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レグルス編
17 事件の調査
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side ???
スターライトから北に少し離れた森の中。暗がりにポツンと立つ建物は、山小屋というにはあまりに大きい。だがそれでいて苔や蔦がところどころに生えており、まだ人が住んでいるようには感じられないだろう。
「ちっ。遅い遅い遅い遅い遅い遅い……!」
『ドンッ!』
無精髭を生やした男はすでにひび割れていたテーブルに拳を思い切り叩きつけた。目は少し充血しており、腕や足は通常に比べてあまりに細かった。それでもテーブルは砕けちり、床に散乱した。
『キィィ』
部屋の扉が音を立てて開いた。部屋には明かりがなく、小窓からかすかに差し込む光だけがこの空間を照らすのみであった。
「遅くなりました」
「おせぇんだよ!クズどもがよ!テメェらを待つのに俺が何分ここに拘束されたと思ってんだよ?!ああぁ?!」
唾を撒き散らすほどに、口を大きく開けて怒鳴る無精髭の男。対して今さっき入ってきた人物たちはそれに動じることなくその場に立っていた。
「……申し訳ございません」
「…………」
「おい、なんだよその目、その態度はよ?!俺に反抗することがどういうことか、分かってんのか?お前らが大事にしてる女の首がぽっきりいっちまうってことなんだぜ?!」
「あなた様に無礼をはたらき、誠に申し訳ございません」
「すみませんでした……」
「はっ。ったく、無能な手下を扱ってやるのも大変だなぁあ?」
無精髭の男は右手に茶色のビンをもち、頬を赤らめながら機嫌良さげに大声を出していた。
「これは、躾だぜ?!」
無精髭の男は右手に持っていたビンを勢いよく投げつけた。
『バリンッ!』
「ちっ、外れかよ。運がいいなー、おい」
ビンは二人の間を抜けて後方の壁へと叩きつけられた。そして当然、ビンは粉々に砕け床に散らばった。だがその間、二人は全く動じずにいた。
「もっと怯えた表情でも見せてみろよ。つまんねぇな」
男は床に何本も置いてある茶色のビンをひとつ手に取ると、栓を開けてグビグビと飲み始めた。
「……プハーっ。こんなうめぇ酒を何杯も飲めるなんざ、やっぱこの仕事について正解だったぜ。俺って最高についてるわぁ」
酒に溺れる無精髭の男はさらにもう一本のビンの栓を開け、それも一気に飲み干してしまった。
「……くうぅっ!疲れた骨身に染みるなぁっ!」
「「…………」」
酔った勢いか、ひとり盛り上がる無精髭の男を前に、二人はただただ無言で立ち続けていた。
「……ふぅ。あ、そだそだ。お前らに命令を伝えねぇとな。えーと……『子どもの誘拐は次の指示があるまで待機しろ。ただし、ほとぼりが冷めればその時は十人の子どもを誘拐してこい』だとさ」
無精髭の男は命令が書かれていたであろう白い紙をポイッと空中に投げた。
「「っ……」」
「よかったなぁ。とりあえず当分誘拐はしなくていいってよ。ま、その後まーたすぐに攫い屋に逆戻りだけどな。ヒャハハハ!」
無精髭の男の気味の悪い嘲笑が二人の耳を侵食し、二人は苦悶に耐えるような表情を浮かべていた。
「はいはい解散解散。とっととどっか行けやクズども!ヒャハハハハハハハ!」
「……おい」
「ハハハハ……あ?んだ、その目はよぉ」
「本当に、あいつは無事なんだろうな」
怒気をはらんだ男の声に、無精髭の男は薄気味悪い笑みを浮かべた。
「無事……無事、かー……あれを無事というかは俺は知らねぇけど、ま、生きてはいるんじゃねーの?」
「ッテメェらぁ!」
怒りで我を忘れた男は、思い切り殴り掛かろうとした。だが……。
「ダメです!」
男の振りかぶった手は隣にいたもう一人の男の手に捕まり、無精髭の男に届くことはなかった。
「止めんじゃねぇ!」
声を荒げた男は怒りに満ちた表情で無精髭の男を睨みつけ、思うように動かせない振り上げた腕を震わせた。
「……気持ちは痛いほどにわかっています。ですがここで反抗ししてしまえば、あの子が助かる可能性が今以上に低くなります。それは私たちの本意ではないはずです」
「……っ……クソが……!」
優しげな声の男に諭され、憤っていた男は悔しそうに腕を下ろした。
「いやぁー、物分かりのいいクズがいて助かるぜー。危うく口が滑って、あのガキぶっ殺せって言っちまうとこだったわぁ!ヒャハハハハハハ!」
上機嫌にゲラゲラと笑う無精髭の男。これを見た二人がどのような心境でいたかなど、想像に難くない。
「おいコラ、いつまでいんだよ。とっとと出てけや!クズどもがぁ!!」
無精髭の男は再び空のビンを二人目掛けて放り投げた。幸い掠りもしなかったが、ビンは二人の足下にぶつかり、粉々に砕け散った。
『キィィ』
「……失礼します」
「っ……」
落ち着いた声の男が扉を開けて部屋を出ていく。その後ろに片割れの男も続いた。
「あーあー、あれもそろそろ潮時ってやつじゃねぇの?なあ、人形師さん?」
「うーん、そうかもね~。きみんとこのボスにさ、代わりの手駒が用意できるか聞いてきてくれなーい?」
二人が出ていったことを確認した無精髭の男は、誰もいないはずのこの暗やみに声をかけた。するとその呼び声に応じて謎の人物が暗がりから姿を見せた。だがあいにくと、この部屋は小窓から差し込むわずかな月明かりにのみ照らされているせいか、その人物の容姿まで確認することはできない。声も高めで中性的であり、少年のようなあどけなさを感じられるかもしれない。
「へいへい、わかってますよぉー。あんたは俺ら『ノートリアス』にとっての貴重な資金源だかんなぁー。なんでも言うこと聞きまっせ」
「わ~、嬉しいな~。ありがとね~」
「それでぇ?今後はどうすんだぁ?ヒック……守護叡団のやつらもしつけぇしぃ、あのクズどもに下した命令通りよぉ、ほとぼりが冷めてからぁまた活動を再開するってのでもーーー」
「ぷぷぷ。だいじょうぶ~。策はちゃーんと考えてるからさ。あ、もちろんきみの手も必要になるから、今後も頑張って働いてね~」
「おーおー、いいぜいいぜぇー。面白くなってきたなぁ。最近は事件現場を見てこいっつうつまんねぇ仕事やらされてさぁ、飽き飽きしてたとこだぁ」
