異世界転生公爵令嬢は、オタク知識で世界を救う。

ふわふわ

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農業革命編第4章 収穫と逆転

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 やがて季節は巡り、実りの秋が訪れた。
 エリアナが若者たちと共に整備した試験農場は、青々と茂った作物で彩られている。

「見てください、エリアナ様! 麦がこんなに大きく!」
「豆も、こんなに莢が重そうに垂れ下がってます!」

 農民たちは歓声を上げ、畑を駆け回る。
 黄金色に波打つ小麦、枝にたわわに実るソラマメ、土から顔を覗かせるジャガイモ。どれも生き生きとして、従来の畑とは明らかに違っていた。

 エリアナは収穫の鎌を手にし、麦を刈り取る。ずっしりとした穂が手に伝わる感触に、思わず笑みがこぼれた。

(……成功だわ。連作障害に苦しんだ土地でも、正しい方法を取ればこんなに蘇るなんて!)

◆ ◆ ◆

 一方、代官バルドの指示で続けられていた従来の畑では、見るも無惨な光景が広がっていた。
 背丈は低く、穂も小さく、病害虫で葉は黄色く変色している。収穫量は半減、いやそれ以下だろう。

 農民たちは試験農場と比較して愕然とした。

「な、なんだこの差は……」
「同じ土地で、同じ種を使っているのに……」
「本当に女神の奇跡か?」

「違います」
 エリアナは静かに首を振った。

「奇跡ではなく、知識の力です。輪作と肥料――ただそれだけで土地は蘇ったのです」

 農民たちはどよめき、やがて歓声が広がった。

「エリアナ様のおかげで……我らは飢えずに済む!」
「ありがとうございます、ありがとうございます!」

 人々は次々に膝をつき、涙を流しながら感謝を捧げる。

◆ ◆ ◆

 しかしその場で、ただ一人だけ顔を引きつらせている者がいた。
 代官バルドだ。

「こ、こんなもの偶然だ! 今年だけ豊作でも、来年はどうなるか分からん!」

 必死に声を張り上げるが、誰も耳を貸さない。農民たちは彼ではなく、エリアナの方を見ていた。

 そのとき、一人の若者が声を上げた。

「代官様! 収穫記録の帳簿を確認しましたが……不自然な点が多すぎます!」

「な、なんだと!?」

「領主様に納める分と実際の収穫量が合いません! 余ったはずの小麦が市場にも流れていない……どこへ行ったんですか!」

 どよめきが広がる。農民たちの視線が一斉に代官へと注がれた。

 エリアナは内心、静かに息を吐いた。
(やっぱり……領民を苦しめていたのは、単なる不作だけじゃなかったのね)

 バルドは顔を真っ赤にし、汗を滲ませながら怒鳴った。

「で、でたらめを言うな! これは神への供物だ! 我が家の倉に保管してあるだけだ!」

「神への供物が、なぜ代官の屋敷で豪華な酒宴に化けるんだ!」

 別の農民が怒鳴り返す。ついには「横領だ!」「私腹を肥やしていたのか!」と非難の声が次々に上がった。

◆ ◆ ◆

 その日の夕刻、アルトハイム家の執務室。
 報告を受けた公爵は険しい表情で判決を下した。

「バルド代官、貴様の罪は明白だ。領民を飢えさせ、なおかつ横領とは言語道断。代官職を解き、全財産を没収の上、追放とする!」

「お許しを! わ、私はただ……!」

 哀れな叫びも虚しく、バルドは衛兵に引き立てられていった。

 その姿を見送った農民たちは、深く頭を下げる。

「エリアナ様……領地を救ってくださり、本当にありがとうございます」
「これからは、我らも新しい農法を学びたい!」

 その声に、エリアナは柔らかく微笑んだ。

「知識は誰のものでもありません。皆さんが正しい方法を覚えれば、土地も人も豊かになりますわ」

◆ ◆ ◆

 収穫祭の日。試験農場で取れた小麦で焼かれたパンや、豆料理、ジャガイモの煮込みが村の広場に並んだ。

「こんなに腹いっぱい食べられるなんて……」
「子供たちが笑っている……!」

 人々は涙を浮かべ、笑いながら食卓を囲む。

 その光景を眺めながら、エリアナは胸に温かなものを感じていた。

(これが……農業の力。飢えから人を救い、笑顔を生み出す。オタク知識だなんて笑われても、この世界に広める価値がある)

 彼女の瞳には、次なる目標が映っていた。
 領地だけでなく、王国全土に農業革命を――。

 そしてその決意は、やがて国を揺るがす大きな波となっていくのだった。


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