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王太子フィリップの後悔と絶望編 第十章 完全敗北と絶望
しおりを挟む――舞踏会の翌朝。
豪奢な王宮は、昨日の華やかさが嘘のように冷え切った空気に包まれていた。
王族として最も避けねばならぬ「公衆の面前での拒絶」。
しかも、それを行ったのは、今や神聖視されるほどの存在――エリアナであった。
結果は明白。
王太子フィリップは、すべてを失ったのだ。
---
◆公開拒絶の余波
「王太子殿下が振られたらしい」
「エリアナ様に……堂々と、あの場で」
貴族たちの間で噂は瞬く間に広まり、翌朝には市井にまで知れ渡った。
街角では商人たちが面白おかしく語り合い、居酒屋では「殿下、愚かだな!」と笑い飛ばす者まで現れる。
国の未来を担うべき王太子が、笑いものになった瞬間だった。
---
◆父王の失望
「フィリップ!」
玉座の間に呼び出されたフィリップに、父王アルフレッド三世の怒声が響く。
「貴様は……国の顔に泥を塗ったのだぞ!」
国王の眼差しは怒りと失望に満ちていた。
普段は穏やかで慈愛深い父が、今や氷のような冷酷さを帯びている。
「エリアナ嬢を手放したこと、その時点で愚かであった。だが、公の場で二度目の愚行を犯すとは……! 王族として、いや、一人の男として失格だ!」
フィリップは震えながら言い訳を口にした。
「ち、違うのです……あの時は、セレスティアが……僕は騙され――」
「黙れ!」
王の声は雷鳴のようだった。
「己の選択を女に責任転嫁するか! 王たる者に、最もあってはならぬ態度だ!」
フィリップは膝をつき、冷たい石床に額を擦り付けた。
「申し訳……ございません……」
---
◆弟エドワードの台頭
玉座の脇に控えていた第二王子エドワードは、静かに一歩進み出た。
「父上。兄上の責任は重うございます。ですが、この国の未来を憂えるなら……エリアナ様を理解し、その志を支えられる者が、王太子として相応しいのではないでしょうか」
会場にいた廷臣たちがざわめく。
その言葉は、明らかに自分こそが適任だと宣言していた。
国王は重く頷いた。
「……その通りだ。フィリップよ、王位継承権の剥奪もやむを得ぬ」
「な……っ!」
フィリップの顔色が蒼白に変わった。
その瞬間、玉座の間にいた貴族たちは、すでに勝者を見極めたようにエドワードへと視線を向ける。
---
◆貴族たちの離反
「殿下、お気の毒ですが……」
「国のためには、やはりエドワード殿下こそが……」
昨日までフィリップ派を自称していた貴族たちが、次々と態度を翻し、エドワードの周囲へと移っていく。
「裏切るのか!? お前たちは、昨日まで私の忠臣だったではないか!」
フィリップの叫びは虚しく響いた。
誰も彼に答えようとはせず、冷たい視線だけが突き刺さる。
---
◆エリアナの言葉の重み
後宮に戻ったフィリップの耳には、エリアナが舞踏会で告げた言葉が何度もよみがえった。
――「殿下には……何がおありでしょうか?」
「う……ぐ……」
自室のベッドに崩れ落ち、頭を抱える。
どれほど考えても、答えは出てこない。
彼女の言葉は真実であり、反論の余地すらないのだ。
---
◆孤立と絶望
セレスティアも既に去り、側近たちも次々とエドワードへと乗り換えていった。
残されたのは、空虚な肩書と、笑いものとなった名声だけ。
「僕は……何をしているんだ……」
窓の外からは、市民たちの笑い声が聞こえてくる。
それが、かつての王太子の心をさらにえぐった。
「エリアナ……僕は……君を……」
震える声で名を呼ぶも、その想いはもう届かない。
彼女はすでに、国と世界の希望として未来を歩んでいる。
フィリップはただ、取り返しのつかない過去に縋りつき、絶望の淵に沈んでいくのだった。
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