんだよ……。ん?……なんかあった?」
みんなのもとへ戻ろうとしたのだが、妙に視線を感じ顔を上げてみると、行列を成していた人たちが目を大きく見開いたまま動きを止めていた。
「あ、あんちゃんスゲーな。ビックベアを一撃で倒しちまうなんて……」
へぇー。あいつビックベアって魔物だったんだ。まあどうでもいいけど。
「そうかな?あいつ身体だけデカい、ただのデクノボウって感じだったけど」
「へ?で、デクノボウってあんちゃん。ビックベアはCランクに分類される魔物なんだぞ。それを見たところ冒険者でも師団員でもなさげな少年が倒すなんて……普通ありえないぞ?!」
「うーん……」
そんなこと言われてもな。弱かったものは弱かったんだし……。
「おい、おっさん。別に誰が倒したってかまわねぇだろ。ここにいる全員が無傷で助かったんだ。それだけで十分。そうだろ?」
ふぅー。ナイスだ、秀。正直なんて答えるのが正解なのか分からなかったから助かった。
「ま、まあ、たしかにそうだが……」
「あのー、すみません。ちょっとお話を伺いたいのでご同行していただけますか?」
突然後ろから声をかけられる。
「何だお前は?ノアに何の用だ」
「え、えっと、僕は大帝国第五師団『銀』の師団員のキースと申します。ほ、本来であれば僕たち大帝国師団の者が対処しなければならないところを、そ、その方が我々よりも迅速に討伐してくださったおかげで、一人の負傷者もありませんでした。ですので、そのお礼がしたいと思いお声をかけた次第です!」
湊の圧に気圧されたのか、所々声が震えていたが、彼はハキハキと話してくれた好青年だった。
歳は湊や秀に近そうだなー。
「そうか。……ならいい」
湊の圧が消え胸を撫で下ろすキースさん。
緊張感のある空気ではなくなったので、オレはキースさんに質問してみることにした。
「キースさん、だっけ?」
「はい、そうです」
「別にキースさんについて行くのは構わないけど、そこに着いたらひとつだけお願いしてもいいかな?」
「え、ええ。我々にできることであれば構いませんよ」
キースさんの後に続いていくと、そこはオレたちがさっきまで並んでいた門の検問所だった。キースさんは検問所に隣接した小屋の鍵を開けオレたちを中へ通す。
「小さくてすみません。ここは職員の休憩所に使っている所なので、そんなに大きくないんです。……今お茶を入れますね」
「あ、どうも」
数分してキースさんが戻ってくる。そしてテーブルには湯気がたった湯呑みが六つ置かれた。
ん?ここにいるのって五人だけじゃ……。
「あれ?お客人の方が私より早く着いちゃってるじゃん。かー、走ってくればよかった」
「ジ、ジン師団長。なんでおられなかったんですか。僕、間違えたのかと思って内心ドキドキだったんですよー」
「ごめん。ごめん。ちょうど近くの店で美味しそうなパンを売ってるって聞いて、ついね」
「つい、じゃないですよもう」
キースさんにジン師団長と呼ばれた鮮やかな薄紫色の髪をもつ女性は、オレたちの姿を目の端に捉えると、慌てたように挨拶をした。
「……ってこんなことしてる場合じゃないか。コホン。初めまして。私はジン=グレース。一応大帝国第五師団『銀』の師団長を務めてます。よろしくね!」
師団長ってことは、えーと大帝国師団ってやつのトップの人かな?