無精髭の男は最後の一本であろうビンの栓を開け、一気に中身を飲み干していった。
「僕の大事な趣味を奪うなんて、ほんといい度胸してるよね~、あいつら。諦めの悪い子をいじめるのは好きだけど~、ここまで邪魔されるとさすがの僕もカッチーンときちゃうよね~。まあでも~……最後に笑うのはこの僕だけさ。ぷぷぷぷ……」
side ノア=オーガスト
「よーし、まずは情報収集ってやつをしないとな!」
オレとシンとセツナ、それにリュウの四人は、EDENレグルス支部のフリースペースにやってきた。理由はそう、亜人の子どもを狙った凶悪誘拐犯を捕まえるためだ。
昨日、カフェ『アルボール』でリオンとステラさんに協力を要請され、結論から言えばオレたちは首を縦に振った。当初ここにきた時は、というかここに来る前から、厄介ごとになるべく突っ込んで行かないようにと、珍しく自重していたオレだったけど、友の頼みとあれば協力しないわけにはいかない。もちろん、リーダーとしてみんなに了承を得てから、この要請を承諾したけどさ。
「冒険者に、話を聞く……?」
「その通りだ、リュウ。ボレアスの人たちと協力して捜査してるみたいだから、今のオレたちよりも有益な情報を持ってるに違いない。言うなればオレたちの先輩ってわけだ」
「カズハたちはどうしたんだ?」
「あれ、聞いてなかったのかよ、セツナ。とりあえず二手に分かれていろんなとこから探ってくって話になったじゃんか」
「そうだったか?」
……そういえばその時セツナは、桃兎の依頼でたんまりもらった報酬で新調した弓の手入れに勤しんでいたような……。
「そんで、冒険者たちとの連携を円滑にするために、ボレアスの叡団員がついてるってステラさんが言ってたけど……まだ来てないっぽいな」
「先に冒険者から話を聞くのがいい」
「シンの言う通りだな。先にちゃちゃっと済ませちまおう。あのー、ちょっといいか?」
オレは近くのテーブルで談笑していた男女に話しかけた。二人とも、たぶんだけど猫の亜人っぽい。
「ん、なんだあんたら……あ、お前昨日ステラ叡団長をあっさりのした……たしかノアズアークのリーダーだったっけか?」
「あー、あんたが昨日の夜に馬鹿みたいに酔いながら話してたやつねー。酔っ払いの戯言かと思ってたけど、実在してたんだー」
「な!お、お前、俺が嘘こいてると思ってたのかよ?!」
「だってー、『あの人間強すぎだろ?!』ってずーっと言ってたから、なんか相手するの面倒になっちゃってさー」
声をかけた男女は仲良さげに戯れ始めた。
「実はさ、オレたちもボレアスと一緒にあの事件を解決しようとしてるんだけど、今までの調査の中で二人が気になったこととかなかった?」
「は?人間が俺たちの問題に首突っ込むのかよ。目障りだな」
「ほんとほんと。人間なんて力じゃ私たちに敵わないくせに卑怯なことばっかりするから、私嫌いなんだよねー」
先ほどまでの明るい雰囲気とは打って変わって、二人は忌々しそうな目でオレたちを睨んだ。
「えーと……」
まさかの、というかまあ想定内っちゃ想定内の急展開に、オレは少し戸惑ってしまった。
どうしよう、これ。てか、前もこんな感じだったよな。桃兎を捕まえるために村に話を聞きにいった時、村人からめっちゃ警戒されて……ただ今みたいに話を聞きたかっただけだったのにな。
「子どもがいなくなったら、悲しい。家族も、みんなみんな、悲しい。だから、助けたい。……だめ?」
オレがどうしたものかと困っていると、横からまさかまさかの救世主が現れた。
「「かわ……っ!」」
さっきまでオレたちを不快だと言わんばかりに睨みつけていた二人は、眼をハートにさせながら口もとに手を当てている。要はリュウの純真無垢な訴えにいちころとなってしまったわけだ。
「え、何この生き物?!かわいすぎだろ!」
「もう超かわいいし、超きれいじゃない?ほら、この雪みたいに真っ白なーーー」
「気安くリュウに触れるな」
女の方がリュウのつやつやでサラサラな髪に触ろうとした直前、セツナがその手首を掴み軽く投げた。
「ちょ、何すんのよ、あんた……!」
女は掴まれた手首をさすりながらセツナをキッと睨んだ。
「リュウはあまり人に慣れていない。ぬくぬくと平和に暮らしていたお前たちにはわからないだろうが、自分以外の全てが敵だったこの子には、その軽々しい行動ひとつで傷つくんだ」
そう吐き捨てるように言ったセツナは、リュウの手を優しく握っていた。リュウはといえば、確かによく見れば身体がほんの少し震えているのがわかる。たぶん、ダスクにいた時の嫌な記憶がフラッシュバックしたんだ。
もうそれなりの時間をオレたちと過ごしてきたとはいえ、過去の傷は消えやしない。その傷を癒やし切るくらいに楽しい人生をオレたちと一緒に歩んでくれたらとは切に願ってるけど、それには当然もっともっと時間が必要になってくる。
「あ……ご、ごめんよ、僕」
てっきりセツナの言葉に言い返すと思っていたけど、オレの予想をいい意味で裏切り、女はリュウに申し訳なさそうに謝った。
「……その子の誠意に免じて、今回ばっかりはお前ら人間に協力してやるよ。それで、お前らは何が知りたいんだ?」
「そう言ってくれるのは助かる。聞きたいことっていうのはな、今まで二人が調査した中で何か気になることがなかったかなって」
「気になることか……大体のことはボレアスの叡団員に報告してるしな……なんかあるか?」
「うーん、そうねー……あ、そういえばさ、あの美男な二人組の冒険者いたじゃん?えーとパーティ名は……」
「あー、あいつらな。Bランクパーティ『イノセント』だろ?」
「そうそうそれそれ!」
イノセントって確か、カナタとカイトさんが所属してるパーティだったよな。
「それがどうかしたかよ」
「いやね、今となっては二人組で活動してるのが通常運転みたいになってるけど、たしか前までは三人組だったはずなのよ。さすがにいつから二人になったかなんて覚えてないけど、ほら、茶髪の女の子、いつも連れてたじゃん」
茶髪の女の子……?そんなの初耳だ。二人ともそのことは一回も言ってなかったから……何かあってパーティから離脱しちゃったのかな?
