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マーシャル沖海戦
第25話 航空雷撃
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夜を徹しての修理の結果、「瑞鶴」は二七機、「雲鶴」は三〇機、「神鶴」のほうは二八機にまで九七艦攻の稼働機を持ち直していた。
これら機体には「翔鶴」隊の九七艦攻もまたその数に含まれている。
このうち、「雲鶴」の三機と、さらに「神鶴」の一機については接触維持の任に当たることとされた。
残りの機体については、各空母ともに九機で一個中隊とし、それを三個編成することとされた。
この措置は、生沢長官の命令によるものだった。
彼はこれまでの情報から、三隻の戦艦を戦列から失ってなお敵水上打撃部隊には五隻の戦艦と四隻の巡洋艦が残っていることを承知していた。
そこで、それら戦艦や巡洋艦をすべて撃破するため、九つの中隊を編成して第四次攻撃隊としてこれらにぶつけることにしたのだ。
その第四次攻撃隊は「瑞鶴」から零戦八機に九七艦攻二七機、「雲鶴」から零戦一〇機に九七艦攻二七機、「神鶴」から零戦八機に九七艦攻二七機の合わせて一〇七機から成った。
攻撃隊の指揮は第二次攻撃隊に引き続き、嶋崎少佐がこれを執る。
また、これら以外に三隻の空母には艦隊防空としてそれぞれ一八機の零戦が用意されていた。
第四次攻撃隊が戦場に到着したとき、米水上打撃部隊はいまだ混乱から立ち直っていなかった。
三つあった単縦陣のうちの二つまでが完全に崩壊し、整然とした隊列を維持できているのは五隻の戦艦のみだった。
眼下の状況を把握した嶋崎少佐は早速とばかりに命令を下す。
「『瑞鶴』二中隊ならびに三中隊は左翼、『雲鶴』三中隊ならびに『神鶴』三中隊は右翼の巡洋艦を攻撃せよ。
他の隊は戦艦を攻撃する。『瑞鶴』一中隊、敵一番艦。『雲鶴』一中隊、二番艦、『雲鶴』二中隊、三番艦。『神鶴』一中隊、四番艦。『神鶴』二中隊は五番艦をその目標とする。なお、各隊ともに攻撃は左舷からとする」
嶋崎少佐の命令一下、八一機の九七艦攻が中隊ごとに散開、それぞれの目標に向けて降下を開始する。
嶋崎少佐もまた直率する「瑞鶴」第一中隊を率い、敵一番艦の斜め前方へと部下たちを誘う。
「後続、ついてきているか」
嶋崎少佐が後席の遠藤二飛曹に怒鳴るようにして尋ねる。
「瑞鶴」第一中隊は昨日の戦いで一機を失い、さらに三機が再使用ができないほどのダメージを被った。
そして現在、その四機の穴は第四中隊それに「翔鶴」所属の機体で埋めている。
「全機、追躡しています。編隊に乱れは有りません」
遠藤二飛曹の返事に、嶋崎少佐は短く了解と返す。
全体の半数近い機体が新参の混成部隊にもかかわらず、「瑞鶴」第一中隊は一つの戦闘単位としてまとまりを見せている。
つまりは、どの機体も手練れが駆っているということだ。
そのことに安堵と満足を覚え、嶋崎少佐はさらに高度を下げる。
昨日、「瑞鶴」艦攻隊は一隻の戦艦を撃沈、さらに二隻を撃破する大戦果を挙げた。
しかし、そのときの戦いで嶋崎少佐が直率する「瑞鶴」第一中隊は三名の搭乗員がついに還ってこず、さらに一人が機上戦死した。
同中隊はたった一度の戦いで一五パーセントもの人員を失ったのだ。
他の二つの中隊もまた被害は似たようなものだった。
さすがに、これ以上の損害は嶋崎少佐としても看過できない。
だからこそ被弾を少しでも抑えるべく、即席混成部隊にもかかわらず超低空飛行を実施すると決めたのだ。
敵一番艦から吐き出される火弾や火箭は激しかった。
敵も九七艦攻が戦艦を葬ることができる力を備えていることを昨日の戦いで理解したのだろう。
ただ、至近弾こそあれ、命中弾はこれを得ることができていない。
おそらく、艦が回避運動していることで、微妙に照準が狂わされているのだろう。
左へ左へと回頭を図る敵一番艦に対し、嶋崎少佐は機体をわずかに右に旋回させ、さらにそのすぐ後に今度は機首を左へと向ける。
ようやくのことで投雷ポイントに到達すると同時、嶋崎少佐は後方で爆発を覚知する。
顔見知りの部下か、あるいは第四中隊や「翔鶴」隊といった臨時編入組の誰かがやられたのだ。
さすがにここまで接近すれば、被弾する機体が生じてもおかしくはない。
