山に捨てられた元伯爵令嬢、隣国の王弟殿下に拾われる

しおの

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番外編

sideノア 通い編

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 ルカが帰ってきて早速話を聞く。どうやら彼女は伯爵家の元令嬢。何かがあって山へ捨てられたと言っていた。その屋敷の使用人にたまたま会うことができて詳しく聞けたのだが、どうやら使用人同然の扱いを受けていたらしい。家から出るためにわざと妹のヘイトを買ってそれが成功して今に至るのだとか。
 使用人達にはとても慕われていたようで、皆心配していたが彼女の家でのことを話すとホッとした様子だったという。さすがお嬢だななんて笑っていたとも。
 お嬢のこと、よろしくお願いします。と頭を下げて頼まれたのだという。
 本当に慕われていたのだろうな。自分の境遇にも負けずむしろそれをひっくり返して自由に生きている彼女は本当に尊敬する。
 俺も自由にはさせてもらっているが、それでも周りにたくさんの人がいて助けられているというのに。


 その話を聞いて彼女に会いたくなった俺は村のことはルカに任せ、馬を走らせた。
 向かった先はもちろん彼女の家。出迎えた彼女は驚いている様子だったが、何かしてあげたくて声をかける。頼まれたのはバナナの収穫だった。
 というかこの国でバナナなんて南の方でしか育たないと記憶していたが……
 そう思って見てみるも見事なバナナがぶら下がっている。さすがに足台では届かないので木にのぼり収穫した。彼女はお礼だと言ってお茶とお菓子を出してくれる。
 本当に気遣いのできる人だな。そう思いながらお茶とクッキーをいただいたが、あることが気になり彼女に尋ねる。
「ところで、こないだ来た時はバナナの木はなかったはずだが。成長が早すぎないか? それにあれは一部の地域でしか育たないはずだが……」
そう伝えると彼女は俺を畑へと連れて行ってくれる。彼女が手をかざすだけでみるみるうちに大きくなる野菜。特殊能力か? それならば、国に見つかったら保護されるならまだいい方で、最悪ずっとボロ雑巾の様に働かされるぞ。そうなれは彼女の自由は完全に奪われてしまうだろう。
 彼女は考えてもみなかったようで考え込んでしまっていた。そんな彼女が心配になったが、今日のところはひとまず帰ることにしよう。
 馬に跨り、また来ると彼女に言い残して村へと帰る。彼女は危ういな。誰かが守ってやらないと。そう思いながらもでもその守る役目は誰にも譲りたくはない。ここで初めて彼女への恋心を自覚したのであった。


 ある日、騎士から報告を受ける。金髪の男が村人に何かを訪ね歩いていて、その内容がどうもセリーヌに関するもののようだと。俺は急いでその場に向かい、様子を伺う。
 あいつ……確か、グロリア国の王太子だったな。しかしなぜセリーヌを……?
 そういえばルカから気になる情報をもらっていたことを思い出す。一回だけ参加した夜会でどうも目をつけられたらしい。セリーヌに王太子直々に招待状が届いたことがきっかけで山へと追い出されたのだと。
 まさか……セリーヌを狙っている?
 急に高鳴る胸の鼓動を抑えながら、気づけば馬に乗って駆け出した。


 いつものように出迎えたセリーヌは食事を作っていたらしい。誘われ、一緒に食事をとりつつ、彼女にあいつのことを話す。どうやら先に来ていた商人にも言われたらしいが、彼女は心当たりがないという。招待状までもらっていたら勘づいてもいいようなものなんだが……
 その辺疎いのか?
 そのまま彼女を連れ出し、景色の綺麗な川のそばへと連れ出す。釣りがしたいという彼女に俺はもっともらしい理由をつけて一緒にいる時にやろうとさそう。あいつがうろつく可能性もあるからな。もしみつかりでもしたら大変だ。
 そして次の日は彼女の希望通り釣り竿を持ってくる。彼女の横顔はとても可愛い。動かない水面を楽しそうに眺めるその表情に俺は目を奪われていた。

 初めて会った時よりもだいぶ心を許してもらっている気がして、俺は彼女のことを尋ねた。すると彼女は自分の境遇を話してくれて、信頼されていると喜ぶと同時にこんな仕打ちをしたもの達への怒りが湧く。複雑な心境は彼女にも伝わってしまったようで、それをなんとかしようと慌てる姿も可愛かった。
 いつの間にか彼女の言動全てが可愛く思えてきて、気持ちだけが大きくなっていった。


 そのまま彼女の家に戻った俺は用意していた書類を持って、彼女に選択肢を提示する。彼女を守りたい気持ちと自分の願望が混ざっているその選択肢。彼女はとても悩んでいる様子だった。けれど、最終的には俺の願望が強く出ている選択肢を選んでもらえて、気持ちは舞い上がっていた。
 そこから彼女へのアプローチが始まる。彼女の欲しそうなものをプレゼントしたり一緒に多くの時間を過ごしたり。俺にとってはとても充実した日々を送っている。彼女もまんざらでもない様子で、楽しんでいてくれていたと思う。
 まさかあんなことが起こるなってその時の俺は全く予測していなかった。
 
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