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レグルス編
13 桃兎騒動Ⅵ
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side ノア=オーガスト
『バダァァァァァンッッッ!』
さっきまでめっちゃうるさかったかと思えば、大きな何かが倒れた地響きを最後に、森はもの静かな雰囲気へと一変した。
「おー!どうやら秀とカイトさんが封印されてた魔物を討伐してくれたっぽいな」
オレは黎明之眼を使いすぐに状況を確認した。二人とも無事っぽいのはいいけど、なんかカイトさん、かなり雰囲気が違うような……?
「そんなもんよくわかんな。俺には木とか草とかしか見えないんだが?」
「あ……」
オレは間抜けな声を出して立ち止まった。
仲間以外の前で眼の力使っちまった!『神仙族の力を大っぴらにすんじゃねぇぞ』って秀に言われてたの、すっかり忘れてた……。
「え、えーっと……」
「なんだ急に立ち止まって。てか、眼の色そんな青かったか?」
「っ!こ、これはその、なんていうか……」
オレは目に意図的に氣を流すのを止めた。
「お、金目に戻ったな」
は!戻したところで、何も誤魔化せらんなくないか……?!バカすぎだろ、オレ!
「お前まさか……」
カナタはマジマジとオレを凝視してきた。
まっずい。まさかオレが神仙族だってことがバレたのか?!
「マーダーブラッドの生き残り、か……?」
「へ……?なんて?」
オレは意外すぎる問いかけに、逆に冷静になった。マーダーブラッドって、たしかリュウのことだよな。
「だからマーダーブラッド……って、ああそうだった。あいつらは赤と黒の目になるんだったか」
「あいつらって……もしかしてカナタ、マーダーブラッドと知り合いなのー?」
たしか、マーダーブラッドって百年くらい前の戦争でミステーロと一緒に滅んだって話じゃなかったか?そういやリュウの出自については聞いたことなかったけど、そのほとんどはミステーロ壊滅とともに滅んでるだろうから、仮にリュウみたいな生き残りがまだいたとしても、絶滅危惧種レベルな存在のはずだ。
「っ……!そ、それはだな……内緒だ。内緒……」
「えー、教えてくれてもいいじゃーん。シンだって気になるよねー?」
「別に。俺は他人に興味はない。俺には兄さんさえいてくれればそれでいい」
「うわー、出たよ。相変わらずのブラコンっぷりだねー。そういうブレないところは嫌いじゃないけど、私やみんなにもその愛情の百分の一でもいいからわけてくれると嬉しいなー」
「…………善処はしよう」
長めの沈黙の後、無表情のままでカズハに応えた。これでも十分周りを気にかけるようになったと思うわ。だってリュウに短剣買ってあげたんだぞ?あのシンが。しかも自発的にだ。
ていうか今更だけど、カズハもエルもリュウもセツナも神仙族っていう名前も存在も知らなかったんだ。カナタも知らない可能性の方が十分に高かったのに、なぜにオレは焦ってたんだか。
「……マーダーブラッドじゃないってんならよ、ノア。お前のその目は一体なんだってんだ?」
「え……!」
カナタからの追及から逃れられたと思いきや、再び言及されてしまった。
「み、見間違いじゃ……」
「んなわけないだろ。金と青ってだいぶ違うぞ」
「うっ……」
その通りすぎて何の反論もできない……。かといって本当のことを話すには、オレはまだカナタのことをよく知ってるわけでもないし……どうしよ。
「お前も何か隠してるだろ」
「は?」
オレが返答に困っていると、シンが横から会話に参入してきた。
「お前本当に亜人か?」
「…………なぜそう思う」
カナタはきつい目でシンを見た。
「亜人という種族は基本的に人間より身体能力が高い。お前のような猫の亜人ならなおさらだ。だが、お前の動きは言うなれば並の冒険者程度。亜人特有の能力が全く見えてこないと、俺は思ったがな」
あー、言われてみれば?このアホったれを追いかけて走ってた時って、たしかカナタが最後尾だったもんなー。走るの苦手なんかなーって勝手に思ってたけど、猫の亜人なら、なんとなくだけど素早そうだよなー。
「……はは。面白いことを言うじゃないか、シン。だがそれはあくまで俺が本気を出していないってだけだ。お前らの実力がどんなもんか見てみたくてなぁ。ちょっとばかし手加減してたんだよ」
「…………」
シンは納得がいっていないのか、カナタを無表情のまま見据えている。
「あーもう、降参だ降参。ノアのことはもう聞かねぇよ。だからお前も俺の詮索はすんな。これでいいだろ」
カナタはぶっきらぼうに言葉をぶつけた。
「ああ、構わない」
「ちっ……ったくよ……」
カナタは少し不機嫌そうにしながら、歩くスピードを少し早め、オレたちよりも少し前に出た。
「ナイスフォローだけど、あんまギクシャクしてくれるなよ、シン。この国でオレたちに好意的な人はそうそういないし、カナタはたぶん、悪いやつじゃないと思うからさ」
「兄さんがそう言うのなら……気をつける」
「素直でよろしい……!」
オレは背伸びをしてポンッとシンの頭を軽く撫でた。するとシンは一度立ち止まり、俯きながらぼそっと何かを言ったみたいだけど、オレには聞こえなかった。
「ん?なんだよ、急に立ち止まってさー」
「ノーアー。まーたシンがブラコンになるようなことしてー」
「はい?」
オレなんもしてなくね?
「ってもう手遅れかー」
「手遅れってなんだよ。まさかシンに何かあったのか……?!」
病気にかかった……?いやでも神仙族がかかる病なんてこの世に存在しないってヴォル爺が言ってたし……病気じゃないなら毒とかか?!