「えーと、オレはノア。それから、シンに秀に湊」
適当に指差しながら軽くみんなの紹介をする。
「ふんふん。で、ビックベアをあっという間に倒してくれたのが、ノア君ね」
「まあ、そうだよ」
向かってきた割に歯応えなさすぎて、あいつのせいで溜まったストレスはしっかり発散はできてないけどなー。
「ノア君!」
急に大声で名前を呼ばれ肩がビクッとなった。
「は、はい?」
「ほんんんんんんとにありがとう!」
腰を四十五度曲げて感謝を伝えるジンさん。そしてすぐに体を起こし、さらなる礼を述べた。
「いつもはもっと警備を厳重にしてるんだけど、今日はうちの師団は休暇を取ってる奴が多くてさ。いつもより人員が回せなかったんだよね。それに私も会議で呼ばれててすぐに対応できなかったんだ。だから、君が倒してくれて本当に助かったよ」
「いや、別に大したことはしてないんで」
てか、完全に私怨でやっただけだから、感謝されるのはなんか違う気もする。
「ふんふん。実に謙虚だね。そういう子は割と好きよ」
「あ、あのー……ノア殿が言っていた、我々にお願いしたいこととは何だったのでしょうか」
ジンさんの後ろに控えていたキースさんの質問でオレはそのことを思い出す。衝撃的なジンさんの登場ですっかり忘れていた。
「あ、そうだった。その前に質問なんだけど、この街に冒険者ギルドってある?」
「そりゃもちろん。なんならこの街、帝都アクロポリスにあるのが冒険者ギルド『EDEN』の本部だよ?ていうか、冒険者登録はEDEN本部じゃないと基本的にできないからね」
そうなの?じゃあ、ここに来て大正解だったってことか。
……もしかしたらクロードが気を利かせてくれたのかもしれないなー。感謝感謝。
「なるほど。もう一個質問いいか?」
「うん、全然構わないよ」
「この街に入るためには身分証とか通行証とかは必要なのか?」
正直これがないとダメだった場合、オレたちはそれらに該当するものを持ち合わせていないから、結構やばいんだよなー。
「んー、率直に言えばあると良い、って感じかな。冒険者ならギルドカード、商人なら商会のバッジって感じで、特定の職業ならそれだけで身分証にも通行証にもなり得るんだけど、一般の方ならそうはいかない。で、そういうときは私たち第五師団の師団員が簡単な質問等をして判断するの。だからまあ、ないならないで何の問題もないってこと」
そういうことか。じゃあオレたちでも入れるのか。だったらーーー
「まさかとは思うがギルドカードや商会のバッジがあれば見せるだけで素通り、なんてことないよな?」
……このシンの質問はきっと、そのどちらかを盗んで乱用しようと考える輩がいるかもしれないと考えての指摘だろうなー。てか、珍しく自分から発言したな。
シンの至極真っ当な質問にジンさんは苦笑気味に答える。
「ふふっ。そうね。シン君、だったっけ。良い質問ね。もちろん冒険者や商人の方でも一応軽く質問をするようにしてる。それと、私たち師団員の目で怪しいかどうかをしっかり確認してから通すようにはしてるかな」
「ふむふむ。てことはオレたちでもこの街に入れるってことだよな?」
「あら?ノア君、冒険者じゃなかったのね。ビックベアを一振りで倒したって話だから、てっきり手慣れた冒険者かと思ってた」
……ビックベアとやらを倒したことはそんなにすごいのだろうか。
「あのー、さっきも思ったんだけど、ビックベアとかっていう魔物って、そんなに強いの?」
「んーとね、ビックベアはCランク指定の魔物だからそこそこ強いって感じなんだけど……。あ、魔物にはS、A、B、C、Dって感じで基本的に五段階のランクづけがEDENによって行われてるんだよね。ちなみに冒険者たちにも同じランクづけがされてるの。そのなかのCランクだから、確かにこれだけ聴いたら何てことはなさそうでしょ?でも、一瞬で片付けたことと、時間をかけてようやく倒したこととでは、全く話が変わってくる」
ほーん。言われてみればそうか。
ジンさんのわかりやすーい説明にオレは納得の相槌を打つ。
「基本的にソロの冒険者は早死するやつが多い。その理由はたったのひとりで勝てるほど、魔物は決して弱くはないから。ソロで活動していけるのはほんの一握りの天才だけ。基本はパーティを組む。そのパーティにも同じランクづけがなされてるんだけど、そのパーティのランクと魔物のランクが討伐可能な魔物を示す指標と考えるのが一般的なんだ」
ほんほん。わかるような、わからないような?
「つまり、一対多数で戦うのがセオリーで、同ランクなら討伐可能ってこと。まあ、Dランクの魔物だけは例外で、同じDランクの冒険者一人でも倒せるかな」
ふむふむ。Dランクの魔物はソロ討伐が可能で、それ以外は同ランクのパーティで挑むのが基本ってことか。
「で、話は戻るけど、ノア君は今回Cランクパーティなら勝てる相手を、ひとりで、しかも一撃で倒してしまったってわけ。だからみんなから騒がれてるってわけよ」
「あーね。やっと理解できた。ありがとな、ジンさん」
お礼を伝えれば、ジンさんはグッドサインを向けてくれた。
「単純な疑問だが、そのCランクの魔物とBランク冒険者ひとりの場合はどちらが強いとされているんだ?」
湊の的確な質問に、ジンさんは胸の前で腕を組んでうなる。
「んー、相性とかあるからなー。なんともいえないけどー……勝てるやつは勝てるし勝てないやつは勝てないかな」
それは、そう!
