婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ

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第二十二話 王家の通達

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第二十二話 王家の通達

 慈善夜会の出来事から、ほどなくして。

 ノーランド公爵邸に王家の使者が訪れた。

 それは予告もなく、だが決して唐突ではなかった。

 公爵は応接室に通され、静かに席に着く。

 向かいには王家紋章を胸に付けた文官。

 儀礼は簡潔だった。

「本日は王家よりの正式な通達をお届けに参りました」

 声音は平板。

 感情はない。

 だがその事実が重い。

 封蝋を解く音がやけに響く。

 公爵は書面を開き、目を通す。

 文字は整然としている。

 文面もまた冷静だ。

 ――ノーランド公爵家令嬢による度重なる私的接触および王家の理念を軽視する言動について。

 ――王家はこれを看過しない。

 ――今後同様の行為があれば、家門の統治能力を含め、然るべき判断を行う。

 短い。

 だが十分だった。

 統治能力。

 それは最も重い言葉だ。

 公爵の指がわずかに震える。

「……これは警告か」

「王家は警告という表現を用いません」

 文官は淡々と答える。

「判断材料の確認でございます」

 つまり、すでに評価は始まっている。

 公爵は視線を落とす。

 王家は感情で怒っているのではない。

 家の管理がなされていないと見ているのだ。

 それは婿養子である自身の立場を直撃する。

「家内の行き過ぎた振る舞いであれば」

 言い訳を探す。

 だが文官は首を横に振る。

「令嬢は公爵家の一員でございます」

 個人の問題ではない。

 家の問題。

 文官は静かに立ち上がる。

「本通達は記録に残ります」

 その一言が、最後の釘だった。

 記録。

 つまり将来的な判断材料。

 使者が去る。

 重い沈黙が応接室を満たす。

 やがて後妻が入室する。

「何の用でしたの?」

 公爵は書面を差し出す。

 読み進めるうちに、顔色が変わる。

「記録……?」

「家の統治能力が疑われている」

 低い声。

 後妻は反論しようとする。

「娘が少し感情的になっただけで」

「王家は“少し”とは見ぬ」

 公爵の言葉は重い。

 王家にとって重要なのは秩序。

 理念を軽んじ、私的感情で接触を重ねる。

 それは規律違反だ。

 しかも、公の場で。

 後妻は椅子に腰を落とす。

「まさか、爵位にまで影響は」

 公爵は答えない。

 だが理解している。

 婿養子である自分は、家を守るために迎えられた。

 その家が王家から統治能力を疑われた。

 これは軽くない。

 一方、別邸ではナチュが書類に目を通していた。

 通達の内容は既に耳に入っている。

 だが彼女は表情を変えない。

 帳簿を閉じ、静かに言う。

「記録に残るということは、評価の始まりでございます」

 側近が息を呑む。

「お嬢様は、何もなさらないのですか」

「今は、何も」

 王家は感情で動かない。

 同様に、彼女も感情で動かない。

 家の評価は、積み重ねで決まる。

 守るべきは制度。

 揺らすのは、軽率な行為。

 ノーランド家の天秤が、静かに傾いていく。

 そしてその傾きは、もう戻らない。
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