「あーはいはい。どっちもブラコンすぎて私にはもう手に負えなーい。カナター!ヘルプー!」
オレが焦っているとカズハは前方を歩くカナタを呼んだ。
「は?知らねーよ。内輪揉めはお前ら自身で解決しろよ。俺は関係ないっての」
カナタは顔だけ軽く後ろに向け、カズハにそう答えた。
「冷たいなーもう……。えーと、ノア?別にシンに何かあったわけじゃないよー?だってほら、もう普通に歩いてるし」
ふと見れば確かにシンがオレの隣に来ていた。ついさっきまで立ち止まっていたのに、いつのまに……。
「大丈夫なのか、シン」
「ああ。なんともないよ、兄さん」
「そっか……良かった」
「おいお前ら。いい加減そんなくっちゃべってねぇでとっとと花畑に……っ!あれは……!」
何かに気づいたカナタは、血相を変えて突然走り出した。オレたちもすぐにその後を追う。
生い茂る木々の合間を縫い、草木を踏み締めて進んでいく。先頭を走るカナタは、確かにさっきよりも明らかに走るスピードが早かった。というか、なんだかがむしゃらに足を動かしている感じがした。
そうしてオレたちは、光差す場所へと足を踏み入れた。
「カイトォォォ!」
カイトと秀が対峙している光景を見た瞬間、オレたちの前に立つカナタが、上半身を斜めに倒して張り裂けるような声を上げた。
「……っ…………」
その声に、秀もカイトもこちらへと振り向いた。秀が安堵したような顔をする一方、秀に銃を向けていたカイトは、呆けたような顔でこちらを見て口をパクパクとさせていた。そして手にしていた銃を地面へと落とした。
たぶん何かしら言葉を発したのだろうが、あいにくとこの距離じゃなんて言ったのかまではわからない。
「はっ。世話が焼けるダチだな、まったくよ……!」
カナタは心底ほっとしたような顔をして、カイトのもとに歩み寄った。オレたちもその後に続く。
「……カ、ナタ、様……?」
「ああ、そうだよ。お前のダチのカナタだ」
「……っ……私は、また……」
カイトさんは俯きがちに唇をギュッと結んだ。
「大丈夫だっつうの。お前はしっかり標的だけを狙い撃った。他に被害は微塵も出てねぇよ。なあ、秀」
「まあな。銃口を向けてきた時には流石にちとびびったが、結局実害は被ってねぇから安心しろよ」
「だとよ、カイト」
「ですが、もしカナタ様が私を引き戻していなければ、私は今頃……」
「ったく、なよなよしてんじゃねぇよ、カイト。お前は俺のダチであり俺だけの騎士だろうが!」
「っ……!」
カイトさんは顔を上げ目を丸くしながらカナタを見つめた。
「やっと顔上げやがったな、ばかカイト」
カナタはイタズラっ子のような笑みを浮かべて、カイトさんのおでこと自分のおでこをくっつけ合わせた。
「お前には俺がついてる。俺は絶対にお前を裏切らねぇ。王は騎士と一心同体だってこと忘れんじゃねぇって、いつも言ってんだろが」
「……はい。カナタ様……私は、あなたの騎士になれたことを、誇りに思います……」
カイトさんは震える声を振り絞りながら、今にも泣き出しそうな顔でそう言葉を紡いだ。それはきっと悲しいからなどではなく、心から嬉しいという想いが湧き上がった結果だろう。
「ふん。わかりゃいいんだよ、わかりゃぁな」
カナタは顔を上げカイトの頭をポンッと撫でた。
「さーてと。依頼人の兎は確保したし、あいつが封印の石を壊したせいで復活したであろう魔物も退治したっつうことは、これで依頼完了ってわけだな」
「そうだなー。あとはみんなが集合すれば……」
「ノアさーん!」
「お、噂をすればなんとやら、だな」
エルの元気な声に振り向けば、エルの横には湊、セツナ、リュウが仲良く歩いている。
「よーし。これで全員集合だな!」
荒れに荒れた花畑にノアズアークとイノセントの冒険者が勢揃いした。
「湊。お前たちの方にも木人がぞろぞろと襲ってきてたっぽいな」
「ああ。斬っても斬っても立ちはだかってきてたな。あともう少しあのままだったなら、危うくあの力を使うとこだったかもな」
「ははは。湊が冗談とか珍しいな。まあでもわかるぜ、その気持ちはよ」
「冗談を言ったつもりはさらさらないがな……」
秀と湊は幼馴染同士で何やら盛り上がっているようだ。
「聞いてよー、リュウ!桃兎捕まえるのすっごく大変だったんだよー」
「……カズハお姉ちゃん、すごい……!カズハお姉ちゃん、えらい……!」
「っ……!キャーッ、めっちゃ嬉しいし、超超可愛すぎるー!」
カズハはリュウに愚痴をこぼしにいったらしい。カズハがリュウの目線に合わせるように膝を抱えて座っていると、リュウがカズハの頭を撫で撫でした。オレや秀がよくやってるから、リュウも真似をしたのかもしれない。リュウがこれが相手の心をぽかぽかにしてくれるってことを知ってるだろうから。
そんでもって、リュウのこの意外な行動に見事にハートを撃ち抜かれたカズハはますますリュウの虜になってくんだろうなー。口もとが終始ニマニマしてるし。
だがそれは決して他人事ではないのだ。オレもリュウにあんなことされたら……いや、やめとこう。だらしないニヤケ顔が容易に想像できてしまうだろうから……。
「それにしても、セツナさんの矢はすごいですよね。あんなに破壊力がある矢なんて見たことがないですよ!」
「……あんなのは誰でもできる。私はこんなところでくすぶるほど、我慢強いわけじゃない。だから私の成長に着いてこれないなら、あんたのこと、置いてくから」
「セツナさん……かっこよすぎです!」
「は?」
「どこまでも強さを追い求めるその心意気。とても尊敬します!私も薬草研究にもっともっと励みますね!」
「……あ、そう……」
キラキラとした純粋な目でセツナを見つめるエル。セツナは少しの沈黙後、そっぽを向いてエルの無垢な瞳から逃げた。
「兄さん」
「お、どした?」
みんなの様子を見回していると、隣に立つシンに声をかけられた。
「兄さんは今、楽しいか」
「なんだなんだ唐突に。楽しいかだって?そりゃもちろん、こうやって仲間と一緒に冒険ができてるんだから、楽しくないわけないだろ?」
「そうか……」
シンがこんなこと聞いてくるなんて珍しいな。何か心境の変化でもあったのかもしれないなー。
「そういうシンはどうなんだ?」
「俺は……正直に言えば、よく分からない。俺には兄さんだけがいればそれでいい。その考え方は変わらない、が……なにかもやもやする時がある」
「もやもや?」
そんなあやふやな言葉使うなんて、ほんとにどうしたんだ、シンのやつ。
「うーん。それって例えばどんな時にそうなるんだ?」
「……傷つけられた時とか……?」
「傷つけられたって、シンがか?」
「いや、俺じゃなくて……ノアズアークの誰かが、かもしれない」
「……!」
はーん、なるほどなるほど。シンよ。オレはしっかりと理解したぞ。お前のそのもやもやの正体。
けどこれってオレの口から言うより、シンに自分で気づいてほしい気もする。こればっかりはいくら兄ちゃんでも弟を甘やかせられないよなー。シンには自分の世界をもっと広げてほしいからな。牛の歩みほどの遅さでも、着実に成長してくれればそれでいいんだ。その片鱗が、今間違いなく見えてきているのだから。
「兄さん?」
オレがひとりでうんうんとうなづいていると、シンがどうしたんだと言いたそうにオレの名を呼んだ。
「あ、いやなんでもない。そんなことよりもだ、シン。そのもやもや、大事にするんだぞ」
「大事に?だがこれが来ると苛立ちを覚えてきて、正直鬱陶しい……」
「あー、苛立つのはそうだろうなー、うんうん」
「……兄さんが意地の悪いことをしている気がする……」
「そんなことないっての。兄ちゃんの言うことを信じろって。な!」
「……分かった。なるべく向き合うことにする」
「おー!それでこそオレの自慢の弟だ!」
オレは背伸びをしてシンの頭をくしゃくしゃに撫でてやった。乱暴っちゃ乱暴だけど、シンは存外嬉しそうな顔をしていた。口角が少しだけだが上がっている。
「よーし。そろそろ依頼人に報告を……」
オレはふと、花畑の中央に倒れる大きな物体に目を向けた。
この黒焦げの身体を氷で纏った像?というか、このよくわかんない魔物?は、SBで回収した方がいいのか?このまま放置するのも近隣の村からしたらいい迷惑だろうしな。
オレは左手人差し指につけた指輪型のエスパシオから小さなキューブであるSBを取り出した。そしてこのデカブツを吸収するためにSBを前に構えた。
「キュイ!キュイキュイ!」
突然、地面に置いておいたケージから必死な鳴き声が聞こえてきた。腕を下げてその声の主を見れば、ケージにどかどかとアタックしていた。
「また暴れ出したんだけど?こいつ。今度はなんだよ、桃兎くん」
オレはしゃがんでケージに手を当てながら、暴れる桃兎にそう問いかけた。
「キュイ!キュイ……キュイ!」
桃兎は小さな手を使って、めいいっぱい大きな円を描いた。
「……ん?」
「キュイ!キュイ……キュイ!」
再び同じことをする桃兎。
え、どうしよう。まったくもってわかんない。
「シン。こいつの言いたいこと、わかる?」
「……兄さんに分からないことを俺なんかがわかるはずもない」
「そっか……」
お前はそういうやつだったな、うん。
うーん。もしかしたら、リュウならなんかわかるかも?別の桃兎だけど、結構懐かれてたし。
「リュウー!ちょっとこっちにきてくれないか?」
カズハに頬擦りされていたリュウは、とことことこちらに小走りしてきてくれた。その後ろからはカズハが歩いてきている。
「来たよ、ノア兄ちゃん」
「おう、ありがとな。でさ、ちょっと頼みがあんだけど、こいつが何を伝えたいのか、わかったりしないか?」
「……やってみる」
リュウは桃兎の動きをじっくりと見始めた。
まあ九九パーセントわかるわけはないと思うけど、可能性があるならやってみないとな。
「桃がほしいって」
「へ?桃?」
「うん……あの魔物が、もとはその桃の木、みたいだよ……?」
わーお。リュウがさらっと解読しちゃったよ……。びっくり仰天だわ。
「えーっと……?あれが仮に桃の木だとしても、あんな状態で桃なんか残ってるのか?」
オレは無惨な姿で倒れる桃の木?を見つめた。
黒焦げでかつカチンコチンに凍ってんだぞ?仮に桃があったとしても、きっと灰と化してるか中身までカチコチになってるかのどっちかだろ。
「わかんない……でも、桃がほしいって……」
「まあ、とりあえず探してはみるか。ありがとな、リュウ」
オレはリュウの頭をポンッとひと撫でした。
「リュウは桃兎の近くにいてやってくれ。リュウがいると居心地が良さげだからな、そいつら桃兎は」
「うん」
オレは早速桃の木の方へと歩き出した。もちろん隣にはいつものようにシンがいる。
「どしたのー?ノア?」
前方からカズハがこちらに近づいて来ていた。
「ちょうどいいとこに来た。カズハも手伝ってくれ」
「よくわかんないけど、いいよー」
こうしてオレたち三人での桃探しが開始した。
「桃……桃……桃ね……」
「兄さん。斬ってもいいか、こいつ」
オレとシンは焦げて凍った桃の木を探すことになった。カズハには、地面に埋まってる方の桃の木を探ってもらっている。まあそっちもこっちと似たようなことになってるっぽいから、桃が見つかるかどうかは正直わからん。
「そうだなー。外から眺めてるだけじゃなんもわかんないし、斬っていいぞ、シン」
「分かった」
その言葉と同時に、シンは二本の剣を使って桃の木を適当に分割した。
「ナーイス。これで探しやすくなったな」
オレはブロック状になった桃の木をひとつひとつ確かめていく。だがその中には氷に覆われた焦げた身体ぐらいしかなく、桃らしきものはまったく見当たらなかった。
「うーん、やっぱ無いなよなー」
ほんとに桃の木だったのか?こいつ。だって馬と牛の頭みたいのがついてるぞ。そんな芸術的っつうか人工的っつうか……とにかくそんな不思議な木が自然発生するのか?しかも普通の桃の木じゃなくて、魔物だし。
「ノア!シン!ちょっとこっちきてよ!」
オレが桃兎の言葉に疑念を抱いていると、背後からカズハの声が聞こえてきた。どうやら何かあったらしい。
「どうしたんだ、カズハ」
「いやさちょっと思ったんだけど、これが桃の木ってことなら、ここの下には無数の根が張り巡らされてるってことになるじゃん?あの上半身の大きさからして、下半身も相当大きいと思うんだよねー。だからもしかしたら、根の部分とかは無事かもしれないなーって思ってさー」
「たしかに。それはあり得るかもな」
今オレたちが目にすることのできる範囲にある桃の木は、全てが真っ黒焦げかつ凍りついた状態だ。だけど、見えない部分、つまりは根っこにあたる部分ならまだ可能性があるかもしれない。まあとは言っても、そこに桃があるかは確証がないんだけどな。
「黎明之眼」
おお。根の広がりがすごいなこれ。
オレの眼は、地面に四方八方へと続く根っこの全てを捉えた。
ん?根の先になんか丸いものがあるな……これは……桃か?
