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連載
それぞれの下心
しおりを挟む「今日は譲るわ。貴方たちにも生活や都合があるのでしょう?」
話題に上がっていたエリシア本人だ。
青いストレートヘアを靡かせ颯爽とこちらへやってくる。この様子だと、彼女も試験では悪くない出来だったのだろう。
実はエリシア、なかなかの優等生だ。一番競争率の高いエルビア校舎に転校できるくらいには勉強ができる。
「そもそも、ピコはシンの愛馬だもの。そこまで私に気を使わなくてよくってよ?」
腰に手を当てて、少し拗ねたように言うエリシア。
そんなに壁を作るような間柄ではないと思っていたのだ。
咎めるような視線に、シンは気まずげに視線を彷徨わせた。機嫌を損ねたくないと、らしくない真似をした自覚はある。
「いやー下心もあって」
「下心?」
「お米欲しいなーって」
「またそれなの。ほんっとーにそればっかりなんだから」
シンの作った米料理は美味しかったが、その執着までは理解できないエリシアである。
「ちゃんと渡すわよ。今回はトラブルが多かっただけで」
「実は冬休みに入ったらマルチーズ領に行きたいなーって」
「ふーん、え? へぁ!?」
地球を守るけれど三分しかいられない某銀色の宇宙ヒーローのような声が漏れた。自分でもそんな声が出たのがびっくりしたのか、エリシアは口を押さえている。
気を取り直して、シンに向き合う。
「えーと、どういうこと?」
「冬休み、タニキ村に帰る前にそちらにお邪魔して買えるだけ買う!」
「出た……シンの米に対する謎の情熱」
「エリシアのピコへの情熱も結構なものだけど」
呆れ顔のエリシアに、シンも言い返してしまう。どちらともなく視線を交わし、ぷっと噴き出して笑うのだった。
「分かったわ。お父様に手紙を送っておくわ」
「セブラン様は?」
「……今は使い物にならないわね。ほら、ミリア様やジーニー先輩の計らいで色々ととりなしがあったでしょう? 都会の美女とやらにすっかり骨抜きになって、美人にアプローチしようと夢中になっているのよ」
「それ大丈夫?」
「良くないわ。紐で縛ってでも連れて帰らなきゃ。あれでも結婚しているんだから」
「してんの!?」
一気に不穏さが増した。エリシアがこっくりと頷く。その深い頷きに、シンの言葉への強い同意が感じられる。
「うちの色ボケ兄には申し訳ないくらい、素敵なレディよ。なんであんな唐変木を選んだのかしら……」
妹から酷評されているセブランである。彼の行いを考えれば、致し方ないかもしれない。
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