碧天のノアズアーク

世良シンア

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ダスク・ブリガンド編

18 本当の強者との対面

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side ドミニク

「ほほう。ノアズアークとはEDENの冒険者パーティのことでしたか……」

昨夜駒に命令して調べさせた結果が早くも私の元に届いた。私の駒は優秀で助かります。性格に難がある駒ばかりではありますが。

「それにしても、このパーティは未だDランク。メンバーもひとりがAランク冒険者というだけで他はCランク冒険者のみですね……」

Aランク冒険者は厄介でしょうが、この人数とランクの低さであればダスクを潰すのは難しいはず。たが実際にそれは成し遂げられている。

実に興味深い。ぜひ私の駒に加えたいものです。

「ふむ。短時間の調べではこれが限界ですか」

私は報告書をペラペラとめくる。

……特に使えそうな情報はないですね。

私は暖炉へと報告書を放り投げた。

「どうしますー?ドミニク様ー」

くるくるとナイフを投げながら私の考えを待つ駒。

「ふむ。もう少し詳細な情報を手に入れてから行動しましょうか。私は危ない橋は渡らない主義なので」

ゴードンは本能的に生きている獣だが、私は慎重に生きる人間です。基本的に念入りな計画とそれを支える確かで十分な情報がなければ動きません。ノアズアークを文字だけで見ればひとりの強者がいるだけの、ただの雑魚の群れです。

ですが、それは文面上の話。実際はどうかなんて戦ってみなければわからない。私はダスクの二の舞になるのはごめんですから。

「えー。ちゃっちゃと殺しましょうよー」

この駒はどうも物を奪うより命を奪うほうを好む質のようです。仕事はしっかりこなしますが、この性格は少々面倒ですね。

「それはもう少し先です。その時が来ればあなたに任せます」

「いやっほー!マジかーっ。俺、みんなに自慢してくるー!!」

どたどたと音を立てて駒はこの部屋を出て行った。

ようやく五月蝿い駒が消えました。本当に扱いが面倒です。

「さて、次の財宝は……」

私が次計画の書類を探そうとしたその矢先だった。

『バンッ!』

この廃教会の祈りの間、つまりは一番大きな部屋から、妙な音が鳴り響いた。

破壊音、ですか……これは侵入者確定ですね。

祈りの間はちょうどこの部屋の隣。
仕方ありません。様子を見に行きましょうか。






side ゼクス

「ここが私たちの最も重要な目的地だ」

海沿いの崖近くにある古びた建物。その壁には苔や蔓が生えている。

「ここがかぁぁ?こんなボロっちぃ建物に例の物があるとは思えねぇんだが」

「お前はまた話を忘れたな。前に会ったラグジュアリの貴族は覚えているか」

「……いたかぁ?そんなやつ」

……ノインの記憶力はどうなっている。お前の脳の大きさはミジンコ並みか?