白に近い薄ピンク色の丸い物体。根の先ひとつひとつに、大小様々な桃がそれぞれひとつずつ成っていた。
まさか、本当にあるなんてなー……。
オレは眼に氣を流すのをやめ、二人の方に向き直った。
「カズハ、シン。朗報だ。どうやら根っこの先に桃が成ってるみたいだ」
「お!やったねー!」
「なるほど。なら問題はどうやって取るかだ」
「シンの言う通り。深いやつほど良さげな桃っぽいんだけど……」
より取りにくいのが面倒だよなー。
「こいつをポンッて簡単に引っこ抜けんなら話は単純だけど、こんなデカい幹、掴むのすら無理じゃないか?」
しかもほとんどが地面に埋まってるし。
「たしかにねー。こんなの、力のある亜人がいても無理だよー」
「根っこもかなり深いしなー。なんかいい方法は……」
「なんかあったのか、ノア」
「秀……」
オレたちが桃の取り方に悩んでいると、後ろから秀と湊、カナタとカイト、セツナとエル、そしてケージを抱えたリュウがやってきた。つまりは全員集合である。
「いやさ、桃兎が桃が欲しくてしょうがないらしくて、その桃がこの下に張り巡らされてる根っこの先っちょにあるんだけど、どうやって取ればいいんだがさっぱりわからなくてさー」
「土ん中に埋まった桃を取り出す方法か……」
「桃が根に成ってるんですか?そんなの聞いたことがないです……」
「不味そうだな」
エルとセツナはそれぞれに反応を示した。
「カナタとカイトは何か知らないのか?」
「桃のことなんざ、俺が知るわけないな」
「私も全く耳にしたことがございません」
湊の問いかけに、カナタは興味なさげに、カイトさんは丁寧に答えた。
「お、いい案を思いついたぜ?」
「マジ?!」
「おう」
秀のその一言にオレは心が舞い上がった。この難題に突破口が見つかったんだからな。
「でもこれには紫苑の協力が不可欠になる。湊、紫苑を叩き起こしてくれや」
「相も変わらず野蛮な物言いをするな、シュウ。私は起きている」
湊の首に巻きついていた紫苑は、顔を上げて秀の顔を見据えた。
「んだよ、起きてたのか。なら話ははやいな。紫苑には俺の目と同調をしてもらいてぇんだが、できるよな?」
同調は、紫苑の特殊な眼と同調相手の視野をシンクロさせる特殊氣術だ。本来は契約者である湊にしか使えないはずなんだけど、オレの知らない例外があったみたいだ。
「できるできないで言えば可能だ。お前は神の力を継いでいる。私の眼に耐えきれず死ぬことはないだろう。だが、湊とは違い、痛みという代償を支払うことになるぞ。それでもやると?」
「別に構やしねぇよ。痛みなんざ、いくらでも耐えられるっつうの」
「ふむ。了解した」
秀と紫苑は話を終えると、同調を始めた。そして再び何かを話し出した。
「なあ、ノア。秀は一体何と喋ってんだ?俺には湊に話しかけているように見えんだが、湊はまったく口を開いてねぇよな」
カナタに問いかけられ、オレは少し悩む素振りを見せた。
「うーんと……守護神と、かな?」
紫苑は九条家の守り神だから、守護神って言葉は間違ってない。けどこれじゃたぶん、何言ってんだって感じになりそう。
「は?」
やっぱそうなるよなー。でもこれ以上ほんとのことは言えんから、もう何も話せん。
「まあまあ、そんなことは置いといてさ。秀がどうにかしてくれるっぽいから、とりあえずオレたちは見守ってよう」
オレは秀と紫苑の方へと向き直った。
「へー。これが紫苑が見てる世界か。なんか、変な感じだなぁ」
「私にはこれが普通だ。それで、痛みはどうだ?」
「ああ、まあ、ちょっと目もとが痛ぇか、ぐれぇだよ。脅してきたわりに、そうでもねぇな」
「ほう。ならばシュウは相性がよいのかもしれないな」
「はは、そうかもなぁ……。さてと桃狩りを始めるとするか。おいお前ら!一旦花畑の外に出とけ!危ねぇから!」
秀からの指示にオレたちは素直に従って、花畑とその周りをぐるっと囲む森の境界線付近まで離れた。
「あれ、紫苑もこっちにきて良かったのか?」
オレは湊の首に巻きついたままの紫苑に問いかけた。
「ノアか。久しいな。私の眼はすでにシュウと同調済みだ。私からつながりを切らない限り、どんなに離れていても解除されることはない」
「へぇー。そうなのかー」
「どうやらもう始めるらしい」
湊の言葉にオレは前方を向いた。そこには荒れた花畑に手を当てる秀がいた。秀は紫苑の方を一瞥して、うなづいた。そして、手を当てた地面の方に目を向けた。
「陰陽術、岩壁……!」
秀がそう発して数秒後、地面から細めの円柱がいくつも飛び出してきた。柱という柱がまばらにそして次々に勢いよく迫り上がっていく。そして、またその数秒後、今度は空から大量の桃が降り注いできた。その異様な光景にオレたちは口を開け目を丸くした。
「桃の雨……?」
リュウがボソッとそう呟いた。リュウの言う通り、オレたちの眼前には今、桃の雨が降っている。
「キュイ!キュイ!キュイィィ!!」
ポカンと口を開けて驚愕するオレたちをよそに、ケージに閉じ込められている桃兎は軽やかなステップを踏みながら嬉しそうに鳴いていた。
何、この異常気象……。
『バダァァァァァンッッッ!』
さっきまでめっちゃうるさかったかと思えば、大きな何かが倒れた地響きを最後に、森はもの静かな雰囲気へと一変した。
「おー!どうやら秀とカイトさんが封印されてた魔物を討伐してくれたっぽいな」
オレは黎明之眼を使いすぐに状況を確認した。二人とも無事っぽいのはいいけど、なんかカイトさん、かなり雰囲気が違うような……?
「そんなもんよくわかんな。俺には木とか草とかしか見えないんだが?」
「あ……」
オレは間抜けな声を出して立ち止まった。
仲間以外の前で眼の力使っちまった!『神仙族の力を大っぴらにすんじゃねぇぞ』って秀に言われてたの、すっかり忘れてた……。
「え、えーっと……」
「なんだ急に立ち止まって。てか、眼の色そんな青かったか?」
「っ!こ、これはその、なんていうか……」
オレは目に意図的に氣を流すのを止めた。
「お、金目に戻ったな」
は!戻したところで、何も誤魔化せらんなくないか……?!バカすぎだろ、オレ!
「お前まさか……」
カナタはマジマジとオレを凝視してきた。
まっずい。まさかオレが神仙族だってことがバレたのか?!
「マーダーブラッドの生き残り、か……?」
「へ……?なんて?」
オレは意外すぎる問いかけに、逆に冷静になった。マーダーブラッドって、たしかリュウのことだよな。
「だからマーダーブラッド……って、ああそうだった。あいつらは赤と黒の目になるんだったか」
「あいつらって……もしかしてカナタ、マーダーブラッドと知り合いなのー?」
たしか、マーダーブラッドって百年くらい前の戦争でミステーロと一緒に滅んだって話じゃなかったか?そういやリュウの出自については聞いたことなかったけど、そのほとんどはミステーロ壊滅とともに滅んでるだろうから、仮にリュウみたいな生き残りがまだいたとしても、絶滅危惧種レベルな存在のはずだ。
「っ……!そ、それはだな……内緒だ。内緒……」
「えー、教えてくれてもいいじゃーん。シンだって気になるよねー?」
「別に。俺は他人に興味はない。俺には兄さんさえいてくれればそれでいい」
「うわー、出たよ。相変わらずのブラコンっぷりだねー。そういうブレないところは嫌いじゃないけど、私やみんなにもその愛情の百分の一でもいいからわけてくれると嬉しいなー」
「…………善処はしよう」
長めの沈黙の後、無表情のままでカズハに応えた。これでも十分周りを気にかけるようになったと思うわ。だってリュウに短剣買ってあげたんだぞ?あのシンが。しかも自発的にだ。
ていうか今更だけど、カズハもエルもリュウもセツナも神仙族っていう名前も存在も知らなかったんだ。カナタも知らない可能性の方が十分に高かったのに、なぜにオレは焦ってたんだか。
「……マーダーブラッドじゃないってんならよ、ノア。お前のその目は一体なんだってんだ?」
「え……!」
カナタからの追及から逃れられたと思いきや、再び言及されてしまった。
「み、見間違いじゃ……」
「んなわけないだろ。金と青ってだいぶ違うぞ」
「うっ……」
その通りすぎて何の反論もできない……。かといって本当のことを話すには、オレはまだカナタのことをよく知ってるわけでもないし……どうしよ。
「お前も何か隠してるだろ」
「は?」
オレが返答に困っていると、シンが横から会話に参入してきた。
「お前本当に亜人か?」
「…………なぜそう思う」
カナタはきつい目でシンを見た。
「亜人という種族は基本的に人間より身体能力が高い。お前のような猫の亜人ならなおさらだ。だが、お前の動きは言うなれば並の冒険者程度。亜人特有の能力が全く見えてこないと、俺は思ったがな」
あー、言われてみれば?このアホったれを追いかけて走ってた時って、たしかカナタが最後尾だったもんなー。走るの苦手なんかなーって勝手に思ってたけど、猫の亜人なら、なんとなくだけど素早そうだよなー。
「……はは。面白いことを言うじゃないか、シン。だがそれはあくまで俺が本気を出していないってだけだ。お前らの実力がどんなもんか見てみたくてなぁ。ちょっとばかし手加減してたんだよ」
「…………」
シンは納得がいっていないのか、カナタを無表情のまま見据えている。
「あーもう、降参だ降参。ノアのことはもう聞かねぇよ。だからお前も俺の詮索はすんな。これでいいだろ」
カナタはぶっきらぼうに言葉をぶつけた。
「ああ、構わない」
「ちっ……ったくよ……」
カナタは少し不機嫌そうにしながら、歩くスピードを少し早め、オレたちよりも少し前に出た。
「ナイスフォローだけど、あんまギクシャクしてくれるなよ、シン。この国でオレたちに好意的な人はそうそういないし、カナタはたぶん、悪いやつじゃないと思うからさ」
「兄さんがそう言うのなら……気をつける」
「素直でよろしい……!」
オレは背伸びをしてポンッとシンの頭を軽く撫でた。するとシンは一度立ち止まり、俯きながらぼそっと何かを言ったみたいだけど、オレには聞こえなかった。
「ん?なんだよ、急に立ち止まってさー」
「ノーアー。まーたシンがブラコンになるようなことしてー」
「はい?」
オレなんもしてなくね?
「ってもう手遅れかー」
「手遅れってなんだよ。まさかシンに何かあったのか……?!」
病気にかかった……?いやでも神仙族がかかる病なんてこの世に存在しないってヴォル爺が言ってたし……病気じゃないなら毒とかか?!
