38 / 43
胃袋を掴みたい婚約者(クロード視点)③
しおりを挟む最近、ますますダニエル達の愚行が輪をかけていると聞く。
定期的に釘を刺しても、すぐに忘れて愚行を繰り返すのだから腹立たしい。それを問いただしても、言い訳にならない屁理屈をこねて正当化しようとしてはクロードに論破されるの繰り返し。
全力をもって使用人たちがベアトリーゼに被害が行かないようにしているが、それでもどうにもならないものがある。
成長に従いそういったことに興味が出るのは分かるが、ベアトリーゼの異母妹――正確には血も繋がらない義妹セシリアの男癖の悪さだ。
クロードが当初から危惧していた通り、碌に矯正されることがなかった。
甘やかすだけのダニエルと、もともとの素行に問題ありすぎなルビアナとタチアナ。
あんな非常識な連中に囲まれて育てばそうなるに決まっている。良心のある使用人は、セシリアに苦言を呈した。しかし、セシリアは大仰に泣いてダニエルに虐めだと密告し、使用人を首にするように仕向けた。
しかし所詮は暫定当主である。家宰は表面上はそれを受付、首にしたと言って書類上も解雇をし、同日付で再雇用をして一か月ほどの暇とマルベリー所有の別荘の掃除を申し付けて、ほとぼりが冷めたら元の場所に戻していた。
セシリアは使用人の顔など覚えていない。
半年もすれば戻ってきているが、髪型を少し変えさせてしまえば忘れるレベルである。
ベアトリーゼは「最近見ないわね……?」と訝しむのに、自分付きの侍女ですら忘れるのだから大したものである。
一度、クロードは何故ダニエルからマルベリーの全てを奪い取ろうとしなかったのか聞いたことがある。
家宰である壮年の男は、深い笑みを浮かべた。
「私と私の家族はポプキンズ辺境伯夫妻とエカチェリーナ様に命を救われたのです。
命だけでなく、人生も救われたのです。
ダニエル様達を追い出すのは簡単ですが、私はその位置に行きたいわけではありません。
お嬢様は女伯爵か夫人にはいつか必ずなるのですから、なるべく恙なく穏便に事を済ませたいのですよ」
そしてタマヒュンな物でも思い出したように、そっと視線を逸らした。
ポプキンズ辺境伯は結構やんちゃな時代があったのだろう。
「あとお嬢様が恋に目覚めてしまった以上、何か下手を打てば汚い花火にされるのは私です」
長くマルベリーに仕えていると、色々とマルベリーの血筋特有の暴走を目にしているようだ。
保身と忠誠の為に職務に忠実だった。
その時、屋敷の方から見慣れた亜麻色がやってくるのが見えた。
頬を薔薇色に染めて顔からはち切れんばかりに喜びが漏れ出ているのはベアトリーゼだ。
「クロード様、いらっしゃいませ! お会いできて嬉しゅうございますわ!」
「私も会えて嬉しいですよ」
クロードの月並な挨拶や社交辞令にも、にっこおおおと笑みがさらに輝くベアトリーゼ。
123
あなたにおすすめの小説
何もしない公爵夫人ですが、なぜか屋敷がうまく回っています
鷹 綾
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスの妻となったフィレ・バーナード。
けれど彼女は、屋敷を仕切ることも、改革を行うことも、声高に意見を述べることもしなかった。
指示を出さない。
判断を奪わない。
必要以上に関わらない。
「何もしない夫人」として、ただ静かにそこにいるだけ。
それなのに――
いつの間にか屋敷は落ち着き、
使用人たちは迷わなくなり、
人は出入りし、戻り、また進んでいくようになる。
誰かに依存しない。
誰かを支配しない。
それでも確かに“安心できる場所”は、彼女の周りに残っていた。
必要とされなくてもいい。
役に立たなくてもいい。
それでも、ここにいていい。
これは、
「何もしない」ことで壊れなかった関係と、
「奪わない」ことで続いていった日常を描く、
静かでやさしい結婚生活の物語。
完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。
『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』
『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』
公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。
もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。
屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは……
*表紙絵自作
【完結】私が誰だか、分かってますか?
美麗
恋愛
アスターテ皇国
時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった
出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。
皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。
そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。
以降の子は妾妃との娘のみであった。
表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。
ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。
残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。
また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。
そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか…
17話完結予定です。
完結まで書き終わっております。
よろしくお願いいたします。
【完結】【番外編追加】お迎えに来てくれた当日にいなくなったお姉様の代わりに嫁ぎます!
まりぃべる
恋愛
私、アリーシャ。
お姉様は、隣国の大国に輿入れ予定でした。
それは、二年前から決まり、準備を着々としてきた。
和平の象徴として、その意味を理解されていたと思っていたのに。
『私、レナードと生活するわ。あとはお願いね!』
そんな置き手紙だけを残して、姉は消えた。
そんな…!
☆★
書き終わってますので、随時更新していきます。全35話です。
国の名前など、有名な名前(単語)だったと後から気付いたのですが、素敵な響きですのでそのまま使います。現実世界とは全く関係ありません。いつも思いつきで名前を決めてしまいますので…。
読んでいただけたら嬉しいです。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…
まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。
お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。
なぜって?
お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。
どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。
でも…。
☆★
全16話です。
書き終わっておりますので、随時更新していきます。
読んで下さると嬉しいです。
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる