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マリアナ決戦
第98話 日米機動部隊
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特に大きなトラブルも無かったことで、第一機動艦隊は時間通りに事前想定海域に到達した。
天候も問題が無かったことから、生沢長官は予定通りに索敵機を発進させる。
四隻の「大鳳」型空母と、それに同じく四隻の「翔鶴」型空母からそれぞれ四機、合わせて三二機の彩雲が二波に分かれて出撃する。
これら機体は北東から南東にかけて一六本の索敵線を形成していく。
オーソドックスな二段索敵だ。
これまで索敵に用いられてきた二式艦偵や九七艦攻とは違い、それら彩雲は英国製の機上電探を装備していた。
実のところ、帝国海軍でも三式空六号無線電信機という航空機搭載用の電探を持ち合わせていた。
しかし、信頼性や操作性といった基本性能が英国製のそれに及ばなかったことから、一機艦の機材に関しては、これの採用が見送られている。
いずれにせよ、これまでの目視だけに頼る索敵とは段違いの捜索能力を持つ彩雲であれば、三二機もの機体を投入する必要はない。
そう訴える幕僚も少なからず存在した。
特に効率を重視する参謀にその傾向が強かった。
しかし、一方の生沢長官はその考えには与しなかった。
戦争には機械トラブルとそれにヒューマンエラーが付きものだ。
どんなに慎重を期していたとしても、間違いは起きてしまう。
だからこそ、冗長性といったものが必要となるのだが、しかし帝国海軍にはこれを無駄だと断じてしまう士官がことのほか多い。
あるいは、長年にわたって耐乏生活を強いられてきた貧乏海軍ゆえの性かもしれない。
ただ、いずれにせよ索敵機の数が多ければ、思わぬトラブルが発生したとしてもある程度は補いがつく。
仮に発動機不調などに陥った機体が生じたとして、しかし索敵線が濃密であれば取りこぼしの可能性はこれを大きく引き下げることができる。
考え方やあるいは方法論はどうであれ、それでも三二機もの彩雲を投入した甲斐はあった。
あっさりと太平洋艦隊を発見し、さらにそれが複数の彩雲によるものだったから距離や方位、それに敵の戦力構成がかなり正確に把握できた。
「すごい偶然ですね。太平洋艦隊は四個機動部隊に一個水上打撃部隊から成り、しかも空母の数は一八隻ときた。そのうえ、空母を守る護衛艦艇の数まで第一機動艦隊のそれとほとんど一緒です。ここまでくると、なんか薄気味悪いですね」
発見された太平洋艦隊は五隻の空母を擁するものが二群、それに四隻のものもまた同じく二群から成り、それらは二隻の巡洋艦とそれに一ダースほどの駆逐艦で守られている。
一方、一機艦のほうもまた、五隻の空母を擁するものが二群に四隻のものが同じく二群だから、空母の数とその編成についてはまったく同じだ。
護衛艦艇については、一機艦には戦艦が含まれているという違いはあるが、しかし数そのものはほぼ同じと見てよかった。
「こちらの想定の範囲内の数だったのだから、そんなに気味悪がる必要は無いだろう」
実際のところ、志津頼先任参謀は本当に気味悪がっているのではない。
わざとそういった態度を取ることによって、司令部内の緊張を解きほぐそうとしているのだ。
なにせ、皇国の興廃がこの一戦で決まるのだから、緊張しないほうがどうかしている。
だからこそ、志津頼先任参謀は自ら進んで無駄口を叩く道化を演じているのだ。
そして、そのことを理解している生沢長官は小さく笑いながら指示を出していく。
そのことで、旗艦「大鳳」艦橋に張り詰めていた空気が少しばかり和らぐ。