「撃てっ!」
部下の仇討ちとばかりに裂帛の気合を込め、嶋崎少佐は腹に抱えてきた九一式航空魚雷を切り離す。
七機に減った部下たちの機体もそれに続く。
海面ぎりぎりを飛翔し、追撃の火線を振り切ったところで嶋崎少佐は上昇に転じる。
「敵一番艦に水柱、さらに一本!」
歓喜交じりの遠藤二飛曹の報告に、嶋崎少佐はさらなる命中を期待するが、それは無かった。
「瑞鶴」第一中隊は敵一番艦に対して二本の命中を得たのだ。
二五パーセントの命中率というのは、これが実戦であることを考えればそれほど悪い成績ではないのだろう。
しかし、嶋崎少佐としては少しばかり物足りないものを感じずにはいられなかった。
そのようなことを考えている間に、他隊から戦果報告が上げられてくる。
「『雲鶴』一中隊、敵二番艦に魚雷二本命中! 速度著しく低下!」
「『雲鶴』二中隊、敵三番艦に魚雷二本命中! 傾斜増大中!」
「『神鶴』一中隊、敵四番艦に魚雷二本命中! 目標に火災発生!」
「『神鶴』二中隊、敵五番艦に魚雷三本命中! 敵は大傾斜!」
どの中隊も「瑞鶴」第一中隊と同等か、あるいはそれ以上の打撃を敵戦艦に与えたようだった。
さらに、わずかに遅れて巡洋艦を攻撃した「瑞鶴」第二中隊と第三中隊、それに「雲鶴」第三中隊と「神鶴」第三中隊からも報告がもたらされる。
こちらは「雲鶴」第三中隊が二本の命中を得た以外はすべて一本にとどまっていた。
二〇ノットそこそこしか出せない旧式戦艦と違い、三〇ノットを超える速力発揮が可能な巡洋艦が相手であれば、命中率が低下するのはやむを得ないことだと言えた。
それでも、戦艦に比べて防御が貧弱な巡洋艦であれば、たとえ命中魚雷が一本であったとして相当なダメージとなったはずだ。
少なくとも速度性能を大幅に減殺されたことは間違いない。
「あとは、第一艦隊がどう動くかだな」
昨日から続く激戦によって搭乗員たちの疲労はピークに達している。
おそらく整備員や兵器員たちもまた同様だろう。
無理をすれば、あと一度の航空攻撃を実施することは可能だが、しかし生沢長官の性格からしてそれは考えにくい。
そうなれば、こちらに残された手札は第一艦隊の水上打撃艦艇のみとなる。
小さくつぶやいた後、嶋崎少佐は帰投命令を出す。
その頃には、第一艦隊と太平洋艦隊の距離は、文字通り指呼の間にまで迫っていた。
これら機体には「翔鶴」隊の九七艦攻もまたその数に含まれている。
このうち、「雲鶴」の三機と、さらに「神鶴」の一機については接触維持の任に当たることとされた。
残りの機体については、各空母ともに九機で一個中隊とし、それを三個編成することとされた。
この措置は、生沢長官の命令によるものだった。
彼はこれまでの情報から、三隻の戦艦を戦列から失ってなお敵水上打撃部隊には五隻の戦艦と四隻の巡洋艦が残っていることを承知していた。
そこで、それら戦艦や巡洋艦をすべて撃破するため、九つの中隊を編成して第四次攻撃隊としてこれらにぶつけることにしたのだ。
その第四次攻撃隊は「瑞鶴」から零戦八機に九七艦攻二七機、「雲鶴」から零戦一〇機に九七艦攻二七機、「神鶴」から零戦八機に九七艦攻二七機の合わせて一〇七機から成った。
攻撃隊の指揮は第二次攻撃隊に引き続き、嶋崎少佐がこれを執る。
また、これら以外に三隻の空母には艦隊防空としてそれぞれ一八機の零戦が用意されていた。
第四次攻撃隊が戦場に到着したとき、米水上打撃部隊はいまだ混乱から立ち直っていなかった。
三つあった単縦陣のうちの二つまでが完全に崩壊し、整然とした隊列を維持できているのは五隻の戦艦のみだった。
眼下の状況を把握した嶋崎少佐は早速とばかりに命令を下す。
「『瑞鶴』二中隊ならびに三中隊は左翼、『雲鶴』三中隊ならびに『神鶴』三中隊は右翼の巡洋艦を攻撃せよ。
他の隊は戦艦を攻撃する。『瑞鶴』一中隊、敵一番艦。『雲鶴』一中隊、二番艦、『雲鶴』二中隊、三番艦。『神鶴』一中隊、四番艦。『神鶴』二中隊は五番艦をその目標とする。なお、各隊ともに攻撃は左舷からとする」
嶋崎少佐の命令一下、八一機の九七艦攻が中隊ごとに散開、それぞれの目標に向けて降下を開始する。
嶋崎少佐もまた直率する「瑞鶴」第一中隊を率い、敵一番艦の斜め前方へと部下たちを誘う。
「後続、ついてきているか」
