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三日間かけて目的地に到着した。ちなみに馬車に乗ってからは侍女がついてきていたらしく、色々お世話をしてくれてなんとかなった。
もうすっかり足の痛みも引いて短い距離なら歩けるようになったのだが、問答無用で横抱きにされてしまった。
早く足治らないかな……
屋敷では使用人たちが並んで出迎えてくれていて、その中にルカ様の姿もあった。初めて彼の一行が来た時にわたしとお話ししてくれたあの人だ。
「お久しぶりにございます。ノア様の侍従を務めておりますルカです。ご無事で何よりです」
久しぶりの再会に話が弾む。思わず長話をしていると彼に止められてしまった。
「久しぶりなのはわかったから。とりあえず湯浴みをさせてやってくれ」
「これは、気が利きませんで申し訳ありません。ソフィア、セリーヌ様のお手伝いをお願いします」
ソフィアと呼ばれた女性が彼に抱えられたわたしに付いてくる。そのまま脱衣所まで連れていってくれて、そこからはソフィア様に手伝ってもらい、久々にゆっくりとお風呂に浸かった。
お風呂から上がると、真新しい下着とドレスが用意されていて目を瞬かせる。
「あの、ソフィア様。これは……着ていたものは」
「私のことはソフィアとお呼びください。セレーヌ様のお召しになっていたものは洗濯させていただきたくお預かりさせていただきました。」
どうやら洗濯に回されてしまったらしい。今すぐは着れないだろうから仕方なく用意してくれていたものに袖を通す。
今まで着たことのない高級そうな服だ。エンパイヤスタイルのドレスで刺繍がなされている上品なデザインで、思わず恐縮してしまう。こんな素敵なドレス、わたしに似合わないと思うんだけど。
そう思ったが、ソフィアは「大変お似合いです!」と手を合わせて目を輝かせていた。
案内されたのは食堂で。どうやら食事を用意してくれていたみたい。今まで見たことないような食事が並べられ、びっくりしてしまう。彼はそんなわたしを見てくすくす笑いながら好きなだけ食べてと言ってくれた。
マナーに少し苦戦しながらもお腹いっぱい食べる。そういえばと思い、彼に疑問を投げかけた。
「洋服も食事もありがとうございました。ここまでよくしてもらって……そういえばクレバーはどこに?」
「いいや、気にしないでいい。俺が好きでやってるだけだから。クレバーは今お風呂に入って、カットしてもらってるよ」
なんとお風呂のみならずカットもしてくれてるみたい。申し訳なさすぎる。
「わたしでできる事なら何でもします。本当にありがとうございます」
頭を下げてお礼を言うわたしに、頭を上げるように言うノア様。
「そんな簡単になんでもするって言ってはいけない。もし俺が結婚しろって言ったら君はするのか?」
「ノア様ならいいですよ」
わたしの返しに彼は手で顔を覆った。耳がうっすら赤くなっていてどうしたのだろうかと首を傾げていると、横でルカ様がクツクツ笑っていた。
どうやら今日からここで生活してもいいらしい。とても大きな屋敷で、たくさんの使用人たちがいる。わたしにあてがわれた部屋もとても広くてなんだか落ち着かない。侍女もつけてもらっていて、至れり尽くせりだ。
クレバーも屋敷内を自由に行き来してもいいとお許しが出たようで、一緒のベッドで眠っている。やっぱりクレバーは賢い犬で、一度注意されると同じことはしないし、何より愛嬌もあって屋敷の人気者となった。
時々庭でボールを投げて遊んだりしている。ふと思った。もしかしたら、虐げられていなかったらこんな生活だったんじゃないかって。もう過ぎたことなのでどうでもいいのだけど。
足のこともあってしばらくは大人しくしていたんだけど、お医者様にもお墨付きをもらって今度は恩返しがしたいと思い、彼の元へ足を運んだ。
「どうした?」
「何か役に立てることがないかなって。足ももうよくなったし、ただここにいるのはなんだか嫌なの」
わたしの言葉に考え込む彼。
「考えておくよ。ひとまずはゆっくりしてくれ」
どうやら仕事はもらえないらしい。がっかりして肩を落とした。
メイドたちに混じって仕事をしようとしても断られ、庭にいくも庭師にやんわり断られ手持ち無沙汰だ。仕方がないのでクレバーに遊んでもらっていた。
そんな生活をしていたからか、侍女たちの腕がいいのかわたしのバサバサだった黒髪はツヤツヤに、日焼けもなくなり白くなる。
それに運動が足りないからか、ティータイムのお菓子を食べ過ぎたからか太ってきた。
このままではまずいと部屋の中でクレバーと一緒に体操をしたり、走り回ったりしてダイエットにも取り組んでいた。
そういえばと思い、ソフィアに聞いてみた。
「ここはどこなんですか?私のいた国とはなんだか違うような気がするんですけど」
「ああ、ここはアルメリア帝国ですよ。ここはノア様の所有する王都の屋敷にございます」
……アルメリア? アルメリアって、隣国? ここ隣国なの?
