9 / 30
第9話 優しさに揺れる心
しおりを挟む
春が本格的に訪れようとしていた。
屋敷の庭には白い花が咲き出し、鳥たちが明るく鳴き交わしている。
長かった冬が終わり、少しずつ人々の顔にも笑みが増え始めていた。
そんな中、アイリスの胸の内は静かに波打っていた。
地下倉庫で見つけた古い記録の数々――。
そこに綴られていた領民の叫び、公爵が背負い続けていた悲しみ。
それを知って以来、彼女の見る世界は確かに変わっていた。
冷たいと思っていた人が、実は誰よりも傷を抱えていた。
それを知った今、彼に向ける視線が優しくならずにはいられなかった。
***
朝。
文官たちとの打ち合わせが終わり、アイリスはいつものように執務室へ報告に向かった。
扉を叩くと、聞き慣れた低い声が返る。
「入れ。」
室内には淡い陽光が差し込み、机の上には整えられた書類が山のように積まれていた。
レオン公爵はその中から一枚を取り上げ、静かに目を通している。
「おはようございます、公爵様。」
アイリスが頭を下げると、彼は手を止めて視線を上げた。
その金の瞳が一瞬だけ柔らかく光った気がした。
「おはよう、グレイス。昨日の記録は確認した。無駄が一つもない。見事だ。」
「ありがとうございます。」
「特にこの村の補助金の配分、よく調べたな。俺が気づかなかった点を正確に指摘している。」
そう言って、彼は軽く顎で示した。
机の上には、アイリスが書いた修正案が置かれている。
それを見ただけで胸が熱くなった。
努力がきちんと届いていると感じる瞬間――それがどれほど嬉しいか、彼女は知っていた。
「殿下時代の文官より優秀だな。」
その一言で、アイリスの動きが止まった。
“殿下”という言葉を聞くだけで、胸の奥の古傷が疼く。
レオンも気づいたのか、すぐに小さく息を吐いた。
「……ああ、悪かった。」
「いえ。もう、昔のことです。」
そう答えながらも、指先が微かに震えた。
だが、次に続いた彼の言葉が、その震えを静めた。
「お前がここにいて良かった。俺の領地は、ようやく息をしている。」
「……わたしが、ですか?」
「そうだ。お前がいると、皆が安心する。俺もだ。」
その言葉に、心が強く揺れた。
胸の奥で小さな音が鳴る。
今まで誰にもそんな風に言われたことはなかった。
“いて良かった”。その一言が、どれほど彼女の心を救ったことか。
「ありがとうございます……公爵様。」
その声は震えていたけれど、確かに笑顔だった。
***
昼下がり。
外は穏やかな陽気が広がり、屋敷の庭では子どもたちが走り回っていた。
文官の手伝いを終えたアイリスは、中庭のベンチで少し休憩を取っていた。
風に乗って咲き始めた花の香りが漂う。
そこへレオンの影が落ちた。
「こんなところにいたのか。」
「お疲れなのですか?」
「外の空気でも吸いたくなった。」
彼は隣に腰を下ろすと、視線を遠くの丘へ向けた。
その横顔はどこか穏やかで、春の光を受けてやわらかに見えた。
「この季節は嫌いではない。」
「公爵様が季節の話をなさるなんて珍しいですね。」
「……そうかもしれんな。昔は、毎年春になるたびに葬儀が増えた。冬を越えられなかった者たちの。」
その言葉に、胸が締めつけられる。
けれど今は、彼の声音が少し違っていた。
過去を嘆くのではなく、その苦しみすら穏やかに受け入れているような響き。
「だが、今年の春は違う。花が咲くのを純粋に楽しめそうだ。」
「それは……きっと、公爵様が領を守り抜いたからです。」
「守り抜いた? いや、俺が支えられている。」
レオンはそう言って、ふとアイリスに視線を向けた。
黄金の瞳がまっすぐに心を射抜く。
「お前が、傍にいるからだ。」
一瞬、時間が止まった。
風の音も鳥の声も消えて、世界には二人きりしか残らない。
「……わたくし、そんな大層なことは何もしておりませんわ。」
「自覚がないなら、それでいい。」
彼の声は低く、優しかった。
けれどそこに滲む感情の色が、今までのどんな言葉よりも熱を帯びていた。
どうしてだろう。
その優しさが嬉しいのに、胸が苦しかった。
***
夜。
部屋に戻ったアイリスは、窓を開けて外の月を見上げた。
明るい月が庭を照らし、風がカーテンを揺らしている。
心は静かでありながら、どこか落ち着かない。
「わたし……どうして、あの人の言葉一つでこんなに動揺するのかしら。」
