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第107話 月曜、少しだけ早く来た理由
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土曜日の朝。朱里は布団の中で、昨夜の出来事を思い返していた。
──雨上がりの夕方。
嵩と並んで歩いているところを、突然、
「おっ、平田さんと中谷先輩だ!」
と声をかけてきたのは、コンビニ袋をぶら下げた望月瑠奈だった。
あまりにも自然に、あまりにもピンポイントに。
隠れる間もなく、真正面から見られた。
(……あれ絶対、誤解されてる……)
瑠奈の「え~、なんか雰囲気よかったですねぇ♡」という軽い笑顔が脳裏にこびりついて離れない。
その後の会話で、朱里は説明も否定も曖昧なまま逃げるように別れた。
だからこそ、土日はずっと落ち着かなかった。
(平田さんは、どう思ったんだろ……瑠奈にあんなふうに声かけられて)
そのもやもやを抱えたまま、週末が過ぎていった。
──そして、月曜の朝。
気付けば朱里は、いつもより15分早く会社に着いていた。
(いや……別に、嵩さんに早く会いたかったわけじゃない。
ただ、週明けってバタつくし、気持ちの準備が必要だっただけで……たぶん)
自分に言い訳しつつエントランスを抜けようとした瞬間──
「……あ、中谷さん。おはよう」
その声に、朱里の体はびくっと反応する。
「ひ、平田先輩……! おはようございます!」
振り向けば、朝の光の中で少し眠たげに微笑む嵩の姿があった。
「早いね。珍しい」
「っ……まあ、色々あって……」
「色々?」
嵩が、意味深に目を細める。
(あ……絶対、瑠奈と会ったこと、気にしてる……)
朱里が固まると、嵩はふっと優しく言った。
「少し話せる? 応接室、今なら空いてる」
「え……あ、はい!」
逃げられない、逃げる気もない。
そんな不思議な感覚のまま、二人は応接室へ向かった。
ドアを閉めると、朝の光が差し込む静かな部屋。
嵩はコーヒーを置き、朱里のほうへ向き直る。
「土日……ゆっくりできた?」
「はい、一応……」
「ならよかった。俺はちょっと……気になってた」
「き、気に……?」
嵩は、少し言いづらそうに頭を掻いた。
「金曜の帰り。瑠奈さんに会ったでしょ?」
「っ……!」
やっぱり気にしてた。
「急に声かけられて、中谷さん、困ってたから……
ちゃんと、続き話さなきゃと思って」
「つ、続き……?」
嵩はゆっくりと朱里を見た。
「中谷さんが“また映画行きたいです”って言ったこと。
……あれ、俺にとっては結構大事な言葉だったんだ」
「……っ!」
朱里の胸の奥で、金曜のあの瞬間が一気に熱を持つ。
嵩は続ける。
「だから今日、早く来た。
……あの日の“帰り道の続き”を、ちゃんと話そうと思って」
その声音はやわらかくて、少しだけ踏み込んでいて。
朱里の息が、少しだけ震えた。
(……やだ。何これ。土日より、今日のほうがずっと落ち着かない)
「中谷さん。
──金曜の続き、ちゃんと聞いてくれる?」
朱里は静かに、でも確かにうなずいた。
──雨上がりの夕方。
嵩と並んで歩いているところを、突然、
「おっ、平田さんと中谷先輩だ!」
と声をかけてきたのは、コンビニ袋をぶら下げた望月瑠奈だった。
あまりにも自然に、あまりにもピンポイントに。
隠れる間もなく、真正面から見られた。
(……あれ絶対、誤解されてる……)
瑠奈の「え~、なんか雰囲気よかったですねぇ♡」という軽い笑顔が脳裏にこびりついて離れない。
その後の会話で、朱里は説明も否定も曖昧なまま逃げるように別れた。
だからこそ、土日はずっと落ち着かなかった。
(平田さんは、どう思ったんだろ……瑠奈にあんなふうに声かけられて)
そのもやもやを抱えたまま、週末が過ぎていった。
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ただ、週明けってバタつくし、気持ちの準備が必要だっただけで……たぶん)
自分に言い訳しつつエントランスを抜けようとした瞬間──
「……あ、中谷さん。おはよう」
その声に、朱里の体はびくっと反応する。
「ひ、平田先輩……! おはようございます!」
振り向けば、朝の光の中で少し眠たげに微笑む嵩の姿があった。
「早いね。珍しい」
「っ……まあ、色々あって……」
「色々?」
嵩が、意味深に目を細める。
(あ……絶対、瑠奈と会ったこと、気にしてる……)
朱里が固まると、嵩はふっと優しく言った。
「少し話せる? 応接室、今なら空いてる」
「え……あ、はい!」
逃げられない、逃げる気もない。
そんな不思議な感覚のまま、二人は応接室へ向かった。
ドアを閉めると、朝の光が差し込む静かな部屋。
嵩はコーヒーを置き、朱里のほうへ向き直る。
「土日……ゆっくりできた?」
「はい、一応……」
「ならよかった。俺はちょっと……気になってた」
「き、気に……?」
嵩は、少し言いづらそうに頭を掻いた。
「金曜の帰り。瑠奈さんに会ったでしょ?」
「っ……!」
やっぱり気にしてた。
「急に声かけられて、中谷さん、困ってたから……
ちゃんと、続き話さなきゃと思って」
「つ、続き……?」
嵩はゆっくりと朱里を見た。
「中谷さんが“また映画行きたいです”って言ったこと。
……あれ、俺にとっては結構大事な言葉だったんだ」
「……っ!」
朱里の胸の奥で、金曜のあの瞬間が一気に熱を持つ。
嵩は続ける。
「だから今日、早く来た。
……あの日の“帰り道の続き”を、ちゃんと話そうと思って」
その声音はやわらかくて、少しだけ踏み込んでいて。
朱里の息が、少しだけ震えた。
(……やだ。何これ。土日より、今日のほうがずっと落ち着かない)
「中谷さん。
──金曜の続き、ちゃんと聞いてくれる?」
朱里は静かに、でも確かにうなずいた。
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