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第二次ミッドウェー海戦
第33話 瑞雲隊、奇襲
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昭和一八年七月三日深夜。
第三艦隊と第四艦隊、それに第五艦隊と第六艦隊に配備されたそれぞれ四隻の「最上」型重巡と「妙高」型重巡は、快速を飛ばしてミッドウェー島の方角に向けて驀進していた。
八隻の重巡には同じく八隻の駆逐艦がその護衛として同道している。
これら一六隻は連合艦隊では挺身部隊として、その呼称を与えられていた。
その挺身部隊は、そのいずれもが三〇ノットを大きく超える速度性能を持っていた。
しかし、夜の間にミッドウェー島を砲撃できる位置に到着することには無理があった。
そして、ひとたび日が昇ってしまえばミッドウェー島基地に配備された航空機によって、挺身部隊は散々に叩かれてしまうだろう。
下手をすれば全滅も有り得た。
仮に、米軍がこれら挺身部隊の動きを察知していたとしても、当然のこととして同じ判断に至るはずだ。
飛行機は爆撃、巡洋艦は砲撃。
その常識からもたらされる油断に、挺身部隊は付け込む。
「すべての機体が発進を完了しました」
航空参謀の報告に、挺身部隊を指揮する木村少将が大声で了解した旨を伝える。
「鈴谷」を臨時旗艦とする挺身部隊の各艦は、日没までは空母の護衛として振る舞っていた。
そして、日が沈むのと同時に本隊から離脱、隊列を整えたうえでミッドウェー島への進撃を開始したのだ。
挺身部隊の八隻の重巡は、そのいずれもが四番砲塔ならびに五番砲塔を撤去し、水上機繋止甲板を延長していた。
そのことで、水上機を最大で一一機搭載できる航空巡洋艦へと生まれ変わっている。
ただし、運用の便から、各艦ともに定数は九機とされていた。
それと、カタパルトも最大射出重量が大きな新型に更新されている。
八隻の重巡から射ち出されたのは、瑞雲と呼ばれる複座の水上偵察機だった。
帝国海軍ではこの機体に戦闘機としての空戦性能やさらには急降下爆撃能力を付与しようとした。
さらに二五〇ノットの速度性能に加え、さらには二五〇〇キロ以上という長大な航続力まで求めている。
しかし、下駄履きの水上機にそのような万能性を求めれば、当然のこととして開発に時間がかかってしまう。
そのうえ、生産性も悪くなることはあっても良くなることはない。
そこで、帝国海軍は最高速度を二五〇ノットから二三〇ノットに、航続距離を二五〇〇キロ以上から二三〇〇キロにその要件を緩和した。
また、格闘性能良好という要求についても、これを取り下げている。
このことで、開発は一気に進み、昭和一八年に春に制式採用と相成った。
七二機の瑞雲には一機の例外も無く、そのすべての機体に熟練が乗り込んでいた。
損耗が激しかった艦爆や艦攻の搭乗員と違い、水上機のほうはそれほどでもなかったから、そのことで多くの手練れが生き残っていた。
その七二機の瑞雲はミッドウェー島のレーダー網をかいくぐるべく、超低空を飛行する。
夜間の超低空飛行は非常な困難を伴い、それだけで名人芸と言っていい。
ただ、一方でミッドウェー島は動かないから、航法に関しては楽だった。
飛行することしばし、瑞雲の搭乗員らは暗闇に沈む海面の向こうにミッドウェー島の稜線を視認する。
同時に指揮官機から高度を上げつつ、戦闘隊形に移行するよう指示が下される。
ミッドウェー島の米軍もまた、レーダーによってこちらの存在に気づくだろうがもう遅い。
迎撃に取れるリアクションタイムなど、ごくわずかでしかないだろう。
「全機、突撃せよ!」
指揮官の端的で、それでいて戦意を煽るような命令に、七二機の瑞雲は散開、それぞれが目をつけた目標に向けて降下していく。
一方、この時期の米軍は有力な夜間戦闘機を持ち合わせていなかった。
