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今日はノア様とデートの日だ。お休みをもらったみたいで、朝から出かけるのだ。
「今日も可愛いな。さ、お手をどうぞ」
可愛いという言葉に頬が染まった。あの日以降なんだかわたしを褒めまくるのだ。ことあるごとに可愛いと言われ、その度に顔を赤くする。そんなわたし達を生暖かい目で見ている皆。これがこのお屋敷の日常となっていた。
今日は海に連れて行ってくれるらしい。どうやら別荘を持っているそうでそこで過ごすのだそうだ。
生まれてこの方海を見たことがないわたしは、はしゃいでいた。
そんなわたしの頭を撫でながら彼は綺麗な青色の目を細め微笑んでいた。
「わぁ、きれい。吸い込まれそう」
「それは俺が困るな。連れ去られないように手を繋ごうか」
ぎゅっと握り込まれた手は大きくて、わたしの手をすっぽり覆ってしまう。嬉しくなりにこにこしていると頬にキスを落とされた。
びっくりして固まってしまったわたしを見てくすくす笑い、再び歩き出す。
砂浜に来ると周りには屋台が並んでいた。ちょうど小腹がすいた頃だ。
屋台で適当なものを買い、砂浜に二人並んで座る。別荘の使用人がついてきてくれて、シートをしっかりと敷いてくれていた。
ザザーっと波の音だけが聞こえる。山とは違った自然に心穏やかになる。
「セリーヌは本当自然が好きだな」
「はい、落ち着きます」
ぽつり、ポツリと会話しながら二人でぼーっと眺める。
そのうち彼の視線がこちらに向いているような気がして、顔を向ける。
きれいな顔立ちに青い眼。反射しているのか余計にキラキラしている。
そっと後頭部に手を添えられて、彼の方へ引き寄せられる。
唇と唇が触れてそっと離れた。
恥ずかしくなって彼の胸に顔を埋めると、両手でそっと抱きしめてくれた。
馬車に乗り、帰路に着く。馬車の中では恥ずかしくて顔を上げれないわたしとそれをくすくす笑いながら後ろから抱きしめる彼。
甘々な彼にわたしは翻弄され続けていた。
そんな日々が続き、わたしは顔が赤くなるのを隠すために白粉をはたき、あえて頬紅をさして誤魔化そうとしていた。変な方向に努力しているわたしを見て彼はくすくす笑い、耳も塗らないとすぐわかると言って揶揄ってくる。
もう! と頬を膨らませて抗議するもすぐに唇にキスされてしまい、とどめに可愛いと言われ、何も言えなくなってしまった。
なんとか見返してやろうと思い、わたしはまた彼が一人で出かけているときにお義兄様を呼び出した。
「今度は何をするんだい?」
化粧で誤魔化してみたら?っていったのはお義兄様だ。その通りやったのに全く意味をなさなかった。
「お義兄様のいう通りにやってみたけどダメだったの。なんか他にいい案はない?」
面白がっているような表情でくつくつ笑っているお義兄様。絶対この状況楽しんでるでしょ!
「もう、こっちは真剣なんだけど!」
「わかったわかった。要は、恥ずかしいと思わなくなればいいってことだな?」
「違うわ!恥ずかしいことをしないでほしいの!」
「それは無理だな。好きな人に触れたいって思うのは人間の当然の心理というものだ。そこを抑制すると爆発するぞ」
うっ、それもそうだ。
もっとすごいことをされてしまうかもしれない。どうしよう。やっぱり慣れるしかないのかな。
でもドキドキしてしまって何をされても恥ずかしくなってしまう。
どうしたものか。
「じゃあさ……」
お義兄様の作戦を実行することにした。
後日二人で再びあの海の別荘へ向かっていた。
今日はあの作戦を実行する日。覚悟も決めてきた。
二人でぷらぷら過ごしながら夜をまった。
別荘は部屋数があまりなく、彼の部屋とわたしの部屋は扉一枚で繋がっている。
ソフィアに相談したらピラピラの薄い寝巻きを用意してくれた。
意を決して続き扉を開ける。
わたしを見た彼は目を見開いて驚いている。同時に手を目で覆って下をむいた。
「セ、セリーヌ?!ど、ど、どうした」
かなり動揺しているようだ。初めて見る彼の姿に作戦が成功したことを確信し、思わず顔が緩む。
そしてお義兄様から伝授された決め台詞を言うのだ。
「ノア様、一緒に寝よ?」
しばらく無言が続く。失敗しただろうか。彼の様子を伺うと体を折り曲げていて、表情もわからない。
思わずおろおろしてしまうわたしの腕を彼は掴んだ。そのまま引き寄せられて彼の上に向き合った状態で座らされてしまう。
「誰の入れ知恵だ?ルカか……」
「あ、あの」
「男の部屋にそんな格好で来ることの意味を君は理解しているのか?」
こくりと頷く。前世も含めて経験がないとはいえ、知識はある。この後起こるであろうことも予想はできていた。
顎を掴まれ上へ向けられる。
そのまま彼の顔が近づいてきてキスをされる。角度を変えて何度も口付けられた。下を向こうにも後頭部にも手を回され、顔を動かすことができない。
そのうちに唇をなぞられ、ゾクゾクしてくる。息が苦しくなって口を開けた瞬間、彼の舌が入ってきた。
「今日も可愛いな。さ、お手をどうぞ」
可愛いという言葉に頬が染まった。あの日以降なんだかわたしを褒めまくるのだ。ことあるごとに可愛いと言われ、その度に顔を赤くする。そんなわたし達を生暖かい目で見ている皆。これがこのお屋敷の日常となっていた。
今日は海に連れて行ってくれるらしい。どうやら別荘を持っているそうでそこで過ごすのだそうだ。
生まれてこの方海を見たことがないわたしは、はしゃいでいた。
そんなわたしの頭を撫でながら彼は綺麗な青色の目を細め微笑んでいた。
「わぁ、きれい。吸い込まれそう」
「それは俺が困るな。連れ去られないように手を繋ごうか」
ぎゅっと握り込まれた手は大きくて、わたしの手をすっぽり覆ってしまう。嬉しくなりにこにこしていると頬にキスを落とされた。
びっくりして固まってしまったわたしを見てくすくす笑い、再び歩き出す。
砂浜に来ると周りには屋台が並んでいた。ちょうど小腹がすいた頃だ。
屋台で適当なものを買い、砂浜に二人並んで座る。別荘の使用人がついてきてくれて、シートをしっかりと敷いてくれていた。
ザザーっと波の音だけが聞こえる。山とは違った自然に心穏やかになる。
「セリーヌは本当自然が好きだな」
「はい、落ち着きます」
ぽつり、ポツリと会話しながら二人でぼーっと眺める。
そのうち彼の視線がこちらに向いているような気がして、顔を向ける。
きれいな顔立ちに青い眼。反射しているのか余計にキラキラしている。
そっと後頭部に手を添えられて、彼の方へ引き寄せられる。
唇と唇が触れてそっと離れた。
恥ずかしくなって彼の胸に顔を埋めると、両手でそっと抱きしめてくれた。
馬車に乗り、帰路に着く。馬車の中では恥ずかしくて顔を上げれないわたしとそれをくすくす笑いながら後ろから抱きしめる彼。
甘々な彼にわたしは翻弄され続けていた。
そんな日々が続き、わたしは顔が赤くなるのを隠すために白粉をはたき、あえて頬紅をさして誤魔化そうとしていた。変な方向に努力しているわたしを見て彼はくすくす笑い、耳も塗らないとすぐわかると言って揶揄ってくる。
もう! と頬を膨らませて抗議するもすぐに唇にキスされてしまい、とどめに可愛いと言われ、何も言えなくなってしまった。
なんとか見返してやろうと思い、わたしはまた彼が一人で出かけているときにお義兄様を呼び出した。
「今度は何をするんだい?」
化粧で誤魔化してみたら?っていったのはお義兄様だ。その通りやったのに全く意味をなさなかった。
「お義兄様のいう通りにやってみたけどダメだったの。なんか他にいい案はない?」
面白がっているような表情でくつくつ笑っているお義兄様。絶対この状況楽しんでるでしょ!
「もう、こっちは真剣なんだけど!」
「わかったわかった。要は、恥ずかしいと思わなくなればいいってことだな?」
「違うわ!恥ずかしいことをしないでほしいの!」
「それは無理だな。好きな人に触れたいって思うのは人間の当然の心理というものだ。そこを抑制すると爆発するぞ」
うっ、それもそうだ。
もっとすごいことをされてしまうかもしれない。どうしよう。やっぱり慣れるしかないのかな。
でもドキドキしてしまって何をされても恥ずかしくなってしまう。
どうしたものか。
「じゃあさ……」
お義兄様の作戦を実行することにした。
後日二人で再びあの海の別荘へ向かっていた。
今日はあの作戦を実行する日。覚悟も決めてきた。
二人でぷらぷら過ごしながら夜をまった。
別荘は部屋数があまりなく、彼の部屋とわたしの部屋は扉一枚で繋がっている。
ソフィアに相談したらピラピラの薄い寝巻きを用意してくれた。
意を決して続き扉を開ける。
わたしを見た彼は目を見開いて驚いている。同時に手を目で覆って下をむいた。
「セ、セリーヌ?!ど、ど、どうした」
かなり動揺しているようだ。初めて見る彼の姿に作戦が成功したことを確信し、思わず顔が緩む。
そしてお義兄様から伝授された決め台詞を言うのだ。
「ノア様、一緒に寝よ?」
しばらく無言が続く。失敗しただろうか。彼の様子を伺うと体を折り曲げていて、表情もわからない。
思わずおろおろしてしまうわたしの腕を彼は掴んだ。そのまま引き寄せられて彼の上に向き合った状態で座らされてしまう。
「誰の入れ知恵だ?ルカか……」
「あ、あの」
「男の部屋にそんな格好で来ることの意味を君は理解しているのか?」
こくりと頷く。前世も含めて経験がないとはいえ、知識はある。この後起こるであろうことも予想はできていた。
顎を掴まれ上へ向けられる。
そのまま彼の顔が近づいてきてキスをされる。角度を変えて何度も口付けられた。下を向こうにも後頭部にも手を回され、顔を動かすことができない。
そのうちに唇をなぞられ、ゾクゾクしてくる。息が苦しくなって口を開けた瞬間、彼の舌が入ってきた。
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