碧天のノアズアーク

世良シンア

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ダスク・ブリガンド編

20 葛藤/魔人という種族

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side ノア=オーガスト

「んー……ねみぃ……」

窓から差し込む朝日が顔に直で伝わってくる。朝だ、起きろ、と告げているかのようだ。

オレは腕を目元に乗せて、朝日が目に当たらないようにする。そしてゆっくりと目を開け身体を起こした。

「ふっ……んんーっ」

背筋をぐーんと伸ばし、動き始める準備をする。そしてオレは窓の外を見た。

うん、今日は晴れ晴れとしたいい天気だな。天気がいいと不思議と心も弾んでくるよなー。

「おばちゃーん。あっちの畑には水あげたー?」

「あら、まだやってないわー。カズハちゃん、お願いできる?」

「任せてー!」

「あの、ここの畑の作物は収穫しますか?」

「そうね。じゃあお願いね、エルちゃん」

「はい!」

聞き覚えのある声が外から聞こえてくる。窓を開け下の方を覗けば、カズハとエルが近くの畑で農作業の手伝いをしている様子が目に入った。

「二人とも働き者だなー」

オレは今起きたばっかだってのに。

ん?あそこにいるのは……リズとフィッツかな。

カズハとエルが手伝っている畑のさらに奥に、見覚えのある二人がいた。

昨日の夜には馬車はなかったはずだから……朝方に帰ってきたのかな……?

『ガチャ』

「おはよう、兄さん」

「おはよう、シン」

そろそろマジで動かないとなー。

オレはベットから降り、身支度を整える。今日はこのまま朝ご飯を食べて、リズたちの準備が終わり次第、アクロポリスに戻る予定だ。

「シン、今って何時かわかるか?」

「だいたい六時だ。あと起きてないのはあの女とリュウだけだ」

おっと。いつもより早く起きれたな。朝日が効いたのかもしれない。
……てかあの女って、相変わらずオレの弟は口が悪いんだから。

「二人はそのまま起こさないようにするぞ」

あの二人は特に疲れが溜まってるだろうからな。他の人より休息が必要なはずだ。

「……兄さん」

「ん?どうしたー?」

オレは部屋に置いてあった姿見の前で身だしなみを整えながら、シンの話を聞こうとする。

「兄さんは俺に眼の力……『終焉之眼マルス』を使って欲しくはないんだよな」

なっ……。

オレは突拍子もないシンの問いかけに手を止めた。そしてシンの方へと身体を向ける。

「あ、当たり前だろ。あの力は、言わば諸刃の剣だ。シンがあの時みたいに苦しむのは……オレはもう見たくないんだよ」

それはオレのトラウマと言ってもいい。オレの心に深く刻み込まれた傷そのもの。簡単に治せはしない。

「だが兄さん。今の俺ならあの時みたいにはーーー」

「ダメだ!」

……はっ。しまった。

オレはシンに思いっきり怒鳴りつけてしまった。

「わ、わるい、シン」

オレはシンの顔を見れず、下を向いきつつ謝罪した。

「おいおいなんだぁ。朝っぱらからうるせぇぞ」

オレの声により駆けつけた秀は、手に包丁を持って部屋の中に入ってきた。

「いやなんでもない……んだけど、秀、その手に持ってるのは……?」

「あ?これか?どっからどう見ても包丁だろ」

「いやそうなんだけどさ、なんでここに持ってきてるわけ……?」

「ああ。そりゃあお前、俺が朝飯作ってたからだろうが」

朝ごはん作ってくれてんのはありがたいけど……包丁は置いてきてほしいなー……。

「あー……ありがと」

「おう。そろそろできっから、二人とも早めに降りてこいよ」







秀が作ってくれた朝ご飯を食べた後、オレは残りの支度を整えるために部屋に向かった。料理の材料は村の人が提供してくれたらしい。カズハとエルへの感謝も兼ねてということだった。

本当にありがたいことだな。

村が大変な時に旅人への配慮もできるなんて、もう最高の村でしかない。

それから朝食時にはちょうどリュウとセツナも降りてきた。楽しく会話しながら食べてたけど、どうにもセツナは不機嫌そうだったな。やっぱり、人と話すのは嫌なんだろう。ちょっと、寂しいよなー。

