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マーシャル沖海戦
第24話 戦技変更
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夜を徹しての修理によって九九艦爆は四三機から五六機に、九七艦攻のほうは七〇機から八五機にそれぞれ稼働機を増大させていた。
一方、九九艦爆や九七艦攻の修理を優先させたことで、零戦の稼働機は一〇七機のままとなっている。
それと、一晩のインターバルを得たことで、搭乗員たちも相応に疲労を回復している。
そして、夜明けと同時に第三次攻撃隊が出撃した。
その第三次攻撃隊は「瑞鶴」から零戦九機に九九艦爆一七機、「雲鶴」から零戦九機に九九艦爆二〇機、「神鶴」から零戦九機に九九艦爆一九機の合わせて八三機からなる。
指揮については、第一次攻撃隊と同様に高橋少佐がこれを執る。
その高橋少佐は昨日、母艦である「翔鶴」が被弾したことで「雲鶴」に着艦することを余儀なくされた。
そのことで、高橋少佐を含む「翔鶴」艦爆隊の搭乗員らは、それぞれが胸に復讐心を抱いていた。
(わずか一晩の間に、ずいぶんと間合いを詰めたものだ)
進撃の途上、高橋少佐は眼下に第一艦隊の艦影を認めた。
自分たちが西から東へと追い越す形になっていること、それに米空母をすべて沈めたことで誤射の心配は無いはずだった。
それでも、第一艦隊の至近を航過する際にはバンクを実施した。
将兵が殺気立っている戦場では何が起こるか分からない。
まさかの味方撃ちで最期を迎えるようなことがあっては、それこそ死んでも死にきれない。
第一艦隊をパスしてほどなく、避退を図る敵水上打撃部隊の姿が見えてきた。
高橋少佐は早速とばかりに、遠めからその陣形を確認する。
接触機からの報告通り、敵水上打撃部隊は三つの単縦陣で構成されていた。
中央列に五隻の戦艦。
左翼には七隻の駆逐艦とその後方に二隻の巡洋艦。
右翼には八隻の駆逐艦とその後方に同じく二隻の巡洋艦。
さらに、その向こうにも一群の艦影が見える。
こちらは被爆した機動部隊の残存艦艇と、それに被雷した二隻の戦艦だろう。
第一次攻撃隊の九九艦爆の目標は敵水上打撃部隊の駆逐艦だ。
戦艦や巡洋艦といった大物については、こちらは第二次攻撃隊の九七艦攻にその始末を委ねることになっている。
これについては、高橋少佐をはじめとした搭乗員らも納得していた。
九九艦爆が投じる二五番では、戦艦相手には少しばかり威力不足だ。
戦艦にしかるべき打撃を与えるのであれば、やはり九七艦攻が運用する航空魚雷かもしくは八〇番が必要になってくる。
逆に、駆逐艦のように小回りが効く相手であれば、雷撃よりも急降下爆撃のほうが命中が期待できる。
一方、巡洋艦であれば二五番でも効果はあるが、しかし九九艦爆の数が激減している以上、こちらの攻撃に回せる戦力の余裕は無かった。
「『瑞鶴』隊は左翼、『神鶴』隊は右翼の駆逐艦を攻撃せよ。戦力の割り振りについては、各隊指揮官にこれを一任する。『雲鶴』隊については追って指示する」
高橋少佐の命令一下、「瑞鶴」隊と「神鶴」隊が左右に分かれつつ爆撃隊形をつくりあげていく。
「瑞鶴」隊は五つ、「神鶴」隊のほうは六つのグループに分かれ、全機が同時に降下に移行する。
本来、帝国海軍の急降下爆撃の戦技については、一機ごとに降下を行うこととされていた。
これによって、後を行く機体は前を行く機体の着弾状況の確認ができる。
そして、そのことによって風の向きや強さといったパラメーターを得ることが可能となる。
しかし、昨日の戦いではその弱点を突かれた。
どの機体も同じコースをたどって投弾するものだから、対空射撃を行う者たちからみれば、後続の機体の未来位置を読み取ることが容易だった。
そのことで被弾する機体が続出し、それが一因で稼働機が激減してしまった。
それと、急降下爆撃はその名前から高速で一気に降下して爆弾を叩きつけるイメージがある。
しかし、実際は違う。
低空で機体を引き起こさないといけないから、目いっぱいダイブブレーキをかけて速度を抑えて降下するのだ。
