迷子の会社員、異世界で契約取ったら騎士さまに溺愛されました!?

翠月 瑠々奈

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あくまで観光案内です①

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 訪れたのはイルサオン劇場という場所。王都で一番大きい劇場らしい。

 よくある映画館の扉みたいなところから中に入ると、すごくきらびやかで豪華な世界が広がっていた。

 天井は天使の絵画とシャンデリアが飾られ、壁から床まで全体的に暗い赤の布張り。そして、どの席もベロアの柔らかそうな素材が座面に使われている。側面には少人数用のバルコニー席があった。ブロックごとに分けられていて三階まである。

 フェルは木製のカードを確認して先導する。ちなみにこれは後程返却するらしい。

「行こうか。私たちの席は二階だから」

 階段を上がり細い廊下を通る。厚手のカーテンで仕切られたバルコニーの一つに入り、並んで席に着いた。

 開始までの間、回ってきた接客係が飲み物のリクエストを聞く。紅茶を頼んだあと、手に持っていた紙に視線を落とした。

 抽象画に近い作風で涙する少女と、黒と青のローブの男性が描かれている。途中で渡された劇の案内のようなもの。

 タイトルは【青薔薇の君】

 本編は三部構成。前・中・後編とあり、合間に休憩が入る。私たちの席は舞台がよく見える正面側だった。

 開演の合図と共に静まり返る会場。そしてストーリーが始まる。

 突然の深紅の照明──血の海を表す演出に息をのんだ。

「……っ!」

 今回の劇は『死』から始まる。

 大切な恋人を亡くした少女が、その仇である友人に復讐を果たす、といったものだ。

 序幕…黒いローブを羽織った男が青いローブの男と、もつれ合う。そこを偶然、主人公の少女が目撃した。

 少女は黒いローブの男の名を呼ぶ。彼は少女の恋人だった。「来るな」と叫ぶ声に反応して振り返った青いローブの男。彼もまた少女の友人だった。男たちはやがて崖から落ちる。

 少女の悲痛な叫びが響いた。

 そして翌日上がった遺体は、川の岩壁にぶつかり、ひどく顔や体が損傷した黒いローブの男だった。

 少女は決意する。

 必ずかつての友人を探しだし────復讐すると。

 そこで、一旦休憩が入った。

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