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第11話: 隣国の視察者
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第11話: 隣国の視察者
辺境到着から一ヶ月が過ぎ、薬草園は見違えるほどに整っていた。
朝の陽光が差し込む庭では、色とりどりの薬草が整然と並び、風に優しく揺れている。
エルカミーノはいつもの作業着姿で、収穫したばかりの葉を籠に集めていた。
「セシル、今日の分はこれで十分ね。美容ポーションを二十本作れるわ」
「お嬢様、最近注文が殺到してますわ! 近くの町の商人まで来るようになりましたよ」
確かに、村人だけでなく、近隣の町からも人が訪れるようになった。
エルカミーノのポーションは「奇跡の薬」と呼ばれ、傷を一瞬で癒やし、肌を若返らせ、魔力を回復させる効果が評判を呼んでいた。
そんな穏やかな午後――
村の入り口で、馬の蹄の音が響いた。
黒を基調とした豪奢な馬車が、銀と紫の旗を翻してゆっくりと入ってくる。
旗には、隣国エルドラントの紋章――双頭の鷲が描かれていた。
村人たちがざわつき、道を空ける。
馬車がエルカミーノの屋敷前に止まると、扉が静かに開いた。
最初に降りてきたのは、赤髪の筋肉質な騎士――ガレン・フォン・ヴァイス。
鋭い目で周囲を警戒しながら、馬車に手を差し伸べる。
そして――
銀色の長髪が陽光を浴びて輝き、紫水晶のような瞳が冷たく世界を見据える美男子が現れた。
ラクティス・フォン・エルドラント。
大陸最強と謳われる魔導公爵。
黒を基調とした上質なローブに身を包み、長身の姿は圧倒的な存在感を放っていた。
村人たちが息を呑む中、ラクティスは静かに屋敷の門を見上げた。
エルカミーノは庭からその様子を眺め、セシルと顔を見合わせる。
「……隣国の視察団? こんな辺境に、何の用かしら」
セシルが小声で囁く。
「お嬢様、あの人……噂のラクティス公爵じゃないですか!? 大陸最強の魔導師で、冷徹無比って……」
ラクティスはゆっくりと歩み寄り、庭の前に立つ。
視線が、薬草園に注がれる。
「ここが、最近評判のポーションの産地か」
低く、澄んだ声。
感情が読み取れない、氷のような響きだった。
エルカミーノは鍬を置き、手を払って前に出た。
「ご挨拶が遅れました。私はこの領地の主、エルカミーノ・フォン・リンデルです。
隣国よりお越しのようですが、ご用件は?」
ラクティスは彼女をじっと見つめた。
紫の瞳が、鋭く値踏みするように。
「……お前が、製作者か」
彼は懐から一つの小さな瓶を取り出した。
それは、エルカミーノが先日町で売った魔力回復ポーションだった。
「この薬、興味深い。
通常の錬金術では不可能な純度と効果。希少素材も使っていないようだ」
エルカミーノは内心で警戒を強めつつ、穏やかに答える。
「ただの薬草の組み合わせですわ。辺境の土が良いのでしょう」
ラクティスはわずかに口角を上げた。
――それは、笑みなのか、それとも嘲りなのか。
「謙遜か。それとも、隠したいのか」
ガレンが一歩前に出て、丁寧に頭を下げる。
「失礼いたしました。公爵殿下は国境貿易の視察でこの地をお通りになり、噂の薬を直接確かめたいと」
ラクティスは再びエルカミーノを見据えた。
「一つ、質問がある。
このポーションを、もっと大量に作れるか?」
エルカミーノは一瞬、言葉を測った。
「……作れます。でも、なぜ?」
ラクティスの紫の瞳が、わずかに細められる。
「理由は、後で話す。
まずは――お前の才能を、直接見てみたい」
風が薬草を揺らし、二人の視線が静かに交差した。
