征空決戦艦隊 ~多載空母打撃群 出撃!~

蒼 飛雲

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マリアナ決戦

第97話 第一機動艦隊

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 「開戦の頃に比べて、我が方の駆逐艦の対潜戦術もずいぶんと洗練されたものです。これで撃沈した米潜は二隻となります」

 志津頼先任参謀が、先ほどの戦闘結果を生沢長官に報告する。
 敵潜を撃沈したことで、その表情は心なしかほころんでいるように見える。

 マリアナ諸島の友軍を救援に向かう第一機動艦隊は、その航海の途中で何度も不審電波を傍受していた。
 それらは、米潜水艦から発信されたものとみて間違いなかった。
 そして、中には積極的に攻撃に打って出る者も存在した。

 一方、これを迎え撃つ友軍の駆逐艦のほうは、英国製のソナーや聴音機を装備していること、さらに自家騒音を低減する工事を施していたことで潜水艦の発見率については、これが劇的に向上していた。
 そして、第一航空艦隊の対潜バリアを突破して旗艦「大鳳」に接近を図ろうとした潜水艦をヘッジホッグによって袋叩きにした。
 海中での爆発音に続いて船体の圧壊音が聞こえたことから、撃沈は確実だと判断されていた。
 また、これ以外にも第三航空艦隊が潜水艦を撃沈しており、こちらはその位置から「翔鶴」を狙っていたのではないかと見られている。

 「個艦の性能もそうだが、開戦以来、駆逐艦の損耗が少なく済んでいることで数が確保できていることも大きいな」

 戦争が始まって以降、日本の駆逐艦については建造時期によって明暗が分かれていた。
 「朝潮」型や「陽炎」型といった新しい駆逐艦は艦隊決戦に参加する以外は整備や改修、それに訓練に明け暮れていたこともあって撃沈された艦については「霞」と「霰」の二隻にとどまっていた。
 一方、それ以前に建造された駆逐艦については、船団護衛や局地防衛などに酷使されたこともあり、すでに二〇隻近くが失われている。

 なので、生沢長官の認識は、駆逐艦全体を見れば必ずしも正確なものではない。
 ただ、一方で失われたそれら駆逐艦の穴は、英国から格安で買い取った駆逐艦をはじめとした対潜艦艇が十分以上にこれを埋めていることもあって、特に問題とされるようなことはなかった。

 「まったくです。それと、訓練内容が大きく変わったことも大きいですね。これまで帝国海軍の駆逐艦と言えば、敵の水上艦艇を沈めるための訓練が主でしたが、今ではその相手が潜水艦に移っています。確かに装備も良くなりました。しかし、それと同じくらい将兵の対潜戦闘に対する意識、それに技量もまた顕著な向上を見せています」

 開戦前までの駆逐艦は、敵主力艦に対する襲撃運動や夜間における編隊航行に重きを置いて腕を磨き、対潜戦闘に関しては余技のようなものでしかなかった。
 しかし、昨今ではそれが完全に逆転している。
 そして、その成果は先ほど見た通りだ。

 「これで、すべての空母を戦場の舞台に立たせることが出来そうだな」

 生沢長官が安堵の息を吐く。
 本土を進発してから常に米潜水艦に付け狙われ、時にはその牙を向かれることもあった。
 しかし、第一機動艦隊は一隻も損なうことなく想定戦闘海域に到達することができそうだ。
 その第一機動艦隊は四隻の「大鳳」型空母が戦列に加わったことで、四月一日付をもって大規模な改編を実施していた。

 四個ある機動部隊にはそれぞれ二隻の「翔鶴」型空母かあるいは「大鳳」型空母を配し、それを基幹戦力としていた。
 残る一〇隻の空母については、可能な限り戦力が均等になるよう四個機動部隊のうちのいずれかに割り振った。
 それら一八隻の空母を守るのは四隻の「金剛」型戦艦と八隻の重巡、それに四隻の軽巡と四〇隻の駆逐艦だ。

 さらに、それら機動部隊の前面には戦艦を主力とする第一艦隊の姿があった。
 こちらは六隻の戦艦のほかに二隻の重巡と同じく二隻の軽巡、それに一四隻の駆逐艦から成っていた。
 これらは機動部隊の前衛として、敵の水上打撃部隊に備えるのはもちろんのこと、それ以上に敵機を早期に発見するための見張り櫓としての機能が求められていた。

 また、機動部隊に「金剛」型戦艦が配備されたのは、敵の新型高速戦艦に備えるためだ。
 もちろん、「金剛」型戦艦が敵の新型高速戦艦に勝てる道理は無いが、それでも時間稼ぎ程度であればこれが可能だ。
 当然、その過程で「金剛」型戦艦はやられてしまうが、それでも「空母」を失うよりはマシだ。
 ただ、このことは「金剛」型戦艦の乗組員にとっては酷な話だ。
 しかし、戦争である以上、貧乏くじを引く者が出てしまうのは仕方が無いことでもあった。
 ただ、一方でその可能性は限りなく低いものと見積もられていた。

