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第十九話 統治能力なし
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第十九話 統治能力なし
帝国統治院の最奥――
審問室よりもさらに閉ざされた小会議室に、タイラント王は通された。
豪奢さはない。
だが、無駄が一切ない。
ここは、決定が下される場所だった。
アンピール帝国皇帝カイザーは、すでに席についている。
その両脇には、帝国統治院長、財政監察官、属国管理局長。
いずれも、帝国の「中枢」を担う者たちだ。
「着席を」
短い言葉。
タイラント王は、無言で従った。
もはや、王としての振る舞いは求められていない。
「本日の議題は一つ」
カイザーは、淡々と告げる。
「プリケアリアス王国の統治体制についてだ」
書類が一枚、机上に置かれる。
「帝国属国としての義務履行状況、
内政の安定度、
人材運用の適正、
王権の統制力」
一つ一つ、項目が読み上げられる。
「結論から言おう」
前置きは、ない。
「貴国は、現在――
安定した統治が行われているとは認められない」
その言葉は、
すでに予告されていた結論だった。
タイラント王は、反論しなかった。
いや、できなかった。
「理由は三点」
カイザーは、指を一本立てる。
「第一に、王太子の判断を制御できていない」
二本目。
「第二に、国家中枢を個人に依存し、
制度化を怠った」
三本目。
「第三に、その人物を排除した後、
代替策を用意できなかった」
短く、断定的な分析。
「これらはすべて、
国王の統治責任に属する」
帝国統治院長が、補足する。
「属国である以上、
一定の裁量は認められます。
しかし、統治能力を欠いた場合、
帝国はそれを是正する義務があります」
是正――
その言葉の意味は、重い。
カイザーは、タイラント王を見据えた。
「確認する」
静かな声。
「貴殿は、
現在の混乱を、
自らの判断で収拾できると考えているか?」
一瞬の沈黙。
正直に答えれば、否。
虚勢を張れば、即座に見抜かれる。
タイラント王は、ゆっくりと首を振った。
「……いいえ」
その答えが、
最後の鍵だった。
「よろしい」
カイザーは、迷いなく告げる。
「アンピール帝国皇帝として、
ここに裁定を下す」
室内の空気が、張り詰める。
「プリケアリアス王国国王タイラントは、
統治能力なしと判断する」
一拍。
「よって――
王位を剥奪する」
その言葉は、
怒号でも、宣告調でもなかった。
事務的で、冷静で、
覆しようのない決定だった。
タイラント王の視界が、揺れる。
「王位剥奪は、
即時発効とする」
カイザーは、続ける。
「貴殿の王権は、
本日をもって消滅する」
帝国財政監察官が、淡々と付け加えた。
「王家資産については、
帝国管理下に置き、精査の上、
不正蓄財が確認された分は没収する」
それは、
王としての死刑宣告に等しい。
タイラント王は、立ち上がろうとした。
だが、足に力が入らない。
「……私は、
王国のために……」
絞り出すような声。
カイザーは、静かに首を振った。
「結果が、すべてだ」
ただ、それだけ。
「帝国は、
感情ではなく、
秩序を守る」
その言葉に、
慈悲はなかった。
そして同時に、
私怨もなかった。
「本日の裁定は、以上だ」
扉が、開く。
そこに立っていたのは、
帝国の護衛兵。
もはや、
“国王を護る者”ではない。
タイラント王は、
一市民として、
その場を後にすることになった。
王冠も、権威も、
何一つ残らない。
――プリケアリアス王国は、
王を失った。
だが、それは終わりではない。
帝国は、次の手を打つ。
統治能力を失った国に、
必要なのは、
感情ではなく、
管理だった。
その管理が、
どれほど冷酷で、
どれほど合理的かを、
この国は、
これから思い知ることになる。
帝国統治院の最奥――
審問室よりもさらに閉ざされた小会議室に、タイラント王は通された。
豪奢さはない。
だが、無駄が一切ない。
ここは、決定が下される場所だった。
アンピール帝国皇帝カイザーは、すでに席についている。
その両脇には、帝国統治院長、財政監察官、属国管理局長。
いずれも、帝国の「中枢」を担う者たちだ。
「着席を」
短い言葉。
タイラント王は、無言で従った。
もはや、王としての振る舞いは求められていない。
「本日の議題は一つ」
カイザーは、淡々と告げる。
「プリケアリアス王国の統治体制についてだ」
書類が一枚、机上に置かれる。
「帝国属国としての義務履行状況、
内政の安定度、
人材運用の適正、
王権の統制力」
一つ一つ、項目が読み上げられる。
「結論から言おう」
前置きは、ない。
「貴国は、現在――
安定した統治が行われているとは認められない」
その言葉は、
すでに予告されていた結論だった。
タイラント王は、反論しなかった。
いや、できなかった。
「理由は三点」
カイザーは、指を一本立てる。
「第一に、王太子の判断を制御できていない」
二本目。
「第二に、国家中枢を個人に依存し、
制度化を怠った」
三本目。
「第三に、その人物を排除した後、
代替策を用意できなかった」
短く、断定的な分析。
「これらはすべて、
国王の統治責任に属する」
帝国統治院長が、補足する。
「属国である以上、
一定の裁量は認められます。
しかし、統治能力を欠いた場合、
帝国はそれを是正する義務があります」
是正――
その言葉の意味は、重い。
カイザーは、タイラント王を見据えた。
「確認する」
静かな声。
「貴殿は、
現在の混乱を、
自らの判断で収拾できると考えているか?」
一瞬の沈黙。
正直に答えれば、否。
虚勢を張れば、即座に見抜かれる。
タイラント王は、ゆっくりと首を振った。
「……いいえ」
その答えが、
最後の鍵だった。
「よろしい」
カイザーは、迷いなく告げる。
「アンピール帝国皇帝として、
ここに裁定を下す」
室内の空気が、張り詰める。
「プリケアリアス王国国王タイラントは、
統治能力なしと判断する」
一拍。
「よって――
王位を剥奪する」
その言葉は、
怒号でも、宣告調でもなかった。
事務的で、冷静で、
覆しようのない決定だった。
タイラント王の視界が、揺れる。
「王位剥奪は、
即時発効とする」
カイザーは、続ける。
「貴殿の王権は、
本日をもって消滅する」
帝国財政監察官が、淡々と付け加えた。
「王家資産については、
帝国管理下に置き、精査の上、
不正蓄財が確認された分は没収する」
それは、
王としての死刑宣告に等しい。
タイラント王は、立ち上がろうとした。
だが、足に力が入らない。
「……私は、
王国のために……」
絞り出すような声。
カイザーは、静かに首を振った。
「結果が、すべてだ」
ただ、それだけ。
「帝国は、
感情ではなく、
秩序を守る」
その言葉に、
慈悲はなかった。
そして同時に、
私怨もなかった。
「本日の裁定は、以上だ」
扉が、開く。
そこに立っていたのは、
帝国の護衛兵。
もはや、
“国王を護る者”ではない。
タイラント王は、
一市民として、
その場を後にすることになった。
王冠も、権威も、
何一つ残らない。
――プリケアリアス王国は、
王を失った。
だが、それは終わりではない。
帝国は、次の手を打つ。
統治能力を失った国に、
必要なのは、
感情ではなく、
管理だった。
その管理が、
どれほど冷酷で、
どれほど合理的かを、
この国は、
これから思い知ることになる。
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