迷子の会社員、異世界で契約取ったら騎士さまに溺愛されました!?

翠月 瑠々奈

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お疲れ様でした②

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 お願いがある、とフェルに言ったところ、ショックから立ち直った彼が首をかしげる。

「お願い?」
「ここにいるメディにアルバン様?と言う方を紹介してほしくて」
「ちょっと! アンバル様よ! ルーったらもう」 

 いきなりメディが横から割り入ってプリプリ怒る。私を押し退けてフェルに近づくと驚いて彼が一歩引いた。けどそれにも構わず彼女は続ける。今度は真剣な声で。

「フェルクス様、折り入ってお願いがありますの」
「なんでしょう……」

 まだ警戒しているのか顔が強張っている。それでもなお、ルディは真っ直ぐ続けた。

「パパロイエ隊のアンバル様をご紹介いただけませんか? フェルクス様のアズール・ベルテ隊とは同じ実動部隊ですよね?」
「それは、そうですが……彼は」
「気難しい方だというのは存じております。それでも一度、機会をいただきたいのです。どうか……一度だけ」

 ほんの一瞬──切実に響いた声。

 思わずフェルを見る。彼も同じように私に目を向けた。互いに視線を交わして、少しして先に外したフェルが諭すように言う。

「気持ちは分かります。しかし彼も最近の状況に辟易している。受け入れられないでしょう」
「ですが……!」
「申し訳ありませんが、断らせていただきたい」
「……」

 強い言葉に諦めの雰囲気が漂う。メディはそれでも諦めきれないのか口を開く。でもやっぱり無駄だと思ったのかそのまま俯いてしまった。

 無責任に首を突っ込むのはよくない。わかっているけど見ていられなくて、ゆっくりとメディの腕に手を添える。

「……?」
「フェル。私からもお願いします。そのアンバル様に、メディを会わせてあげていただけませんか?」

 メディが顔を上げる。目が合って小さく微笑みかけて、フェルに視線を移す。彼は困ったように眉根をよせた。

「ルミ……君は知らないと思うが、彼はあまり人付き合いの良い相手じゃない。彼女を紹介したところで先があるとは考え難い」
「だとしても、切っ掛けだけでも……ダメでしょうか?」
「……ルー」

 メディが再びフェルを見る。二人でじっと見つめていたら、しばらくして観念したようにフェルが息を吐いた。

「では、後日。鍛練場で時間を取りましょう。決まり次第連絡します」
「フェルクス様! ありがとうございます!」
「ただし」

 メディの弾んだ声を抑えて、フェルの硬い声が続く。

「ルミ、貴女も共に来てください」
「え、私?」
「もちろんよ! その時はよろしくね、ルー」

 なんの断りもなく勝手に約束を取り付けられる。首を突っ込んだ手前、仕方ないんだけど。ちょっと鍛練場っていうのも興味あったし。

「じゃあ、また……」
「ええ! ではまたね。おやすみなさい、ルー」

 嬉しそうに頬を紅潮させたままメディは身を翻す。

 え、このまま帰るの?と、浮かんだ疑問はフェルの口から出た。

「メディウム嬢! 今、迎えを呼びますから」
「平気ですわ。裏に馬車を停めてるもの。フェルクス様、約束忘れないでくださいね」

 彼女はスキップする勢いでその場を後にした。残された私達と言えば、ただただ呆然とするだけ。

 嵐のような子だったな、と思ってたらフェルに声をかけられる。

「本当に良かったのかい?」
「え?」
「彼女のことだよ。私から言い出したことではあるが……必ずしも君が手を貸す必要はないじゃないかな。嫌なら断ってくれて構わない」
「そうですね…でも不思議と嫌ではないんです。不安ではありますけどね」

 ルディのいなくなった廊下を眺める。また会えるならそれも悪くない、なんて思う。フェルは「安心して」と言った。

「悪いようにはしないから」
「それならいいんですけど……」

 と、答えて思い出す。

「そういえば何か用事とかありました? 私を探していたようなので」
「うん? ああ、君の部屋が出来たから呼びに来たんだ」
「……あ! カバン」

 一連の騒動ですっかり忘れていた。私もカバンに用があったんだ。

 サッと半開きの扉から顔だけいれて室内をざっと流し見る。壁際のドレッサースツールの上にクタッとした黒いカバンが置かれていた。

 それを取りに行くとフェルも後ろからついてくる。カバンを見て「持つよ」と私の代わりに持ってまた扉に戻る。

 外に出て扉を閉めると歩き出し、私もついていくことにした。

 
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