「まあ、私としては魔物の方が強いとは思うね。人間よりもはるかに大きかったり素早かったりするだけでも脅威だから。氣術を使わないのなら、確実に人間は魔物にボコボコにされるね」
なるほどなるほど。身体的・物理的な話なら言うまでもなく魔物が勝つってことな。
だかしかし、オレたちの一族は例外に当たるらしい……ってクロードが言ってたなー、確か。
「ただ、ノア君みたいに一撃で屠れるBランク冒険者がいるかと聞かれれば、その答えは、基本的にはいない、ってなるかな。……これは余談だけどEDENで一番多い冒険者はCランク。次がB。そしてD、A、Sと続く。正直私の目からすれば、基本的にCもBもそんなに大差はないと思うね。そこはランクの昇格制度に起因してると思ってるんだけど、まあ今は置いておくね」
へぇー。Cランクが一番多いのか。下から二番目だし、確かにパーティを組んだ方が魔物の討伐もやりやすそうだ。
「さて、ここで問題!EDENのランクづけに当てはめるのなら、ノア君は一体何ランク相当と言えるでしょうか。……えーと、じゃあそれぞれに聞いてみようか。まずは秀君」
唐突に質問を投げかけたジンさんは、手始めにと秀を名指しする。
「そうだなぁ。普通に考えたらAとかじゃねぇのか?てか、ノアが本気ならSも軽く超えそうだけどなぁ」
はい?一体何言ってるんだ、秀のやつは。
Sって一番上だろ?冒険者たちの中のトップオブトップに、現段階で冒険者にすらなってないオレが勝てるわけないじゃん。
「ふんふん。じゃあ次は湊君」
「俺も秀と同じ意見だ。そもそも今までの話からして、B以下はありえないという感じだったからな」
「うっ。(み、見抜かれてる)……え、えーと次はシン君」
「兄さんにランクをつけようとするその行為自体が馬鹿げてる。そんなもので測れるほど兄さんは弱くない」
おーい、シン。それじゃ答えになってないぞー。
「な、なるほどねー(なんで怒ってるのか全然わかんないんだけどー?!)。……コホン。じゃ最後、ノア君本人はどうかな?」
「うーん、オレはBかな。さっき基本的にBランク冒険者でも一撃でCランクの魔物は討伐できないって言ってたけど、基本的ってことはそれに該当しない強者もいるってことだからさ。オレはまだ冒険者ですらないし、その辺りが無難なのかなーって」
ていうかあんな雑魚、誰でも一発で撃破できるよな?
……実はあれはただのでっかいクマで、本物のビックベアって魔物じゃなかったとか?
うーん…………わからん。
「ふんふん。ノア君は謙虚だね。じゃあ、正解発表ね。答えは……Aランク冒険者でした。まあ、ていってもこれは私目線の話だから確定ってわけじゃないんだけど。Aランク冒険者なら誰でもCランク程度の魔物なんて一瞬だろうから、ノア君もそれに匹敵すると思うよ」
Aランクか。秀や湊の言ってた通りだったなー。
正直言って、どの魔物がどのランクなのか、どんな冒険者が上位ランクにいるのかとか全くわからないからな。
EDENに行ったら調べてみるのもありかも?
「っていっても下位ランクの魔物でも厄介なやつはゴロゴロいるから油断は禁物だけどね」
「そりゃそうだぜ。油断こそが一番の大敵ってよく言うだろ。なぁ、ノア?」
なぜかオレを名指しした秀が、口の端を上げてこっちを見る。目は全然笑ってないけど。
「お、おう。もちろん分かってるって」
急に釘刺された。
確かにオレは誰よりも好奇心旺盛な男だけど、わざわざ注意しなくてもよくないかー?もう子どもでもないんだし。
「さてと、結構長話しちゃったね。えーと、結局ノア君のお願いは……」
「えーと……」
すっかり話し込んだせいで、またまた言いたかったことを忘れていた。
「もしこの街に許可証とかがないと入れなかった場合に、それを発行してもらえないかなって思ってたんだけど、必須のものじゃなかったみたいだから……お願いは無くなったかな」
「あー、そういうことね。……君たち四人に特に怪しい挙動は見られないし嘘もついてなさそうだし、何よりも私が気に入ったからね。問題なく入れるよー」
良かった。ここで詰んだら早くも冒険の夢が途絶えるところだった。
「ありがとう」
感謝の意をジンさんへ述べると笑顔で頷いてくれた。そして真っ直ぐに手を差し出した。
「ようこそ!大帝国グランドベゼルの帝都、アクロポリスへ!!」
よーし!めいいっぱい楽しむぞー!!
オレはその手を快く取り、これから始まるワクワクドキドキな体験に莫大な期待を寄せるのだった。
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