「んー、まあ言われてみればそうだったか……?てか、よく覚えてたな、お前」
「そりゃあんな美青年、そうそう会えないし?」
「は、そんなことだろうと思った」
「でもさ、確かパーティ名にはまだその子の名前あったんだよー。あ、その子クロエちゃんっていうみたいなんだけどー」
「……お前マジでどっからその情報もってきてんだよ。めっちゃこえーんだけど?」
「ふふふ。乙女の情報網を甘くみないでよねー」
つまり、パーティから除名はされてないけど、最近その姿を見せてないってことか。
……なんか変な感じがするなー。
「そのクロエって子はいつから見かけなくなったんだ?」
「さっきも言ったけど具体的な日にちまで覚えてないよ。まあでも、こいつが全然覚えてなかったところをみるに、結構経ってるんじゃない?」
「その話、誘拐事件と何か関係があるのか?」
「っ!さ、さあ?だってあんたらが気になることを言えっていったんじゃん。だから私が頑張って思い出してあげたんでしょ?」
さっきセツナにきつい言葉を言われたせいか、女は尻尾を逆立たせ膨らませていた。
「……そういや、俺も思い出したことあったわ」
「え、何よ」
「最近死んじまった梟の亜人がいたじゃん?オレたちとのボレアスの中継役的なのをしてくれたひとりのさ」
「あー、確かウルラさんだっけ?」
「そうそう。ちょっと気難しそうな人な。俺実は、この間から指名手配された無精髭の男いるじゃん?前にそいつをたまたま見つけて、後をつけてたんだよ。聞き込みでその特徴をもった男が怪しいってのはわかってたからさ。ただその場で捕まえるより、泳がせた方が情報得られるかもって思って尾行したわけなんだが……はぁ」
男は軽くため息をつき、再び話し始めた。
「尾行に気づかれちまったのか、どっかの曲がり角で見失っちまってよ。あの時ほど自分を責めたことはねぇよ。俺の浅はかな考えのせいで、事件解決に繋がる重要な手がかりをみすみす取り逃しちまったんだからな」
「ちょっと待って。なんでその時に私たちに言ってくれなかったのよ?」
「いやだってよ。俺のヘマで重要な手がかりを失いましたなんざ、恥ずかしくて言えねぇだろ」
「何そのみみっちい理由。ほんと小さい男ねー、あんた」
「ほっとけっての。でだ、確かにあの男を見失いはしちまったけど、その曲がり角にボロボロの白い紙が一枚落ちてたんだよ。なんか文字は書いてあったけど、暗号みたいになってて俺には全然読めなくてな。でもさすがに誰にも言わずに俺の中だけで完結しちまうのはよくねぇってのは分かってたから、ウルラさんにこっそり渡したんだよ」
「へー。それで?」
女は冷ややかな視線を男にぶつけていた。
「……したらウルラさん、心底驚いたって感じで目を丸くした後、紙を持ったまますぐにどっか言っちまったんだよ。いつも冷静だったあの人にしちゃ、かなり動揺してる感じだったな」
暗号みたいな文字が書かれた紙を見ただけで、どこかに行った……つまり、その暗号が読めたってことか?けど、わざわざ暗号化した文字ならそれだけ大事な内容で、他人に知られたくないってことだよな。それをボレアスの一叡団員が一瞬にして理解するなんてことありえるのか……?
「そんでその数日後、ウルラさんが亡くなったって知らされたんだよ」
「そんな大事なことを忘れるなんて、普通はあり得ないとと思うけど」
セツナの的確な指摘にオレも内心で賛同した。今まで一緒にやってきたメンバーのひとりが死んだら、さすがに取り乱すし絶対に忘れない。
「あ、いやー、あの後すぐにでっけぇ依頼が舞い込んじまって、大金が手に入るっつうから舞いあがっちまってよ。だって俺ん家貧乏で弟妹がわんさかいるから、それでだな……」
男は顔をしたに向けしょんぼりとした。
「えーと、今のはあんまり気にしないでくれ。別にそのことを責めたいわけじゃないから。二人とも情報提供ありがとな。かなり参考になった」
「ありがと」
リュウがみんなを代表して、ぺこっとお辞儀をした。
「談笑の邪魔して悪かったな。じゃあまたな」
猫の亜人の男女に簡単に別れを告げ、オレたちは別のテーブルへと移った。
「さっきの話、みんなはどう思った?」
「イノセントの二人がどうこうという話は別段どうとも。それが事件に関係あるかどうかなんて現時点では不明だから」
「確かにセツナの言うことはわかる。でも一緒に依頼をこなした手前、オレとしてはちょっと気になっちゃうんだよなー。事件に関係あるなし関わらずさ」
カナタとカイトさんには桃兎の件でだいぶお世話になったし、何か困ってるのならできるだけ力を貸したいとは思ってる。それに、オレ自身いろんな人と交流を図りたいっていう想いをもってるし、グレンさんにも人との繋がりを大切にするといいっていう助言ももらった。先輩冒険者のアドバイスは軽んじないようにしないとな。
……まあちょっと、変な人ではあるけど……。
「兄さんは誰よりも優しいからな」
「ははは」
やっとシンの声が聞けたと思ったら、まさかのオレへの賛辞。ちょっと照れくさくなっちまったけど、いずれにせよだ。誘拐事件の調査と並行して、カナタやカイトさんのこともそれとなく探ってみるか。
「ノア兄ちゃん、暗号ってなに?」
「ん、そうだな……暗号っていうのは、基本的には自分以外の誰にも読むことができないように独自に作った文字列のこと、かなー?」
「みんな、読めない?」
「そ。基本は、な。ただ状況によってはそれが当てはまらないこともある。例えば、取引相手との秘密のやり取りだった場合、自分だけが読める暗号じゃ相手との意思疎通が図れない。だからお互いしかわからない暗号をつくるわけだ」
「ブリガンドでも暗号を使ってたな。もし何かの手違いで第三者の手に情報が漏れたとしても、暗号化してしまえばなんの問題もないとドミニクは言っていた」
やっぱブリガンドみたいな闇に生きる組織なら、暗号を使うのは常套手段って感じなんだろうなー。
「……?なんで、ウルラさん……?は、どっか行っちゃったの?」
「そう、そこ。そこなんだよ、リュウ。やっぱリュウも変だと思うよなー」
どうやらリュウは、オレの話をきちんと理解してくれたらしい。賢くて可愛くて容姿端麗だなんて、うちの子最強すぎないか……?
