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番外編
sideノア 囲い編
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彼女が何やら行動を起こしているようだと見張りにつけていた騎士からの報告があった。いつか騎士達が作った荷車に荷物を乗せ、村とは反対方向に歩き出したという報告に心臓が凍った。
どういうことだ。どこかに行くなんて聞いていないし村と反対方向だと? 俺の知らない間に何かあったか。
すぐに準備して馬に跨る。ひとまず彼女の家に行くと手紙が置かれていた。貴族が出したであろう封筒に俺の名前が書かれたもの、商人宛のもの。
すぐさま俺宛の手紙を見るとどうやら妹から脅されており、身の安全を確保するために移動することが書かれていた。どうして一人で行ってしまったのかと彼女に対してなんとも言えない気持ちが湧いたが、確か彼女の妹は実の姉を平気で山へ捨てるやつだ。何をされるかわかったものじゃない。
すぐさまアルメリア国へと向かう道を辿る。道路は乾いており彼女の痕跡は見つけられない。けれど獣道は一本しかないのできっとこの道を辿れば見つけられるだろう。
そう思いながら馬を走らせたのだが、馬も疲れてしまったところでその場で一泊する。気持ちは焦るが焦ってもいいことはない。少し落ち着こう。
それからまた馬に乗って彼女を探す。そこへ泥に塗れた一匹の犬がやってきて吠えている。どうやら何かを訴えたいようだ。ついていくと崖下でぐったりしている彼女の姿がみえ、息が詰まる。荷車ごと下へ落ちてしまったようだ。幸いにも近くに獣道があり、助け出せるだろう。
はやる心を抑えながら、彼女の元へと急ぐ。どうやら意識はあるようだ。あとは傷があちこちにあるがどれもかすり傷程度。
とりあえずほっとしながら彼女を馬へのせ、家まで急いだ。
思わず強めに言ってしまったが本当に心配したんだ。彼女を失ってしまったらと思うと心臓が張り裂けそうになる。どうも彼女は人を頼るということが苦手なようだ。いつも遠慮がちで、お互い様の状況でなければ絶対に頼まない。
危うい彼女はやはり庇護下に置かなければ……
次の日、彼女とたくさん話をする。グロリア国王太子殿下のことも。そのまま俺の屋敷で保護することに彼女の同意をもらい、連れ帰ることに成功した。
どうしても離してあげられない。今までこんなことはなかったのにな。なんて自嘲しながら兄上と屋敷へ手紙を書く。
こうして俺と彼女の暮らしが始まったんだ。
家にずっと囲い込んでおこうと思ったが、それは彼女は望まなかった。むしろ仕事はないか、何かすることはないかと動き回る。
こっそりと王弟妃の教育を受けさせながら少しの畑仕事を与えるととても活き活きとした表情でこなしてくれる。可愛すぎて早く食べてしまいたいくらいだ。アクティブな彼女を街へ連れ出してやるとさらに可愛い表情を見せてくれる。そんな彼女に俺は心底惚れてしまっていた。
そんなある日暗い表情をしていた彼女に気づく。問い詰めると妹がどうやらこの場所を突き止めたらしい。一介の伯爵令嬢にしては随分と手練れを送り込んだな。王太子と組んでいるのか?
まあ、いい機会だ。このチャンスを棒に振ってなるものかと選択肢を与えたが実質婚約者にならざる負えない状況を作り出し、彼女の同意を得ることができた。
卑怯だろうとなんだろうと逃さない。彼女の心を手に入れるための手段ならなんでも使う。
狂気じみたこの感情を俺は抑えられずにいた。
彼女の父親と妹と話をつける。父親は妹の方を溺愛しているのだろうな。態度でわかる。妹はなぜか俺に色目をつかってきたが。そこら辺の令嬢と変わらないその態度に呆れながらもうまく話をまとめることができた。これで、障害が一つ、取り除かれた。
それからルカと話をつけていた養子の件も進める。こちらはスムーズに行われた。
兄上の妻、サラからの希望もあり、二人を引き合わせた。どうやらとても気が合うようですぐに仲良くなっていたよ。彼女にとって良き話し相手になってくれているようだ。
ある日、いつも以上にセリーヌからの視線が痛いんだが、俺のしたことを勘付かれたか?
帰ってくるとルカと二人で話している彼女を見つけ、一気に頭に血がのぼる。話を聞くとどうやら俺には別に慕っている人がいるのではないかと思ったセリーヌが聞きに行ったそうだ。
それって、嫉妬か……? なら……
思い切って彼女に告白する。どうやら彼女も俺を好いていてくれたようで、今までで一番幸せな瞬間となった。
それからはさらに彼女を甘やかしていた。反応もいちいち可愛いし、ずっと見ていられる。それに何やら面白いことを仕掛けてくれて、初めて彼女と繋がれた。
行動力もさることながら、いちいち可愛い彼女を目一杯甘やかして触れ合って。とても幸せな日々を過ごしていたんだ。
初めてを迎えると女性は体に相当な負担がかかるらしい。それを聞いて彼女に無理をしてほしくなくて、手を出さずに我慢していたら、それに焦れた彼女が誘ってきてくれて。それはそれでとても嬉しかった。
そんな中、彼女が姿を消した。途中まで彼女を追いかけていたクレバーと一緒に後を追う。そこには彼女の妹の姿。なぜこんなところに……どうやって?