「あーはいはい。どっちもブラコンすぎて私にはもう手に負えなーい。カナター!ヘルプー!」
オレが焦っているとカズハは前方を歩くカナタを呼んだ。
「は?知らねーよ。内輪揉めはお前ら自身で解決しろよ。俺は関係ないっての」
カナタは顔だけ軽く後ろに向け、カズハにそう答えた。
「冷たいなーもう……。えーと、ノア?別にシンに何かあったわけじゃないよー?だってほら、もう普通に歩いてるし」
ふと見れば確かにシンがオレの隣に来ていた。ついさっきまで立ち止まっていたのに、いつのまに……。
「大丈夫なのか、シン」
「ああ。なんともないよ、兄さん」
「そっか……良かった」
「おいお前ら。いい加減そんなくっちゃべってねぇでとっとと花畑に……っ!あれは……!」
何かに気づいたカナタは、血相を変えて突然走り出した。オレたちもすぐにその後を追う。
生い茂る木々の合間を縫い、草木を踏み締めて進んでいく。先頭を走るカナタは、確かにさっきよりも明らかに走るスピードが早かった。というか、なんだかがむしゃらに足を動かしている感じがした。
そうしてオレたちは、光差す場所へと足を踏み入れた。
「カイトォォォ!」
カイトと秀が対峙している光景を見た瞬間、オレたちの前に立つカナタが、上半身を斜めに倒して張り裂けるような声を上げた。
「……っ…………」
その声に、秀もカイトもこちらへと振り向いた。秀が安堵したような顔をする一方、秀に銃を向けていたカイトは、呆けたような顔でこちらを見て口をパクパクとさせていた。そして手にしていた銃を地面へと落とした。
たぶん何かしら言葉を発したのだろうが、あいにくとこの距離じゃなんて言ったのかまではわからない。
「はっ。世話が焼けるダチだな、まったくよ……!」
カナタは心底ほっとしたような顔をして、カイトのもとに歩み寄った。オレたちもその後に続く。
「……カ、ナタ、様……?」
「ああ、そうだよ。お前のダチのカナタだ」
「……っ……私は、また……」
カイトさんは俯きがちに唇をギュッと結んだ。
「大丈夫だっつうの。お前はしっかり標的だけを狙い撃った。他に被害は微塵も出てねぇよ。なあ、秀」
「まあな。銃口を向けてきた時には流石にちとびびったが、結局実害は被ってねぇから安心しろよ」
「だとよ、カイト」
「ですが、もしカナタ様が私を引き戻していなければ、私は今頃……」
「ったく、なよなよしてんじゃねぇよ、カイト。お前は俺のダチであり俺だけの騎士だろうが!」
「っ……!」
カイトさんは顔を上げ目を丸くしながらカナタを見つめた。
「やっと顔上げやがったな、ばかカイト」
カナタはイタズラっ子のような笑みを浮かべて、カイトさんのおでこと自分のおでこをくっつけ合わせた。
「お前には俺がついてる。俺は絶対にお前を裏切らねぇ。王は騎士と一心同体だってこと忘れんじゃねぇって、いつも言ってんだろが」
「……はい。カナタ様……私は、あなたの騎士になれたことを、誇りに思います……」
カイトさんは震える声を振り絞りながら、今にも泣き出しそうな顔でそう言葉を紡いだ。それはきっと悲しいからなどではなく、心から嬉しいという想いが湧き上がった結果だろう。
「ふん。わかりゃいいんだよ、わかりゃぁな」
カナタは顔を上げカイトの頭をポンッと撫でた。
「さーてと。依頼人の兎は確保したし、あいつが封印の石を壊したせいで復活したであろう魔物も退治したっつうことは、これで依頼完了ってわけだな」
「そうだなー。あとはみんなが集合すれば……」
「ノアさーん!」
「お、噂をすればなんとやら、だな」
エルの元気な声に振り向けば、エルの横には湊、セツナ、リュウが仲良く歩いている。
「よーし。これで全員集合だな!」
荒れに荒れた花畑にノアズアークとイノセントの冒険者が勢揃いした。
「湊。お前たちの方にも木人がぞろぞろと襲ってきてたっぽいな」
「ああ。斬っても斬っても立ちはだかってきてたな。あともう少しあのままだったなら、危うくあの力を使うとこだったかもな」
「ははは。湊が冗談とか珍しいな。まあでもわかるぜ、その気持ちはよ」
「冗談を言ったつもりはさらさらないがな……」
秀と湊は幼馴染同士で何やら盛り上がっているようだ。
「聞いてよー、リュウ!桃兎捕まえるのすっごく大変だったんだよー」
「……カズハお姉ちゃん、すごい……!カズハお姉ちゃん、えらい……!」
「っ……!キャーッ、めっちゃ嬉しいし、超超可愛すぎるー!」
カズハはリュウに愚痴をこぼしにいったらしい。カズハがリュウの目線に合わせるように膝を抱えて座っていると、リュウがカズハの頭を撫で撫でした。オレや秀がよくやってるから、リュウも真似をしたのかもしれない。リュウがこれが相手の心をぽかぽかにしてくれるってことを知ってるだろうから。
そんでもって、リュウのこの意外な行動に見事にハートを撃ち抜かれたカズハはますますリュウの虜になってくんだろうなー。口もとが終始ニマニマしてるし。
だがそれは決して他人事ではないのだ。オレもリュウにあんなことされたら……いや、やめとこう。だらしないニヤケ顔が容易に想像できてしまうだろうから……。
「それにしても、セツナさんの矢はすごいですよね。あんなに破壊力がある矢なんて見たことがないですよ!」
「……あんなのは誰でもできる。私はこんなところでくすぶるほど、我慢強いわけじゃない。だから私の成長に着いてこれないなら、あんたのこと、置いてくから」
「セツナさん……かっこよすぎです!」
「は?」
「どこまでも強さを追い求めるその心意気。とても尊敬します!私も薬草研究にもっともっと励みますね!」
「……あ、そう……」
キラキラとした純粋な目でセツナを見つめるエル。セツナは少しの沈黙後、そっぽを向いてエルの無垢な瞳から逃げた。
「兄さん」
「お、どした?」
みんなの様子を見回していると、隣に立つシンに声をかけられた。
「兄さんは今、楽しいか」
「なんだなんだ唐突に。楽しいかだって?そりゃもちろん、こうやって仲間と一緒に冒険ができてるんだから、楽しくないわけないだろ?」
「そうか……」
シンがこんなこと聞いてくるなんて珍しいな。何か心境の変化でもあったのかもしれないなー。
「そういうシンはどうなんだ?」
「俺は……正直に言えば、よく分からない。俺には兄さんだけがいればそれでいい。その考え方は変わらない、が……なにかもやもやする時がある」
「もやもや?」
そんなあやふやな言葉使うなんて、ほんとにどうしたんだ、シンのやつ。