「発見された機動部隊は北から順に甲一、甲二、甲三、それに甲四と呼称する。水上打撃部隊については、これを乙一とする」
敵艦隊に対する呼称を幕僚らに周知させるために、少しばかり間を置く。
「ただちに第一次攻撃隊を出撃させる。それが終われば、第二次攻撃隊も速やかに出す」
第一次攻撃隊は「大鳳」型空母と「翔鶴」型空母からそれぞれ零戦が三六機とそれに彩雲が一機の合わせて二九六機から成る。
第一次攻撃隊の目的は、もはやお馴染みとなった戦闘機掃討、欧米で言うところのファイター・スイープだ。
そのことで、零戦はそのすべてが腹に増槽を抱えており、爆弾を装備しているものは一機も無い。
ただ、両翼下のハードポイントにはふだん目にしないものが装備されていた。
一方、彩雲のほうだが、こちらは半数の四機が前路警戒にあたり、残る半数は零戦と同道して航法支援ならびに空戦指揮にあたる。
第二次攻撃隊は「大鳳」型空母と「翔鶴」型空母、それに「飛龍」と「蒼龍」からそれぞれ零戦が一二機に天山が一八機、「赤城」と「加賀」からそれぞれ天山が一八機の合わせて三三六機から成る。
こちらの主力は天山であり、それらは対艦攻撃の任務を負っている。
その天山の腹には、こちらもまた爆弾とも魚雷ともつかない異形が搭載されていた。
「第二次攻撃隊の目標を指示する。一航艦は甲一、二航艦は甲二、三航艦は甲三、それに四航艦は甲四を攻撃せよ。乙一に対する攻撃については、これを当面見合わせることとする」
発見された敵艦隊は四個機動部隊とそれに一個水上打撃部隊の合わせて五個だったのに対し、一機艦の機動部隊はこれが四個しかない。
すべての敵艦隊に手が回らない以上、機動部隊を優先して叩くのは当然のことだと言えた。
「それから『加賀』に命令して接触機を出させろ。それと、護衛の巡洋艦に艦載機の出動準備をさせておけ」
生沢長官の命令からほどなく、「加賀」から五機の彗星が発進する。
これらは、発見された敵艦隊に張り付き、何か動きがあればそれを一機艦司令部に報告するのがその役目だ。
また、第一から第四までの各航空艦隊に二隻ずつ配備されている重巡には零式水偵が搭載されていた。
これらは普段は対潜哨戒に従事しているが、しかし艦隊決戦の際には友軍搭乗員の救助にあたることになっている。
海面に着水できる水偵だからこそ可能な任務だ。
もちろん、彼らの救助対象となるのは友軍艦隊至近で戦う直掩隊の搭乗員だけだ。
残念ながら敵中深くに斬り込んでいく攻撃隊の搭乗員については、これを救えない。
それでも、貴重な搭乗員を一人でも多く救えるのであれば、可能な限りの手を尽くす。
これは生沢長官の強い意志でもあった。
六隻の小型空母に搭載されている九七艦攻については、こちらは対潜哨戒にあたるものとされている。
これら機体は雷撃も可能だが、しかし生沢長官にその考えは無い。
一方、日本側が攻撃隊を発進させたことを知った第五艦隊司令長官のフレッチャー提督もまた、当初予定通り攻撃隊を出撃させた。
彼は、今回の戦いにおいては自分から先に攻撃隊を出すことはせず、日本側の出方を伺っていた。
日本側が攻撃隊を繰り出したら、自分たちもまた攻撃隊を出撃させる。
逆に、いつまで経っても攻撃隊を出さないようであれば、その時は相手が防御に全振りしているものと判断し、逆にこちらのF6Fヘルキャット戦闘機を攻撃に全力投入する方針だった。
つまりは、珊瑚海海戦で得た苦い戦訓を活かしたのだ。
そして、日本側は攻撃隊を出撃させた。
だから、フレッチャー提督もまたそれに応じた。
その第五艦隊が出撃させた攻撃隊は「エセックス」級空母からそれぞれF6Fが二四機にSB2Cヘルダイバー急降下爆撃機が一八機、それにTBFアベンジャー雷撃機が同じく一八機。
「インデペンデンス」級空母からそれぞれF6Fが一二機にTBFが九機の合わせて七二九機という、まさに未曾有の一大攻撃隊だった。
