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家族
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(うわ……忘れてたな)
前髪をくしゃりと掴みながら小さく溜息を零し、封筒の端っこにカッターを滑らせていく。
俺が一人でこの手紙を読もうと思ったことには、唐木が言った理由の他にもう一つ――。
もし、封筒にも差し出し人の名前が書いてあったのなら、忘れないうちに帰り道にでも封を切っていただろう。
それを止めたのは、俺の名前以外何も書かれていないという不安感からだ。
花柄であっても、これが女子からのもので、ラブレターであるという事実確認はできない。
もちろん、筆跡なんてものも当てにはならない。
(唐木はまったく疑わなかったけどな。――ま、俺のは考え過ぎなんだろうけど)
封筒から二つに折り畳まれた手紙を抜き取り、その流れで躊躇わず開く。
――Dear相見くん
突然のお手紙なんてビックリしちゃうよね。
でも、最後まで読んでくれたら嬉しいです。
私、友達に誘われて水泳の夏の大会に行ったんだけど、そこで相見くんを見かけて、イイなって思っちゃって……。
少し話だけでもしてみたいなって、部活にも押しかけちゃってるんだけど、他の人もいるからなかなか声かけられなくて……。
本当に少しでいいので、お話させてもらえませんか?
テストの最終日、放課後に第一体育館裏で待ってます。
From宮下彩夏――
「宮下?」
どこかで聞いた名前だ。
再度手紙を上から目で追って行く。
(部活、って……)
「――あ」
俺は朝のことを思い出した。
一人の水泳部員がこの名前を口にしていたことを。
少しだが、その女子生徒を視界に入れたはずだ。
(あの子か……)
とか思いながらも、顔までははっきりとは覚えていない。
それよりも、テスト最終日までこのことを覚えていられるかが問題だ。
記憶力は悪い方ではないが、こういった類のことは忘れがちになる。
興味があれば別なのだが……。
(アイツに知られたら煩そうだな)
唐木の顔を思い浮かべるのも、今日何度目になるだろう。
俺は手紙を封筒に戻し、机の引き出しに仕舞い込んだ。
前髪をくしゃりと掴みながら小さく溜息を零し、封筒の端っこにカッターを滑らせていく。
俺が一人でこの手紙を読もうと思ったことには、唐木が言った理由の他にもう一つ――。
もし、封筒にも差し出し人の名前が書いてあったのなら、忘れないうちに帰り道にでも封を切っていただろう。
それを止めたのは、俺の名前以外何も書かれていないという不安感からだ。
花柄であっても、これが女子からのもので、ラブレターであるという事実確認はできない。
もちろん、筆跡なんてものも当てにはならない。
(唐木はまったく疑わなかったけどな。――ま、俺のは考え過ぎなんだろうけど)
封筒から二つに折り畳まれた手紙を抜き取り、その流れで躊躇わず開く。
――Dear相見くん
突然のお手紙なんてビックリしちゃうよね。
でも、最後まで読んでくれたら嬉しいです。
私、友達に誘われて水泳の夏の大会に行ったんだけど、そこで相見くんを見かけて、イイなって思っちゃって……。
少し話だけでもしてみたいなって、部活にも押しかけちゃってるんだけど、他の人もいるからなかなか声かけられなくて……。
本当に少しでいいので、お話させてもらえませんか?
テストの最終日、放課後に第一体育館裏で待ってます。
From宮下彩夏――
「宮下?」
どこかで聞いた名前だ。
再度手紙を上から目で追って行く。
(部活、って……)
「――あ」
俺は朝のことを思い出した。
一人の水泳部員がこの名前を口にしていたことを。
少しだが、その女子生徒を視界に入れたはずだ。
(あの子か……)
とか思いながらも、顔までははっきりとは覚えていない。
それよりも、テスト最終日までこのことを覚えていられるかが問題だ。
記憶力は悪い方ではないが、こういった類のことは忘れがちになる。
興味があれば別なのだが……。
(アイツに知られたら煩そうだな)
唐木の顔を思い浮かべるのも、今日何度目になるだろう。
俺は手紙を封筒に戻し、机の引き出しに仕舞い込んだ。
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