<第一章完結>聖女は自分を呼んだ異世界を嘲笑う

詩海猫(8/29書籍発売)

文字の大きさ
7 / 29

6

しおりを挟む
本当に一瞬で魔物がうじゃうじゃいる場所に転移した。魔法って凄い。
 目の前に真っ黒かつばかでかい(5×8メートルくらいありそう、尻尾含まなくても)ドラゴンがいる。
「おい…、死ぬ気か?」
 背後に貼り付いたまままだショックが抜けきれてないクレイルの呟きに答えてやるつもりはない。
 因みに転移作動時クレイルの側近も咄嗟にクレイルにしがみついたので騎士団が3人背後にプラスされている。

「あなたがやれって言ったんでしょ?アレ倒すのに邪魔だから離してくれない?」
「バカを言うな!早くここから離れろ!」

♦︎♦︎♦︎

 ーー本気か?いきなり単身であれに挑むなど自殺しようとしてるとしか思えない。
奴の黒い口は今にも灼熱の炎を吹き出しそうだ。何とか彼女を奴から引き離さなければ。

そう思って腕に力を込めた途端、目の前のドラゴンが吹き飛んだ。
いや、正しくは消し飛んだというべきか。彼女の右手から放たれた一撃で、燃えて、一瞬で消し炭になって霧散した。


♢♢♢
 
凄いな、魔法って。
「一撃でコレとか、便利ね……」
私は素直に感心した。
 
戦い方はわかってる。
魔法の使い方も。
あの時勝手に入りこんできたのは多分歴代の聖女達の戦ってきた記録ーー記憶じゃなくて記録っていうのはそこに感情がなかったから。魔物を倒したり斬ったり封印したり?その時の感覚を”体が覚えてる”という感じ。そこに彼女達の感情は存在していない。良い事だ。その時の感情とか他人に継承されたらヤだもんね。

そして多分感情がないからこそ、はなからこんな真似が出来る。

「なんで驚くの?あなた達の手に負えないから私は呼ばれたんでしょ?」

単純な労働力としてアナタ達はこの世界に必要、だけど聖女に対して出来る事はない。

何もない。

コレが真実。

♢♦︎♦︎♢

「ーーだから、離して」
 そう言って腕を振り払う彼女にかける言葉がみつからない。
「ぼけっとしてないで下にいる人たちの救出と避難指示でも出したらどうなの?騎士団の皆さん。」
そう言われてはっとする。
自分達は宙に浮いたままだが、眼下の村はあらかた焼き尽くされて酷い有り様だ。悲鳴や怒号も沢山聞こえる。

「しかし、君はどうする」
「次にヤバい奴のとこに行く。でかい奴から倒してった方が被害は少なくて済むでしょ?さっきのマップは出したままにしておく。点滅が消えれば倒せたってわかるでしょ。ここの避難が終わったら同じルートで同じ様に転移してついて来ればいいんじゃない?」
「し、しかし聖女様っ…!我々が使う転移魔法では移動距離に限りがあります!今の貴女がしたような転移は我々には無理です…!」
「その辺は自分達で何とかして。そこまで面倒は見切れない」

騎士団の人(名前知らない)の訴えを無視してとっとと転移した。目の前にいるラスボスタイプの魔物を一撃必殺仕留めてついでに周りの中級クラスの数を減らし、次の場所に転移。私はそれを繰り返した。
 
六体目のボスを倒したあと、クレイルが現れた。
「ツキナ様!」
「何?」
「ケガは…、してないようだな」
 みりゃわかるだろそんなもん。
「王宮には報告をした。君が回った場所には魔法使いと騎士団の合同部隊が事態の鎮静と収拾に当たっている」
「そう」
 良かったわね。
「君はーーあれだけ倒して何ともないのか?」
「見ればわかるでしょ?監視したきゃお好きにどうぞ。ただし邪魔はしないで?」
「ケガのある無しじゃない!あれだけの魔力を使い続けて反動はないのかと聞いてるんだ!」
「ないよ」
 反動はない。消耗はしてるけどね?
「こんな短時間にあんな使い方は正気の沙汰じゃない」
を望んだのはあなた達でしょ?」
 絶句するクレイルにちょっとだけ溜飲が下がる。

「ーー本当に体には何の影響もないのか?」
「あってもなくてもあなたに報告なんかしないよ?」
 ーーもう猫を被る必要もないしね?
 言い終わると同時に体が抱きあげられる。
「ーーならば無理にでも休んでいだこう。この世界にはあなたが必要なのだから」
 やっぱりこいつの観察眼は侮れない。
嫌だな、居心地悪い。
てか、お姫様抱っこはやめろ。
実際私は体力がある方じゃない。本当に魔法の行使に反動はないが、体力は普通に消耗するのだ。魔物退治行脚って持久走みたいなものだしね?

 見破られて、引きずりだされて、取り残されて。

 とりあえず他にやる事が思いつかなかったから、ご希望通り魔物退治をやってみたワケだが。
 ーーやってみたら魔物を倒すこと自体はそんなに難しくない。
 それくらい、預けられた魔力は強大だった。
 
  でも、体が疲れてきてるのは本当だ。けれどそれを教えるつもりもない。
 代わりに、
「次、お姫様抱っここんな真似したら攻撃するよ?」
とだけ言った。
 
ーーあんたに助けられるのは御免よ。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

野生なら許される ――だけど人間は違う

ファンタジー
自宅へ帰ると、妻から「子どもができた」と知らされる。 それに夫は……。 ※複数のサイトに投稿しています。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

愚者による愚行と愚策の結果……《完結》

アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。 それが転落の始まり……ではなかった。 本当の愚者は誰だったのか。 誰を相手にしていたのか。 後悔は……してもし足りない。 全13話 ‪☆他社でも公開します

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ

朝霞 花純@電子書籍発売中
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。 理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。 逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。 エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。

異世界追放《完結》

アーエル
ファンタジー
召喚された少女は世界の役に立つ。 この世界に残すことで自分たちの役に立つ。 だったら元の世界に戻れないようにすればいい。 神が邪魔をしようと本人が望まなかろうと。 操ってしまえば良い。 ……そんな世界がありました。 他社でも公開

魔の森に捨てられた伯爵令嬢は、幸福になって復讐を果たす

三谷朱花
恋愛
 ルーナ・メソフィスは、あの冷たく悲しい日のことを忘れはしない。  ルーナの信じてきた世界そのものが否定された日。  伯爵令嬢としての身分も、温かい我が家も奪われた。そして信じていた人たちも、それが幻想だったのだと知った。  そして、告げられた両親の死の真相。  家督を継ぐために父の異母弟である叔父が、両親の死に関わっていた。そして、メソフィス家の財産を独占するために、ルーナの存在を不要とした。    絶望しかなかった。  涙すら出なかった。人間は本当の絶望の前では涙がでないのだとルーナは初めて知った。  雪が積もる冷たい森の中で、この命が果ててしまった方がよほど幸福だとすら感じていた。  そもそも魔の森と呼ばれ恐れられている森だ。誰の助けも期待はできないし、ここに放置した人間たちは、見たこともない魔獣にルーナが食い殺されるのを期待していた。  ルーナは死を待つしか他になかった。  途切れそうになる意識の中で、ルーナは温かい温もりに包まれた夢を見ていた。  そして、ルーナがその温もりを感じた日。  ルーナ・メソフィス伯爵令嬢は亡くなったと公式に発表された。

処理中です...