【完結】一生に一度だけでいいから、好きなひとに抱かれてみたい。

村松砂音(抹茶砂糖)

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26 いやです ※

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 その夜も、アレックスがリュカに性器を入れることはなかった。
 深いくちづけで魔力を吹き込まれながら、身体中を触られ、舐められ、甘噛みされた。
 アレックスは魔力が馴染んだら共鳴反応が落ち着くだろうと言っていたが、リュカの身体はずっと熱く、アレックスからあたえられる刺激であっさりと登り詰めた。リュカばかりが達していて、最後にアレックスの性器をリュカが手で扱く、という昨夜と同じ流れになった。

 ふと目を覚ますと、部屋の中は暗く、まだ夜は明けていなかった。魔力の供給が終わったあと、またそのままアレックスのベッドで寝てしまったらしい。
 足元のほうがぼんやりと明るいことに気づき、身体を起こしてそちらを見ると、窓辺に置かれたランプに火が灯っていた。
 アレックスは着替えている最中のようで、シャワーを浴びたあとで寝間着に着替えているのかと思ったが、彼が袖を通していたのは私服だった。騎士団でなにかあったのなら制服を着るはずなので、こんな夜更けにも関わらず私用で外出するつもりなのだ。そうわかって、行き先にも思い当たった。

「……アレックス隊長、どこへ行くんですか?」
「ああ、起こしたか。見送りは不要だから寝ていろ」
「もしかして、娼館へ行くんですか?」

 沈黙は肯定だった。
 思い返してみれば、昨夜も今夜もアレックスは一度しか射精していない。一度では発散する魔力の量が足りていなかったのだ。

「おい、なにをしている」

 アレックスの前で膝をつき、着替えの途中でベルトが緩んだままの腰に触れると、低い声が落ちてきた。

「足りなかったんですよね?」
「だとしても、おまえがそんなことをする必要はない」
「どうしてですか? 俺が娼婦のようにふるまえないからですか? 俺が男だからですか? 気が乗らないのなら目を閉じていてください。大丈夫です、俺にもできますから」

 アレックスの腰に触れていた手を下着の中に忍ばせ、まだ兆していない性器を取り出す。それを見てアレックスは眉をつりあげた。

「やめろと言っている」

 地を這うような低い声で言って、アレックスがリュカの肩を押しのける。

「いやです」

 アレックスがほかの相手を抱くと考えただけで、胸が押しつぶされそうになる。こんなのは勝手な嫉妬で、リュカには止める権利などないのかもしれない。
 でも、もしアレックスが経験の薄いリュカに手加減をしていて、代わりに娼婦を相手に魔力を発散しようとしているのなら、リュカにもまだできることがある。アレックスを引き留めることができる。
 じっと水色の瞳を見据えていると、アレックスは深いため息を吐き出した。

「そこまで言うならやってみろ。ただし、よくなければおまえを魔法で眠らせてでも娼館へ行くからな」
「……はい、わかりました」

 リュカが頷くのを見て、アレックスがベッドへ腰を下ろす。好きにしろ、とでも言いたげにベッドへ両手をつき、挑発するような笑みを浮かべた。だが、その笑みはすぐに崩れた。

「……っ」

 いままでのようにリュカが手で施すと思っていたのか、性器に顔を近づけたリュカを見て、アレックスが驚きに目を見開く。
 最初は性器を手で持ち上げ、口内に溜めた唾液を塗りつけるようにして全体を丹念に舐めた。それから、舌をちろちろと動かして先端を舐め、同時に指で幹を扱く。

「……おい、どこで覚えてきた?」

 そう尋ねてくるアレックスの声は、かなり低かった。こちらを見下ろす瞳は怒りに染まっている。アレックスの性器は徐々に硬くなっているので、あまりにもリュカの口淫が下手で怒っているというわけではなさそうだった。

「秘密、です」

 性器の先端にくちづけてからリュカが言うと、アレックスはますます眉をつりあげ、睨みつけてきた。性器が反応していることがうれしくなって思わず笑ってしまったが、そのせいで余計に怒らせてしまったらしい。

「はじめてで不安だったのですが、反応してもらえてうれしいです」
「……はじめて、だと?」

 アレックスは未経験だと偽られたことに怒っていたのかもしれないが、リュカは口淫を実践で覚えたわけではない。娼館でたったひとりだけ仲のよかった男娼が、王子を誘惑するなら必要だろうと教えてくれた技だった。果物や野菜を性器に見立てて練習したので、本物の性器を舐めるのはこれがはじめてだ。