「………その貴族の話ではここをアジトにするブリガンドとかいうやつらが、例の物を奪ったらしい」

一見すればただの水晶玉にしか見えないアレを、わざわざ持ち帰るとはな。その嗅覚には恐れ入るが、あれは私たちの悲願の成就になくてはならない物だ。

奪わせてもらおう。

「なるほどなぁ。ま、つまりこん中にあるもんを全部奪えばいいわけだなぁ?」

「全部はいらんが、とりあえずはそういうことだ」

ノインは指をポキポキとならし戦闘体制に入り始めた。

「つまり俺らの邪魔をするやつは全員ぶっ殺していいんだなぁ?!」

……はぁ。この戦闘狂が。

「……ああ、そういうことだ」

本当にこいつの手綱を握るのは疲れる。もはやこいつを制御する綱は、とっくの昔に千切れているのかもしれん。

……好きにやらせるほかあるまい。

「んじゃま……挨拶がわりの一発だ!!」

ノインは軽く握った拳で扉を殴った。鋭い一撃が入り、扉は一瞬にして破壊される。そしてぱらぱらと木屑や扉の破片が降ってくる。

こいつの辞書には扉を破るではなく普通に開けるという文字はないのだろうな。

私は頭や服についた残骸を丁寧に払い中へと入る。ノインはといえば扉を殴ってすぐ中へと突進していった。

「「「………」」」

「おいおい、雑魚すぎるぞ。俺の人生で今までにないくれぇ、やさーしく殴っただろ?」

私がゴミを払っている隙に、ノインは早くも中にいたやつらを皆殺しにしてしまったらしい。そして本人曰く、優しく殴ったそうだ。

ノインの優しいは当てにならん。同情しよう、人間ども。

「なっ……」

「あぁ?まだいんじゃねぇか。おい、お前」

別の部屋から出てきた男は、この状況を見てかなり驚いているようだ。男は丸眼鏡をかけており、その長髪は暗い緑色をしている。

「お前、つえぇか?」

ノインは男へと指を指す。雑魚を相手にして変に戦闘欲が湧いてしまっているのだろう。ノインは強者との闘いを好むからな。

「……強い、というのは一体どういう意味での強さですか?」

ほう。意外にもこの男は私たちに怯えることなく平然とした感じで話せてるな。肝が据わっている。

「そりゃあ決まってんだろ。……こういう意味だぜ!!」

ノインの速く力強い拳が男を襲う。男はすぐに腰につけていた武器を取り反撃した。その武器は投げナイフ。ノインの頬を掠めるが、ノインは無傷。一方反撃し損ねた男の方はノインの一撃を胸に喰らった。

「ぐっ……!」

男は地面に叩きつけられる形となった。

「へぇぇ。さっきの雑魚連中とはちげぇな。ま、あんま大差ねぇけど」

本当に優しく殴ってたんだな。

あいつの優しいは信じられんと思っていたが……どうやらそうでもないらしい。

「じゃあ次は三十パーセントの威力にしてやろう。光栄に思えよ」

ノインが拳を強く握る。腕にはいくつもの筋が伸びている。

三十パーセントというのは、氣を使わないただのパンチのことだろう。そしてさっきの手加減バージョンとは違い、どうやら本気で力を込めているらしい。

「おいコラ!侵入者ども。俺らのアジトでなに好き勝手やってくれてんだ?!」

「あぁ?」

ノインは振り上げた拳を下ろし声のする方へと顔だけ向けた。

「ここは盗賊集団ブリガンドの領域だ。……殺すぞ?」

「いやっほー。さすが兄貴ー。もっと言ってやってくだせぇ」

がやがやと周囲が騒がしくなる。辺りを見ればあちこちに黒いローブを着た奴らがいた。

邪魔なゴミどもがまだこんなにいるとは。面倒だな。

……燃やし尽くすか?

「おいおい。こんなに遊び相手がいんのかよ。嬉しいなぁ。俺のために来てくれたんだろ?」

「「「………」」」

この一言にここにいる全員が沈黙した。それもそうだろう。ノインの言っていることは常人には理解不能だからな。

「はあ?なに言ってやがんだ?」
「お前、状況わかってんのかぁー?」
「そこは、おかあさーん助けてー、つって泣き叫ぶところだろ?」

「「「ギャハハッ」」」

汚い笑い声が教会内を飛び交う。

五月蝿いゴミどもだな。だが無闇に燃やし尽くすわけにもいかないか。

燃やしたいのはやまやまだが、探し物を奪取するまではこの教会を灰にはできない。万が一にも例の物が壊れては困るからな。

まあ、このゴミどもはノインが殺すだろう。私は例の物を漁るとしよう。

「ドミニク様ー。こいつらってもいいっすよね?」 

「……っ殺せ!」

ノインの手により地面に転がされた男の一言によって、ゴミどもが一斉にノインに飛びかかる。

さて、何秒持つのやら……。







side ノア=オーガスト

さっきまでとは一転して、緑がほとんど見られない荒廃した地。動物たちが安らげそうなところは微塵もない。

オレたちは再びこの荒れ果てた地、アンダーグラウンドへと足を踏み入れている。今度はダスクではなくブリガンドが目的の場所だ。

ただ、ダスクの時のように相手を壊滅させようというわけではない。とりあえずは、様子を見に行ってオレたちだけでも対処できそうならばこのまま突っ込むって感じだ。

オレもリュウと同じで、リュウの数少ない、というかほぼ唯一と言っていいような恩人さんを助けたいと思うしな。

「あれが、ブリガンドの、アジト……」

リュウが指を指した先には、エルの話していた感じの教会があった。思ったよりも大きな建物で、それは崖付近に建てられており、奥には太陽の光でキラキラと水面を輝かせる海が広がっている。