「暗号化された文を読めるということは、それを作った本人あるいはその暗号を使ってやり取りをしている人物のどちらか、というのが有力説だろう」
シンは端的にオレたちの疑問への解答を述べた。
「だが前者でいえばすでにウルラは死亡が確認され、これ以上の被害は出ないはずだ。暗号を作った本人が首謀者ならば、という前提条件がある場合はな。そして後者ならなぜ死亡したかがわからない」
セツナの言い分はわかる。てかそもそもの話、公的機関であるはずのボレアスの一員のひとりが、こんな非人道的な行いに関わってた、なんて思いたくないよな。
「あー……まあ考えられるとしたら、暗号文を落とした無精髭の男と仲違いして、その結果死亡したとかか?」
「現状、それが一番濃厚だ。そうなれば、無精髭の男に加えてそのウルラという亜人についての情報も探るべきだろ」
「え、めっちゃ頼もしい……!」
オレはセツナの理路整然とした発言に、思わず感嘆してしまった。
「は?こんなの誰でもできるだろ」
「いやいや、オレはリーダーのくせして迷ったり寄り道したりしちゃうし、要領を得ないようなこといいがちだけど、セツナはパッと物事を決められるし、話すこともまとまっててわかりやすいから、案外リーダー的ポジションに向いてるんじゃないか?」
下手したら、オレよりリーダーの素質はある気がしてならない。……自分で言っててちょっと悲しいけども。
「……私に誰かを導く力なんてあるわけないだろ。それ以前に、その資格すら私にはないんだから」
セツナは得意の無表情を貫いてた。だけどどこか、自分でも気づいていない心の奥で悲しんでいるような、そんな気がしてならなかった。
「セツナお姉ちゃん」
「ん、なんだ?リュウ」
「ちょっとだけ、しゃがんで?」
「……こうか?」
リュウのお願いにセツナは素直に従い、リュウと同じ目線になる程度まで足を曲げた。
リュウは一体何を……?
「いい子、いい子」
「……!」
リュウが何をしようとしているのかと見守っていると、リュウはその小さな手でポンポンとセツナの頭を撫でた。秀がオレにやるみたいに、オレがリュウにやるみたいに。
「セツナお姉ちゃんは、優しくて、かっこいい、ぼくの憧れの人、だから……悪い子にしないで?」
リュウは撫でていた手を止めて、セツナの両手に軽く触れた。
「……ごめん。不甲斐ないところみせた。ありがと、リュウ」
セツナは滅多に見せない、やわらかな笑みをリュウへと返した。リュウもそれを見て満足そうに微笑んでいた。
「こう見ると、やっぱ姉弟って感じがするなー」
微笑ましい光景だー。目の保養、心の安らぎ。
「兄さんも俺の憧れだ」
「え、マジ?ありがとな」
兄ちゃんとして弟にかっこよくてデッカい背中を見せれてるってわけか……!ふふん、気分がいいなー!
