迷子の会社員、異世界で契約取ったら騎士さまに溺愛されました!?

翠月 瑠々奈

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白夜の記憶① ※過去編

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 ──あの時、ルミの手を咄嗟に払ってしまった瞬間、目にしたのは驚きで見開かれた黒い瞳だった。

 けどすぐにその瞳が悲しげに細められて、胸を締め付けられたのを思い出す。窓の外を見ていたフェルクスはそっと瞼を閉じた。

「……」

 彼女を傷つけるつもりは微塵もなかった。ただ呪いのような記憶がよみがえり────拒絶した。

 胸の奥では今も変わらず、疼くような傷みが続く。

 彼は再び開けた瞳に自身の手の平を映し、やがて強く握り締める。

 視線を上げると窓の外はもう空が白み始めていた。まるであの日の空と重なるかのように。


*  *  *


 爵位授与式──選ばれた騎士の幾人かが国王の前に跪く。それぞれの名が呼ばれ、爵位を与えられる。

 謁見の間の絢爛さの中、荘厳な空気に包まれ彼らはその日、王国の新たな身分を得た。

 ……それが幸か不幸かは知らぬまま。

「おかえりなさいませ」
「ああ。そうだガルシア、手紙が届いてると聞いたんだがすぐ見られるかい?」
「ええ、もちろんです。すぐお持ちします」
「ありがとう。頼むよ」

 金色の髪をした青年は厚手のコートを脱ぐと控えていた使用人に渡す。この屋敷の当主となったフェルクス・ロギアスタ。爵位授与式のあと間もなく、家を任されることになった。

 騎士と兼任する中、後継者教育もこなしてきていた。慣れないことも多いがそれでも順調だと思っていた。

 ただその日、登城後の帰りにとあるご令嬢から声をかけられるまでは。

『従兄弟よりサロンの招待状を送らせていただきました。どうぞご確認くださいませ』

 白い日傘に隠されて表情は窺えない。だがあまり気にせず承諾を返した。

 フェルクスは階段前で手紙の束を受け取り、ざっと宛先を確認した。商会の挨拶状や爵位授与のお祝い、令嬢から挨拶状に見合いの斡旋、その中に侯爵令息の名でサロンの招待状があった。

 サロンは若い貴族の青年たちが社交のためにつくった集まりになる。フェルクスは騎士の家系のため縁遠くあったが、爵位を受けたこともあって誘いがあったようだ。

 今後のためにも一度参加してみるか、と考える。

 日付を見ればちょうど予定を入れられそうだった。

 フェルクスは手紙を持ってきたガルシアに外出の予定を伝えて、当日の馬車の準備を指示した。

 
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