レオンの表情を思い出すたびに、頬が熱くなる。
あの瞳、あの声。
凍てつく冬を知る男の、どこまでも深い優しさ。
自分は恋を、もう知らないと思っていた。
失った夜に燃え尽きたはずの心が、再び温かさを覚えるなんて想像もしていなかった。
けれど、確かに心の奥で小さな芽が息づき始めている。
それはまだ名もない想い。けれど確かに、彼に向かって伸び始めていた。
「駄目よ……公爵様は……」
呟いた声が夜に溶ける。
身分も、生き方も、世界が違う。
彼は領を背負う人。自分は、居場所を与えられただけの客人。
この感情を抱いてはいけないと分かっている。
それでも、止められなかった。
彼の姿を見るたび、胸の奥で花が咲くような痛みが広がる。
「どうして、あの人はそんなに優しいの……」
アイリスは胸に手を当て、そっと笑った。
心は揺れていた。けれどその揺れさえも、今は愛おしいと感じてしまうほどに。
***
翌朝。
レオンは執務室で書類を整理していたが、不意に窓の外から笑い声が聞こえた。
庭で花の世話をしているアイリスの声だ。
春風に混じって届くその笑いに、知らず口元が綻ぶ。
「……あの娘が来てから、屋敷が静かでなくなったな。」
ぼそりと呟き、机に視線を戻す。
書類の端に小さく書かれた彼女の字――整って、真面目で、どこか優しい。
胸の奥で何かが温かく広がる。
“お前が傍にいるからだ。”
昼下がりに自分が口にしたあの言葉を思い出し、
彼は小さく息をついた。
「……俺も、少し変わったかもしれんな。」
その声は、誰にも聞かれぬように小さく、けれど確かに笑みを含んでいた。
(第9話 優しさに揺れる心 了)
屋敷の庭には白い花が咲き出し、鳥たちが明るく鳴き交わしている。
長かった冬が終わり、少しずつ人々の顔にも笑みが増え始めていた。
そんな中、アイリスの胸の内は静かに波打っていた。
地下倉庫で見つけた古い記録の数々――。
そこに綴られていた領民の叫び、公爵が背負い続けていた悲しみ。
それを知って以来、彼女の見る世界は確かに変わっていた。
冷たいと思っていた人が、実は誰よりも傷を抱えていた。
それを知った今、彼に向ける視線が優しくならずにはいられなかった。
***
朝。
文官たちとの打ち合わせが終わり、アイリスはいつものように執務室へ報告に向かった。
扉を叩くと、聞き慣れた低い声が返る。
「入れ。」
室内には淡い陽光が差し込み、机の上には整えられた書類が山のように積まれていた。
レオン公爵はその中から一枚を取り上げ、静かに目を通している。
「おはようございます、公爵様。」
アイリスが頭を下げると、彼は手を止めて視線を上げた。
その金の瞳が一瞬だけ柔らかく光った気がした。
「おはよう、グレイス。昨日の記録は確認した。無駄が一つもない。見事だ。」
「ありがとうございます。」
「特にこの村の補助金の配分、よく調べたな。俺が気づかなかった点を正確に指摘している。」
そう言って、彼は軽く顎で示した。
机の上には、アイリスが書いた修正案が置かれている。
それを見ただけで胸が熱くなった。
努力がきちんと届いていると感じる瞬間――それがどれほど嬉しいか、彼女は知っていた。
「殿下時代の文官より優秀だな。」
その一言で、アイリスの動きが止まった。
“殿下”という言葉を聞くだけで、胸の奥の古傷が疼く。
レオンも気づいたのか、すぐに小さく息を吐いた。
「……ああ、悪かった。」
「いえ。もう、昔のことです。」
そう答えながらも、指先が微かに震えた。
だが、次に続いた彼の言葉が、その震えを静めた。
「お前がここにいて良かった。俺の領地は、ようやく息をしている。」
「……わたしが、ですか?」
「そうだ。お前がいると、皆が安心する。俺もだ。」
その言葉に、心が強く揺れた。
胸の奥で小さな音が鳴る。
今まで誰にもそんな風に言われたことはなかった。
“いて良かった”。その一言が、どれほど彼女の心を救ったことか。
「ありがとうございます……公爵様。」
その声は震えていたけれど、確かに笑顔だった。
***
昼下がり。
外は穏やかな陽気が広がり、屋敷の庭では子どもたちが走り回っていた。
文官の手伝いを終えたアイリスは、中庭のベンチで少し休憩を取っていた。
風に乗って咲き始めた花の香りが漂う。
そこへレオンの影が落ちた。
「こんなところにいたのか。」
「お疲れなのですか?」