このことで、マリアナ沖で日米機動部隊の艦上機同士による殴り合いが決定付けられる。
両者ともに、一歩も引く気は無かった。
天候も問題が無かったことから、生沢長官は予定通りに索敵機を発進させる。
四隻の「大鳳」型空母と、それに同じく四隻の「翔鶴」型空母からそれぞれ四機、合わせて三二機の彩雲が二波に分かれて出撃する。
これら機体は北東から南東にかけて一六本の索敵線を形成していく。
オーソドックスな二段索敵だ。
これまで索敵に用いられてきた二式艦偵や九七艦攻とは違い、それら彩雲は英国製の機上電探を装備していた。
実のところ、帝国海軍でも三式空六号無線電信機という航空機搭載用の電探を持ち合わせていた。
しかし、信頼性や操作性といった基本性能が英国製のそれに及ばなかったことから、一機艦の機材に関しては、これの採用が見送られている。
いずれにせよ、これまでの目視だけに頼る索敵とは段違いの捜索能力を持つ彩雲であれば、三二機もの機体を投入する必要はない。
そう訴える幕僚も少なからず存在した。
特に効率を重視する参謀にその傾向が強かった。
しかし、一方の生沢長官はその考えには与しなかった。
戦争には機械トラブルとそれにヒューマンエラーが付きものだ。
どんなに慎重を期していたとしても、間違いは起きてしまう。
だからこそ、冗長性といったものが必要となるのだが、しかし帝国海軍にはこれを無駄だと断じてしまう士官がことのほか多い。
あるいは、長年にわたって耐乏生活を強いられてきた貧乏海軍ゆえの性かもしれない。
ただ、いずれにせよ索敵機の数が多ければ、思わぬトラブルが発生したとしてもある程度は補いがつく。
仮に発動機不調などに陥った機体が生じたとして、しかし索敵線が濃密であれば取りこぼしの可能性はこれを大きく引き下げることができる。
考え方やあるいは方法論はどうであれ、それでも三二機もの彩雲を投入した甲斐はあった。
あっさりと太平洋艦隊を発見し、さらにそれが複数の彩雲によるものだったから距離や方位、それに敵の戦力構成がかなり正確に把握できた。
「すごい偶然ですね。太平洋艦隊は四個機動部隊に一個水上打撃部隊から成り、しかも空母の数は一八隻ときた。そのうえ、空母を守る護衛艦艇の数まで第一機動艦隊のそれとほとんど一緒です。ここまでくると、なんか薄気味悪いですね」
発見された太平洋艦隊は五隻の空母を擁するものが二群、それに四隻のものもまた同じく二群から成り、それらは二隻の巡洋艦とそれに一ダースほどの駆逐艦で守られている。
一方、一機艦のほうもまた、五隻の空母を擁するものが二群に四隻のものが同じく二群だから、空母の数とその編成についてはまったく同じだ。
護衛艦艇については、一機艦には戦艦が含まれているという違いはあるが、しかし数そのものはほぼ同じと見てよかった。
「こちらの想定の範囲内の数だったのだから、そんなに気味悪がる必要は無いだろう」
実際のところ、志津頼先任参謀は本当に気味悪がっているのではない。
わざとそういった態度を取ることによって、司令部内の緊張を解きほぐそうとしているのだ。
なにせ、皇国の興廃がこの一戦で決まるのだから、緊張しないほうがどうかしている。
だからこそ、志津頼先任参謀は自ら進んで無駄口を叩く道化を演じているのだ。
そして、そのことを理解している生沢長官は小さく笑いながら指示を出していく。
そのことで、旗艦「大鳳」艦橋に張り詰めていた空気が少しばかり和らぐ。
「発見された機動部隊は北から順に甲一、甲二、甲三、それに甲四と呼称する。水上打撃部隊については、これを乙一とする」
敵艦隊に対する呼称を幕僚らに周知させるために、少しばかり間を置く。