立地的にかなり絶景の場所だと思う。根源界ヴァルハラには海なかったし、オレはここ好きだなー。

「近くで見ると確かにボロい……」

さっきは遠目からだったし割りかし綺麗な教会っぽかったけど、よく見れば建物の柱は腐っていて触ると木屑が落ちる。

それに……。

「……なんで扉がないんだ?」

そう。この教会にはなぜかドアがない。ていうか、誰でも歓迎しますよーってな感じで空いている。そして、たぶんここに扉があったんだろうな、という位置に大きな欠落が見られる。

一体どういうことだ?

「そういう造りの建物、なのか……?」

そうなるとかなりセキュリティの薄い建物ってことになるけど……。

「……た、す………け……て、く…………れ……っ……」

その不思議な教会の中から、小さな掠れ声で助けを呼ぶ誰かの声がした。オレ、シン、リュウの全員がその声に反応する。

「……今、中から助けてって声が聞こえたよな?」

「うん……」

「どうやらブリガンドに何かあったらしいな」

シンの言う通りだろう。ダスクの時みたいにここに来るまで何の邪魔もなかったし、あまりにも無警戒すぎる。その悪名を世に轟かせているブリガンドが、ここまで簡単に侵入者を通すはずがないだろうし。

「二人とも、警戒しながら行くぞ」

「うん……!」
「わかった」

オレは一歩、また一歩と慎重に足を進める。その度にガラスや木の破片を踏んだがそんなことはお構いなしだ。

中は意外にも薄暗い。この教会には窓があまりないのかもしれないな。

『ペチャッ』

足から奇妙な音が鳴った。誰かが水をぶちまけたのかは分からないけど、これは液体を踏んだ音だ。そして室内に入った途端に強く香った異臭。

これは……血溜まりか……?!

「まだ居やがったのかぁ。これ以上俺の鬱憤を溜めさせんじゃねぇよぉぉっ」

声をあげた謎の人物は、持っていた何かを勢いよくこちらに投げた。その何かはオレたち三人の下腹部あたり目掛けて飛んできた。

「避けろっ!」

オレは二人に指示しつつその物体を右斜め方向に避けた。二人は左斜め方向に避けてこれを回避した。

これ、死体かよ。しかも首がありえないほどに
潰れて……なっ……!

投げられた死体に気を取られている隙に、いつのまにかローブを着た人物がオレの目の前まで来ていた。

オレはそれを視界の端で捉え、ギリギリで敵の素早い拳をかわし、距離を取るために後方へ飛び退いた。だが、飛び退いた先は平らな地面ではなく謎の物体の上だっため、着地をミスし、よろけた。体勢を崩しながらも見ると、それはこいつが投げた死体だった。

しまった……!

その隙を逃さず、敵はオレの背中へと回り込みもう一度殴りかかってきた。地面に両足はギリついてはいるから踏ん張りは効くけど、体勢は全く整ってない。

これは……間に合わない……!

オレは避けることではなくどうにかダメージを軽減することを考えることにした。避けられないのならいかにダメージを抑えるかを考えた方がいい。

オレは瞬時に振り向いた。無防備な背中でくらうより防御体勢を取って構えた状態で受ける方がもちろんいい。

そして両腕をクロスして拳を受けようとしたが、右腕が予定の位置につく前に左腕へと衝撃が走った。

マジかよ……!