有るには有ったが、しかしそれは哨戒爆撃機を夜戦へと改造したPV-1だけで、しかもそれらは生産数が少なかった。
そのようなこともあって、ミッドウェー島に配備された機体もわずかに一ダースのみだった。
これらは三直態勢で警戒にあたっていたから、瑞雲が襲いかかってきた時には四機しか上空に無く、そのことで有効な迎撃が出来なかった。
一方、瑞雲は滑走路とその周辺にわだかまる飛行機群に対して緩降下爆撃を仕掛ける。
瑞雲は急降下爆撃も可能な機体だが、しかし見通しの悪い夜間にこれをやるのはあまりにも危険過ぎる。
ここは多少の命中率の低下は忍んでも、安全策を取るべきだった。
瑞雲に真っ先に狙われた、つまりは最初に血祭りに上げられたのは緊急発進のために滑走路上にあったPV-1だった。
瑞雲が投弾した二五番はPV-1を直撃することはなかった。
飛行機という小さな目標に爆弾を当てるのは、見通しの良い昼間であったとしても至難だ。
それでも二五番の爆発威力は大きく、至近弾であってもPV-1に対しては十分に致命の一撃となった。
PV-1はガソリンタンクに火が入ったのか、盛大な爆発とともに炎上する。
このことで、三本あるうちの滑走路のうちの一つが使用不能になる。
PV-1が炎上する頃には、他の瑞雲も爆撃を終えている。
単発戦闘機から四発重爆、果ては飛行艇まで、分け隔てなく投下された二五番は、確実にそれら機体に対して破壊と死をもたらしていった。
ミッドウェー基地航空隊にとって不運だったのは、早朝からの出撃に備えていずれの機体も爆弾や銃弾、それに燃料を満載していたことだった。
このことで誘爆が相次ぎ、ミッドウェー島はさながら洋上の松明と化した。
その煉獄に瑞雲が舞い降り、撃ち漏らした敵機に二〇ミリ弾を浴びせていく。
空の上では瑞雲など問題にしないF4Uも、しかし陸の上にあっては案山子も同然だ。
胴体や翼に二〇ミリ弾をしたたかに撃ち込まれたF4Uが擱座、運の悪い機体は燃料タンクに火が入って爆散する。
瑞雲隊の活躍によってミッドウェー基地航空隊はその戦力を完全に喪失。
連合艦隊は側背を気にせずに太平洋艦隊との決戦に臨むことが可能になった。
第三艦隊と第四艦隊、それに第五艦隊と第六艦隊に配備されたそれぞれ四隻の「最上」型重巡と「妙高」型重巡は、快速を飛ばしてミッドウェー島の方角に向けて驀進していた。
八隻の重巡には同じく八隻の駆逐艦がその護衛として同道している。
これら一六隻は連合艦隊では挺身部隊として、その呼称を与えられていた。
その挺身部隊は、そのいずれもが三〇ノットを大きく超える速度性能を持っていた。
しかし、夜の間にミッドウェー島を砲撃できる位置に到着することには無理があった。
そして、ひとたび日が昇ってしまえばミッドウェー島基地に配備された航空機によって、挺身部隊は散々に叩かれてしまうだろう。
下手をすれば全滅も有り得た。
仮に、米軍がこれら挺身部隊の動きを察知していたとしても、当然のこととして同じ判断に至るはずだ。
飛行機は爆撃、巡洋艦は砲撃。
その常識からもたらされる油断に、挺身部隊は付け込む。
「すべての機体が発進を完了しました」
航空参謀の報告に、挺身部隊を指揮する木村少将が大声で了解した旨を伝える。
「鈴谷」を臨時旗艦とする挺身部隊の各艦は、日没までは空母の護衛として振る舞っていた。
そして、日が沈むのと同時に本隊から離脱、隊列を整えたうえでミッドウェー島への進撃を開始したのだ。
挺身部隊の八隻の重巡は、そのいずれもが四番砲塔ならびに五番砲塔を撤去し、水上機繋止甲板を延長していた。
そのことで、水上機を最大で一一機搭載できる航空巡洋艦へと生まれ変わっている。
ただし、運用の便から、各艦ともに定数は九機とされていた。
それと、カタパルトも最大射出重量が大きな新型に更新されている。
八隻の重巡から射ち出されたのは、瑞雲と呼ばれる複座の水上偵察機だった。
帝国海軍ではこの機体に戦闘機としての空戦性能やさらには急降下爆撃能力を付与しようとした。
