征空決戦艦隊 ~多載空母打撃群 出撃!~

蒼 飛雲

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インド洋作戦

第39話 二航戦艦攻隊

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 第二航空戦隊の「蒼龍」と「飛龍」から発進した第二次攻撃隊は、第一次攻撃隊と同様に敵戦闘機の迎撃を受けた。
 一〇機ほどの鼻先の尖った液冷戦闘機が急速に距離を詰めてくる。
 これらは、第一次攻撃隊に随伴していた零戦との戦いで生き残ったシーハリケーンだった。

 それを見た飯田房太大尉率いる「蒼龍」戦闘機隊が本隊への接近を阻むべく、シーハリケーンに向けて加速を開始する。
 しかし、手勢がわずかに六機だけでは、すべての敵機を抑え込むには無理があった。

 「蒼龍」戦闘機隊の挑戦をスルーした四機のシーハリケーンがなおも肉薄してくる。
 それを見た能野澄夫大尉の「飛龍」戦闘機隊が、最終防衛線の役割を果たすべくそれらシーハリケーンに立ちはだかる。
 こちらは、相手よりも五割優勢だったことで、完璧にこれらを拘束することに成功した

 第二次攻撃隊の指揮を執る「飛龍」飛行隊長の楠美正少佐は胸中で戦闘機隊に感謝を捧げつつ、そのまま前進を図る。
 新手の迎撃機が現れないかと心配したが、しかしそれは杞憂で済んだ。

 ほどなく、楠美少佐はその視界に二群から成る東洋艦隊の姿を捉える。
 一つは四隻の戦艦を主力とする水上打撃部隊。
 それと、もう一つは二隻の空母を中核とする機動部隊だ。
 水上打撃部隊にあったとされる空母の姿が無かったことから、こちらは第一次攻撃隊が始末したのだろう。

 そのことを確認した楠美少佐は機動部隊にその目を向ける。
 自分たちが目標とするのは、もちろんそこにある二隻の空母だ。
 その英機動部隊は合わせて一〇隻ほどの巡洋艦とそれに駆逐艦が、二隻の空母とそれに一隻の戦艦を取り囲んでいた。

 「『蒼龍』隊は右、『飛龍』隊は左の空母を目標とする。攻撃法については各隊指揮官にこれを委ねる」

 「蒼龍」艦攻隊についてはこれを阿部平次郎大尉に丸投げし、楠美少佐は直率する「飛龍」艦攻隊に対してさらに命令を重ねる。

 「攻撃は挟撃とする。第一中隊は敵空母の左舷、第二中隊は右舷から突撃せよ」

 第二次攻撃隊に参加している機体は「蒼龍」艦攻隊それに「飛龍」艦攻隊ともに九七艦攻がわずかに一〇機にしか過ぎない。
 数が少ないのは、半数近い九七艦攻を索敵に用いたからだ。
 それでも、一〇機あれば十分ではないものの、それでも挟撃は可能だ。

 楠美少佐の命令からほどなく、松村平太大尉率いる第二中隊が加速を開始、翼を大きく翻しつつ目標とした空母の右舷側に機体を遷移させていく。
 楠美少佐もまた高度を下げ、自分たちが突入すべき輪形陣の綻びを物色する。

 九七艦攻が接近するのに伴い、敵艦からの対空砲火はその密度を増す。
 だが、さかんに高角砲弾を撃ち上げてくるのは空母と戦艦を除けば、あとは二隻のおおぶりな巡洋艦だけだ。
 小型の巡洋艦とそれに駆逐艦のほうはそれほどでもない。

 (どうやら、同じ連合国陣営の駆逐艦でも米国と英国ではその装備がずいぶんと違うらしい)

 マーシャル沖海戦の際、二航艦攻撃隊は太平洋艦隊の対空砲火によって大きな損害を被った。
 その中でも、米駆逐艦は主砲に高角砲かあるいは両用砲を装備していたらしく、その対空火力には侮りがたいものがあったという。
 一方、英駆逐艦のそれは平射砲なのだろう。
 そうであるならば、二隻のおおぶりな巡洋艦の至近だけはこれを避けるようにして輪形陣の内側に進入を試みれば良い。

 そう判断した楠美少佐は駆逐艦と駆逐艦の間をすり抜ける。
 もちろん、それら駆逐艦に装備された機関砲や機銃が「飛龍」第一中隊に向けて放たれるが、しかし装備数が少ないせいか被弾する機体はあっても撃ち墜とされるものは皆無だった。

 「飛龍」第一中隊が左側に位置する空母に対して斜め前方から迫る。
 一方の空母のほうは高角砲や機関砲、それに機銃を総動員して「飛龍」第一中隊に猛射を浴びせる。
 さらに艦首をこちらに向けてくる。
 相手に対して正対することで、被雷面積の最小化を図っているのだろう。
 ただ、その回避運動によって「飛龍」第一中隊に指向できる対空火器は徐々に減っていく。
 そのうえ、艦が転舵することで狙いが定まらないのだろう。
 いまのところ「飛龍」第一中隊の中で撃墜されたものはただの一機も無い。

 楠美少佐は相手の機動を無効化すべく機首をわずかに右に振り、さらに今度は左側に向け直す。
 それでも理想の射点には程遠い。
 しかし、やり直しをしている余裕は無い。

 「撃てっ!」

 全身から漲る気迫を込めて魚雷を投下。
 重量物を切り離したことで浮かび上がろうとする機体を抑え込みつつ、敵空母の艦首を躱して離脱にかかる。
 四機の部下もまた思い思いに敵空母の艦首や艦尾をすり抜けていく。
 だが、ここまで近づけば相手の射撃も正確になる。
 第二小隊二番機が機関砲弾かあるいは機銃弾をまともに浴びて爆散する。

 部下の死を悼みつつ楠美少佐は輪形陣を突破、対空砲火の追撃が無くなったところで高度を上げにかかる。
 ほどなく、後席の近藤正次郎中尉より歓喜混じりの報告が上げられる。

 「目標とした空母の右舷に水柱! さらに一本!」

 左舷に水柱が立ち上らなかったということは、「飛龍」第一中隊の雷撃は空振りに終わったということだ。
 しかし、右舷から迫った松村大尉率いる第二中隊は二本の魚雷を命中させた。

 敵空母は「飛龍」第一中隊に向けて艦首を振ってきたが、しかしそれは「飛龍」第二中隊から見れば、自ら横腹をさらす機動に映ったはずだ。
 そして、「飛龍」第二中隊はその好機を見逃すことなく投雷、敵空母に二本の魚雷を突き込んだ。

 一方、被雷した空母のほうは速力を一気に衰えさせた。
 高速で走り回ったままでは、それこそ浸水が一気に進んでしまうからだろう。

 (撃沈には至らんな)

 おそらく、これが旧式小型の「ハーミーズ」であれば致命傷となったはずだ。
 しかし、最新鋭の装甲空母であれば、わずかに二本の魚雷だけであっさり沈むとはとても思えない。
 そう考えている楠美少佐のもとに「蒼龍」艦攻隊の阿部大尉から報告が上げられてくる。

 「『蒼龍』隊攻撃終了。敵空母に魚雷二本命中。速力低下すれども沈没の気配無し」

 「蒼龍」艦攻隊もまた「飛龍」艦攻隊と同等の結果を残したようだった。
 また、目標とした敵空母の被害状況も似たようなものだろう。
 これを受け、楠美少佐は電信員の福田正雄一飛曹に第二次攻撃隊が挙げた戦果を打電するよう命じる。
 それが完了した時点で、さらに先ほどから考えていた追加の電文を打電させた。

 「第三次攻撃ノ要アリト認ム」
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