オレは階段を登って右手奥にある部屋へ入り、扉を閉める。

「はぁ。なんで怒鳴っちゃったかな……」

オレは扉に寄りかかり、ずるずると床に座り込んだ。

シンの言い分はわかってる。

今ならあの眼を制御できているからなんの問題もないって話だ。オレだってそれは理解してる。してるけど、さ……。

だからと言ってあの出来事を払拭できるわけじゃない。あれがオレの心の奥底にこびりついてる限り、オレは何度でもシンに言ってしまう気がする。

眼の力は使うな、って。

「はぁぁ……」

オレは深いため息をつく。

シンの好きにさせてやりたい気持ちと、シンが苦しむ姿を見たくないという気持ちの矛盾がオレを苦しめる。

あんなことは二度と起きてはならない。

あの時、幼いながらも強く刻み込んだこの決意が、未だにオレを縛っている。

「どうしたらいいんだよ……」

『コンコンコン』

「ノアー。後もう少ししたら……って、なんで開かないの?この扉」

カ、カズハ……?!

オレは慌てて立ち上がり、扉を開けた。

「ああ、ごめん。ちょっと荷物置いててさ……」

「そういうことねー。リズがさっき言ってたんだけど、そろそろこの村を出たいってさー」

「あ、ああ。分かった。オレもすぐ行く」

「りょうかーい。私は先に外出てるねー」

そう言うとカズハは階段を降りていった。

……ここでうだうだ考えても解決しないだろうし、一旦保留にしよう。ひとまずはみんなとアクロポリスに帰ろう。

オレはまとめた荷物を指輪を使って亜空間へと入れ込み、下へ降りようとする。だがその前にシンの部屋に行くことにした。カズハはさっき下に降りたし、エルはお手伝いをしていたおばちゃんのところに行った。秀と湊はとっくに降りて外で待機中。リュウとセツナは馬車に先に乗って二人きりのおしゃべりを満喫中だ。

そのためこの家にはオレとシンしか残っていないのだ。

シンの部屋に行くのは少し勇気がいるが、オレの不甲斐なさが原因で起きたこのギクシャクした感じを、シンとの間にいつまでも持ちたくはない。

オレは隣にあるシンの部屋をノックした。

「……兄さん」

扉を開けたシンの顔には暗い影が差していた。

いつもより声に覇気がない。原因はやっぱりオレ、だよな……。

よし。ここはシンの兄ちゃんとして励ましてやらんと。

「どうしたー、シン。元気ないぞー。これからアクロポリスに帰るんだ。そしたらいの一番にシャムロックに行って、あのオムライスを食べようぜ!な!」

オレは少し俯きかげんなシンの肩に手を置く。するとシンは顔を上げオレを見た。

「ふっ……ああ。分かった」

ほんのちょっと笑みを浮かべたシン。

おおー。久々の笑顔じゃんか。そんなにあそこのオムライスが好きになったのかー。

「ふふん。よし、決まりだな。あそうだ、そろそろ下に行こうと思ってんだけど、シンは準備できたか?」

「俺もちょうど今出ようとしていた」

「そっかそっか。じゃあ、一緒に行くぞ」

「ああ」

オレたちが外へ出ると、秀と湊の姿があった。

「おせぇぞ、ノアもシンも」

「どんなに遅くとも主を待つのが従者の務めだ。文句を垂れるな、秀」

「あのなー、湊がそうやって甘やかすから、二人が堕落してくんだぞ」

「お前も大概甘いだろう」

「ぐっ……それは、否定しねぇが……」

今回は秀の負けだなー。

オレは言い争う秀と湊の背中を叩いた。

「遅れたのはわるかったって。さ、早く行こう」






「お世話になりました、コーディ村長」

「いやはや、こちらこそ農作業手伝ってもらってありがたかったよ。また来ておくれ」

村長への挨拶を済ませ、オレとシンは馬車へと戻った。カズハとエルは俺たちに遅れて馬車へ乗った。二人は例のおばちゃんとの別れを惜しみつつも、また会うことを約束してお別れしたそうだ。

