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第10話: 初の錬金実験
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第10話: 初の錬金実験
辺境到着から二週間。
薬草園の開墾は順調に進み、最初の種が芽吹き始めていた。
屋敷の地下室――エルカミーノが新たに整えた簡易錬金室。
石壁に囲まれた薄暗い部屋に、木製の作業台と小さな竈、ガラス器具が並んでいる。
空気には薬草の爽やかな香りと、微かな魔力の匂いが混じっていた。
「セシル、材料は揃った?」
「はい、お嬢様! 癒やし草、魔力花、浄化の実……全部新鮮なものですわ!」
セシルが籠を抱えて入ってくる。
エルカミーノはエプロンを着け、黒髪を後ろで束ねて作業モード全開だ。
「今日は本格的なポーションを作ってみるわ。
王都の高級錬金術師でも作れないレベルのものよ」
彼女は作業台に材料を並べ、まず癒やし草を丁寧に刻み始めた。
前世の化学知識とこの世界の魔力を組み合わせた独自の手法――
希少素材ゼロで、効果は市販の三倍以上。それが彼女のチートだった。
竈に火を入れ、蒸留器に水を張る。
刻んだ薬草を順番に投入し、魔力を少しずつ注ぎ込む。
「魔力の流れを……こう、ね」
淡い青い光が器具の中を巡り、液体が徐々に透明なエメラルドグリーンに変わっていく。
セシルが息を呑んで見つめる。
「お嬢様……すごい。光が綺麗ですわ」
一時間ほどで、最初のポーションが完成した。
小さな瓶に注がれた液体は、ほのかに輝き、部屋全体を優しい香りで満たす。
「完成。万能癒やしポーション――重傷でも一晩で完治するくらいの効果よ」
エルカミーノは満足げに瓶を掲げた。
さらに勢いに乗り、その日は美容ポーションと魔力回復薬も作り上げた。
美容薬は飲むだけで肌がつるつるになり、魔力薬は魔術師が一週間分の魔力を瞬時に回復できるもの。
「これを村に少し配って、残りは商人に売ってみましょう。
辺境だけど、近くの町まで行けば買い手はあるはず」
セシルが目を輝かせる。
「お嬢様の薬が広まったら、きっと大金持ちになりますわ!」
「ふふ、お金はほどほどでいいの。のんびり暮らせれば」
その頃、王都では――
王宮の祝宴ホール。
カイロン王子とソルスティスの婚約発表パーティーが華やかに開かれていた。
「ソルスティス嬢、本当に美しい。聖女様に相応しい」
貴族たちが次々と祝福の言葉を贈る。
ソルスティスは可憐に微笑み、聖魔法の小さなデモンストレーションを見せていた。
しかし、片隅で囁かれる声があった。
「でも、最近怪しい病が流行り始めているらしいわね……聖女様の魔法でも、効きが悪いと」
「辺境の方で、すごい薬が出回ってるって噂よ。追放されたあの令嬢が作ってるらしいけど……」
カイロンはその会話を耳にして、わずかに眉をひそめた。
(エルカミーノ……? まさか)
しかし、すぐにソルスティスの手を取り、笑顔を取り戻す。
(もう関係ない。あんな地味な女のことは、忘れた)
祝宴は続いたが、
王都の空気には、かすかな不安の影が忍び寄り始めていた。
一方、辺境の錬金室では、
エルカミーノが新しい瓶を並べながら、静かに微笑んでいた。
(これで、少しずつ私の場所ができていく)
窓の外、薬草園の若芽が風に揺れていた。
辺境到着から二週間。
薬草園の開墾は順調に進み、最初の種が芽吹き始めていた。
屋敷の地下室――エルカミーノが新たに整えた簡易錬金室。
石壁に囲まれた薄暗い部屋に、木製の作業台と小さな竈、ガラス器具が並んでいる。
空気には薬草の爽やかな香りと、微かな魔力の匂いが混じっていた。
「セシル、材料は揃った?」
「はい、お嬢様! 癒やし草、魔力花、浄化の実……全部新鮮なものですわ!」
セシルが籠を抱えて入ってくる。
エルカミーノはエプロンを着け、黒髪を後ろで束ねて作業モード全開だ。
「今日は本格的なポーションを作ってみるわ。
王都の高級錬金術師でも作れないレベルのものよ」
彼女は作業台に材料を並べ、まず癒やし草を丁寧に刻み始めた。
前世の化学知識とこの世界の魔力を組み合わせた独自の手法――
希少素材ゼロで、効果は市販の三倍以上。それが彼女のチートだった。
竈に火を入れ、蒸留器に水を張る。
刻んだ薬草を順番に投入し、魔力を少しずつ注ぎ込む。
「魔力の流れを……こう、ね」
淡い青い光が器具の中を巡り、液体が徐々に透明なエメラルドグリーンに変わっていく。
セシルが息を呑んで見つめる。
「お嬢様……すごい。光が綺麗ですわ」
一時間ほどで、最初のポーションが完成した。
小さな瓶に注がれた液体は、ほのかに輝き、部屋全体を優しい香りで満たす。
「完成。万能癒やしポーション――重傷でも一晩で完治するくらいの効果よ」
エルカミーノは満足げに瓶を掲げた。
さらに勢いに乗り、その日は美容ポーションと魔力回復薬も作り上げた。
美容薬は飲むだけで肌がつるつるになり、魔力薬は魔術師が一週間分の魔力を瞬時に回復できるもの。
「これを村に少し配って、残りは商人に売ってみましょう。
辺境だけど、近くの町まで行けば買い手はあるはず」
セシルが目を輝かせる。
「お嬢様の薬が広まったら、きっと大金持ちになりますわ!」
「ふふ、お金はほどほどでいいの。のんびり暮らせれば」
その頃、王都では――
王宮の祝宴ホール。
カイロン王子とソルスティスの婚約発表パーティーが華やかに開かれていた。
「ソルスティス嬢、本当に美しい。聖女様に相応しい」
貴族たちが次々と祝福の言葉を贈る。
ソルスティスは可憐に微笑み、聖魔法の小さなデモンストレーションを見せていた。
しかし、片隅で囁かれる声があった。
「でも、最近怪しい病が流行り始めているらしいわね……聖女様の魔法でも、効きが悪いと」
「辺境の方で、すごい薬が出回ってるって噂よ。追放されたあの令嬢が作ってるらしいけど……」
カイロンはその会話を耳にして、わずかに眉をひそめた。
(エルカミーノ……? まさか)
しかし、すぐにソルスティスの手を取り、笑顔を取り戻す。
(もう関係ない。あんな地味な女のことは、忘れた)
祝宴は続いたが、
王都の空気には、かすかな不安の影が忍び寄り始めていた。
一方、辺境の錬金室では、
エルカミーノが新しい瓶を並べながら、静かに微笑んでいた。
(これで、少しずつ私の場所ができていく)
窓の外、薬草園の若芽が風に揺れていた。
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