辺境の小さな庭で、
運命の歯車が、ゆっくりと動き始めた。
辺境到着から一ヶ月が過ぎ、薬草園は見違えるほどに整っていた。
朝の陽光が差し込む庭では、色とりどりの薬草が整然と並び、風に優しく揺れている。
エルカミーノはいつもの作業着姿で、収穫したばかりの葉を籠に集めていた。
「セシル、今日の分はこれで十分ね。美容ポーションを二十本作れるわ」
「お嬢様、最近注文が殺到してますわ! 近くの町の商人まで来るようになりましたよ」
確かに、村人だけでなく、近隣の町からも人が訪れるようになった。
エルカミーノのポーションは「奇跡の薬」と呼ばれ、傷を一瞬で癒やし、肌を若返らせ、魔力を回復させる効果が評判を呼んでいた。
そんな穏やかな午後――
村の入り口で、馬の蹄の音が響いた。
黒を基調とした豪奢な馬車が、銀と紫の旗を翻してゆっくりと入ってくる。
旗には、隣国エルドラントの紋章――双頭の鷲が描かれていた。
村人たちがざわつき、道を空ける。
馬車がエルカミーノの屋敷前に止まると、扉が静かに開いた。
最初に降りてきたのは、赤髪の筋肉質な騎士――ガレン・フォン・ヴァイス。
鋭い目で周囲を警戒しながら、馬車に手を差し伸べる。
そして――
銀色の長髪が陽光を浴びて輝き、紫水晶のような瞳が冷たく世界を見据える美男子が現れた。
ラクティス・フォン・エルドラント。
大陸最強と謳われる魔導公爵。
黒を基調とした上質なローブに身を包み、長身の姿は圧倒的な存在感を放っていた。
村人たちが息を呑む中、ラクティスは静かに屋敷の門を見上げた。
エルカミーノは庭からその様子を眺め、セシルと顔を見合わせる。
「……隣国の視察団? こんな辺境に、何の用かしら」
セシルが小声で囁く。
「お嬢様、あの人……噂のラクティス公爵じゃないですか!? 大陸最強の魔導師で、冷徹無比って……」
ラクティスはゆっくりと歩み寄り、庭の前に立つ。
視線が、薬草園に注がれる。
「ここが、最近評判のポーションの産地か」
低く、澄んだ声。
感情が読み取れない、氷のような響きだった。
エルカミーノは鍬を置き、手を払って前に出た。
「ご挨拶が遅れました。私はこの領地の主、エルカミーノ・フォン・リンデルです。
隣国よりお越しのようですが、ご用件は?」
ラクティスは彼女をじっと見つめた。
紫の瞳が、鋭く値踏みするように。
「……お前が、製作者か」
彼は懐から一つの小さな瓶を取り出した。
それは、エルカミーノが先日町で売った魔力回復ポーションだった。
「この薬、興味深い。
通常の錬金術では不可能な純度と効果。希少素材も使っていないようだ」
エルカミーノは内心で警戒を強めつつ、穏やかに答える。
「ただの薬草の組み合わせですわ。辺境の土が良いのでしょう」
ラクティスはわずかに口角を上げた。
――それは、笑みなのか、それとも嘲りなのか。
「謙遜か。それとも、隠したいのか」
ガレンが一歩前に出て、丁寧に頭を下げる。
「失礼いたしました。公爵殿下は国境貿易の視察でこの地をお通りになり、噂の薬を直接確かめたいと」
ラクティスは再びエルカミーノを見据えた。
「一つ、質問がある。
このポーションを、もっと大量に作れるか?」
エルカミーノは一瞬、言葉を測った。
「……作れます。でも、なぜ?」
ラクティスの紫の瞳が、わずかに細められる。
「理由は、後で話す。
まずは――お前の才能を、直接見てみたい」
風が薬草を揺らし、二人の視線が静かに交差した。
辺境の小さな庭で、
運命の歯車が、ゆっくりと動き始めた。
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