「ぐぅっ……!」

「兄さん……!!」

オレはぶっ飛ばされた。斜め上方向へと。

オレがぶっ飛んだ先には綺麗なステンドグラスの装飾があったが、オレがぶつかったせいでそれは見事に砕け散った。

そしてオレはガラスの雨が降る中、地面へと落下した。落下した時の衝撃など痛くも痒くもないが、それよりも……。

左腕が痺れて動かない。オレは戦う時はすぐに防御のための基本的な氣を身体中に流すようにしてる。そうクロードたちに教わったからな。そして今回は特に両腕に氣を流していた。

この基本防御術はカズハの特殊氣術のような万能性と高い防御力を誇るわけではないが、これをするとしないでは戦いが大きく変わる。これを極めればオレがさっきしたみたいに、一部分の氣の量を変えて防御力を上げることだって可能だ。

なのに何だあの威力。右腕が間に合わなかったとはいえ、神仙族のオレでも左腕が麻痺してるのがヒシヒシと伝わってくる。幸い骨は折れてはなさそうだけど……こんなのヴォル爺やクロードとの鍛錬以来じゃないか……?

こいつ、めちゃくちゃ強い……!

「おっ。なんだ、今の。あんま手応えねぇなぁ。イライラしてたしまあまあ本気で殴ったんだがなぁぁ。おもしれぇじゃねぇか」

「……おい」

「あぁ?」

「俺の兄さんに……俺のノアに何してんだ?お前……」

……まずいっ!こんなとこで倒れてる場合じゃない!早く起きろ、オレ!!

じゃないと、シンがあの力を使っちまう……!

オレは麻痺していない右腕を使い、何とか起き上がる。左腕はだらんとした状態で、まだ動かせそうにない。

「シン!」

「……殺す」

シンに呼びかける。だが、返事はない。オレと同じシンの金色の眼が、みるみるうちに赤く染まっていく。

「おいおい、なんだ、その力?お前もおもしろそうじゃねぇか」

それだけは、その力だけはシンに使わせたくないんだ……!

「俺を楽しませてくれよぉ!」

またシンが苦しむ姿は、嫌なんだ……!

「シン!!!!!!」

オレはめいいっぱいの声で弟の名前を叫んだ。

「……………兄、さん……」

オレの魂の叫びが届いたのか、ようやくこっちを向いたシン。そしてその眼は金色へと変わっていく。

……良かった……本当に、良かった……。

「オレは、大丈夫だ。ほら見ろ!腕だってこの通り、余裕で動かせる」

オレはちょうど動かせるようになった左腕をぶんぶんと回して、オレが無事なことを懸命にアピールする。

「ほんとに、大丈夫……?ノア、兄ちゃん」

いつの間にかオレの隣に来ていたリュウ。リュウは心配してくれてるのか、オレの服の裾をちょっぴり掴んで上目遣いで、そして不安そうな顔でこちらを見た。

「全然平気さ。まったく、シンもリュウも心配症だなー。てか、リュウ。ここガラスだらけで危ないから、こっちに行こうな」

オレはリュウの手を取り、ガラスの破片が少ない場所へと避難した。

「アハッ。なんだなんだぁ?俺の攻撃受けてピンピンしてやがるガキに、妙な力を使おうとしたガキ。どっちも血闘しがいがあるじゃねぇかぁ!!」

オレを殴った敵は楽しそうに笑っている。

「おまえら、名前はなんだ?」

「「…………」」

……こんな得体の知れないやつに名乗れるわけないじゃん。

「あーいいいい。そういやさっき呼んでたなぁ。おまえがノアでおまえがシンか」

敵はオレとシンを順番に指した。そして何が楽しいのか知らないけど終始にやけている。

「よぉし。今さっきまでの俺の鬱憤を一瞬で晴らしてくれたことを賞して、特別におまえらには俺の真名を教えてやろう。俺はなぁ、あぁー、なんだったか……」

女は腕を組んで考え始めた。指をポンポンと叩きながら、時間をかけて考えている。そして段々とそのスピードは速くなり、最後には女は思いっきりフード越しに頭を掻きむしった。

「だぁー、思い出せん!もういいわ、ノインだ。ノイン」

ノインと称する女は「いっつも忘れんだよなぁ、名前。なんだったっけかぁ?」とぼやいた。

え……自分の名前忘れることなんてあるか?