嶋崎少佐が後席の遠藤二飛曹に怒鳴るようにして尋ねる。
「瑞鶴」第一中隊は昨日の戦いで一機を失い、さらに三機が再使用ができないほどのダメージを被った。
そして現在、その四機の穴は第四中隊それに「翔鶴」所属の機体で埋めている。
「全機、追躡しています。編隊に乱れは有りません」
遠藤二飛曹の返事に、嶋崎少佐は短く了解と返す。
全体の半数近い機体が新参の混成部隊にもかかわらず、「瑞鶴」第一中隊は一つの戦闘単位としてまとまりを見せている。
つまりは、どの機体も手練れが駆っているということだ。
そのことに安堵と満足を覚え、嶋崎少佐はさらに高度を下げる。
昨日、「瑞鶴」艦攻隊は一隻の戦艦を撃沈、さらに二隻を撃破する大戦果を挙げた。
しかし、そのときの戦いで嶋崎少佐が直率する「瑞鶴」第一中隊は三名の搭乗員がついに還ってこず、さらに一人が機上戦死した。
同中隊はたった一度の戦いで一五パーセントもの人員を失ったのだ。
他の二つの中隊もまた被害は似たようなものだった。
さすがに、これ以上の損害は嶋崎少佐としても看過できない。
だからこそ被弾を少しでも抑えるべく、即席混成部隊にもかかわらず超低空飛行を実施すると決めたのだ。
敵一番艦から吐き出される火弾や火箭は激しかった。
敵も九七艦攻が戦艦を葬ることができる力を備えていることを昨日の戦いで理解したのだろう。
ただ、至近弾こそあれ、命中弾はこれを得ることができていない。
おそらく、艦が回避運動していることで、微妙に照準が狂わされているのだろう。
左へ左へと回頭を図る敵一番艦に対し、嶋崎少佐は機体をわずかに右に旋回させ、さらにそのすぐ後に今度は機首を左へと向ける。
ようやくのことで投雷ポイントに到達すると同時、嶋崎少佐は後方で爆発を覚知する。
顔見知りの部下か、あるいは第四中隊や「翔鶴」隊といった臨時編入組の誰かがやられたのだ。
さすがにここまで接近すれば、被弾する機体が生じてもおかしくはない。
「撃てっ!」
部下の仇討ちとばかりに裂帛の気合を込め、嶋崎少佐は腹に抱えてきた九一式航空魚雷を切り離す。
七機に減った部下たちの機体もそれに続く。
海面ぎりぎりを飛翔し、追撃の火線を振り切ったところで嶋崎少佐は上昇に転じる。
「敵一番艦に水柱、さらに一本!」
歓喜交じりの遠藤二飛曹の報告に、嶋崎少佐はさらなる命中を期待するが、それは無かった。
「瑞鶴」第一中隊は敵一番艦に対して二本の命中を得たのだ。
二五パーセントの命中率というのは、これが実戦であることを考えればそれほど悪い成績ではないのだろう。
しかし、嶋崎少佐としては少しばかり物足りないものを感じずにはいられなかった。
そのようなことを考えている間に、他隊から戦果報告が上げられてくる。
「『雲鶴』一中隊、敵二番艦に魚雷二本命中! 速度著しく低下!」
「『雲鶴』二中隊、敵三番艦に魚雷二本命中! 傾斜増大中!」
「『神鶴』一中隊、敵四番艦に魚雷二本命中! 目標に火災発生!」
「『神鶴』二中隊、敵五番艦に魚雷三本命中! 敵は大傾斜!」
どの中隊も「瑞鶴」第一中隊と同等か、あるいはそれ以上の打撃を敵戦艦に与えたようだった。
さらに、わずかに遅れて巡洋艦を攻撃した「瑞鶴」第二中隊と第三中隊、それに「雲鶴」第三中隊と「神鶴」第三中隊からも報告がもたらされる。
こちらは「雲鶴」第三中隊が二本の命中を得た以外はすべて一本にとどまっていた。
二〇ノットそこそこしか出せない旧式戦艦と違い、三〇ノットを超える速力発揮が可能な巡洋艦が相手であれば、命中率が低下するのはやむを得ないことだと言えた。
それでも、戦艦に比べて防御が貧弱な巡洋艦であれば、たとえ命中魚雷が一本であったとして相当なダメージとなったはずだ。
少なくとも速度性能を大幅に減殺されたことは間違いない。
「あとは、第一艦隊がどう動くかだな」
昨日から続く激戦によって搭乗員たちの疲労はピークに達している。
おそらく整備員や兵器員たちもまた同様だろう。
無理をすれば、あと一度の航空攻撃を実施することは可能だが、しかし生沢長官の性格からしてそれは考えにくい。
そうなれば、こちらに残された手札は第一艦隊の水上打撃艦艇のみとなる。
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