<完結済>婚約破棄を叫ぶ馬鹿に用はない

詩海猫(8/29書籍発売)

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転機

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ひと通り形式通りの会話がすむと
「それで、コーディリア様と第一王子のご婚約は本当なのですか?」
公爵令嬢に切り出され、私は目を剥く。
「いいえ。あれは第一王子からの依頼です。〝婚約者の振りをしてあの騒ぎの黒幕を引っ張り出すのに協力してほしい〟と。それ以外は同じ冒険者といっても話した事すらない間柄です」
きっぱり否定すると
「そうなのですか?私は、てっきり…」
令嬢の一人が戸惑ったように言う。
「ええ。昨日父や兄が王宮に伺候したのですけど…」
同じく隣の令嬢も顔を見合わせ、
「あの騒ぎを事前に察知し収束させた第一王子こそ王太子に相応しい と大臣らは既に彼を擁立すべく動いているようですわ」
公爵令嬢が纏める。
まあ、それはそうだろう。第二王子の評価はあの騒ぎで下落を辿る一方、病弱で王位を継げないとされていた第一王子があのように頑健な美丈夫だと知らしめてしまったのだから。
実際、出奔してても自国の危機にはちゃんと戻ってくる辺りただの放蕩王子でない事は確かだ。
「それで ですね、、お伺いしたい事があったのですけど」
「何でしょう?」
「その…、第一王子殿下は貴女を妃に迎える事が出来た時には王位を継いでも良い と仰っている と父は聞いたそうなのですけれど」
なんだと?
「っそんな約束はしておりません!」
何してくれてんだあの馬鹿。
こうしてはいられない。

さっさとこの国を出なければ。


また婚約騒ぎに巻き込まれるなど真っ平だ。

急いで立ち上がって辞去を告げると
「あ~…もう耳に入っちゃった?これだから女性同士の情報網は侮れないよね」
呑気でむかつく声が割って入った。
勝手に入ってきたのだろう、公爵家の使用人がわたわたしているが相手が王子では無理矢理止める事も出来ない。
「せっかくこれからプロポーズしようと思ってたのに」
「しなくて結構、これより先貴方絡みの依頼もすべて拒否します。出来れば二度と顔も見せないでくれるとありがたいです」
「うわぉ辛ラツ…」
今日はきちんと〝王子様〟の格好をしているが生憎私は〝王子様を待つ女の子〟ではない。
さっさと王子の横を通り過ぎてその場を去ろうとした私の前にまた違う人が立ち塞がった。
国王、大臣、公爵…某国サミットみたいな面々が息を切らした形相で私の前に立ち塞がった。
「何のつもりですか?」
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