この村の諸事情……エリック商団への積荷要求の頻度とその量の明らかな増加。これはたぶん、この国に何かしら良くないことがあったが故に、そうせざるを得なかったという証だと思う。今はこの村もまだやりくりしていけてるけど、今後も続けられるかは分からないはずだ。

この村には恩がある。もしこの村が本当にどうしようもない事態に陥ったその時は、オレたちが助けに行こう。恩を仇で返すのはオレの性分じゃない。

フィッツさんが馬に乗り、馬車が動き始める。リズさんは後方の幕を開け、村長たちに大声で挨拶をした。

「じゃあーねー!みんなー!また来るからねー!!」





side シン=オーガスト

「ダメだ!」

俺が持ちかけた話。この話が原因となって俺は兄さんに怒鳴られた。俺の眼の話を出すと、たいてい兄さんは動揺し、憤る。

俺の眼『終焉之眼マルス』は、肉体的にも精神的にも苦痛を伴う力だ。その分その強さは十分すぎるほどに保証されているわけだが、俺は昔、この力の制御に失敗し、兄さんを困らせた。いや、困らせた程度では済まない。

あの時の兄さんは、俺が死んでしまうかもしれないという危機感に飲み込まれ、夜通し泣いていたそうだ。

俺は意識なくただただ寝ていた。だからその時の兄さんの苦しみがいかほどであったかも知らない。ただうっすらと、目を腫らし俺の名を呼んでいる兄さんの悲痛な声だけは覚えている。

俺は朝食を終えてすぐ自室へと戻り、ベットに座って手を組んだ。

兄さんは俺に、この眼を使ってほしくはない。だが俺は兄さんを守るためならこの眼を使うことを全く厭わない。あの頃のやわな俺ではないのだから、この眼を使っても問題ないと自分が一番よく分かっている。

兄さんはそのことに気づいているはずだ。俺がもうこの眼の力を制御できていると。理解はしているが、それを受け入れられない自分がいる。そんな葛藤に苛まれているのだろう。

俺が使わないようにすれば済む話なのかもしれないが、この力を使わなかったが故に兄さんが死ぬなどということは絶対にあってはならないことだ。俺は俺の全てをかけて兄さんを守りたい。

『コンコンコン』

ノック音が響いた。

……兄さん、だろうな。

俺は扉を開けた。だが俺はなぜか兄さんの顔を直視できなかった。いつものように話せばいいものの、どうすればいいのか分からなくなってしまった。

「……兄さん」

俺は兄さんの名前を呼ぶことしかできなかった。自分から話すことはあまりないにしても、少しそっけない態度だったかもしれない。

「どうしたー、シン。元気ないぞー。これからアクロポリスに帰るんだ。そしたらいの一番にシャムロックに行ってあのオムライスを食べようぜ!な!」

そんな俺の陰りを払うかのように、兄さんはいつものように明るく笑いかけてくれた。兄さんだって悩んでいたはずなのに、俺が落ち込んでいることに気づいて励まそうとしてくれている。

……ああ、やはり兄さんには敵わないみたいだ。

「ふっ……ああ。分かった」

俺は柄にもなく笑ってしまった。







side セツナ

「……ふわふわで、あまくて、おいしかった」

「そっか。リュウがそんなに気に入ったのなら、私も食べてみたい」

「うん……!ぼくも、今度は、セツナお姉ちゃんと……オムライス、食べたい」

「私と?」

「うん……!」

リュウは、ぽわぽわと、いかにも嬉しい、といった笑顔で私を見つめてくる。この笑顔を見ると、リュウがあの地獄から解放され、本当に幸せになったんだと気づかされる。嬉しい限りだ。

「そういえば、その目は隠さなくても大丈夫なのか?」

リュウは以前、自分の眼を見るとみんな死んでしまうという理由から、深くフードを被って、誰とも眼を合わせないようにしていた。だけど今は、普通に私と眼を合わせて会話しているし、だからといって私の体に異常が出てるわけでもない。

「うん。ノア兄ちゃんが、助けてくれた、から」

……あの男が、か。

私と同様に孤独だったリュウが、絶対的な信頼を置いている人間。確かに悪いやつではなさそうだったが、油断ならない。人間なんて信じたところでどうせ裏切られるだけ。私はそれを身をもって体験している。

