11 / 43
初恋は暴走しがちなものなのです!3
しおりを挟むとある街はずれの、やや廃れた街道で立派な幌馬車を囲う野盗がいた。
どれも荒くれ者という風情であり、馬車の周りには戦っただろう数人の騎士と十数人の野盗らしき人々が倒れている。
しかし、幌馬車を守るのはもっとも立派な鎧を付けた老騎士一人となってしまった。
それでも逃げ出さず、だが焦りのある顔で周囲を睨みつけている。
対する野盗たちは、にやにやと厭らしい笑みで馬車の中の貴婦人とメイドたちを値踏みしていた。
「お逃げ下さい、アルテナ様!」
「いいえ、わたくし一人で逃げても追いつかれるだけ……! それならば、残って戦った方がまだ生き残れる!」
「ですが、貴女に何かあっては旦那様やあのお方がどれほど悲しまれることか……」
「このような男たちに汚されるくらいなら切られて死んだほうましよ!」
馬車から出てきたのは、凛とした顔立ちの美人だ。プラチナピンクに菫色の瞳の柔らかそうな春色の美女。予想以上の上玉に、野盗たちは色めき立った。
孫娘ほどの年齢である若い姫君の悲壮な覚悟に、老騎士は目頭が熱くなる。
心なし、視界まで暗くなってきた気が――
ズドオオオン、と音を立てて野盗たちが蹴散らされた。
空から落ちてきたのは大木。
脂下がっていた野盗どもはボーリングピンでいうとストライクされた。
フルスコアフィーバーが出るんじゃないかというくらい、運悪く落ちてきてスピンして転がった大木に吹き飛ばされたり潰されたりした。
一方、大きな幌馬車は馬が驚いて失神した以外には特に被害はなかった。
「……神が降臨成された……」
思わず天を仰ぎ、ありえない僥倖に出会ったように呆ける老騎士。
その奇跡は、恋の暴走する少女が起こした人災一歩手前のラブパワー(物理)によって起こされたものだとは知るはずもない。
野盗たちをストライクした大木は、勢い余って近くの森にまで転がっていた。
「あの木は、持ち帰れるかしら?」
「それは良いですな! 何かに加工すれば持ち歩けるでしょう」
「では。ティトス殿下とお揃いでお守りを作りましょう」
九死に一生を得て、アルテナは笑った。
アルテナ・クレア・バルトロメロイ――バルトロメロイ公国第一王女のちのハルステッド王国で賢妃と称されて、今は王太子であるティトスの最愛の女性となる。
オシドリ夫婦として後世に受け継がれる、国を代表する理想の夫婦と呼ばれることとなる。
その後、回転スピンして少し離れた森にまで吹っ飛んでいた木は回収された。
その際、大木に下敷きになっていた男から、とある貴族の関与が浮上して大捕物になる。
112
あなたにおすすめの小説
何もしない公爵夫人ですが、なぜか屋敷がうまく回っています
鷹 綾
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスの妻となったフィレ・バーナード。
けれど彼女は、屋敷を仕切ることも、改革を行うことも、声高に意見を述べることもしなかった。
指示を出さない。
判断を奪わない。
必要以上に関わらない。
「何もしない夫人」として、ただ静かにそこにいるだけ。
それなのに――
いつの間にか屋敷は落ち着き、
使用人たちは迷わなくなり、
人は出入りし、戻り、また進んでいくようになる。
誰かに依存しない。
誰かを支配しない。
それでも確かに“安心できる場所”は、彼女の周りに残っていた。
必要とされなくてもいい。
役に立たなくてもいい。
それでも、ここにいていい。
これは、
「何もしない」ことで壊れなかった関係と、
「奪わない」ことで続いていった日常を描く、
静かでやさしい結婚生活の物語。
完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。
『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』
『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』
公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。
もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。
屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは……
*表紙絵自作
【完結】私が誰だか、分かってますか?
美麗
恋愛
アスターテ皇国
時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった
出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。
皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。
そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。
以降の子は妾妃との娘のみであった。
表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。
ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。
残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。
また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。
そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか…
17話完結予定です。
完結まで書き終わっております。
よろしくお願いいたします。
【完結】【番外編追加】お迎えに来てくれた当日にいなくなったお姉様の代わりに嫁ぎます!
まりぃべる
恋愛
私、アリーシャ。
お姉様は、隣国の大国に輿入れ予定でした。
それは、二年前から決まり、準備を着々としてきた。
和平の象徴として、その意味を理解されていたと思っていたのに。
『私、レナードと生活するわ。あとはお願いね!』
そんな置き手紙だけを残して、姉は消えた。
そんな…!
☆★
書き終わってますので、随時更新していきます。全35話です。
国の名前など、有名な名前(単語)だったと後から気付いたのですが、素敵な響きですのでそのまま使います。現実世界とは全く関係ありません。いつも思いつきで名前を決めてしまいますので…。
読んでいただけたら嬉しいです。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…
まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。
お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。
なぜって?
お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。
どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。
でも…。
☆★
全16話です。
書き終わっておりますので、随時更新していきます。
読んで下さると嬉しいです。
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる