婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ

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第二十三話 監督責任

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第二十三話 監督責任

 王家からの通達は、静かに、だが確実に波紋を広げていた。

 記録に残る――その一文は、貴族社会において極めて重い。

 公爵家の統治能力が疑われている。

 それは、単に娘の問題ではない。

 家そのものの管理が問われているということだった。

 数日後。

 王宮より再び召喚状が届く。

 今度は令嬢ではなく、公爵本人に対して。

 応接室で書状を読んだ公爵の顔は、明らかに青ざめていた。

「……評議会だと」

 後妻が扇を強く握る。

「なぜそこまで」

「家の統治能力を確認する、とある」

 確認。

 だが、それは審査と同義だった。

 公爵は王宮へ向かった。

 重厚な石造りの会議室。

 そこに並ぶのは王家側の高官、法務官、財務官。

 王太子は席の上座にいる。

 表情は変わらない。

「ノーランド公爵」

 呼ばれ、公爵は進み出る。

「貴家において、令嬢の行動が再三問題視されている」

「……承知しております」

 低い声で答える。

「それを制止できなかった理由を述べよ」

 直接的な問い。

 公爵は一瞬言葉に詰まる。

 制止できなかった。

 それが事実だ。

「家内が……」

 言い訳を探す。

「家内の教育に任せておりました」

 法務官が静かに口を挟む。

「公爵家の統治責任者は誰か」

 答えは明白。

 公爵本人だ。

 沈黙が重い。

 財務官が書類を開く。

「さらに、領地運営の実務の多くが長女ナチュ嬢に委ねられていたとの報告がある」

 公爵の顔色が変わる。

「それは補佐として」

「補佐が実務の大半を担っていた事実は?」

 逃げ場がない。

 王家はすでに調査を済ませている。

 帳簿。

 署名。

 決裁記録。

 誰が実際に家を回していたかは明らかだ。

 王太子が口を開く。

「婿養子として家名を守るために迎えられたと聞く」

 公爵の背に汗が滲む。

「その役目を果たしていると、言い切れるか」

 静かな問い。

 だが容赦がない。

 公爵は答えられない。

 王家は怒っていない。

 冷静に、事実を確認しているだけだ。

 しかしそれこそが恐ろしい。

「監督責任は家長にある」

 法務官の声が会議室に響く。

「令嬢の行動、教育、そして家の統治状況」

「総合的に判断する」

 財務官が書面を閉じる。

 公爵の喉が鳴る。

 総合的判断。

 それは、爵位の存続を含む。

 王太子は最後に告げる。

「王家は秩序を重んじる」

「理念を軽んじる家を放置すれば、基準が崩れる」

 視線がまっすぐ公爵を射抜く。

「理解しているな」

 公爵は深く頭を下げるしかなかった。

「……承知しております」

 会議は終わる。

 だが、終わったのは会議だけだ。

 王宮の石畳を歩きながら、公爵は初めて自覚する。

 これは娘の失態ではない。

 自分の統治の失敗だ。

 家を守るために迎えられた婿養子。

 その家が今、王家から統治能力を疑われている。

 屋敷に戻ると、後妻が駆け寄る。

「どうでしたの」

 公爵は答えない。

 ただ一言。

「監督責任だ」

 その言葉の意味を、後妻も理解する。

 家の揺らぎは、もう表面だけの問題ではない。

 ノーランド家そのものが、審判の天秤に載せられていた。
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