「そのノアとかいう男は一体なんなんだ?」

「ノア兄ちゃんは、不思議な人、だよ。優しくて、あったかいけど……ふらっと、どこかに消えちゃいそうな、そんな人……」

リュウは私と同様、周りから向けられる視線や感情に敏感だ。そのリュウがそう捉えるのなら、間違いないのだろう。あの人間……ノアは信頼にたる人物だということが。

「そっか。リュウはノアって奴のことが好きなんだな」

「うん……!あとね、セツナお姉ちゃんも、大好きだよ?」

ニコッと晴れ晴れとした笑顔を向けるリュウ。私には縁遠いそれは、私の醜くく汚らしい心を揺さぶった。

「おいお前ら……リュウと、あー、セツナだっけか?もうちょい手前に来てくれっか?村長に頂いた荷物を乗せてぇんだわ」

こいつは確か……フィッツとか言っていたな。あの有名なエリック商団のメンバーの。私もなんどかエリック商団の積荷を盗んだことがあるから知っている。盗みを失敗したことはないが、それなりに苦戦はした。その名が知られているが故に、警護する者の質も高いというわけだ。

この馬車にはノアたちしかいないが、盗賊または魔物に襲われた形跡が見当たらない。単に襲われていないだけか、あるいは……。







side 桜木イオリ

煌びやかな装飾の施された豪壮な扉を開け中へ入る。部屋の奥には座椅子がひとつあり、そこにひとりの男が座っている。

「ご報告申し上げます、陛下」

アクロポリスの後方に大きく聳え立つ雄大な城。その城内でもっとも厳正な場として用いられる謁見の間で、僕は片膝をついて首を垂れている。

あの謎の二人組から命からがら逃げここまで辿り着いた。魔物と出くわさないように慎重に進み、できる限り駆け足で戻ってきた。一刻も早く伝えねばならないという衝動で、限界を迎える身体に鞭を打ちながらも、なんとか城まで帰ってこれたんだ。

「面を上げよ。……よく帰ってきた」

いつもながら優しい言葉をかけてくださる陛下。僕は本当にいい主君に恵まれたみたいだ。

「はっ」

顔を上げると、陛下のしわのよった顔が見受けられた。陛下は毎日ご多忙のためか、よくしわを寄せる。それも相まって、みんなから怖がられることが多い。陛下は気にしていない様子だが、僕としては陛下の魅力をもっと知ってもらいたいものだ。

「ミオから大まかなことは聞いている。軍事国家ファランクスへの潜入調査を急遽取り止めたそうだな」

「はい。僕の独断で任務を放棄しました。申し訳ございません」

「いや、よい。ただここに居座っているだけの俺の命令よりも現場の判断に任せる方が得策だ。お前は良い働きをしたのだ」

「……ありがとうございます」

「ふむ。……では何があったか話せ」

僕はひとつひとつ順を追って、起きたこと全てを話した。

正体不明の二人組について事細かに……。

「なるほど。相当厄介な相手というわけか……」

「はい。それと、ノインという女が口走っていたのですが……」

『あー、俺、名前なんだったっけ……?ここ数百年は呼ばれてねぇからなぁ。忘れちまったわ』

「数百年、か……」

「はい。その言葉を信じるのであれば、その女は文字通り数百年以上生きている、ということになります」

人間の寿命は百年程度。亜人国家レグルスに住む亜人たちも同様だ。例外としてエルフがいるが、おおよそ人界ミッドガルドに住む人は長くても百年ほどしか生きられない。とは言っても、エルフは神秘国ミステーロが滅亡した際に共に滅んでしまったから、実質的には全ての人界に住む人が百年という限りの中でしか生きていくことはできない。

ではノインが口走った『数百年』とは一体何を意味するのか。

「ふむ。……魔人だな」

「はい」

魔人は魔界ニライカナイに住む者たちを指す。魔人には種族があり、その大半が悪魔たちだ。他には吸血鬼、ダークエルフ、タイラントなど多種多様な者たちが住んでいる。

前提として人界と魔界には物理的に大きな壁が存在する。黒く大きな壁だ。通称『ブラックカーテン』と呼ばれるそれは、海底から天空まで無機質に広がっており、その周りは黒い霧で覆われているそうだ。

