余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~

藤森フクロウ

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誘拐事件の裏側で

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 一週間ほど学園を休んだエリシア。元気そうな姿を見せていたが、無理をしているかもしれないと判断したからだ。周囲を心配させまいと無理に振るまっていないかとミリアは心配し、大事をとって様子を見ていたのだが、杞憂に終わった。
 本来は彼女の両親や兄のセブランが気遣うところだが頼れなかった。両親は遠いマルチーズ家の領地にいるし、セブランはその辺に気の回らないタイプである。
 シンも気づかなかったが、そういう可能性もあったと言われて気づいた。
 なんというか、ミリアは本当に気遣いのできる女性である。なのに、その息子たちの無惨なデリカシーのなさに残念さが倍増した。年齢とか性別で済ませられない差がある。
 その頃には、偽神子騒動も収まりつつあった。
神殿から招かれた神官により、双方、本物のティンパイン公式神子ではないと断言された。
 マイルズとラミィは厳重注意を受けたが、退学にはなっていない。
 自尊心を傷つけられたマイルズは体調不良を理由に登校していない。不貞腐れているというのが、もっぱらの噂だ。
一方、ラミィは登校していた。彼女は神子ではなかったが、加護を持っていたのだ。
 それも肉体を強化する戦闘特化タイプ。ラミィは自分が他者より力が強いと気づき、争いを避けていた。あの気弱な姿は、年頃の乙女らしくない怪力を知られないための姿だったのだ。
 特に思いを寄せる相手には絶対バレたくないと、必死に隠していたのだ。
 しかし、公衆の面前で大暴露されてしまったので、開き直っている。意外とメンタルの強いタイプだった。
 彼女はマイルズとは違い自分が神子だと、積極的に周囲を煽っていなかったのも理由だろう。周囲は、ラミィが神子ではなかった落胆はあったものの、稀少な加護持ちに変わりはない。外野が勝手に神子だと盛り上がっていて、ラミィが言いにくかった状況をつくってしまった自覚もあったのだ。
 神子にお近づきになりたい。怪力を隠したくて強く言えないラミィに、彼女が神子であってほしいと強要していた罪悪感もあるのだろう。
 ラミィとは逆にマイルズは神子だと散々匂わせて、居丈高に振る舞っていた。取り巻きはマイルズに怒りを募らせている者もいるだろう。
 それぞれ、己の行いが返ってきているのである。
 
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