オレは敵の意味不明な言動に虚をつかれ、困惑してしまった。

てかじゃあ、ノインってなんだよ。

「俺は強者の名前だけは覚えておきたい質でなぁ。つまり、俺が名前を聞いた時はそいつを強者と認めた時っつうことだ」

「あー……よく知らないあんたに強者って認められても全く嬉しくはないんだけど……」

けど、あのノインとかいう女が相当強いのは確かだ。たかが拳一発だけど、それだけでその強さが滲み出てる。下手したらヴォル爺やクロード並みかもしれない。

「アハッ。まあそうかもなぁ。じゃあ特別に俺の秘密をひとつ打ち明けてやろう。俺はなぁーーー」

「そこまでだ、ノイン」

意気揚々と話そうとしたノインを制したのは、ローブを着た謎の男だった。割れたステンドグラスの隙間から差し込む光が影になり、その顔はあまり良く見えない。

「おい、今いいとこなんだからよぉ。邪魔すんじゃねぇよ、ゼクス」

「目的の物は手に入れた。もうここに用はない。行くぞ」

ノインにゼクスと呼ばれた男は、どうやらこの場を去ろうとしているらしい。

目的の物ってなんだ……?

ここにあるもので目ぼしいのものといえば、盗賊集団ブリガンドが収集した宝だろうけど……。

「チッ。せっかくおもしれぇことになりそうだったってのによぉ。後でこの借り返せよなぁ」

ノインはゼクスと呼ばれた男の近くへ飛び移った。

「……灰と化せ」

そう男が呟いた瞬間だった。一瞬にして教会全体が、見たこともない青い炎に包まれてしまった。

マジかよ……!

この動揺の隙にローブを着た二人組は消えてしまったらしい。さっきまであそこにいたはずなのに、もういないからな。

「リュウ、オレから絶対離れるな」

「うん……!」

「シン!無事か!!」

「問題ない。早くこっちに来い……!」

「ああ……!リュウ行くぞ……リュウ?」

リュウの手を取りシンのもとへ向かおうとすると、リュウは別の方向を向いていた。

「どうしたんだ、リュウ。早く出ないとーーー」

「あそこ、に、お姉、ちゃんが……」

お姉ちゃんって……オレたちが探してたセツナか?!

リュウの指を指した場所には、確かにぐったりと横たわる女がいた。

あのままだと確実にこの炎に焼かれて死ぬ!

オレはリュウの肩を勢いよく掴んだ。

「オレが助けに行く……!だからリュウはシンと一緒に外に出るんだ。いいな!」

「う、うん。……絶対、帰って、きて……!」

リュウの心配そうな眼がオレを射抜く。目が少しだけ潤んでいるように見えた。

「当たり前だろ?……さあ、早く!」

オレはリュウの背中を押した。そしてすぐにセツナのもとへと走り出す。

あっつ。……この青い炎は普通の氣術じゃないな。火系統の氣術を使う人は何人もいるけど、普通は赤い炎で青じゃない。それに熱さも普通の火系統氣術とは桁違いのように感じる。

「息は……まだあるな」

オレは顔を近づけ吐息の音を確認する。メラメラと燃え盛る炎の音の中にかすかに聞こえてきた。

「……よし。あとは出るだけ……なんだけど……」

セツナを抱え、出口へ行こうとした直前、行手を阻むように前方に次々と燃えた屋根の残骸が降ってくる。まるでオレたちを閉じ込めたい誰かが意図的にそうしているみたいだ。

「……これはもしや、万事休すってやつ……?」









side シン

「ぐぅっ……!」

「兄さん……!!」

兄さんが殴られ、飛ばされた。その表情は苦しそうだった。そして落ちた。血とガラスが撒き散らされた地面へと。

………………………。

「おっ。なんだ、今の。あんま手応えねぇなぁ。イライラしてたしまあまあ本気で殴ったんだがなぁぁ。おもしれぇじゃねぇか」

……ふざけるなよ……っ!