現在、魔界と人界同士の争いは全くなくいたって平和だ。そもそも争っていたのもはるか昔……世界誕生期にまで遡るらしい。争いの終焉には、天使たちの介入が大きいとされているが、いずれにしろそれ以降、魔界には人界に攻め込もうとする意志は全くなく、それは逆も然りと言える。

だが、現在でもその異様な強さや見た目などで差別する人々が多い。魔人側もそれを知ってか、その多くがこちら側に積極的に来ようとはしていない。主に冒険者たちが魔界に行くことが多いが、その逆はあまりないのだ。ただまあ当然、過激派な魔人も少なからずいるわけだけど……。

兎にも角にも、魔人は魔物と同義という考え方がなくならない以上、人界側に魔人たちが受け入れられる未来は、今後もないのかもしれない。

「俺が冒険者をやっていた頃、何度か魔界に足を運んだが、出会った魔人たちはいい奴ばかりだったのを覚えている。……だが、今回の魔人はそうではないのだろうな」

魔人にも人間にもいいやつ悪いやつは当然いる。それは陛下も分かっておられる。だから陛下は、魔人だからといって差別など決してしない。

「はい。下手をすればこの国が滅びかねないかと。僕の直感ではありますが……」

「お前が言うのならそうなのだろう。急ぎその者たちに関する情報を集めよ」

「はっ」

「それからお前は一度、早急に自宅へ戻るように」

「え……?」

この後すぐに作戦を煮詰めようと思っていたんだけど……。

「お前の妹が独り悲しく待っているぞ」

「……っ!はい……!今すぐに向かいます」

僕は陛下に一礼した後、すぐに部屋を出て愛する妹のもとへと走った。





side ゼクス

青い炎に包まれた廃教会を後にした私たちは、迎えが来るまで適当に森の中を歩いていた。

……目的のものを手に入れることには成功した。とりあえずはこれでボスに消される未来はなくなったな。

「ったくよぉー。せっかくいいとこだったってのに、邪魔しやがって。……あぁー、闘いたりねぇなぁ!」

明らかに鬱憤が溜まっている様子のノインは、手当たり次第に周りのものを破壊し始めた。

『ドガッン!バゴォーン!ドドドォォーン!!』

……もう少し大人しくできないのか?こいつは。

睨む私をよそに、ノインは暴れ続けている。

「いい加減にしろ、ノイン。あまり目立つような行動をするな。まだ任務は終わってなどいない」

これをボスのもとに届けなければなんの意味もないのだから。

「あぁ?」

ノインは鋭い眼光でこちらを見る。
イライラしているのは私の方なんだが?

「…………はぁ。そう睨むな。お前もボスに睨まれるのはごめんだろう」

「はっ。俺は別につえぇ奴とやれりゃあ何でもいい。俺があいつに従ってんのは、俺があいつとの血闘で負けたからであり、俺はいつでも再戦をしてぇんだ。それを言ったらあいつ、交換条件として『私の悲願を叶えた後にしろ』、とか吐かしやがった。だから俺は仕方なくあいつの命令に従ってんだよぉ。あいつと殺り合うためになぁ!」