さらに二五〇ノットの速度性能に加え、さらには二五〇〇キロ以上という長大な航続力まで求めている。
しかし、下駄履きの水上機にそのような万能性を求めれば、当然のこととして開発に時間がかかってしまう。
そのうえ、生産性も悪くなることはあっても良くなることはない。
そこで、帝国海軍は最高速度を二五〇ノットから二三〇ノットに、航続距離を二五〇〇キロ以上から二三〇〇キロにその要件を緩和した。
また、格闘性能良好という要求についても、これを取り下げている。
このことで、開発は一気に進み、昭和一八年に春に制式採用と相成った。
七二機の瑞雲には一機の例外も無く、そのすべての機体に熟練が乗り込んでいた。
損耗が激しかった艦爆や艦攻の搭乗員と違い、水上機のほうはそれほどでもなかったから、そのことで多くの手練れが生き残っていた。
その七二機の瑞雲はミッドウェー島のレーダー網をかいくぐるべく、超低空を飛行する。
夜間の超低空飛行は非常な困難を伴い、それだけで名人芸と言っていい。
ただ、一方でミッドウェー島は動かないから、航法に関しては楽だった。
飛行することしばし、瑞雲の搭乗員らは暗闇に沈む海面の向こうにミッドウェー島の稜線を視認する。
同時に指揮官機から高度を上げつつ、戦闘隊形に移行するよう指示が下される。
ミッドウェー島の米軍もまた、レーダーによってこちらの存在に気づくだろうがもう遅い。
迎撃に取れるリアクションタイムなど、ごくわずかでしかないだろう。
「全機、突撃せよ!」
指揮官の端的で、それでいて戦意を煽るような命令に、七二機の瑞雲は散開、それぞれが目をつけた目標に向けて降下していく。
一方、この時期の米軍は有力な夜間戦闘機を持ち合わせていなかった。
有るには有ったが、しかしそれは哨戒爆撃機を夜戦へと改造したPV-1だけで、しかもそれらは生産数が少なかった。
そのようなこともあって、ミッドウェー島に配備された機体もわずかに一ダースのみだった。
これらは三直態勢で警戒にあたっていたから、瑞雲が襲いかかってきた時には四機しか上空に無く、そのことで有効な迎撃が出来なかった。
一方、瑞雲は滑走路とその周辺にわだかまる飛行機群に対して緩降下爆撃を仕掛ける。
瑞雲は急降下爆撃も可能な機体だが、しかし見通しの悪い夜間にこれをやるのはあまりにも危険過ぎる。
ここは多少の命中率の低下は忍んでも、安全策を取るべきだった。
瑞雲に真っ先に狙われた、つまりは最初に血祭りに上げられたのは緊急発進のために滑走路上にあったPV-1だった。
瑞雲が投弾した二五番はPV-1を直撃することはなかった。
飛行機という小さな目標に爆弾を当てるのは、見通しの良い昼間であったとしても至難だ。
それでも二五番の爆発威力は大きく、至近弾であってもPV-1に対しては十分に致命の一撃となった。
PV-1はガソリンタンクに火が入ったのか、盛大な爆発とともに炎上する。
このことで、三本あるうちの滑走路のうちの一つが使用不能になる。
PV-1が炎上する頃には、他の瑞雲も爆撃を終えている。
単発戦闘機から四発重爆、果ては飛行艇まで、分け隔てなく投下された二五番は、確実にそれら機体に対して破壊と死をもたらしていった。
ミッドウェー基地航空隊にとって不運だったのは、早朝からの出撃に備えていずれの機体も爆弾や銃弾、それに燃料を満載していたことだった。
このことで誘爆が相次ぎ、ミッドウェー島はさながら洋上の松明と化した。
その煉獄に瑞雲が舞い降り、撃ち漏らした敵機に二〇ミリ弾を浴びせていく。
空の上では瑞雲など問題にしないF4Uも、しかし陸の上にあっては案山子も同然だ。
胴体や翼に二〇ミリ弾をしたたかに撃ち込まれたF4Uが擱座、運の悪い機体は燃料タンクに火が入って爆散する。
瑞雲隊の活躍によってミッドウェー基地航空隊はその戦力を完全に喪失。
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