「さてさてっと。まだ二人にしか情報聞けてないから、他の冒険者からも話を聞きに行くか。えーっと、ちょうど休憩タイムなのかわかんないけど、結構冒険者多いからこっからは二手に分かれるか。あと、聞くのは無精髭の男に関することとウルラって名前の亜人についてだな」
「は?ウルラがなんだって?」
オレがリーダーっぽく今後の方針を述べていると、どこからか声が聞こえてきた。その声に振り向けば、ガンを飛ばしてきている男がひとりいた。その横には、少し背の低い人物もいる。
「あ……ダ、ダメだよ、ペルロ。知らない人を、いきなり、に、睨むなんて……失礼だよ……」
黒光りした髪と橙色の耳をした男を諌めようと、明るめのオレンジ色の髪をした男が間に入ってきた。おどおどとしていて、ちょっと頼りない印象を受ける。
「失礼もクソもあるか。また俺たちの親友を悪く言うやつらが出たんだ。一発殴ってやらないと気が済まん……!」
「いやいや、オレたちは悪口なんて一言も言ってないって。ただ、ウルラって亜人について知れれば、誘拐事件の解決に近づけるかもしれないと思っただけで」
「…………マジかよ。すまん!」
ペルロと呼ばれた男は、ガバッと勢いよく自分の上体を前へと倒した。
なんかすっごくいい人そうー。
「いや全然いいって。誤解が解けたみたいでよかったよ。……あれ、その服ってもしかして守護叡団のやつ?」
「ああそうだ」
黒髪の男は姿勢をキチッとただし、自身の名前を名乗った。
「俺は守護叡団ボレアス所属のペルロってもんだ」
「ぼ、ぼくもボレアスに入ってて……ムースって言います」
「ペルロさんとムースさんか。オレはノア。よろしくな」
スターライトから北に少し離れた森の中。暗がりにポツンと立つ建物は、山小屋というにはあまりに大きい。だがそれでいて苔や蔦がところどころに生えており、まだ人が住んでいるようには感じられないだろう。
「ちっ。遅い遅い遅い遅い遅い遅い……!」
『ドンッ!』
無精髭を生やした男はすでにひび割れていたテーブルに拳を思い切り叩きつけた。目は少し充血しており、腕や足は通常に比べてあまりに細かった。それでもテーブルは砕けちり、床に散乱した。
『キィィ』
部屋の扉が音を立てて開いた。部屋には明かりがなく、小窓からかすかに差し込む光だけがこの空間を照らすのみであった。
「遅くなりました」
「おせぇんだよ!クズどもがよ!テメェらを待つのに俺が何分ここに拘束されたと思ってんだよ?!ああぁ?!」
唾を撒き散らすほどに、口を大きく開けて怒鳴る無精髭の男。対して今さっき入ってきた人物たちはそれに動じることなくその場に立っていた。
「……申し訳ございません」
「…………」
「おい、なんだよその目、その態度はよ?!俺に反抗することがどういうことか、分かってんのか?お前らが大事にしてる女の首がぽっきりいっちまうってことなんだぜ?!」
「あなた様に無礼をはたらき、誠に申し訳ございません」
「すみませんでした……」
「はっ。ったく、無能な手下を扱ってやるのも大変だなぁあ?」
無精髭の男は右手に茶色のビンをもち、頬を赤らめながら機嫌良さげに大声を出していた。
「これは、躾だぜ?!」
無精髭の男は右手に持っていたビンを勢いよく投げつけた。
『バリンッ!』
「ちっ、外れかよ。運がいいなー、おい」
ビンは二人の間を抜けて後方の壁へと叩きつけられた。そして当然、ビンは粉々に砕け床に散らばった。だがその間、二人は全く動じずにいた。
「もっと怯えた表情でも見せてみろよ。つまんねぇな」
男は床に何本も置いてある茶色のビンをひとつ手に取ると、栓を開けてグビグビと飲み始めた。
「……プハーっ。こんなうめぇ酒を何杯も飲めるなんざ、やっぱこの仕事について正解だったぜ。俺って最高についてるわぁ」
酒に溺れる無精髭の男はさらにもう一本のビンの栓を開け、それも一気に飲み干してしまった。
「……くうぅっ!疲れた骨身に染みるなぁっ!」
「「…………」」
酔った勢いか、ひとり盛り上がる無精髭の男を前に、二人はただただ無言で立ち続けていた。
「……ふぅ。あ、そだそだ。お前らに命令を伝えねぇとな。えーと……『子どもの誘拐は次の指示があるまで待機しろ。ただし、ほとぼりが冷めればその時は十人の子どもを誘拐してこい』だとさ」
無精髭の男は命令が書かれていたであろう白い紙をポイッと空中に投げた。
「「っ……」」
「よかったなぁ。とりあえず当分誘拐はしなくていいってよ。ま、その後まーたすぐに攫い屋に逆戻りだけどな。ヒャハハハ!」
無精髭の男の気味の悪い嘲笑が二人の耳を侵食し、二人は苦悶に耐えるような表情を浮かべていた。
「はいはい解散解散。とっととどっか行けやクズども!ヒャハハハハハハハ!」
「……おい」
「ハハハハ……あ?んだ、その目はよぉ」
「本当に、あいつは無事なんだろうな」
怒気をはらんだ男の声に、無精髭の男は薄気味悪い笑みを浮かべた。
「無事……無事、かー……あれを無事というかは俺は知らねぇけど、ま、生きてはいるんじゃねーの?」
「ッテメェらぁ!」
怒りで我を忘れた男は、思い切り殴り掛かろうとした。だが……。
「ダメです!」
男の振りかぶった手は隣にいたもう一人の男の手に捕まり、無精髭の男に届くことはなかった。
「止めんじゃねぇ!」
声を荒げた男は怒りに満ちた表情で無精髭の男を睨みつけ、思うように動かせない振り上げた腕を震わせた。
「……気持ちは痛いほどにわかっています。ですがここで反抗ししてしまえば、あの子が助かる可能性が今以上に低くなります。それは私たちの本意ではないはずです」
「……っ……クソが……!」
優しげな声の男に諭され、憤っていた男は悔しそうに腕を下ろした。
「いやぁー、物分かりのいいクズがいて助かるぜー。危うく口が滑って、あのガキぶっ殺せって言っちまうとこだったわぁ!ヒャハハハハハハ!」
上機嫌にゲラゲラと笑う無精髭の男。これを見た二人がどのような心境でいたかなど、想像に難くない。
「おいコラ、いつまでいんだよ。とっとと出てけや!クズどもがぁ!!」
無精髭の男は再び空のビンを二人目掛けて放り投げた。幸い掠りもしなかったが、ビンは二人の足下にぶつかり、粉々に砕け散った。
『キィィ』
「……失礼します」
「っ……」
落ち着いた声の男が扉を開けて部屋を出ていく。その後ろに片割れの男も続いた。
「あーあー、あれもそろそろ潮時ってやつじゃねぇの?なあ、人形師さん?」
「うーん、そうかもね~。きみんとこのボスにさ、代わりの手駒が用意できるか聞いてきてくれなーい?」
二人が出ていったことを確認した無精髭の男は、誰もいないはずのこの暗やみに声をかけた。するとその呼び声に応じて謎の人物が暗がりから姿を見せた。だがあいにくと、この部屋は小窓から差し込むわずかな月明かりにのみ照らされているせいか、その人物の容姿まで確認することはできない。声も高めで中性的であり、少年のようなあどけなさを感じられるかもしれない。
「へいへい、わかってますよぉー。あんたは俺ら『ノートリアス』にとっての貴重な資金源だかんなぁー。なんでも言うこと聞きまっせ」
「わ~、嬉しいな~。ありがとね~」
「それでぇ?今後はどうすんだぁ?ヒック……守護叡団のやつらもしつけぇしぃ、あのクズどもに下した命令通りよぉ、ほとぼりが冷めてからぁまた活動を再開するってのでもーーー」
「ぷぷぷ。だいじょうぶ~。策はちゃーんと考えてるからさ。あ、もちろんきみの手も必要になるから、今後も頑張って働いてね~」
「おーおー、いいぜいいぜぇー。面白くなってきたなぁ。最近は事件現場を見てこいっつうつまんねぇ仕事やらされてさぁ、飽き飽きしてたとこだぁ」
無精髭の男は最後の一本であろうビンの栓を開け、一気に中身を飲み干していった。
「僕の大事な趣味を奪うなんて、ほんといい度胸してるよね~、あいつら。諦めの悪い子をいじめるのは好きだけど~、ここまで邪魔されるとさすがの僕もカッチーンときちゃうよね~。まあでも~……最後に笑うのはこの僕だけさ。ぷぷぷぷ……」
side ノア=オーガスト
「よーし、まずは情報収集ってやつをしないとな!」
オレとシンとセツナ、それにリュウの四人は、EDENレグルス支部のフリースペースにやってきた。理由はそう、亜人の子どもを狙った凶悪誘拐犯を捕まえるためだ。
昨日、カフェ『アルボール』でリオンとステラさんに協力を要請され、結論から言えばオレたちは首を縦に振った。当初ここにきた時は、というかここに来る前から、厄介ごとになるべく突っ込んで行かないようにと、珍しく自重していたオレだったけど、友の頼みとあれば協力しないわけにはいかない。もちろん、リーダーとしてみんなに了承を得てから、この要請を承諾したけどさ。
「冒険者に、話を聞く……?」
「その通りだ、リュウ。ボレアスの人たちと協力して捜査してるみたいだから、今のオレたちよりも有益な情報を持ってるに違いない。言うなればオレたちの先輩ってわけだ」
「カズハたちはどうしたんだ?」
「あれ、聞いてなかったのかよ、セツナ。とりあえず二手に分かれていろんなとこから探ってくって話になったじゃんか」
「そうだったか?」
……そういえばその時セツナは、桃兎の依頼でたんまりもらった報酬で新調した弓の手入れに勤しんでいたような……。
「そんで、冒険者たちとの連携を円滑にするために、ボレアスの叡団員がついてるってステラさんが言ってたけど……まだ来てないっぽいな」
「先に冒険者から話を聞くのがいい」
「シンの言う通りだな。先にちゃちゃっと済ませちまおう。あのー、ちょっといいか?」
オレは近くのテーブルで談笑していた男女に話しかけた。二人とも、たぶんだけど猫の亜人っぽい。
「ん、なんだあんたら……あ、お前昨日ステラ叡団長をあっさりのした……たしかノアズアークのリーダーだったっけか?」
「あー、あんたが昨日の夜に馬鹿みたいに酔いながら話してたやつねー。酔っ払いの戯言かと思ってたけど、実在してたんだー」
「な!お、お前、俺が嘘こいてると思ってたのかよ?!」
「だってー、『あの人間強すぎだろ?!』ってずーっと言ってたから、なんか相手するの面倒になっちゃってさー」
声をかけた男女は仲良さげに戯れ始めた。
「実はさ、オレたちもボレアスと一緒にあの事件を解決しようとしてるんだけど、今までの調査の中で二人が気になったこととかなかった?」
「は?人間が俺たちの問題に首突っ込むのかよ。目障りだな」
「ほんとほんと。人間なんて力じゃ私たちに敵わないくせに卑怯なことばっかりするから、私嫌いなんだよねー」
先ほどまでの明るい雰囲気とは打って変わって、二人は忌々しそうな目でオレたちを睨んだ。
「えーと……」
まさかの、というかまあ想定内っちゃ想定内の急展開に、オレは少し戸惑ってしまった。
どうしよう、これ。てか、前もこんな感じだったよな。桃兎を捕まえるために村に話を聞きにいった時、村人からめっちゃ警戒されて……ただ今みたいに話を聞きたかっただけだったのにな。
「子どもがいなくなったら、悲しい。家族も、みんなみんな、悲しい。だから、助けたい。……だめ?」
オレがどうしたものかと困っていると、横からまさかまさかの救世主が現れた。
「「かわ……っ!」」
さっきまでオレたちを不快だと言わんばかりに睨みつけていた二人は、眼をハートにさせながら口もとに手を当てている。要はリュウの純真無垢な訴えにいちころとなってしまったわけだ。
「え、何この生き物?!かわいすぎだろ!」
「もう超かわいいし、超きれいじゃない?ほら、この雪みたいに真っ白なーーー」
「気安くリュウに触れるな」
女の方がリュウのつやつやでサラサラな髪に触ろうとした直前、セツナがその手首を掴み軽く投げた。
「ちょ、何すんのよ、あんた……!」
女は掴まれた手首をさすりながらセツナをキッと睨んだ。
「リュウはあまり人に慣れていない。ぬくぬくと平和に暮らしていたお前たちにはわからないだろうが、自分以外の全てが敵だったこの子には、その軽々しい行動ひとつで傷つくんだ」
そう吐き捨てるように言ったセツナは、リュウの手を優しく握っていた。リュウはといえば、確かによく見れば身体がほんの少し震えているのがわかる。たぶん、ダスクにいた時の嫌な記憶がフラッシュバックしたんだ。
もうそれなりの時間をオレたちと過ごしてきたとはいえ、過去の傷は消えやしない。その傷を癒やし切るくらいに楽しい人生をオレたちと一緒に歩んでくれたらとは切に願ってるけど、それには当然もっともっと時間が必要になってくる。
「あ……ご、ごめんよ、僕」
てっきりセツナの言葉に言い返すと思っていたけど、オレの予想をいい意味で裏切り、女はリュウに申し訳なさそうに謝った。
「……その子の誠意に免じて、今回ばっかりはお前ら人間に協力してやるよ。それで、お前らは何が知りたいんだ?」
「そう言ってくれるのは助かる。聞きたいことっていうのはな、今まで二人が調査した中で何か気になることがなかったかなって」
「気になることか……大体のことはボレアスの叡団員に報告してるしな……なんかあるか?」
「うーん、そうねー……あ、そういえばさ、あの美男な二人組の冒険者いたじゃん?えーとパーティ名は……」
「あー、あいつらな。Bランクパーティ『イノセント』だろ?」
「そうそうそれそれ!」
イノセントって確か、カナタとカイトさんが所属してるパーティだったよな。
「それがどうかしたかよ」
「いやね、今となっては二人組で活動してるのが通常運転みたいになってるけど、たしか前までは三人組だったはずなのよ。さすがにいつから二人になったかなんて覚えてないけど、ほら、茶髪の女の子、いつも連れてたじゃん」
茶髪の女の子……?そんなの初耳だ。二人ともそのことは一回も言ってなかったから……何かあってパーティから離脱しちゃったのかな?