「急」なのは降下角度だけで、実際のところは急角度低速降下爆撃だった。
そのうえ敵艦上空数百メートルまで肉薄するものだから、敵の射撃にさらされる時間も長く、被弾する確率が極めて高かった。
急降下爆撃はある意味で、自身の命を担保に高い命中率を期待する、相手と刺し違える戦技でもあった。
そして、九九艦爆の被害状況を知った生沢長官は艦爆搭乗員に対し、小隊ごとに投弾するよう命令する。
さらに、「私は命中率よりも、貴官らの生還率の向上を望む」と言い放って搭乗員らを唖然とさせた。
命知らずの勇猛果敢こそを美徳とする帝国海軍では、まず有り得ない命令だ。
実際、大陸の戦闘では搭乗員を使い潰す指揮官が積極果敢と評価され、逆に搭乗員を無駄死にさせまいとして上からの無茶な命令をはねつけていた指揮官が消極的だとして出世コースから外されている。
ただ、艦爆搭乗員の中で生沢長官を怯将だと罵るような者はいなかった。
彼らは、その誰もが米艦が吐き出す槍衾のごとき対空砲火の洗礼を浴びていたからだ。
だから、一機ごとに投弾する戦技をあっさりと捨てた生沢長官に対しては、戦の実態を即座に理解してくれる上官として評価していた。
理解の有る上司を持った部下たちは、その期待に応えるべく再び死地へと飛び込んでいく。
一方、狙われた米駆逐艦のほうは、日本側の急ともいえる戦技の変化に対応できない。
個艦がバラバラに両用砲弾や機関砲弾、それに機銃弾を撃ち上げるだけだ。
投弾から数瞬後、米駆逐艦の周囲に多数の水柱が立ち上るのと同時に爆煙がわき立つ。
高橋少佐が見たところ、「瑞鶴」それに、「神鶴」隊ともにそれぞれ五発の命中弾を得たようだった。
三割に届かない命中率は、訓練時の成績を思えば不満だ。
しかし、一方で撃墜された九九艦爆も数えるほどでしかなかった。
同時攻撃が奏効したのだろう。
「第一小隊と第二小隊、それに第三小隊は右翼、第四小隊と第五小隊、それに第六小隊は左翼の駆逐艦を攻撃せよ」
直率する「雲鶴」艦爆隊に対し、高橋少佐が叫ぶようにして命令する。
五隻に減った無傷の米駆逐艦に対して「雲鶴」隊の二〇機の九九艦爆が二手に分かれ急迫する。
それらの攻撃が終わった時、無傷を保っている米駆逐艦は一隻も無かった。
一方、九九艦爆や九七艦攻の修理を優先させたことで、零戦の稼働機は一〇七機のままとなっている。
それと、一晩のインターバルを得たことで、搭乗員たちも相応に疲労を回復している。
そして、夜明けと同時に第三次攻撃隊が出撃した。
その第三次攻撃隊は「瑞鶴」から零戦九機に九九艦爆一七機、「雲鶴」から零戦九機に九九艦爆二〇機、「神鶴」から零戦九機に九九艦爆一九機の合わせて八三機からなる。
指揮については、第一次攻撃隊と同様に高橋少佐がこれを執る。
その高橋少佐は昨日、母艦である「翔鶴」が被弾したことで「雲鶴」に着艦することを余儀なくされた。
そのことで、高橋少佐を含む「翔鶴」艦爆隊の搭乗員らは、それぞれが胸に復讐心を抱いていた。
(わずか一晩の間に、ずいぶんと間合いを詰めたものだ)
進撃の途上、高橋少佐は眼下に第一艦隊の艦影を認めた。
自分たちが西から東へと追い越す形になっていること、それに米空母をすべて沈めたことで誤射の心配は無いはずだった。
それでも、第一艦隊の至近を航過する際にはバンクを実施した。
将兵が殺気立っている戦場では何が起こるか分からない。
まさかの味方撃ちで最期を迎えるようなことがあっては、それこそ死んでも死にきれない。
第一艦隊をパスしてほどなく、避退を図る敵水上打撃部隊の姿が見えてきた。
高橋少佐は早速とばかりに、遠めからその陣形を確認する。
接触機からの報告通り、敵水上打撃部隊は三つの単縦陣で構成されていた。
中央列に五隻の戦艦。
左翼には七隻の駆逐艦とその後方に二隻の巡洋艦。
右翼には八隻の駆逐艦とその後方に同じく二隻の巡洋艦。
さらに、その向こうにも一群の艦影が見える。
こちらは被爆した機動部隊の残存艦艇と、それに被雷した二隻の戦艦だろう。
第一次攻撃隊の九九艦爆の目標は敵水上打撃部隊の駆逐艦だ。