「はい、はじめてです。……気持ちよくありませんか?」
「いや……悪くない」
「よかったです」

 リュカが目を細めて笑うと、どうしてかアレックスは目を見開いた。
 アレックスが気持ちいいのなら、うれしいに決まっている。いつもたくさん気持ちよくしてもらっている分、少しでも返したかった。このくらいじゃ足りない。もっと、気持ちよくさせたい。
 水色の瞳から怒りが消えたのを確認して、リュカはふたたび性器を咥え込んだ。くびれの部分までを口に含み、舌先でくぼみを刺激しながら、ときおり先端を吸い上げる。手の中で次第に性器が張り詰めていって、舌先にぬるりとした感触と塩味を感じた。

「はあ……っ」

 口から性器を離すと、リュカの唇と性器のあいだで透明な糸が伸びて、舌先でそれを舐め取った途端、アレックスが熱いため息を吐き出した。艶めかしい吐息と苦悶の表情にリュカの背中はぞくりと震え、腰に甘いものが響く。

「んう……っ、ん……」

 ――アレックス隊長をもっと気持ちよくさせたい。もっと、もっと、気持ちよくさせたい。

 そう思いながら、血管の浮きはじめた性器をもう一度奥まで飲み込んでいった。張り詰めた性器を頬張ると口の中がいっぱいで苦しくなったが、アレックスが興奮しているというよろこびのほうがずっと大きい。
 最初は歯を立てないよう慎重に顔を前後させるだけで精一杯だったが、次第に慣れてくると細かな動きもできるようになった。性器の裏側に舌を押し当て、顔を引くときは性器を吸い上げるように。ときおり指で双球に刺激を加えるのも忘れない。
 教えてもらったことを思い出しながら、ひとつひとつの動きを丁寧に心がけ、やさしく愛撫していった。

「ふあ……ッ、ん……う、ぐ……っ」

 抜き差しはおのずと速くなり、次第に深く性器を飲み込んでいく。熱く硬い性器に口内を擦られるのが気持ちよくて、夢中で性器をしゃぶった。
 口の中に自然と溜まった唾液に先走りが混じり、いやらしい匂いと味でいっぱいになる。自分の口から響く淫らな水音や、ときおりアレックスの唇から漏れる声に、耳も刺激されていく。

「……っ、は」

 リュカの髪を掻き回すアレックスの指先が、耳を掠めていく。もっと、もっと、と深く咥え込んでいるうち、性器の先端が喉の入り口に当たり、リュカの身体が跳ね上がる。思わず息を吸い込んでしまい、性器を締めつけた途端、アレックスが掠れた声を吐き出した。

「もういい、離せ……っ!」

 アレックスの限界が近いのだ。緩く首を振りながら性器の抜き差しを続け、そのまま出してください、と視線だけで訴える。ふたりの視線がかちあった瞬間、口の中で性器が膨らみ、熱い粘液が放たれた。

「く……ッ!」
「――ん、うッ!」

 低く呻く声がずくんと腰に響き、同時にリュカも絶頂していた。口内で跳ねる性器から吐き出される精液を、一滴たりともこぼしたくない。口からあふれる前にそれを嚥下すると、アレックスが血相を変えて叫んだ。

「おい、吐き出せ! おまえにはまだ早い!」

 なにが早いのかわからないが、もう遅い。リュカはすべてを飲み込んでからゆっくりと性器を口から引き抜き、最後に先端のくぼみに溜まった分まで吸い上げてから唇を離した。さらには精液で汚れた性器に舌を這わせ、きれいに舐め取る。

「お、まえ……飲んだのか?」

 アレックスに尋ねられた次の瞬間、異変が起こった。
 どくん、と心臓がひときわ大きく跳ね上がり、ばくばくと心音がうるさく鳴り出す。汗が次から次へと滲み出し、身体が熱く、息が苦しい。
 荒い呼吸を繰り返していると、アレックスに肩をつかまれた。

「おい」
「ああああああ――ッ!」

 強く肩をつかまれたわけではなく、ただ肩に手を置かれただけだ。それなのに、びりびりと身体に痺れが走って、リュカはふたたび絶頂していた。

「くそ、やはりな。急激に魔力を摂取しすぎたせいだ」

 アレックスに身体を抱え上げられ、ベッドの上に乗せられる。たったそれだけのことが刺激になって、口から喘ぎがこぼれ続ける。

「あッ、あ……んあ……」
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