迷子の会社員、異世界で契約取ったら騎士さまに溺愛されました!?

翠月 瑠々奈

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お疲れ様でした③

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 部屋までの道すがら、確認するようにフェルが言う。

「他に荷物はなかったかな」
「ええ、それだけですね……あ、この服、有難うございました」
「サイズが合っていて良かったよ。その部屋着ドレッシング・ガウンは、急遽用意させたものだったから」

 そんな話をしていたら不意にフェルが立ち止まる。部屋に到着したらしい。

 訝しみながら扉を見る。昼間の事件があった部屋の位置を思い出して、それよりもだいぶ離れた場所だったから、一旦胸を撫でおろした。

「こちらですか?」
「そうだよ。隣が今後、私の部屋になる」
「今後?」

 ということは今までは違ったのかしら。首をかしげたらフェルがフッと遠い目をした。

「隣はもともと書斎だったんだけどね。急遽整えさせているんだ……あの部屋にはしばらく戻りたくなくて」
「なるほど…」

 さすがに修羅場のあった部屋で生活するのは気持ちが落ち着かないはず。

 納得しつつ頷いたら「どうぞ」とフェルに部屋の中へと勧められた。促されるままに中に入ると今までの部屋と雰囲気が違い、なんとなく暖かみを感じる。

 一番始めに目に入ったクリーム色のカーテン。その裾部分には赤や緑の鮮やかな糸で、可愛らしい花の刺繍がなされている。パッと全体を見たら、家具が全体的に薄い桃色を基調としていた。

 部屋の中央にある天蓋付きのベッドも、綺麗な橙色の線で模様が描かれている。

 キョロキョロと見ていたらフェルが苦笑する。

「大丈夫だよ。この部屋は母の部屋だから」

 何も起きていない、と続けた彼が奥まで歩いていく。私も遅れて後を追う。

「今日まで、この部屋と父の部屋は厳重に管理してきたんだ」
「そういえば、ご両親はどちらへ?」
「今は新しい領地運営のために現地で過ごしてる」
「そうなんですね。でも、そんな大事な部屋をお借りしても大丈夫なんですか?」
「構わない……と、いうより他に部屋がなかっただけなんだけどね。他はいろいろあって清掃や改修をしてるところだから」

 ちょっと困ったように笑った彼が続ける。

「母も長く不在にしている。君に貸したところで何も言わないよ。だから自由に使ってほしい」

 躊躇う気持ちがないわけじゃない。だけど疲労がピークの私はありがたく使わせてもらうことにした。

 感謝を伝えると、彼は「ゆっくり休んで」と残す。

 そのまま出ていく姿を見送って、ようやく寝られる!って思ってたんだけど…………。

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