本当にこいつは、どうしようもなく血気盛んな奴だ。私とはまるっきり性格が違う。なぜ私はこいつと組まされたのやら。

「だから忠誠心とかはまったくねぇんだよぉ。お前と違ってなぁ」

確かに昔からこいつはボスに横柄な態度をとっていたし、勝手な振る舞いも多かったが、まさかそれをボスが容認していたとはな。

「お?あそこにいい遊び相手がいんなぁ?」

ノインは遠くを眺め、何かを見つけたらしく、一瞬にして姿を消した。

「おらよぉ!」

『ウギャァ!!』

ノインの足蹴りにより、巨大な魔物の腹に大きな穴が空いた。

あれはたしかオークキングだったな。あんな雑魚、ノインのストレスを逆に増やしそうなものだが。

「あぁ?んだよ、デケェ図体しといて、なんだこの脆弱さはよぉ!!」

とっくに死体となったオークキングを何度も何度も踏み潰すノイン。足裏にはべっとりと赤黒い血液がつき、それは周囲にも飛び散っている。

「それはオークキングだ。確かお前、以前にも闘ったことがあるはずだが?」

「はぁ?!んなの!覚えて!ねぇよ!!」

……相変わらずの記憶力だ。強いやつのことは一生忘れないというのに、弱いやつのことは一秒で忘れる。

ノインの頭の中は一体どうなっているのやら。

「もういいだろう。そろそろ迎えが来る時間だ。大人しくしてろ」

ボスがこいつの自由を許しているのは、やはり戦闘力の高さを買っているからなのだろうが、正直私は好かん。

もうこいつとは二度と組みたくないものだ。

「あぁ?あんな面白そうな奴らとの血闘を邪魔といて、俺に指図してんじゃねぇぞ?」

ここまで機嫌が悪いと扱いが面倒だな。

「そうだ。お前が俺の相手をすりゃあいい。それなら俺の気も晴れそうだ」

「私はお前の我儘に付き合う義理などないんだがな」

「うるせぇよ。……闘えや、ゼクス」

ノインは燃え盛るような黒いオーラを放ち始めた。その衝撃波だけで、近くの木々は倒壊する。ノインの足もとの地面も割れていた。

やる気満々というわけか。……面倒だが、良い機会とも取れる。どちらが上なのか、この馬鹿に教え込む必要があるようだ。

私も久々に力を解放しようとした、その時だった。

「おやめください、ノイン様、ゼクス様」

上空に現れた、黒い翼をはためかせる生物。頭には二本の黒い角があり、その赤黒い目で私たちを捉えていた。

「邪魔してんじゃねぇぞ、ザコ犬!」

ノインはボスの使い魔に乱暴な言葉を投げつける。

「確かにボクはザコ犬ですが、主人様の命により、御二方を早急に連れてゆかねばなりません。ですので、双方矛を収めていただくと、大変助かるのです」

「あぁ?なんでお前の言うことを聞かなきゃなんねぇんだ?!」

「ボクの指示は全て主人様の勅命と同義です。戦闘をやめないというのであれば、ノイン様、あなた様の願いは永久に果たせなくなるとお思いください」

「はぁっ?…………チッ。わーったよ。やめりゃいいんだろ、やめりゃあよぉ」

不機嫌ながらもオーラを収めたノイン。私もそれに合わせて、矛を収めた。

「みっともないところを見せたな、バティン」

「いえいえ。……ではさっそく主人様のもとへと向かいましょう」

バティンは私とノインの足もとに氣術陣を展開した。

「テレポーテーション」







side テンラル?

「ほう。ノインの攻撃を耐えるだけでなく、ゼクスの炎までも凌ぐとは……」

私は今、青々と燃え上がる巨大な炎とその奥に見える三人の若者たちを観察しています。観察は私の目的達成に必要な行為であり、今まさに、私の悲願が成就される時が来たのかもしれません。

「アレは確か最近できたばかりの冒険者パーティ、ノアズアークのリーダーでしたねぇ。ノア、と言いましたか」

その身から発せられる氣はその辺の雑魚と変わらないですねぇ。ただ、あまりにも不自然と言いましょうか。

氣というのは誰しもが多かれ少なかれ体外に漏れ出ているもの。オーラと言えば分かりやすいでしょう。どこにでも湧いている有象無象どもというのは、自分の氣をただただ垂れ流している。たいていはその氣の量から、つまりオーラの強さから、その者が強者かどうかを判断します。

ただし、氣を自由自在に操れる、真の強者には、そのオーラがほとんど見えない。つまり、自身の氣を手中に収めているということ。体外に漏れ出ている氣が多いから強いというのは、本当に氣の保有量が多い者のみ。そんな者は数えるほどしかいないでしょう。

ほとんどの強者は、自身の氣をコントロールしており、体外に放出するなどというヘマはしませんねぇ。ただの無駄ですから。それがどれだけできているかというのはひとつの強者としての指標でしょう。

ですが妙なことに、あの子供は一般的なオーラを纏っています。つまり、その辺の雑魚と同列というわけですねぇ。だと言うのに、あの子供……ノアはあの二人の攻撃を耐え忍んだわけですか。

……実に面白い。

「ふむ。興味深いですねぇ。……果たしてあの子どもは私の悲願を叶えてくれるのかどうか……」

少し、試してみるとしましょうか。


























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クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

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