「うーん。それって例えばどんな時にそうなるんだ?」
「……傷つけられた時とか……?」
「傷つけられたって、シンがか?」
「いや、俺じゃなくて……ノアズアークの誰かが、かもしれない」
「……!」
はーん、なるほどなるほど。シンよ。オレはしっかりと理解したぞ。お前のそのもやもやの正体。
けどこれってオレの口から言うより、シンに自分で気づいてほしい気もする。こればっかりはいくら兄ちゃんでも弟を甘やかせられないよなー。シンには自分の世界をもっと広げてほしいからな。牛の歩みほどの遅さでも、着実に成長してくれればそれでいいんだ。その片鱗が、今間違いなく見えてきているのだから。
「兄さん?」
オレがひとりでうんうんとうなづいていると、シンがどうしたんだと言いたそうにオレの名を呼んだ。
「あ、いやなんでもない。そんなことよりもだ、シン。そのもやもや、大事にするんだぞ」
「大事に?だがこれが来ると苛立ちを覚えてきて、正直鬱陶しい……」
「あー、苛立つのはそうだろうなー、うんうん」
「……兄さんが意地の悪いことをしている気がする……」
「そんなことないっての。兄ちゃんの言うことを信じろって。な!」
「……分かった。なるべく向き合うことにする」
「おー!それでこそオレの自慢の弟だ!」
オレは背伸びをしてシンの頭をくしゃくしゃに撫でてやった。乱暴っちゃ乱暴だけど、シンは存外嬉しそうな顔をしていた。口角が少しだけだが上がっている。
「よーし。そろそろ依頼人に報告を……」
オレはふと、花畑の中央に倒れる大きな物体に目を向けた。
この黒焦げの身体を氷で纏った像?というか、このよくわかんない魔物?は、SBで回収した方がいいのか?このまま放置するのも近隣の村からしたらいい迷惑だろうしな。
オレは左手人差し指につけた指輪型のエスパシオから小さなキューブであるSBを取り出した。そしてこのデカブツを吸収するためにSBを前に構えた。
「キュイ!キュイキュイ!」
突然、地面に置いておいたケージから必死な鳴き声が聞こえてきた。腕を下げてその声の主を見れば、ケージにどかどかとアタックしていた。
「また暴れ出したんだけど?こいつ。今度はなんだよ、桃兎くん」
オレはしゃがんでケージに手を当てながら、暴れる桃兎にそう問いかけた。
「キュイ!キュイ……キュイ!」
桃兎は小さな手を使って、めいいっぱい大きな円を描いた。
「……ん?」
「キュイ!キュイ……キュイ!」
再び同じことをする桃兎。
え、どうしよう。まったくもってわかんない。
「シン。こいつの言いたいこと、わかる?」
「……兄さんに分からないことを俺なんかがわかるはずもない」
「そっか……」
お前はそういうやつだったな、うん。
うーん。もしかしたら、リュウならなんかわかるかも?別の桃兎だけど、結構懐かれてたし。
「リュウー!ちょっとこっちにきてくれないか?」
カズハに頬擦りされていたリュウは、とことことこちらに小走りしてきてくれた。その後ろからはカズハが歩いてきている。
「来たよ、ノア兄ちゃん」
「おう、ありがとな。でさ、ちょっと頼みがあんだけど、こいつが何を伝えたいのか、わかったりしないか?」
「……やってみる」
リュウは桃兎の動きをじっくりと見始めた。
まあ九九パーセントわかるわけはないと思うけど、可能性があるならやってみないとな。
「桃がほしいって」
「へ?桃?」
「うん……あの魔物が、もとはその桃の木、みたいだよ……?」
わーお。リュウがさらっと解読しちゃったよ……。びっくり仰天だわ。
「えーっと……?あれが仮に桃の木だとしても、あんな状態で桃なんか残ってるのか?」
オレは無惨な姿で倒れる桃の木?を見つめた。
黒焦げでかつカチンコチンに凍ってんだぞ?仮に桃があったとしても、きっと灰と化してるか中身までカチコチになってるかのどっちかだろ。
「わかんない……でも、桃がほしいって……」
「まあ、とりあえず探してはみるか。ありがとな、リュウ」
オレはリュウの頭をポンッとひと撫でした。
「リュウは桃兎の近くにいてやってくれ。リュウがいると居心地が良さげだからな、そいつら桃兎は」
「うん」
オレは早速桃の木の方へと歩き出した。もちろん隣にはいつものようにシンがいる。
「どしたのー?ノア?」
前方からカズハがこちらに近づいて来ていた。
「ちょうどいいとこに来た。カズハも手伝ってくれ」
「よくわかんないけど、いいよー」
こうしてオレたち三人での桃探しが開始した。
「桃……桃……桃ね……」
「兄さん。斬ってもいいか、こいつ」
オレとシンは焦げて凍った桃の木を探すことになった。カズハには、地面に埋まってる方の桃の木を探ってもらっている。まあそっちもこっちと似たようなことになってるっぽいから、桃が見つかるかどうかは正直わからん。
「そうだなー。外から眺めてるだけじゃなんもわかんないし、斬っていいぞ、シン」
「分かった」
その言葉と同時に、シンは二本の剣を使って桃の木を適当に分割した。
「ナーイス。これで探しやすくなったな」
オレはブロック状になった桃の木をひとつひとつ確かめていく。だがその中には氷に覆われた焦げた身体ぐらいしかなく、桃らしきものはまったく見当たらなかった。
「うーん、やっぱ無いなよなー」
ほんとに桃の木だったのか?こいつ。だって馬と牛の頭みたいのがついてるぞ。そんな芸術的っつうか人工的っつうか……とにかくそんな不思議な木が自然発生するのか?しかも普通の桃の木じゃなくて、魔物だし。
「ノア!シン!ちょっとこっちきてよ!」
オレが桃兎の言葉に疑念を抱いていると、背後からカズハの声が聞こえてきた。どうやら何かあったらしい。
「どうしたんだ、カズハ」
「いやさちょっと思ったんだけど、これが桃の木ってことなら、ここの下には無数の根が張り巡らされてるってことになるじゃん?あの上半身の大きさからして、下半身も相当大きいと思うんだよねー。だからもしかしたら、根の部分とかは無事かもしれないなーって思ってさー」
「たしかに。それはあり得るかもな」
今オレたちが目にすることのできる範囲にある桃の木は、全てが真っ黒焦げかつ凍りついた状態だ。だけど、見えない部分、つまりは根っこにあたる部分ならまだ可能性があるかもしれない。まあとは言っても、そこに桃があるかは確証がないんだけどな。
「黎明之眼」
おお。根の広がりがすごいなこれ。
オレの眼は、地面に四方八方へと続く根っこの全てを捉えた。
ん?根の先になんか丸いものがあるな……これは……桃か?