戦艦や巡洋艦といった大物については、こちらは第二次攻撃隊の九七艦攻にその始末を委ねることになっている。
これについては、高橋少佐をはじめとした搭乗員らも納得していた。
九九艦爆が投じる二五番では、戦艦相手には少しばかり威力不足だ。
戦艦にしかるべき打撃を与えるのであれば、やはり九七艦攻が運用する航空魚雷かもしくは八〇番が必要になってくる。
逆に、駆逐艦のように小回りが効く相手であれば、雷撃よりも急降下爆撃のほうが命中が期待できる。
一方、巡洋艦であれば二五番でも効果はあるが、しかし九九艦爆の数が激減している以上、こちらの攻撃に回せる戦力の余裕は無かった。
「『瑞鶴』隊は左翼、『神鶴』隊は右翼の駆逐艦を攻撃せよ。戦力の割り振りについては、各隊指揮官にこれを一任する。『雲鶴』隊については追って指示する」
高橋少佐の命令一下、「瑞鶴」隊と「神鶴」隊が左右に分かれつつ爆撃隊形をつくりあげていく。
「瑞鶴」隊は五つ、「神鶴」隊のほうは六つのグループに分かれ、全機が同時に降下に移行する。
本来、帝国海軍の急降下爆撃の戦技については、一機ごとに降下を行うこととされていた。
これによって、後を行く機体は前を行く機体の着弾状況の確認ができる。
そして、そのことによって風の向きや強さといったパラメーターを得ることが可能となる。
しかし、昨日の戦いではその弱点を突かれた。
どの機体も同じコースをたどって投弾するものだから、対空射撃を行う者たちからみれば、後続の機体の未来位置を読み取ることが容易だった。
そのことで被弾する機体が続出し、それが一因で稼働機が激減してしまった。
それと、急降下爆撃はその名前から高速で一気に降下して爆弾を叩きつけるイメージがある。
しかし、実際は違う。
低空で機体を引き起こさないといけないから、目いっぱいダイブブレーキをかけて速度を抑えて降下するのだ。
「急」なのは降下角度だけで、実際のところは急角度低速降下爆撃だった。
そのうえ敵艦上空数百メートルまで肉薄するものだから、敵の射撃にさらされる時間も長く、被弾する確率が極めて高かった。
急降下爆撃はある意味で、自身の命を担保に高い命中率を期待する、相手と刺し違える戦技でもあった。
そして、九九艦爆の被害状況を知った生沢長官は艦爆搭乗員に対し、小隊ごとに投弾するよう命令する。
さらに、「私は命中率よりも、貴官らの生還率の向上を望む」と言い放って搭乗員らを唖然とさせた。
命知らずの勇猛果敢こそを美徳とする帝国海軍では、まず有り得ない命令だ。
実際、大陸の戦闘では搭乗員を使い潰す指揮官が積極果敢と評価され、逆に搭乗員を無駄死にさせまいとして上からの無茶な命令をはねつけていた指揮官が消極的だとして出世コースから外されている。
ただ、艦爆搭乗員の中で生沢長官を怯将だと罵るような者はいなかった。
彼らは、その誰もが米艦が吐き出す槍衾のごとき対空砲火の洗礼を浴びていたからだ。
だから、一機ごとに投弾する戦技をあっさりと捨てた生沢長官に対しては、戦の実態を即座に理解してくれる上官として評価していた。
理解の有る上司を持った部下たちは、その期待に応えるべく再び死地へと飛び込んでいく。
一方、狙われた米駆逐艦のほうは、日本側の急ともいえる戦技の変化に対応できない。
個艦がバラバラに両用砲弾や機関砲弾、それに機銃弾を撃ち上げるだけだ。
投弾から数瞬後、米駆逐艦の周囲に多数の水柱が立ち上るのと同時に爆煙がわき立つ。
高橋少佐が見たところ、「瑞鶴」それに、「神鶴」隊ともにそれぞれ五発の命中弾を得たようだった。
三割に届かない命中率は、訓練時の成績を思えば不満だ。
しかし、一方で撃墜された九九艦爆も数えるほどでしかなかった。
同時攻撃が奏効したのだろう。
「第一小隊と第二小隊、それに第三小隊は右翼、第四小隊と第五小隊、それに第六小隊は左翼の駆逐艦を攻撃せよ」
直率する「雲鶴」艦爆隊に対し、高橋少佐が叫ぶようにして命令する。
五隻に減った無傷の米駆逐艦に対して「雲鶴」隊の二〇機の九九艦爆が二手に分かれ急迫する。
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