そんなことを考えながら様子を伺う。彼女が去った後、近くにあった小屋をクレバーが見つけてくれて、探し歩いた。その小屋の小窓から上半身だけ出しているセリーヌを見た時は背筋が凍ったよ。そのまま出てくるように言ったがドレスが引っ掛かっているらしい。すぐに反対側に回り込んでドアを蹴破る。
助け出したセリーヌは思ったほどケロッとしていたが、俺は気が気じゃなかった。何かあったら……
彼女を害する全てから守らなければと誓った。
どういうことだ。どこかに行くなんて聞いていないし村と反対方向だと? 俺の知らない間に何かあったか。
すぐに準備して馬に跨る。ひとまず彼女の家に行くと手紙が置かれていた。貴族が出したであろう封筒に俺の名前が書かれたもの、商人宛のもの。
すぐさま俺宛の手紙を見るとどうやら妹から脅されており、身の安全を確保するために移動することが書かれていた。どうして一人で行ってしまったのかと彼女に対してなんとも言えない気持ちが湧いたが、確か彼女の妹は実の姉を平気で山へ捨てるやつだ。何をされるかわかったものじゃない。
すぐさまアルメリア国へと向かう道を辿る。道路は乾いており彼女の痕跡は見つけられない。けれど獣道は一本しかないのできっとこの道を辿れば見つけられるだろう。
そう思いながら馬を走らせたのだが、馬も疲れてしまったところでその場で一泊する。気持ちは焦るが焦ってもいいことはない。少し落ち着こう。
それからまた馬に乗って彼女を探す。そこへ泥に塗れた一匹の犬がやってきて吠えている。どうやら何かを訴えたいようだ。ついていくと崖下でぐったりしている彼女の姿がみえ、息が詰まる。荷車ごと下へ落ちてしまったようだ。幸いにも近くに獣道があり、助け出せるだろう。
はやる心を抑えながら、彼女の元へと急ぐ。どうやら意識はあるようだ。あとは傷があちこちにあるがどれもかすり傷程度。
とりあえずほっとしながら彼女を馬へのせ、家まで急いだ。
思わず強めに言ってしまったが本当に心配したんだ。彼女を失ってしまったらと思うと心臓が張り裂けそうになる。どうも彼女は人を頼るということが苦手なようだ。いつも遠慮がちで、お互い様の状況でなければ絶対に頼まない。
危うい彼女はやはり庇護下に置かなければ……
次の日、彼女とたくさん話をする。グロリア国王太子殿下のことも。そのまま俺の屋敷で保護することに彼女の同意をもらい、連れ帰ることに成功した。
どうしても離してあげられない。今までこんなことはなかったのにな。なんて自嘲しながら兄上と屋敷へ手紙を書く。
こうして俺と彼女の暮らしが始まったんだ。
家にずっと囲い込んでおこうと思ったが、それは彼女は望まなかった。むしろ仕事はないか、何かすることはないかと動き回る。
こっそりと王弟妃の教育を受けさせながら少しの畑仕事を与えるととても活き活きとした表情でこなしてくれる。可愛すぎて早く食べてしまいたいくらいだ。アクティブな彼女を街へ連れ出してやるとさらに可愛い表情を見せてくれる。そんな彼女に俺は心底惚れてしまっていた。
そんなある日暗い表情をしていた彼女に気づく。問い詰めると妹がどうやらこの場所を突き止めたらしい。一介の伯爵令嬢にしては随分と手練れを送り込んだな。王太子と組んでいるのか?
まあ、いい機会だ。このチャンスを棒に振ってなるものかと選択肢を与えたが実質婚約者にならざる負えない状況を作り出し、彼女の同意を得ることができた。
卑怯だろうとなんだろうと逃さない。彼女の心を手に入れるための手段ならなんでも使う。
狂気じみたこの感情を俺は抑えられずにいた。
彼女の父親と妹と話をつける。父親は妹の方を溺愛しているのだろうな。態度でわかる。妹はなぜか俺に色目をつかってきたが。そこら辺の令嬢と変わらないその態度に呆れながらもうまく話をまとめることができた。これで、障害が一つ、取り除かれた。
それからルカと話をつけていた養子の件も進める。こちらはスムーズに行われた。
兄上の妻、サラからの希望もあり、二人を引き合わせた。どうやらとても気が合うようですぐに仲良くなっていたよ。彼女にとって良き話し相手になってくれているようだ。
ある日、いつも以上にセリーヌからの視線が痛いんだが、俺のしたことを勘付かれたか?
帰ってくるとルカと二人で話している彼女を見つけ、一気に頭に血がのぼる。話を聞くとどうやら俺には別に慕っている人がいるのではないかと思ったセリーヌが聞きに行ったそうだ。
それって、嫉妬か……? なら……
思い切って彼女に告白する。どうやら彼女も俺を好いていてくれたようで、今までで一番幸せな瞬間となった。
それからはさらに彼女を甘やかしていた。反応もいちいち可愛いし、ずっと見ていられる。それに何やら面白いことを仕掛けてくれて、初めて彼女と繋がれた。
行動力もさることながら、いちいち可愛い彼女を目一杯甘やかして触れ合って。とても幸せな日々を過ごしていたんだ。
初めてを迎えると女性は体に相当な負担がかかるらしい。それを聞いて彼女に無理をしてほしくなくて、手を出さずに我慢していたら、それに焦れた彼女が誘ってきてくれて。それはそれでとても嬉しかった。
そんな中、彼女が姿を消した。途中まで彼女を追いかけていたクレバーと一緒に後を追う。そこには彼女の妹の姿。なぜこんなところに……どうやって?
そんなことを考えながら様子を伺う。彼女が去った後、近くにあった小屋をクレバーが見つけてくれて、探し歩いた。その小屋の小窓から上半身だけ出しているセリーヌを見た時は背筋が凍ったよ。そのまま出てくるように言ったがドレスが引っ掛かっているらしい。すぐに反対側に回り込んでドアを蹴破る。
助け出したセリーヌは思ったほどケロッとしていたが、俺は気が気じゃなかった。何かあったら……
彼女を害する全てから守らなければと誓った。
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