「……おい」

「あぁ?」 

お前は、逆鱗に触れた。

「俺の兄さんに……俺のノアに何してんだ?お前……」

オレのノアを傷つけてタダで済むと思うな。

「シン!」

「……殺す」

俺はいつの間にか眼の力を発動し始めていた。いつもは制御しているのだが、どうもノアのこととなると抑えられない。

「おいおい、なんだ、その力?お前もおもしろそうじゃねぇか!」

それがお前の最後の言葉になるぞ。

「俺を楽しませてくれよぉ!!」

殺してやるよ……愚物がぁぁぁぁ!!

「シン!!!!!!」

剣を振りかざそうとした瞬間、俺は静止してしまった。俺の愛する者の声が聞こえてしまったのだ。

ノア……。

「……………兄、さん…」

俺は飛び込んできた声の方へと顔を向けた。そこにはこの場に似つかない笑顔をした兄さんの姿があった。

無事、だった……。

俺は何を言っているんだ?それはそうだろう。俺の兄さんはそんな簡単に死ぬ人間ではない。

分かっている。そんなことは分かっている。だが……。

どうしようもなく、心配になる。いつか兄さんが突然この世から消えてしまう。あり得ないと分かっていても、その可能性を追ってしまう。

俺は……兄さんがいない世界では……生きてはいけない。

「オレは大丈夫だ。ほら見ろ!腕だってこの通り余裕で動かせる」

兄さんは俺に心配かけまいと懸命に無事だとアピールしている。その姿に俺はほっとした。俺の命も同然たる兄さんが生きていることを、ようやくはっきりと自覚したのだ。

「アハッ。なんだなんだぁ?俺の攻撃受けてピンピンしてやがるガキに、妙な力を使おうとしたガキ。どっちも血闘しがいがあるじゃねぇかぁ!!」

兄さんが無事だったこと素直に嬉しい。ただ……。

「よぉし。今までの俺の鬱憤を一瞬で晴らしてくれたことを賞して、特別におまえらには俺の真名を教えてやろう。俺はなぁ、あぁー、なんだったか……」

やはり兄さんは俺にこの力を行使して欲しくはないらしい。

「だぁーもう、思い出せん!もういいわ、ノインだ。ノイン」

以前、兄さんからこの力は自分のこと以外には使わないでほしいと頼まれた。俺自身が窮地に立たされた時のみ使ってくれ、と。

つまり、兄さんがどんなに危険な目に遭っていてもこの力は使うなということだ。兄さんがこう言ってくる原因は昔の俺にある。今ならその問題も完全に解決しているが、兄さんは聞く耳を持ってくれない。よほどあの時のことを後悔しているようだった。

「俺は強者の名前だけは覚えておきたい質でなぁ。つまり、俺が名前を聞いた時はそいつを強者と認めた時っつうことだ」

だが俺は、兄さんのことになると俺自身を抑えられなくなる。それは重々承知しているが、これは理性で抑えられるほど単純な話でもない。俺にとってそれほど兄さんの存在は大きい。

「あー……よく知らないあんたに強者って認められても全く嬉しくはないんだけど……」

兄さんの言葉にはもちろん従いたいが、俺にだって兄さんを守りたい気持ちがある。これは決して譲れない俺のポリシーだ。俺の唯一の我儘を、兄さんには許してもらいたい。

「アハッ。まあそうかもなぁ。じゃあ特別に俺の秘密を一つ打ち明けてやろう。俺はなぁ、ーーー」

「そこまでだ、ノイン」

兄さんを殴った女以外にもどうやらまだ敵がいた。そいつはこの教会を青い炎で燃やし始めた。俺は兄さんたちにこっちへ来るように促したが、結局来たのはリュウだけだった。聞けば俺と一緒に外へ出るように言われたらしい。兄さんは後から向かうから、と。

また自分を蔑ろにしてひとりで無茶をする。少しは俺の気持ちも考えてくれ、兄さん……!























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仙道
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 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

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