山に捨てられた元伯爵令嬢、隣国の王弟殿下に拾われる

しおの

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番外編

side ノア 出会い編

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 俺の名前はノア・アルメリア。アルメリア国の王弟である。俺はある調査のために山を越えて隣国のグロリア国へいくべく、山を登っていたのだが、どうやら体調を崩してしまったらしい。
 上がる熱と体のだるさがだんだんと意識を奪っていく。しかし、もう引き返すよりも進んでしまった方が早いところまで来てしまっている。
 ルカに指示を出し山をそのまま進むよう伝えたところで俺の意識は遠のいてしまった。



 なんだか暖かい。これは一体……
 そう思っているうちにみるみる体の熱やだるさが取り払われる。ゆっくりと目を開けるとそこはどこかのベッドのようだ。
「気がつきましたか? 体の調子はどうですか」
 見たことのない黒髪の少女が心肺いそうに俺の顔を覗き込む。可愛らしい女性だ。それに俺を見ても態度を変えたりしない女性は珍しいな。
「さっきまでは苦しかったんだが、いきなり体が楽になった。いったい……」
「それは私にもわかりません。このお嬢様が助けてくださいました」
 ルカは彼女に深々と礼をしている。どうやらここにいる間俺の世話と食事まで出してもらったそうだ。こんな誰ともわからない我々をすんなり受け入れるなんて……
 今はこの優しさに感謝はするが、危ないな。

「ノア様、彼女われわれに食事を提供する代わりに薪割りや家具の製作をお願いしてきたのです。おそらく一人では力仕事も難しいでしょう。どうします?」
「……たまに様子を見に行ってやるか。俺の命の恩人でもあるからな」
「かしこまりました」

 昨日までの体調不良が嘘のようになくなっている。むしろ普段よりも調子がいいのかもしれない。不思議な者だな。
 彼女にお礼を言うため、リビングへ向かうといい匂いが漂ってくる。
「おはようございます。体調は大丈夫ですか?」
「あぁ、すっかり良くなってしまった。ありがとう」
「いえ、朝食食べられそうですか?」
「いただこう」
 彼女の用意してくれた食事はシンプルながらもとても美味しい。それに、食べている姿もなんだか可愛く見えてくる。小動物のようだ。
「私の名前はノアという。あなたの名前を伺っても?」
「はい、わたしはセリーヌと申します。最近ここで一人暮らしを始めたのです」
 彼女はセリーヌというらしい。綺麗な黒髪の少女は何かわけありのようだ。所作などから見れば貴族令嬢のようだが一人暮らしをしているというのも謎だらけだな。
 あまり聞いてほしくなさそうだから、あえて聞かなかったが……いずれ話してもらえるだろうか。
 一旦戻ったらルカに調べさせるか。
 そのまま俺はここにくるまでの経緯を彼女に伝えた。助けてもらったからちゃんと説明は必要だろう。

「しかし女性一人でこんなところで生活するのは危なくないか?」
「今のところ大丈夫ですよ。食事もあるし、商人の方がたまにきてくれるので」
 商人か。どうやら二週に一回食料や欲しいものを届けてもらっているらしい。しかし、食料は手に入ってもそのほかはどうだろうか。薪割りもできていない様子だとルカも言っていたしな。
 そのことを指摘すると黙り込んでしまった。あまり考えてはいなかったんだな。しっかりしているようで抜けている。そんな彼女のことが俺はどんどん気になっていった。
「なら、私が定期的にこようか。人も連れてこれるし私が信頼したものだけ連れてこよう」
 彼女は遠慮していたが、これだけは譲れない。命の恩人でもある彼女に何か恩を返したい。
 それから俺の騎士達が戻ってくる。なかなかいい家具を作ってくれたようだ。案外みんな好きなのかもしれないな。今度騎士達で作った家具を領民へ販売してみようか。
 そんなことを考えながら、一度彼女の家を後にする。一応仕事できているしな。さっさと片付けなければ。それと兄上に少し用事ができたと伝えておこう。



 麓の村まで降りてから、食糧や必要なものを買い、目的地へと向かう。ルカは早々に彼女のことについて調べてもらうように頼んだので別行動だ。遅れを取り戻すように仕事を終え、麓の家を間借りする。
 兄上からはたまに隣国での仕事を引き受けてくれるなら、いてもいいと許可ももらった。本当に寛大な方だ。第二王子の頃から俺のやりたいことを否定もせずやらせてくれた。
 自分は王太子でやりたいこともできない中、自由にさせてもらっているのだ。婚約に関しても俺の意思を尊重してくれている。まあ、兄上の子供達が大きくなるまでは王宮にいてほしいという条件は飲んでいるが、俺にとってはありがたい。
 一つのことにのめり込むと周りが見えなくなる性格の俺の良きストッパー役になってくれるのはルカ。高位貴族であるが、幼い頃からずっと俺に支えてくれるいわば親友でもある。お互いが本音で話せる良き相棒だ。
 彼の報告を待ちながら麓の村で過ごす。この村は若者が出稼ぎに出ていて残されたのはお年を目したかたや小さな赤ん坊、そして女性のみ。
 この村に滞在させてもらっているお礼に騎士達を派遣して力仕事や大工仕事を任せている。その中でこの村に来る商人の話を耳にした。名前はマルクス。粗末な野菜でもいいものと交換してくれるこの町の生命線とも言える人だと言っていた。
 単独でここに来てくれるらしく、その時に山の上にある彼女の家を見つけたのだろう。彼にコンタクトを取りたいな。
 
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