「外の空気でも吸いたくなった。」
彼は隣に腰を下ろすと、視線を遠くの丘へ向けた。
その横顔はどこか穏やかで、春の光を受けてやわらかに見えた。
「この季節は嫌いではない。」
「公爵様が季節の話をなさるなんて珍しいですね。」
「……そうかもしれんな。昔は、毎年春になるたびに葬儀が増えた。冬を越えられなかった者たちの。」
その言葉に、胸が締めつけられる。
けれど今は、彼の声音が少し違っていた。
過去を嘆くのではなく、その苦しみすら穏やかに受け入れているような響き。
「だが、今年の春は違う。花が咲くのを純粋に楽しめそうだ。」
「それは……きっと、公爵様が領を守り抜いたからです。」
「守り抜いた? いや、俺が支えられている。」
レオンはそう言って、ふとアイリスに視線を向けた。
黄金の瞳がまっすぐに心を射抜く。
「お前が、傍にいるからだ。」
一瞬、時間が止まった。
風の音も鳥の声も消えて、世界には二人きりしか残らない。
「……わたくし、そんな大層なことは何もしておりませんわ。」
「自覚がないなら、それでいい。」
彼の声は低く、優しかった。
けれどそこに滲む感情の色が、今までのどんな言葉よりも熱を帯びていた。
どうしてだろう。
その優しさが嬉しいのに、胸が苦しかった。
***
夜。
部屋に戻ったアイリスは、窓を開けて外の月を見上げた。
明るい月が庭を照らし、風がカーテンを揺らしている。
心は静かでありながら、どこか落ち着かない。
「わたし……どうして、あの人の言葉一つでこんなに動揺するのかしら。」
レオンの表情を思い出すたびに、頬が熱くなる。
あの瞳、あの声。
凍てつく冬を知る男の、どこまでも深い優しさ。
自分は恋を、もう知らないと思っていた。
失った夜に燃え尽きたはずの心が、再び温かさを覚えるなんて想像もしていなかった。
けれど、確かに心の奥で小さな芽が息づき始めている。
それはまだ名もない想い。けれど確かに、彼に向かって伸び始めていた。
「駄目よ……公爵様は……」
呟いた声が夜に溶ける。
身分も、生き方も、世界が違う。
彼は領を背負う人。自分は、居場所を与えられただけの客人。
この感情を抱いてはいけないと分かっている。
それでも、止められなかった。
彼の姿を見るたび、胸の奥で花が咲くような痛みが広がる。
「どうして、あの人はそんなに優しいの……」
アイリスは胸に手を当て、そっと笑った。
心は揺れていた。けれどその揺れさえも、今は愛おしいと感じてしまうほどに。
***
翌朝。
レオンは執務室で書類を整理していたが、不意に窓の外から笑い声が聞こえた。
庭で花の世話をしているアイリスの声だ。
春風に混じって届くその笑いに、知らず口元が綻ぶ。
「……あの娘が来てから、屋敷が静かでなくなったな。」
ぼそりと呟き、机に視線を戻す。
書類の端に小さく書かれた彼女の字――整って、真面目で、どこか優しい。
胸の奥で何かが温かく広がる。
“お前が傍にいるからだ。”
昼下がりに自分が口にしたあの言葉を思い出し、
彼は小さく息をついた。
「……俺も、少し変わったかもしれんな。」
その声は、誰にも聞かれぬように小さく、けれど確かに笑みを含んでいた。
(第9話 優しさに揺れる心 了)
0
あなたにおすすめの小説
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
【完結】追放された大聖女は黒狼王子の『運命の番』だったようです
星名柚花
恋愛
聖女アンジェリカは平民ながら聖王国の王妃候補に選ばれた。
しかし他の王妃候補の妨害工作に遭い、冤罪で国外追放されてしまう。
契約精霊と共に向かった亜人の国で、過去に自分を助けてくれたシャノンと再会を果たすアンジェリカ。
亜人は人間に迫害されているためアンジェリカを快く思わない者もいたが、アンジェリカは少しずつ彼らの心を開いていく。
たとえ問題が起きても解決します!
だって私、四大精霊を従える大聖女なので!
気づけばアンジェリカは亜人たちに愛され始める。
そしてアンジェリカはシャノンの『運命の番』であることが発覚し――?
地味で役に立たないと言われて捨てられましたが、王弟殿下のお相手としては最適だったようです
有賀冬馬
恋愛
「君は地味で、将来の役に立たない」
そう言われ、幼なじみの婚約者にあっさり捨てられた侯爵令嬢の私。