白に近い薄ピンク色の丸い物体。根の先ひとつひとつに、大小様々な桃がそれぞれひとつずつ成っていた。
まさか、本当にあるなんてなー……。
オレは眼に氣を流すのをやめ、二人の方に向き直った。
「カズハ、シン。朗報だ。どうやら根っこの先に桃が成ってるみたいだ」
「お!やったねー!」
「なるほど。なら問題はどうやって取るかだ」
「シンの言う通り。深いやつほど良さげな桃っぽいんだけど……」
より取りにくいのが面倒だよなー。
「こいつをポンッて簡単に引っこ抜けんなら話は単純だけど、こんなデカい幹、掴むのすら無理じゃないか?」
しかもほとんどが地面に埋まってるし。
「たしかにねー。こんなの、力のある亜人がいても無理だよー」
「根っこもかなり深いしなー。なんかいい方法は……」
「なんかあったのか、ノア」
「秀……」
オレたちが桃の取り方に悩んでいると、後ろから秀と湊、カナタとカイト、セツナとエル、そしてケージを抱えたリュウがやってきた。つまりは全員集合である。
「いやさ、桃兎が桃が欲しくてしょうがないらしくて、その桃がこの下に張り巡らされてる根っこの先っちょにあるんだけど、どうやって取ればいいんだがさっぱりわからなくてさー」
「土ん中に埋まった桃を取り出す方法か……」
「桃が根に成ってるんですか?そんなの聞いたことがないです……」
「不味そうだな」
エルとセツナはそれぞれに反応を示した。
「カナタとカイトは何か知らないのか?」
「桃のことなんざ、俺が知るわけないな」
「私も全く耳にしたことがございません」
湊の問いかけに、カナタは興味なさげに、カイトさんは丁寧に答えた。
「お、いい案を思いついたぜ?」
「マジ?!」
「おう」
秀のその一言にオレは心が舞い上がった。この難題に突破口が見つかったんだからな。
「でもこれには紫苑の協力が不可欠になる。湊、紫苑を叩き起こしてくれや」
「相も変わらず野蛮な物言いをするな、シュウ。私は起きている」
湊の首に巻きついていた紫苑は、顔を上げて秀の顔を見据えた。
「んだよ、起きてたのか。なら話ははやいな。紫苑には俺の目と同調をしてもらいてぇんだが、できるよな?」
同調は、紫苑の特殊な眼と同調相手の視野をシンクロさせる特殊氣術だ。本来は契約者である湊にしか使えないはずなんだけど、オレの知らない例外があったみたいだ。
「できるできないで言えば可能だ。お前は神の力を継いでいる。私の眼に耐えきれず死ぬことはないだろう。だが、湊とは違い、痛みという代償を支払うことになるぞ。それでもやると?」
「別に構やしねぇよ。痛みなんざ、いくらでも耐えられるっつうの」
「ふむ。了解した」
秀と紫苑は話を終えると、同調を始めた。そして再び何かを話し出した。
「なあ、ノア。秀は一体何と喋ってんだ?俺には湊に話しかけているように見えんだが、湊はまったく口を開いてねぇよな」
カナタに問いかけられ、オレは少し悩む素振りを見せた。
「うーんと……守護神と、かな?」
紫苑は九条家の守り神だから、守護神って言葉は間違ってない。けどこれじゃたぶん、何言ってんだって感じになりそう。
「は?」
やっぱそうなるよなー。でもこれ以上ほんとのことは言えんから、もう何も話せん。
「まあまあ、そんなことは置いといてさ。秀がどうにかしてくれるっぽいから、とりあえずオレたちは見守ってよう」
オレは秀と紫苑の方へと向き直った。
「へー。これが紫苑が見てる世界か。なんか、変な感じだなぁ」
「私にはこれが普通だ。それで、痛みはどうだ?」
「ああ、まあ、ちょっと目もとが痛ぇか、ぐれぇだよ。脅してきたわりに、そうでもねぇな」
「ほう。ならばシュウは相性がよいのかもしれないな」
「はは、そうかもなぁ……。さてと桃狩りを始めるとするか。おいお前ら!一旦花畑の外に出とけ!危ねぇから!」
秀からの指示にオレたちは素直に従って、花畑とその周りをぐるっと囲む森の境界線付近まで離れた。
「あれ、紫苑もこっちにきて良かったのか?」
オレは湊の首に巻きついたままの紫苑に問いかけた。
「ノアか。久しいな。私の眼はすでにシュウと同調済みだ。私からつながりを切らない限り、どんなに離れていても解除されることはない」
「へぇー。そうなのかー」
「どうやらもう始めるらしい」
湊の言葉にオレは前方を向いた。そこには荒れた花畑に手を当てる秀がいた。秀は紫苑の方を一瞥して、うなづいた。そして、手を当てた地面の方に目を向けた。
「陰陽術、岩壁……!」
秀がそう発して数秒後、地面から細めの円柱がいくつも飛び出してきた。柱という柱がまばらにそして次々に勢いよく迫り上がっていく。そして、またその数秒後、今度は空から大量の桃が降り注いできた。その異様な光景にオレたちは口を開け目を丸くした。
「桃の雨……?」
リュウがボソッとそう呟いた。リュウの言う通り、オレたちの眼前には今、桃の雨が降っている。
「キュイ!キュイ!キュイィィ!!」
ポカンと口を開けて驚愕するオレたちをよそに、ケージに閉じ込められている桃兎は軽やかなステップを踏みながら嬉しそうに鳴いていた。
何、この異常気象……。
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