「んー、まあ言われてみればそうだったか……?てか、よく覚えてたな、お前」
「そりゃあんな美青年、そうそう会えないし?」
「は、そんなことだろうと思った」
「でもさ、確かパーティ名にはまだその子の名前あったんだよー。あ、その子クロエちゃんっていうみたいなんだけどー」
「……お前マジでどっからその情報もってきてんだよ。めっちゃこえーんだけど?」
「ふふふ。乙女の情報網を甘くみないでよねー」
つまり、パーティから除名はされてないけど、最近その姿を見せてないってことか。
……なんか変な感じがするなー。
「そのクロエって子はいつから見かけなくなったんだ?」
「さっきも言ったけど具体的な日にちまで覚えてないよ。まあでも、こいつが全然覚えてなかったところをみるに、結構経ってるんじゃない?」
「その話、誘拐事件と何か関係があるのか?」
「っ!さ、さあ?だってあんたらが気になることを言えっていったんじゃん。だから私が頑張って思い出してあげたんでしょ?」
さっきセツナにきつい言葉を言われたせいか、女は尻尾を逆立たせ膨らませていた。
「……そういや、俺も思い出したことあったわ」
「え、何よ」
「最近死んじまった梟の亜人がいたじゃん?オレたちとのボレアスの中継役的なのをしてくれたひとりのさ」
「あー、確かウルラさんだっけ?」
「そうそう。ちょっと気難しそうな人な。俺実は、この間から指名手配された無精髭の男いるじゃん?前にそいつをたまたま見つけて、後をつけてたんだよ。聞き込みでその特徴をもった男が怪しいってのはわかってたからさ。ただその場で捕まえるより、泳がせた方が情報得られるかもって思って尾行したわけなんだが……はぁ」
男は軽くため息をつき、再び話し始めた。
「尾行に気づかれちまったのか、どっかの曲がり角で見失っちまってよ。あの時ほど自分を責めたことはねぇよ。俺の浅はかな考えのせいで、事件解決に繋がる重要な手がかりをみすみす取り逃しちまったんだからな」
「ちょっと待って。なんでその時に私たちに言ってくれなかったのよ?」
「いやだってよ。俺のヘマで重要な手がかりを失いましたなんざ、恥ずかしくて言えねぇだろ」
「何そのみみっちい理由。ほんと小さい男ねー、あんた」
「ほっとけっての。でだ、確かにあの男を見失いはしちまったけど、その曲がり角にボロボロの白い紙が一枚落ちてたんだよ。なんか文字は書いてあったけど、暗号みたいになってて俺には全然読めなくてな。でもさすがに誰にも言わずに俺の中だけで完結しちまうのはよくねぇってのは分かってたから、ウルラさんにこっそり渡したんだよ」
「へー。それで?」
女は冷ややかな視線を男にぶつけていた。
「……したらウルラさん、心底驚いたって感じで目を丸くした後、紙を持ったまますぐにどっか言っちまったんだよ。いつも冷静だったあの人にしちゃ、かなり動揺してる感じだったな」
暗号みたいな文字が書かれた紙を見ただけで、どこかに行った……つまり、その暗号が読めたってことか?けど、わざわざ暗号化した文字ならそれだけ大事な内容で、他人に知られたくないってことだよな。それをボレアスの一叡団員が一瞬にして理解するなんてことありえるのか……?
「そんでその数日後、ウルラさんが亡くなったって知らされたんだよ」
「そんな大事なことを忘れるなんて、普通はあり得ないとと思うけど」
セツナの的確な指摘にオレも内心で賛同した。今まで一緒にやってきたメンバーのひとりが死んだら、さすがに取り乱すし絶対に忘れない。
「あ、いやー、あの後すぐにでっけぇ依頼が舞い込んじまって、大金が手に入るっつうから舞いあがっちまってよ。だって俺ん家貧乏で弟妹がわんさかいるから、それでだな……」
男は顔をしたに向けしょんぼりとした。
「えーと、今のはあんまり気にしないでくれ。別にそのことを責めたいわけじゃないから。二人とも情報提供ありがとな。かなり参考になった」
「ありがと」
リュウがみんなを代表して、ぺこっとお辞儀をした。
「談笑の邪魔して悪かったな。じゃあまたな」
猫の亜人の男女に簡単に別れを告げ、オレたちは別のテーブルへと移った。
「さっきの話、みんなはどう思った?」
「イノセントの二人がどうこうという話は別段どうとも。それが事件に関係あるかどうかなんて現時点では不明だから」
「確かにセツナの言うことはわかる。でも一緒に依頼をこなした手前、オレとしてはちょっと気になっちゃうんだよなー。事件に関係あるなし関わらずさ」
カナタとカイトさんには桃兎の件でだいぶお世話になったし、何か困ってるのならできるだけ力を貸したいとは思ってる。それに、オレ自身いろんな人と交流を図りたいっていう想いをもってるし、グレンさんにも人との繋がりを大切にするといいっていう助言ももらった。先輩冒険者のアドバイスは軽んじないようにしないとな。
……まあちょっと、変な人ではあるけど……。
「兄さんは誰よりも優しいからな」
「ははは」
やっとシンの声が聞けたと思ったら、まさかのオレへの賛辞。ちょっと照れくさくなっちまったけど、いずれにせよだ。誘拐事件の調査と並行して、カナタやカイトさんのこともそれとなく探ってみるか。
「ノア兄ちゃん、暗号ってなに?」
「ん、そうだな……暗号っていうのは、基本的には自分以外の誰にも読むことができないように独自に作った文字列のこと、かなー?」
「みんな、読めない?」
「そ。基本は、な。ただ状況によってはそれが当てはまらないこともある。例えば、取引相手との秘密のやり取りだった場合、自分だけが読める暗号じゃ相手との意思疎通が図れない。だからお互いしかわからない暗号をつくるわけだ」
「ブリガンドでも暗号を使ってたな。もし何かの手違いで第三者の手に情報が漏れたとしても、暗号化してしまえばなんの問題もないとドミニクは言っていた」
やっぱブリガンドみたいな闇に生きる組織なら、暗号を使うのは常套手段って感じなんだろうなー。
「……?なんで、ウルラさん……?は、どっか行っちゃったの?」
「そう、そこ。そこなんだよ、リュウ。やっぱリュウも変だと思うよなー」
どうやらリュウは、オレの話をきちんと理解してくれたらしい。賢くて可愛くて容姿端麗だなんて、うちの子最強すぎないか……?
