婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ

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第十四話 公爵の調査

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第十四話 公爵の調査

 サウザー公爵家の書斎は、無駄のない整然とした空間だった。

 壁一面の書架。
 中央に据えられた重厚な机。
 その上に置かれているのは、一冊の報告書。

 封を解いたのは、今しがたである。

 サウザー公爵は椅子に腰かけ、静かに頁を開いた。

 題は簡潔。

 ――ノーランド公爵家 婚約経緯および統治状況報告。

 彼は感情を交えず、読み進める。

 婚約交換の経緯。
 王宮での三日間。
 白紙決定。

 そして後半には、ノーランド領の実務記録。

 彼の視線が止まる。

「領主代理……ナチュ」

 収支推移。
 港湾税改革。
 備蓄管理体制の再編。

 いずれも堅実で、無理がない。

 側近が控えている。

「事実でございます」

 サウザーは淡々と問う。

「父公爵の関与は」

「形式上の承認のみ。実務はほぼナチュ嬢が担っております」

 静かな答え。

 さらに頁をめくる。

 交際費増額の要望。
 領収書の要求。
 帳簿の整備。

 わずかに、彼の眉が動いた。

「父に領収書を求めたか」

「はい」

 側近は抑えた声で続ける。

「公爵ともあろうものが、下位貴族に費用を払わせるわけにはいかぬ、と申される父君に対し、帳簿には正確な記載が必要でございます、と」

 サウザーは報告書を閉じない。

 そこにあるのは、思想だ。

 責任の理解。
 制度の尊重。

 感情ではなく、規律。

「王宮での言動との差は明白でございます」

 側近の言葉に、サウザーは否定も肯定もしない。

 ただ静かに言う。

「王家の判断は妥当だ」

 感情的な断罪ではない。

 理性の結論。

 さらに頁をめくると、ひとつの記述が目に入る。

 ――血統的評価。

 前公爵夫人は優秀であり、統治に深く関与していた。
 婿養子である現公爵は、実務能力に乏しい。
 ナチュは母の思想を色濃く継承している。

 サウザーは静かに呟く。

「つまり、血統的にもコンキュではなくナチュで正解という事なのだな……」

 血とは顔立ちではない。

 思想の継承。

 責任の受け止め方。

 側近が問う。

「縁談の再検討を?」

「再検討ではない」

 サウザーは報告書を閉じた。

「確認だ」

 立ち上がる。

 窓の外には、整然と整備されたサウザー領の街並み。

 統治は飾りではない。

 積み上げるものだ。

「ノーランド家は揺れる」

 静かな予測。

「婿養子公爵は監督責任を問われるだろう」

「王家が動けば、社交界も追随いたします」

 側近の声は低い。

 サウザーは頷く。

「だからこそ、選ぶべきは思想だ」

 肩書ではない。

 華でもない。

 責任を理解する者。

「面談の機会を設ける」

「ナチュ嬢とでございますか」

「そうだ」

 決定は短い。

 だが迷いはない。

 この男は激情で動かない。

 冷静に、制度と思想で判断する。

 ノーランド家は揺らぎ始めている。

 だが揺らぎの中でも、正統は見える。

 静かに継がれるもの。

 それを見極める時が来ていた。
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