「ただちに第一次攻撃隊を出撃させる。それが終われば、第二次攻撃隊も速やかに出す」
第一次攻撃隊は「大鳳」型空母と「翔鶴」型空母からそれぞれ零戦が三六機とそれに彩雲が一機の合わせて二九六機から成る。
第一次攻撃隊の目的は、もはやお馴染みとなった戦闘機掃討、欧米で言うところのファイター・スイープだ。
そのことで、零戦はそのすべてが腹に増槽を抱えており、爆弾を装備しているものは一機も無い。
ただ、両翼下のハードポイントにはふだん目にしないものが装備されていた。
一方、彩雲のほうだが、こちらは半数の四機が前路警戒にあたり、残る半数は零戦と同道して航法支援ならびに空戦指揮にあたる。
第二次攻撃隊は「大鳳」型空母と「翔鶴」型空母、それに「飛龍」と「蒼龍」からそれぞれ零戦が一二機に天山が一八機、「赤城」と「加賀」からそれぞれ天山が一八機の合わせて三三六機から成る。
こちらの主力は天山であり、それらは対艦攻撃の任務を負っている。
その天山の腹には、こちらもまた爆弾とも魚雷ともつかない異形が搭載されていた。
「第二次攻撃隊の目標を指示する。一航艦は甲一、二航艦は甲二、三航艦は甲三、それに四航艦は甲四を攻撃せよ。乙一に対する攻撃については、これを当面見合わせることとする」
発見された敵艦隊は四個機動部隊とそれに一個水上打撃部隊の合わせて五個だったのに対し、一機艦の機動部隊はこれが四個しかない。
すべての敵艦隊に手が回らない以上、機動部隊を優先して叩くのは当然のことだと言えた。
「それから『加賀』に命令して接触機を出させろ。それと、護衛の巡洋艦に艦載機の出動準備をさせておけ」
生沢長官の命令からほどなく、「加賀」から五機の彗星が発進する。
これらは、発見された敵艦隊に張り付き、何か動きがあればそれを一機艦司令部に報告するのがその役目だ。
また、第一から第四までの各航空艦隊に二隻ずつ配備されている重巡には零式水偵が搭載されていた。
これらは普段は対潜哨戒に従事しているが、しかし艦隊決戦の際には友軍搭乗員の救助にあたることになっている。
海面に着水できる水偵だからこそ可能な任務だ。
もちろん、彼らの救助対象となるのは友軍艦隊至近で戦う直掩隊の搭乗員だけだ。
残念ながら敵中深くに斬り込んでいく攻撃隊の搭乗員については、これを救えない。
それでも、貴重な搭乗員を一人でも多く救えるのであれば、可能な限りの手を尽くす。
これは生沢長官の強い意志でもあった。
六隻の小型空母に搭載されている九七艦攻については、こちらは対潜哨戒にあたるものとされている。
これら機体は雷撃も可能だが、しかし生沢長官にその考えは無い。
一方、日本側が攻撃隊を発進させたことを知った第五艦隊司令長官のフレッチャー提督もまた、当初予定通り攻撃隊を出撃させた。
彼は、今回の戦いにおいては自分から先に攻撃隊を出すことはせず、日本側の出方を伺っていた。
日本側が攻撃隊を繰り出したら、自分たちもまた攻撃隊を出撃させる。
逆に、いつまで経っても攻撃隊を出さないようであれば、その時は相手が防御に全振りしているものと判断し、逆にこちらのF6Fヘルキャット戦闘機を攻撃に全力投入する方針だった。
つまりは、珊瑚海海戦で得た苦い戦訓を活かしたのだ。
そして、日本側は攻撃隊を出撃させた。
だから、フレッチャー提督もまたそれに応じた。
その第五艦隊が出撃させた攻撃隊は「エセックス」級空母からそれぞれF6Fが二四機にSB2Cヘルダイバー急降下爆撃機が一八機、それにTBFアベンジャー雷撃機が同じく一八機。
「インデペンデンス」級空母からそれぞれF6Fが一二機にTBFが九機の合わせて七二九機という、まさに未曾有の一大攻撃隊だった。
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