「暗号化された文を読めるということは、それを作った本人あるいはその暗号を使ってやり取りをしている人物のどちらか、というのが有力説だろう」
シンは端的にオレたちの疑問への解答を述べた。
「だが前者でいえばすでにウルラは死亡が確認され、これ以上の被害は出ないはずだ。暗号を作った本人が首謀者ならば、という前提条件がある場合はな。そして後者ならなぜ死亡したかがわからない」
セツナの言い分はわかる。てかそもそもの話、公的機関であるはずのボレアスの一員のひとりが、こんな非人道的な行いに関わってた、なんて思いたくないよな。
「あー……まあ考えられるとしたら、暗号文を落とした無精髭の男と仲違いして、その結果死亡したとかか?」
「現状、それが一番濃厚だ。そうなれば、無精髭の男に加えてそのウルラという亜人についての情報も探るべきだろ」
「え、めっちゃ頼もしい……!」
オレはセツナの理路整然とした発言に、思わず感嘆してしまった。
「は?こんなの誰でもできるだろ」
「いやいや、オレはリーダーのくせして迷ったり寄り道したりしちゃうし、要領を得ないようなこといいがちだけど、セツナはパッと物事を決められるし、話すこともまとまっててわかりやすいから、案外リーダー的ポジションに向いてるんじゃないか?」
下手したら、オレよりリーダーの素質はある気がしてならない。……自分で言っててちょっと悲しいけども。
「……私に誰かを導く力なんてあるわけないだろ。それ以前に、その資格すら私にはないんだから」
セツナは得意の無表情を貫いてた。だけどどこか、自分でも気づいていない心の奥で悲しんでいるような、そんな気がしてならなかった。
「セツナお姉ちゃん」
「ん、なんだ?リュウ」
「ちょっとだけ、しゃがんで?」
「……こうか?」
リュウのお願いにセツナは素直に従い、リュウと同じ目線になる程度まで足を曲げた。
リュウは一体何を……?
「いい子、いい子」
「……!」
リュウが何をしようとしているのかと見守っていると、リュウはその小さな手でポンポンとセツナの頭を撫でた。秀がオレにやるみたいに、オレがリュウにやるみたいに。
「セツナお姉ちゃんは、優しくて、かっこいい、ぼくの憧れの人、だから……悪い子にしないで?」
リュウは撫でていた手を止めて、セツナの両手に軽く触れた。
「……ごめん。不甲斐ないところみせた。ありがと、リュウ」
セツナは滅多に見せない、やわらかな笑みをリュウへと返した。リュウもそれを見て満足そうに微笑んでいた。
「こう見ると、やっぱ姉弟って感じがするなー」
微笑ましい光景だー。目の保養、心の安らぎ。
「兄さんも俺の憧れだ」
「え、マジ?ありがとな」
兄ちゃんとして弟にかっこよくてデッカい背中を見せれてるってわけか……!ふふん、気分がいいなー!
「さてさてっと。まだ二人にしか情報聞けてないから、他の冒険者からも話を聞きに行くか。えーっと、ちょうど休憩タイムなのかわかんないけど、結構冒険者多いからこっからは二手に分かれるか。あと、聞くのは無精髭の男に関することとウルラって名前の亜人についてだな」
「は?ウルラがなんだって?」
オレがリーダーっぽく今後の方針を述べていると、どこからか声が聞こえてきた。その声に振り向けば、ガンを飛ばしてきている男がひとりいた。その横には、少し背の低い人物もいる。
「あ……ダ、ダメだよ、ペルロ。知らない人を、いきなり、に、睨むなんて……失礼だよ……」
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「失礼もクソもあるか。また俺たちの親友を悪く言うやつらが出たんだ。一発殴ってやらないと気が済まん……!」
「いやいや、オレたちは悪口なんて一言も言ってないって。ただ、ウルラって亜人について知れれば、誘拐事件の解決に近づけるかもしれないと思っただけで」
「…………マジかよ。すまん!」
ペルロと呼ばれた男は、ガバッと勢いよく自分の上体を前へと倒した。
なんかすっごくいい人そうー。
「いや全然いいって。誤解が解けたみたいでよかったよ。……あれ、その服ってもしかして守護叡団のやつ?」
「ああそうだ」
黒髪の男は姿勢をキチッとただし、自身の名前を名乗った。
「俺は守護叡団ボレアス所属のペルロってもんだ」
「ぼ、ぼくもボレアスに入ってて……ムースって言います」
「ペルロさんとムースさんか。オレはノア。よろしくな」
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