 その、「金剛」型戦艦が守る空母には新型機が搭載されていた。
 戦闘機はそのすべてが零戦の最新型にして最終型でもある五三型だ。
 一八五〇馬力を発揮する誉発動機を搭載した五三型は、従来の二一型や三二型とは別次元の速度性能と機動性を発揮し、防御力や武装も一段と強化されている。

 爆撃機は彗星があったが、しかし急降下爆撃という戦術がすでに過去のものとなっており、同機体が配備されているのは「蒼龍」と「飛龍」、それに「加賀」の三隻のみで、その数も合わせて一五機にしか過ぎない。

 一方で、大量配備となったのが九七艦攻の後継機体である天山だった。
 同機体は当初、三〇〇〇キロを超える航続性能が付与されることになっていた。
 ただ、その半面で防御力があまりにも貧弱だった。
 このことに懸念を抱いた生沢長官は、航続距離を引き下げる代わりに防弾装備の充実を訴えた。
 これまでの戦訓もあって、生沢長官の意見はあっさりと採り入れられ、天山は完全とは言えないまでも、それでもそれなりの防御力を得るに至った。
 また、天山は決戦兵器を搭載するために、その投下器については少しばかり特殊なものを装備している。

 偵察機のほうは、これまでの二式艦偵に代えて彩雲が登場していた。
 同機体は機上電探を装備し、搭乗員の目視に頼らざるを得なかったこれまでの偵察機とは一線を画す捜索能力を有している。
 さらに、速度性能もまた二式艦偵のそれを大きく上回っている。
 ただ、一方で彩雲は離陸距離が長いことやあるいは着艦速度が速いことから、広大な飛行甲板を持ち合わせている「翔鶴」型空母とそれに「大鳳」型空母だけに搭載されている。

 いずれにせよ、これら戦力をもって第一機動艦隊は太平洋艦隊との戦いに臨む。
 その決戦のゴングは、間もなく打ち鳴らされようとしていた。


 第一機動艦隊
 第一艦隊
 戦艦「長門」「陸奥」「伊勢」「日向」「山城」「扶桑」
 重巡「愛宕」「高雄」
 軽巡「矢矧」「能代」
 駆逐艦「雪風」「初風」「天津風」「時津風」「浦風」「磯風」「浜風」「谷風」「野分」「嵐」「萩風」「舞風」「陽炎」「不知火」

 第一航空艦隊
 「大鳳」(零戦九六、天山一八、彩雲六)
 「白鳳」(零戦九六、天山一八、彩雲六)
 「加賀」(零戦四八、天山一八、彗星九)
 「瑞鳳」(零戦二四、九七艦攻三)
 戦艦「比叡」
 重巡「利根」「筑摩」
 軽巡「阿賀野」
 駆逐艦「秋月」「照月」「秋雲」「夕雲」「巻雲」「風雲」「黒潮」「親潮」「早潮」「夏潮」

 第二航空艦隊
 「海鳳」(零戦九六、天山一八、彩雲六)
 「天鳳」(零戦九六、天山一八、彩雲六)
 「赤城」(零戦四八、天山一八)
 「祥鳳」(零戦二四、九七艦攻三)
 戦艦「霧島」
 重巡「熊野」「鈴谷」
 軽巡「那珂」
 駆逐艦「涼月」「初月」「長波」「巻波」「高波」「大波」「清波」「玉波」「涼波」「藤波」

 第三航空艦隊
 「翔鶴」(零戦九六、天山一八、彩雲六)
 「瑞鶴」(零戦九六、天山一八、彩雲六)
 「飛龍」(零戦三六、天山一八、彗星三)
 「千歳」(零戦二四、九七艦攻三)
 「千代田」(零戦二四、九七艦攻三)
 戦艦「金剛」
 重巡「最上」「三隈」
 軽巡「神通」
 駆逐艦「新月」「若月」「早波」「浜波」「沖波」「岸波」「朝霜」「早霜」「秋霜」「清霜」

 第四航空艦隊
 「雲鶴」(零戦九六、天山一八、彩雲六)
 「神鶴」(零戦九六、天山一八、彩雲六)
 「蒼龍」(零戦三六、天山一八、彗星三)
 「瑞穂」(零戦二四、九七艦攻三)
 「日進」(零戦二四、九七艦攻三)
 戦艦「榛名」
 重巡「妙高」「羽黒」
 軽巡「川内」
 駆逐艦「霜月」「冬月」「朝雲」「山雲」「夏雲」「峯雲」「朝潮」「大潮」「満潮」「荒潮」
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