思わず目を見開いてしまう。衝撃的な事実を知り固まってしまった。
もうすっかり足の痛みも引いて短い距離なら歩けるようになったのだが、問答無用で横抱きにされてしまった。
早く足治らないかな……
屋敷では使用人たちが並んで出迎えてくれていて、その中にルカ様の姿もあった。初めて彼の一行が来た時にわたしとお話ししてくれたあの人だ。
「お久しぶりにございます。ノア様の侍従を務めておりますルカです。ご無事で何よりです」
久しぶりの再会に話が弾む。思わず長話をしていると彼に止められてしまった。
「久しぶりなのはわかったから。とりあえず湯浴みをさせてやってくれ」
「これは、気が利きませんで申し訳ありません。ソフィア、セリーヌ様のお手伝いをお願いします」
ソフィアと呼ばれた女性が彼に抱えられたわたしに付いてくる。そのまま脱衣所まで連れていってくれて、そこからはソフィア様に手伝ってもらい、久々にゆっくりとお風呂に浸かった。
お風呂から上がると、真新しい下着とドレスが用意されていて目を瞬かせる。
「あの、ソフィア様。これは……着ていたものは」
「私のことはソフィアとお呼びください。セレーヌ様のお召しになっていたものは洗濯させていただきたくお預かりさせていただきました。」
どうやら洗濯に回されてしまったらしい。今すぐは着れないだろうから仕方なく用意してくれていたものに袖を通す。
今まで着たことのない高級そうな服だ。エンパイヤスタイルのドレスで刺繍がなされている上品なデザインで、思わず恐縮してしまう。こんな素敵なドレス、わたしに似合わないと思うんだけど。
そう思ったが、ソフィアは「大変お似合いです!」と手を合わせて目を輝かせていた。
案内されたのは食堂で。どうやら食事を用意してくれていたみたい。今まで見たことないような食事が並べられ、びっくりしてしまう。彼はそんなわたしを見てくすくす笑いながら好きなだけ食べてと言ってくれた。
マナーに少し苦戦しながらもお腹いっぱい食べる。そういえばと思い、彼に疑問を投げかけた。
「洋服も食事もありがとうございました。ここまでよくしてもらって……そういえばクレバーはどこに?」
「いいや、気にしないでいい。俺が好きでやってるだけだから。クレバーは今お風呂に入って、カットしてもらってるよ」
なんとお風呂のみならずカットもしてくれてるみたい。申し訳なさすぎる。
「わたしでできる事なら何でもします。本当にありがとうございます」
頭を下げてお礼を言うわたしに、頭を上げるように言うノア様。
「そんな簡単になんでもするって言ってはいけない。もし俺が結婚しろって言ったら君はするのか?」
「ノア様ならいいですよ」
わたしの返しに彼は手で顔を覆った。耳がうっすら赤くなっていてどうしたのだろうかと首を傾げていると、横でルカ様がクツクツ笑っていた。
どうやら今日からここで生活してもいいらしい。とても大きな屋敷で、たくさんの使用人たちがいる。わたしにあてがわれた部屋もとても広くてなんだか落ち着かない。侍女もつけてもらっていて、至れり尽くせりだ。
クレバーも屋敷内を自由に行き来してもいいとお許しが出たようで、一緒のベッドで眠っている。やっぱりクレバーは賢い犬で、一度注意されると同じことはしないし、何より愛嬌もあって屋敷の人気者となった。
時々庭でボールを投げて遊んだりしている。ふと思った。もしかしたら、虐げられていなかったらこんな生活だったんじゃないかって。もう過ぎたことなのでどうでもいいのだけど。
足のこともあってしばらくは大人しくしていたんだけど、お医者様にもお墨付きをもらって今度は恩返しがしたいと思い、彼の元へ足を運んだ。
「どうした?」
「何か役に立てることがないかなって。足ももうよくなったし、ただここにいるのはなんだか嫌なの」
わたしの言葉に考え込む彼。
「考えておくよ。ひとまずはゆっくりしてくれ」
どうやら仕事はもらえないらしい。がっかりして肩を落とした。
メイドたちに混じって仕事をしようとしても断られ、庭にいくも庭師にやんわり断られ手持ち無沙汰だ。仕方がないのでクレバーに遊んでもらっていた。
そんな生活をしていたからか、侍女たちの腕がいいのかわたしのバサバサだった黒髪はツヤツヤに、日焼けもなくなり白くなる。
それに運動が足りないからか、ティータイムのお菓子を食べ過ぎたからか太ってきた。
このままではまずいと部屋の中でクレバーと一緒に体操をしたり、走り回ったりしてダイエットにも取り組んでいた。
そういえばと思い、ソフィアに聞いてみた。
「ここはどこなんですか?私のいた国とはなんだか違うような気がするんですけど」
「ああ、ここはアルメリア帝国ですよ。ここはノア様の所有する王都の屋敷にございます」
……アルメリア? アルメリアって、隣国? ここ隣国なの?
思わず目を見開いてしまう。衝撃的な事実を知り固まってしまった。
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