社交界でも忘れ去られ、同情だけを向けられる日々の中、私は王宮の文官補佐として働き始める。
そこで出会ったのは、権力争いを嫌う変わり者の王弟殿下。
過去も噂も問わず、ただ仕事だけを見て評価してくれる彼の隣で、私は静かに居場所を見つけていく。
そして暴かれる不正。転落していく元婚約者。
「君が隣にいない宮廷は退屈だ」
これは、選ばれなかった私が、必要とされる私になる物語。
貧乏人とでも結婚すれば?と言われたので、隣国の英雄と結婚しました
ゆっこ
恋愛
――あの日、私は確かに笑われた。
「貧乏人とでも結婚すれば? 君にはそれくらいがお似合いだ」
王太子であるエドワード殿下の冷たい言葉が、まるで氷の刃のように胸に突き刺さった。
その場には取り巻きの貴族令嬢たちがいて、皆そろって私を見下ろし、くすくすと笑っていた。
――婚約破棄。
【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします
紫
恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。
王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい?
つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!?
そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。
報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。
王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。
2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……)
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
※小説家になろう様にも掲載させていただいています。
※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。
※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。
※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。
※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。
※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。
※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。
※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。
辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~
紫月 由良
恋愛
辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。
魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。
※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています
「いらない」と捨てられた令嬢、実は全属性持ちの聖女でした
ゆっこ
恋愛
「リリアーナ・エヴァンス。お前との婚約は破棄する。もう用済み
そう言い放ったのは、五年間想い続けた婚約者――王太子アレクシスさま。
広間に響く冷たい声。貴族たちの視線が一斉に私へ突き刺さる。
「アレクシスさま……どういう、ことでしょうか……?」
震える声で問い返すと、彼は心底嫌そうに眉を顰めた。
「言葉の意味が理解できないのか? ――お前は“無属性”だ。魔法の才能もなければ、聖女の資質もない。王太子妃として役不足だ」
「無……属性?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる